森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、ディストリビューターのお話をしていこうと思います。任せてすべてうまくいくディストリビューターが存在するのか否かということで、ASEANでもアジア新興国全般でもいいんですけども、「売ることをディストリビューターにパッと任せたらある程度ガーッと売れるようなディストリビューター、いるんですか」というね、そういうお話をしていきたいと思います。対象はFMCG、食品・飲料・菓子・日用品なんかが中心になります。それ以外の製造業さんは自分たちの事業に置き換えて聞いていただければと思います。
なぜこんな話をするかと言うとね、結構そういうお問い合わせがあるんですよね。どこどこで商品を売りたいので、ディストリビューターをお願いできませんかと。これはFMCGの場合ね、MT向けのディストリビューターとTT向けのディストリビューターがあるので、これは得意・不得意あるんですよね。だから、まずそこで切り分けないといけないし。輸出でやっているんだったら、インポートライセンスを持っているディストリビューターがMTの市場、近代小売の市場、伝統小売の市場、両方ともに必要だしね。ただ、現地法人があるんだったら、MTは直販でやるというのが基本的なやり方ですよね。日本の消費財メーカーだと、現法があるのにMTをディストリビューター経由でやっているとかね、よく分からないケースがあるんですよ。先進グローバル企業で現法があってMT直販をやってないところなんてないのでね。基本的には直販することで本部商談をやって、小売との強固な関係を積み重ねていくということがメーカーにとっては重要な仕事なので、それを問屋さんに丸投げしてしまうというのはあり得ない話で。MTへの配達はね、MT側の本部物流、セントラル物流にドーンと出せばいいだけだし、あと、各店舗に配達するのも、店舗側で3PLを持っているしね。なので、そこに何か第三者を介在させてマージンをそこで無駄に使うというのは消費者の価格が無駄に高くなってしまうので、基本的には必要ないわけなんだけどもね。なので…。
すみません、話がちょっと逸れましたけども、ディストリビューター。ディストリビューターってそもそもTTのマーケットに使うわけなんですけど、結局、TTでもMTでも、ディストリビューター、どのディストリビューターがいいかっていうのはね、良いディストリビューターがいて、ここに任せたら、ボーンと売れるなんていうことはなくてね、これ、僕はこの番組でもお話してきましたけど、良いディストリビューターにするかしないかは、ある意味半分こっち次第というところもあってね。スキルセットの特性で、こことやるとうまくいく可能性が高いとかっていうことで選別をしていくということはね、もちろんすごく重要なんですよね。マインドセットも絡めながら選別をしていくんですけど。このプロセスの中で、「このメーカーはマーケットのことをよく分かっている。このメーカーはこの国に来て本気でやろうとしている。こんな戦略でやろうとしているんだ」って、そこが合致するからディストリビューターは自分たちができることがワークする。それをね、なんか実績があって、そこそこ大きくて、そこに、なんとなくイメージ良いし、丸投げしたら商品が売れるみたいなね、そういうところを紹介してほしいみたいな話があるんですけど。いや、忙しいし、そんなの紹介しませんよという話でね。「いや、御社にディストリビューターのリストあるでしょ」と。「はい、ありますよ」と、各国のFMCGの業界、例えばお菓子をフィリピンで売るならこことか、お菓子でもチョコならここ、スナックならこことかね。分からないですけど、食品ならここ、調味料ならこことか。われわれなりにこの25年近くの中で蓄積してきたデータベースを、パズル合わせなのでね、どの国で、どの商品を、どういうふうに売るんだったら、どの流通にね、近代小売に、伝統小売に、売るんだったら、ここがいいだろうなというのはあって。そのパズルを合わせていくわけなんですけど。
でも、結局、他人任せにするようなメーカーさんをそのディストリビューターに当てこんでも、最初はうまくいくかもしれないけど、結局、続かないんですよね。それによって、「SPYDERさんに紹介してもらったディストリビューターとやったけどうまくいかなかった」なんて言われたら余計、風評被害なので。基本的には、やっぱりチャネルをつくっていくという行為をわれわれはお手伝いをしているので、表面的なところの上っ面だけをやりたいみたいなのだと、なかなか支援しにくいというのはやっぱりあるし。われわれのアセットは、われわれの顧客のために使っているので、一見さんでポーンと来られて、「すみません。ディストリビューターのリスト、もうすでに過去、調べたやつ、ちょっとそれをベースに安く見繕ってもらえませんか」とか言われても、「いやいやいや、今のわれわれの10年以上、15年以上付き合っているお客様に費用を頂戴して、そのお客様のために調査をして集めてきて、それをずっとお金をかけてメンテナンスしてきているデータをね、パッと来てパッと誰が出すんですか」という、そういうお話で。なんか愚痴みたいになってきてしまいましたけど。でも、出しませんよということですよね。うちのお客様のためには惜しみなく何でも出すけども、まだ取引も始まっていないのに、リストだけくださいって、あなたたちの商品が今のうちの既存のお客さんの商品の競合になるような商品だったら、余計出しませんよという話なので。
なので、簡単に考えて上っ面の表面のところでなんかうまいことやれてしまうんじゃないか的な発想でね、たぶんアジア新興国市場に突っ込んでいってもね、絶対これは結果が出ないから、良いディストリビューターのリスト集めて、良いディストリビューターさえ捕まえれば、そことやればモノが売れるんだなんてね、そんな簡単にいくんだったらみんなやっていますよという話でね。良いディストリビューターというのは、生かすも殺すも自分次第で、強固な販売チャネルをつくっていくためにはね、ディストリビューターの発掘選定はもちろんですけど、そのディストリビューターとどう契約交渉していくか。ここのプロセスでディストリビューターにいわゆるこちら側のスキルセットを測られているわけですよね。彼らもいろんなメーカーと付き合っているので、「このメーカー、さすがだな」というところともいっぱい付き合っていて、何も分からない、日本のメーカーか分からないですけど、何かが来てね、「やりましょう。お願いします」みたいな、それはやりませんよね、もうそんなのね。どうせ、あなたたち、駄目だったらすぐ引っ込むんでしょみたいなふうに思っていますからね。20年前だったらね、日本の企業というだけでウエルカムでしたけども、最近はそんなことないので。そのあと、ディストリビューターをどう管理育成していくかという話がセットになっているので。なので、そんなリストを手に入れて「はい、うまく」みたいな、そういう話ではまずないので、そこはきっちりとやっぱり理解をして。
チャネルをつくるんだと。ややこしい、面倒くさい、お金がかかると思うかもしれないですけど、チャネルってメーカーにとってめちゃめちゃ大きなアセットですから、これは資産なんですよね。無形の資産。これがある意味、有形かもしれないけど。このチャネルが日本だと当たり前にしてあるので。勘定科目に載ってこないんですよね、日本の販売チャネルの資産なんて。だから、あんまり価値を見出せないというのもあるのかもしれないけども。でも、新興国市場ではやっぱりチャネルをしっかりつくるということはアセットなので、そんな簡単にいきませんよという、それをお伝えしたくて、ちょっと愚痴みたいな話をしてしまいましたけども。今日はそんなお話でございました。
これぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。