森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は製造業、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品・文具・化粧品に限ってじゃなくてもいいと思いますけど、B2Bの製造業でも結構だと思いますけど、対象は製造業で、地域はアジア新興国全般と。別にアジアじゃなくてもいいのかな。今日のお話は、マーケティング戦略を組み立てる上で非常に、僕が日々お客さんと仕事をしていて、この2つがもっとあればもっと良くなるのになというふうに感じることについて、ちょっとお話をしていきたいなというふうに思います。
その2つって何かと言うと、1つはシンプルに考えるということがすごく重要で。何か考えていると、すごく煮詰まっていくというか、難しく考え過ぎる。たぶんこれは日本人の特性なのかもしれないんですけど、非常にいいことなんだけども、難しく考え過ぎるあまり本質から逸れていくという、そんな議論をたくさん見てきていて。非常にシンプルに考えるということはすごく重要で。言ったらマーケティングって、「誰に」「何を」「どう」売るの?ということを極限まで最適化するということなわけですよね。いろんな議論をしているんだけども、結局、よくよく考えてみると、「誰に、何を、どう売るの」、この「誰に」の解像度が全然粗かったよねとかね、あと、「何を」っていうのが基本的には自分よがりになり過ぎていたよねとか、あと、「どう売るの?」みたいなところのこの「どう」が、結局、自分が今ある知識の中で「どう」を考えていて、競合が今、何をやっているのか、何をやってきたのか、競合の基準値を理解した上で自分たちがどこまでやるべきかみたいな、競争理論にもとづいて、「どうやるか」っていうことを組み立てていないとかね、そういうことが問題の芯だったりというケースが大半なんですよね。ものすごく高度なところに課題があるかと言うと、そんなことはなくて、今言った3つの「誰に、何を、どう売るか」に問題があるからシェアが上がってないわけですよね。シェアをさらに5%上げたい、10%上げたい。そうすると、今以上に、「誰に、何を、どう売るか」を極限まで最適化する必要があって。ここだけに集中して考えていけばいいんだけども、議論が複雑化していってしまうというケースが結構たくさん見てきたので、これは1つ大きなポイントかなというふうに思うんですよね。
もう1つが、とにかく駄目な理由がもう固定されてしまっていて、「これは製品変えられないので、そこはもういじれません」とか、「値段はもう変わらないので、もうできません」みたいな、確定事項がいくつかあるんですよね、必ず。それは何をもって確定したんですかと、社長の最終決裁なんだとしたら、それはもしかしたらしょうがないのかもしれない、組織ですからね。ただ、ある程度それがそうであっては駄目だということをしっかりと証明しながら、ボトムアップで上の理由なき確定事項を崩していくということはすごく重要なわけですよね。これは先進グローバル企業ではこういうことはあまりなくて、基本的には合理的なほうが選ばれるわけなので、合理的なことを言っている人が、もしくは方法が選択されていくので、「とにかく駄目だよ」みたいな、「いや、品管がもう原材料変えちゃ駄目って言っています」とか、「製品変えられません」とか、「いやもう、値段はこれでギリギリで、もうこれで決まっているんです」とか、「パッケージはこうです」とか、「製品名こうなんです」とか、そういうのって単に思い込んでいるだけで。いや、もちろん変えるのはしんどいですよ。しんどいんだけども。でも、変えないと駄目な部分っていうのは当然あって。例えばアジア新興国市場に消費財メーカーが展開をするのに、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかで言ったらね、伝統小売はやらないと駄目だ、やらないともう儲からない、これは確定事項なんですよね。これはもう合理的な確定事項で、これが決まっている、もしくはアジア新興国は中間層ど真ん中を狙わないと儲からないと、自分たちがどれぐらい儲けたいかにもよりますけども。それが決まっているにもかかわらず、それを邪魔する要因、例えば価格だったり、オーバースペックの品質だったり、そういうものを変えないみたいな、「何をやりたいんですか、そしたら」という話になっていったりするんですよね。こういう基本的な部分が結構多くて、「いや、それは変えてはいけないんです」と思っていてやっているんだけど、結局それでは失敗してしまうので、「はい、失敗しました。撤退します」、それを何回か繰り返してようやくおしりに火がついて、「変えていかないと駄目ですね」ということになっていくんですよね。でも、それはすごい無駄じゃないですか、その10年とか15年とかっていう月日がね。担当もどんどん変わっているので、ノウハウとしても蓄積されてなくて。だから、シンプルに考えるということと、これは駄目だという、駄目を一旦なしにしてフラットに考える。組織ですから、いろんな制約があるのはもう十分分かりますと。ただ、その制約を一旦取り除いて、マーケティングを合理的に客観的に見たときに、どっちが取るべき選択肢なのかということをベースに一回決めていって最終形をつくってみると。そこからいろんな社内事情を考慮して妥協していくということをやっていかないと、妥協点が最初にあったら正しい方向に進んでいかないんですよね。全部の社内事情を取り除いて、マーケットに対してど真ん中を当てるにはどうすることがいいのかということをベースにフラットに、駄目な理由を全部取り除いて考えていくということが本当に重要なので、ぜひ皆さん、マーケティング戦略を組み立てるときにこの2つを頭に置いて組み立ててもらえたらというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。