東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:「森辺一樹のグローバル・マーケティング~すべてはアジアで売るために~」では森辺さん、今回もですね、質問に答えていただきたいと思います。前回のが非常に好評で、今回はCさんとすると、Cさんはもう既に駐在されていると。で、中国からわざわざメールをいただきまして。
森辺:ああ、ありがとうございます。
東:森辺さんも中国が長かったと思うんですけど、質問内容を読み上げますと、Cさんが勤めているのはけっこう大企業で、名が知れているので、仮にA企業とさせていただきますね。A企業は生産拠点としては15年ぐらい前から出ていて、販売拠点を5年前から、いくつか順々に、中国で設立をしましたと。設立したのはいいんですけれども、売り上げはほとんど日系だけで、他の外資ですとかローカル系はほとんど立っていませんと。今実際に、Cさん自身はこの売り上げをどうやって立てるのかに悩んでいます、みたいなことでご質問いただいているんですけど。どうですかね、森辺さんとしては?
森辺:なるほど。これもまあ、私がご相談いただく企業さんではよくありがちなパターンなんですけど、生産拠点の進出では成功したんだけども、販売拠点ではなかなかうまく成果が上げられないというパターンだと思うんですけどもね。まあ生産拠点はいったんちょっと切り離した時に、生産では15年前に出ているわけですよね。そうすると、会社としては、本社としては、自分たちの会社は15年も前から中国に出ているんだと。で、自分たちの会社は中国のことよく分かっているっていうふうに想定はしているんですけど、作りに行くのと売りに行くのじゃ全く必要となるスキルが全く違うんですよね。中国在住15年、工場長やってたっていう人が仮に中国で売れるかっていうと、またそれも全然違うんですよね。だからこういう大手の企業さんのこういう傾向っていうのは非常に多いんですけど、基本的に戦略たぶんしっかり組み立ってない状態で販売拠点作られて、いろんなことを苦労してやってきて、何年ぐらい売っているんですかね、5年くらいですかね?
東:5年前から、ちょっとホームページ見ると、上海、やっぱり北京、広州があって、内陸に2つ、3つあるみたいな構成だったんですけど、一般的に製造業とかBtoBではそういった設置の仕方をしてくると思うんですが、そんな感じで。
森辺:なるほど。だからそれでやってきて、いろんな苦労をこの5年間でしてきたんだけど、結局、蓋を開けてみたら日系企業にしか売れてないじゃんっていう、そういう話ですよね。結局これね、中国も外資系企業の内販の許認可というかライセンスが取れるようになったのってのはその辺りなんですけどもね。もともとは材料確保で作ってはいいけど売っちゃ駄目よという、売っちゃ駄目よっていうか、売るためのハードルが非常に高かったのが、バーが下がったっていう。で、そのタイミングで販社をいっぱい作った会社さんっていっぱいあるんですよね。結局、この会社さんの商品を見てみると、直販もそうなんですけど、あの広大な中国でいかに代理店網を構築するかっていうところが売り上げに直結をするはずなんですよ。で、これ、ホームページ拝見していますけど、代理店網が全くないですよね。というか弱いですよね、この数的に。
東:たぶん直販を中心にやっていて、代理店ちょろちょろみたいな。
森辺:そうですよね。結局、この代理店網をどうやって構築していくかっていうところが勝敗の鍵になるんですよね。日系企業の購買もね、今中国の方が購買責任者だったりするケースっていっぱいありますけど、日本人の駐在員数とか、ここに書いていますけど、この数で日系のつながりでいっているんだとすると、日本人は移動するのにもお金がかかるしね、投資対コスト、費用対効果、非常に悪いので、なかなか難しいんだと思うんですけど、やっぱり戦略ありきで販売チャネルをどう作っていくのかっていうことを今からでもいいんで、遅くないんでね、これだけの有名な企業だったら潤沢なキャッシュがありますからね。しっかり、販売網を構築していくっていうことをやったほうがいいですよね。
東:中国で例えば販売網をパートナーを使って構築に成功している企業とかっていうのは、森辺さんが見てきた中では、ここはうまいなあっていうのはありますか?
森辺:まあたくさんありますけどね、共通して言えることはミクロ環境分析徹底的にやっているんですよね。結局その、自分たちは日本でも販売網を持っていますよね。それをベースに考えていくんですけど、一方でその国の競合さんがどういう販売網を敷いているのかっていうことを、やっぱり見ていかないといけなくて、日本みたいなきれいな販売網の構造にならないんですよね。例えば、キックバックの問題があったりとか、リベートの問題があったりとか、あと小さなブローカーさんみたいな人たちなんだけど特定な企業とかにはものすごく強い力を持っていて、取引が個人になるとかですね、そういういろんな問題があるんですよね。それを一個一個競合がどうやってクリアしているのかっていうことを分析して、彼らの戦ってる土俵と同じような土俵を作っていかないといけないわけですよね。結局その、フォロワーの戦略って呼んでいるんですけどね、日本の企業さんって、フォロワー戦略、ちょっと何か印象的に嫌う傾向があるんですけど、やっぱり敵が今現状どうやってるのかっていうことを知った上で自分たちの販売網を構築するっていうことをやらないといけない。そこに学ぶものって、やっぱり、いっぱいあるんですよ。日本と、だって、全然違いますからね、一つ販売網をとってもね。あともう一つが、販売網を構築したあとですよね。よく日本企業がありがちなのが、販路を構築するために代理店網ブワッと引いたと。契約終わったと。そのあとのルート営業全くしませんみたいな。そういうケースが非常に多くて、そこの2点大きく分けて、今後やっていかないといけないんじゃないですかね。
東:そうするとまず、Cさんとしては、販売網を築かなければいけないと。それは直販ではなくてパートナーを見つけて販売網を中国を網羅できるような販売網を築いていったほうがいいでしょうということでしょうか?
森辺:そうですね。このA社さんの場合ね、今ホームページ見ていますから言っていますけど、A社さんの場合は中国の同じ同業種が販路をこれだけ持っているわけですよね。それを持って、それだけ利益が出ている、売り上げが上がっていると。市場シェアが高いっていうことが分かっていて、自分たちとの違いって販路があるかないかっていう、そこですよね。ですから、パッとホームページ比べただけでも、それが見てとれるので、まずミクロ環境、競争環境の徹底的な分析をやるっていうところから、まあ、もしかしたらやられているのかもしれないんですけどもね、ポイントは、販売網、代理店網を作るということをやっていかないといけないですよね、このA社さんはね。
東:これだけの大手になると、何となく、ベンチマークとか競合調査する意味がないとか、自分たちは自分たちの、特に直販でやられていますから、営業力に自信があって自分たちでやりたいっていう思いも強いのかな、もしくは本社からパートナーじゃなくて自分たちだけやれみたいな指示が出てるのかなっていうのも何となく想定できるんですけど。
森辺:そうですね。まあ、5年経って売り上げがほとんど立ってないっていうことであれば、本社もそろそろ気付いているとは思うんですけど、結局、そのリベートの問題とかややこしい問題があるから、チャネルは直販でいくなんていう考えを持たれる会社もあるんですけど、チャネルってやっぱり、あれだけ広い地域でね、中国のような独特な商習慣がある会社では、特にこの業種さんは僕は必要だと思うし、ちょっとね、この業種を言えたらいいんですけど、言ったら分かっちゃうような会社なんで、なかなかあれですけど、言葉を選びながら今慎重に話してますけど、一方で模倣困難性って言葉がありましてね、これはいわゆる、商品の模倣をされるということじゃなくて、チャネルってつくるの大変じゃないですか、中国。で、私のチャネル構築の支援でもやっぱり2年かかるんですよね。チャネルを作って1年、それを回すのに1年、ですから売り上げを上げるっていうことにやっぱり2年かかると。これだけ大変なチャネルを、でも1回作ってしまえば、そこのメンテナンスさえしっかりやればですね、チャネルっていうのはなかなか模倣するのが難しい、模倣困難性の高い自社の武器になるんですよね。だから、このチャネルはやっぱり作っていくっていうことはすごく重要ですよね。
東:そうすると、Cさんの立場としてやるのは、まずはベンチマークを徹底的にしてくださいよと。次に、チャネルを作るような、パートナーとチャネルを作るというステップが必要ですと。で、パートナーを見つけるにあたって、パートナーと契約するだけじゃなくて、今、森辺さんが言われたような、パートナー教育って言ったらいいんですかね?
森辺:そこが一番大変なんですよね。パートナー自身はチャネルをつくって、これだけのネームバリューがある会社ですから、代理店と呼ぶのか、特約店と呼ぶのか、何と呼ぶのかは別にして、契約自体はスムーズに進むと。スムーズに進むんですけども、そのあとですよね。どうそのチャネルを活性化させていくか。日本だとチャネル契約さえすれば、あとはチャネルが賢いですから、何をすべきかってのを分かって行動するわけですよね。けど中国に限らずアジアだと、そのチャネルをどう活性化させていくかっていうとこに、メーカーはパワーを使わないといけないので、そこは非常にしんどい作業にはなりますが。
東:チャネルの今、活性化とあったんですけど、日本で営業やっていたり、直販だけやっていると、なかなかピンと来ないと思うんですよね。パートナーと契約を結ぶ、そしたらそのパートナーが勝手にチャネルを作ってくれるのがパートナーなんじゃない、みたいな頭が、やっぱりまだ残っているような企業さんって多いと思うんですけど、そのパートナーもしくはチャネルを活性化するっていうのは具体的にどういうことかっていうのを教えてもらっていいですか?
森辺:例えば、あなたがうちの代理店ですということで、代理店契約は終わるんですけどね。その代理店の多くは、その会社さんの商品も代理してるけど、別の会社の商品も代理しているわけですよね。そうすると一番儲かる商品を売るっていう、そういう傾向になるわけですよね。もしくは簡単に売れるものを売るっていうことになって、自分たちの商品が一番儲かる商品だったり簡単に売れる商品だったらいいんですけど、必ずしもそうじゃないと。その中でパートナーにどういうインセンティブを与えていくのかとか、あと、パートナーと人間関係を構築してどれだけ彼らのやる気を出させるのかっていうことをやっていかないといけなくて、日本だったら当然のごとくやっているんですよね、代理店表彰とかね。代理店のルート営業をして、メーカーがルート営業をして人間関係をつくってってことをやっていくんだけど、これがアジアになっていくと、なかなかそれが進まない。これも日本人がルート営業していたって限界があるわけで、現地の優秀な営業マンにそれをさせていくっていう話になるんですけどもね。自分たちの営業マンと代理店の癒着をどう管理コントロールするかとかですね。もういろんなややこしい問題があるんですが、これだけの大企業であれば、その問題を全て潰していって、しっかりとしたチャネルを作るっていうことはできる。この会社の日本の競合さん、できていますよね、一方でね。そことの競争に今、苦しまれているんだと思うんですけど、そういうことはしっかりできているので、そういうことをやっぱりきっちりやっていかないといけない。あともう一つが、アジア、特に中国ならチャネルって気を付けないといけないのが、パートナー教育をしないんだったらチャネル契約もしちゃ駄目っていうのがもう絶対で、代理店として代理店契約したのに、そこにメーカーがしっかりとした教育をしていかない、ルート営業していかない、訪問しない、契約してそれで終わり、みたいな。あとは彼らが売ってくれるでしょうみたいなことをやって放っておくと、いつの間にかこの代理店が、自分たちの、A社さんの商品を勝手に別のローカルの工場でOEM生産させて、自分たちのブランドで売って、代理店がいつの間にかメーカーになって市場を奪われちゃっていたみたいな。結局、日本のA社の商品は、こういう高いものもあります、いいものもあります、メイドインジャパンですと。ただ我々はこのA社の代理店で、非常にノウハウが高いから、こういう安い商品もオリジナルブランドで持っています、どっち買いますか、みたいな。で、お客さんに松竹梅で見せるわけですよね。そうするとA社さんの商品は、単なる見せネタピエロで、自分たちの商品を売りまくっているという、そういう傾向が非常にあって、基本、中長期的なビジネスとかじゃなくて、短期で見ていきますからね、彼らは。短期でどっちがもうかるかっていうことを見ていくので、そんなのはよくよくある話ですよね。
東:はい。そうするとまずは、チャネルの活性化っていうところではやっぱり、非常に何個も課題がありますけども、ベンチマークをしてパートナー契約をしてチャネルを構築するっていうステップがどうしても必要になってきそうですかね?
森辺:そうですね。でね、このクラスの規模のチャネル構築、今のこの5年間もほとんど売り上げが立ってなくて、日系企業しか売り上げが立ってないっていうのが本当なんだとすると、チャネル構築ね、自力でできないんで、ぜひご連絡をまた改めてしていただければと思います。専門業者を入れてしっかりチャネル構築しないと、たぶん自前でやっていて、今の中国の成長スピードでね、マーケットシェア追いつける話の、レベルの話じゃないと思いますんでね。しっかりやっていかないといけないですね、外部を入れて。
東:そうですね。最後にじゃあ、森辺さんからCさんに、エールを含めて一言。
森辺:そうですか?Cさん、森辺でございます。頑張ってください。ご連絡いただきましたら、私でお役に立てれば、お手伝いさせていただけると思います。こんなんでいいですか?
東:ありがとうございました。じゃあ今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございます。