森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺一樹です。今日は、アジア新興国市場におけるチャンスの掴み取り方みたいなお話をちょっとしていきたいなというふうに思います。
どういうことかと言うと、僕はいろんな企業の支援をしてきて、2つのタイプの企業を今まで見てきたんですよね。1つは、非常に限られたパーセンテージなんですが、新興国市場で事業をしているとチャンスがいっぱい降ってくるんですよね。そのチャンスが降ってきたときに、「これ、チャンスですよ!」と言ったときにね、それをしっかり「チャンスだな」というふうに認識して、それを掴み取れる企業と、「チャンスですよ」と、「そうだね。よし、ちょっと検討しよう」と言って検討している間にこのチャンスが通り過ぎていってしまうというね、チャンスを掴みきれない企業の、この差って何なんだろうというふうに考えていて、なんとなくちょっと答えが見えてきたなという気がするので、そんなお話をしようかなというふうに思うんですが…。
チャンスを見過ごしてしまう企業とチャンスを掴み取れる企業って、判断するスピードが速いのか遅いのかって、それは当たり前の話で、速ければ掴むし、遅ければ掴みきれないっていうね。もちろん早く掴むことでチャンスじゃないものを掴んでしまって損をするということだってあるわけだから、速いか速くないかっていうことよりも、僕はね、チャンスをチャンスとして認識できる能力にちょっと着目をしていて。これは何なんだろうと、なぜA社はチャンスをチャンスと認識したのに、B社はチャンスをチャンスと認識していると口では言っているんだけども、行動がそうなっていないのかっていうことを考えていったときにね、やっぱりね、チャンスじゃないって言い切らない、チャンスを認識するというね、この認識もね、100%の認識から1%の認識まだ99段階あるわけですよ。チャンスをチャンスと思っていなければ0%なので。そうするとね、やっぱりアクションを踏むということは100%の認識じゃないと、特に日本企業はアクションしないわけですよね。欧米の企業とかマーケティングオリエンテッドの企業とかだったら7~8割のチャンスでバーンと動くんですけど。まあまあ、仮にいいですよ、100%じゃないと動かないとしたときに、やっぱりね、チャンスをチャンスと心の底から思ってないから動けない、すぐに動かないと。なので、チャンスが通り過ぎてしまうわけですよね。例えば、ここの地下に石油が眠っているって100%分かっていたら誰でも掘るじゃないですか。例えば、ここに金が眠っている、ダイヤモンドがあるって、100%チャンスがそこにあるって分かっていたら、誰でも掘りますよね。その掘るためにボーリング機械が必要だ、なんとかが必要だって、100%そこにあるんだから。なおかつ埋蔵量もこれぐらいあるっていうことが分かっていたらね、それはもう100%、借金してでもボーリング機械を持ってくるわけですよ。それを、うにゅうにゅ、うにゅうにゅ言って、ボーリング機械を持ってくるための借金もしない、お金も出さないっていうことはなぜかと言うと、100%ここにあるっていうことを信じられないからなんですよね。それがやっぱり大きな差なので、認識力なんだと。
じゃあ、なぜ認識できる企業と認識できない企業がいるのかなと言ったときにね、やっぱり基本的な土台がちゃんとしている企業は、「これはチャンスだよね」って認識できてしまうんですよ。例えば、アジア新興国市場でマーケティングをベースに事業をしっかりやっている企業は、全体像が見えているわけですよね。全体像が見えているし、すべてがロジックに、ロジカルに動いているので、そこにチャンスが来たときに、それがチャンスであるということを明確に認識できると。一方で、局地戦をやっていてね、全体像を俯瞰して見えてなくて、マーケティングオリエンテッドでもなく、どちらかと言うと、今、手の届く範囲のことを積み上げでやっている企業は、チャンスが降ってきても、それが全体像を見た中でロジカルにチャンスかという思考に至れないんですよ。なので、それをチャンスとして捉えられないので、そこに突っ込めない、投資をできないという、そういう話なので。やっぱり土台がちゃんとマーケティングベースでしっかりしている企業というのはチャンスを認識するんだなと。そうじゃないと、チャンスをチャンスとして捉えられないんだなと。なぜ日本の企業が、出遅れるってよく言うじゃないですか、マーケット、新興国市場に出遅れる。技術ベースのね、B2Bの技術ベースの製造業はいいですよ。だって、自分たちの高度な技術を必要としているところにドーンと行けば、そこに需要があるわけですから。でも、B2Cの企業なんかね、出遅れたら終わりですよ。消費者を相手にしているビジネスですからね。出遅れるというのは、やっぱりチャンス、アジア新興国市場も出遅れたってよく言われるわけですよね。それは、爆発的な中間層が大きな富を生みますよということに100%の自信がないから出遅れたわけですよね。中国の内需の爆発的な拡大も出遅れているんですよね。これは2000年代前半ぐらいから徐々にやっていって、もう2014年にはピークを中国は迎えていましたからね、15年前後ぐらいにはね。そこに行くまでにやっぱり追いつかなかった。本気になったのは2010年以降ですから、そのあとすぐにまた20年近く、2010年後半にはもう下り始めたのでね。やっぱりチャンスだっていうことを心の底から認識するためには、土台の部分が、この「しっかり」というのはね、マーケティングベースになっているか、そうじゃないかということなんだなというふうにね、すごく感じた次第で。やっぱりチャンスをチャンスとして認識できてない、認識しないんだから、それは掴まないですよね。
そうすると、やっぱり成功する企業というのは絶対にタイミングでチャンスを掴んでいるんですよ。例えば、小売が今、例えばね、B2Cだったらね、ここの3大小売のうちの1大小売は、今、内部でこういうことが起きていて、今、こういう商品に力を入れたいと思っていて、こういうのをもう本当に喉から手が出るほど欲しいというようなタイミングでドーンとそれを突っ込めたりとかね、市場は、今、こういう方向に向かっていて、ここにこの商品を入れたらドーンと最初の突破口が開けるみたいなところにうまく商品をドーンと落とせたりとかね、そういうことが…。あと、例えば、中間流通の業界って、今、こんなふうになっていて、こことここの中間流通を押さえたら一気に市場が伸びて、もうこれはなかなかあとで追い込まれる状況をつくられるのは、参入障壁、他社の参入障壁が高くなるのでね、非常にメリットが高いとかっていうのをね、パッパッパッと見抜いてね、掴んでいく。だから、チャンスが可視化されるんですよね。見える化される。チャンスというのはたぶんいっぱい降っていて、雨のように降っていて、それが可視化されているかされていないかというだけの話で。じゃあ、どうやったら可視化されるかと言うと、やっぱりマーケティングのマインドセットで物事を見て、組み立てて、実行していくということがたぶんチャンスを可視化するということには一番近いんだなということを改めて認識をしている次第でございます。
皆さん、今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。