森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。前回に引き続き、グランドデザインをやるって言いましたっけね、前回ね。もう1回ぐらいやろうかなって言った…、言ったよね、言いましたね。なので、もう少し、ちょっと理解を深めるためにね、前回の続きとして、グランドデザインのお話をしていきたいと思います。対象は消費財メーカー中心になります。FMCG、食品・飲料・菓子・日用品、文具・化粧品ぐらいまで含んでいいんじゃないかなというふうに思います。
グランドデザインが非常に重要ですよと、シェアの高い企業というか、アジア新興国市場の展開、うまくいっている会社の特徴としてね、グランドデザインというのがあるし、あと、リファレンス・バリュー、僕が非常に重要視している基準値、これはまたどこかでお話しますけど、過去のエピソードでもお話してますけど、基準値の、リファレンス・バリューの話。そして、スピードとダイバーシティ、スピード&ダイバー、この3つのお話で。このグランドデザインはね、結局、全体最適の上でも非常に重要だし、今、目の前の戦に勝っても、結局、グランドデザインができてないと、その先、次の戦、もしくはその次の戦で負ける。もっと言うと、ベトナムで勝ってもASEAN全体で負けたら結局意味がないし。これは時間軸もそうなんだけど、ベトナムで20年かかっていたらね、結局その20年の間にその他のASEANの市場も変わってしまって、結局20年かけてせっかく勝ったのに、その勝ちが意味がないっていうことになるので、いかにグランドデザインを最初に描くかっていうことがすごく重要ですよという話を前回してきたのかなと思います。
今日は、その中でも、グランドデザインもね、僕はマクロのグランドデザインとミクロのグランドデザインがあると思っていて、この両方がすごく重要だよねというふうに思っています。前回少しお話したのがマクロのグランドデザインで、結局なぜベトナムなんだっけというところがまずあるわけですよね。ASEANの中でもなぜベトナムなのかと。ベトナムは伝統小売が重要な市場で、ベトナムとかフィリピン、インドネシアもね。伝統小売をやるための経営資源が投下できないのに、なぜ先にベトナムなんだと。タイのほうがね、近代小売だけでやるんだったらタイのほうが、もしくはクアラルンプール、マレーシアのほうが圧倒的に簡単だし、規模も大きいと、MTのね。それをなぜベトナムなの?と。これはグランドデザイン描けていたら、やっぱり順番に展開をしていくという話。前回も話したけども、そこが描けていないので、「いや、ベトナムでたまたま良いパートナーが見つかったので、まずベトナムを」みたいな。「いやいや、そういうことじゃないじゃないですか」みたいなね。
そのグランドデザインって、市場環境と競争環境をね、地球全体を広く取った上で見ていくと、大陸ね、日・欧・米・アジアの真ん中・右・左。右が、日本的な地図で言うとね、右が北米・南米、左がヨーロッパ・アフリカで、真ん中に中東・アジア・インド・オセアニアみたいにあったときにね、自分たちの同業種が世界でどういう市場で、どういう経営資源を投下して、どう戦っているのかっていうのをやっぱり見る必要があって。菓子メーカーなら菓子がどうなっているのか、洗剤なら洗剤どうなっているんだ、スキンケアならスキンケアどうなっているんだ、乳製品なら乳製品どうなっているんだって、こういうのがやっぱりまず全体としてあってね、世界にはどういう主要競合がいて、彼らはどの大陸を、どう獲ろうとしているのかという、これがまさにあるから、じゃあ、今、私たちはここに駒を進めようとか、ここをやろうみたいな話があって。ここからしっかりと10年先20年先をシミュレーションしていきながら、いや、ここは自力じゃなくてM&Aだねとか、ここは1番じゃなくて2番を獲ろうとか、ここは負けてもう捨てようと、経営資源足りないからここに集中しようとか、こういうグランドデザインがまず絶対的にないといけなくて。世界地図を今みたいに広げたときのこのグランドデザインを僕はマクロのグランドデザインと言っているんだよね。
一方でミクロのグランドデザインというのは、例えばそれをアジア地域に限定したとかね。ずっと言ってるようなベトナム、別にベトナムじゃなくてもいいんだけど、仮にベトナムに限定したときに、じゃあ、ベトナムの中で、じゃあ、お菓子の市場どうなっているんだ、食品の市場どうなっているんだ、乳製品の市場どうなっているんだ、洗剤の市場、ビューティー市場、ヘルスケア市場どうなっているんだというのがあって、競争環境を見たときに、じゃあ、自分たちはこうしよう、ああしようという、これはミクロのグランドデザインなので。グランドデザインってね、常に市場環境と競争環境をウォッチすることから僕は始まると思っていて。それがあるから初めてデザインできる。この市場環境と競争環境のインプットもないのにデザインなんかできないので。このグランドデザインをやっぱりやっていかないといけない。
市場環境はね、いわゆるセカンダリーデータと言われる、世界のいろんな機関がデータを発表していますから、それを見たら、自分でなんとなくできるんですよね。一方で競争環境だけは、やっぱり専門家に頼まないと、われわれのような専門家に依頼をしないとね、なかなかそれは無理で。われわれがやっているのはまさにこの競争環境を可視化をして、お客さんがつくるグランドデザインのお役に立つということも仕事の1つで。ミクロのグランドデザイン、マクロのグランドデザインって両方あるわけで。ここをやっぱりしっかりやっていくということはすごく重要だし。シェアの高い企業とか、欧米の先進的なグローバル企業、グローバルに成功している企業ってね、必ずこのグランドデザインを描いてんですよね。描くチームがある。描くチームがあると。
それがまったくない中で、なんとなくベトナムとか、なんとなくインドネシアとかね、そういう展開をしていると、やっぱり勝ちが積み上がらないんですよね。この目の前の、じゃあ、勝ちはたまたま獲れても、結局それは継続性がないし、サステナブルじゃないし、どこかでまた負けるのでね、だって、グランドデザイン描けていないんだもん。もう行き当たりばったり戦っているわけですよ。でも、能力が高いからね、個としての能力は日本企業は非常に高いし、良いものを持っているから、あるところまではダダダダダッて勝つんだけども、結局全体を獲れないので、最後負けてしまうよねと。それは家電で見てきたんじゃないのかなって。家電、日本はもう家電つくるの、もうほぼやめましたよね。全部売ってしまいましたよね、最後はね。家電の市場がまさに、グランドデザインを描かずに、良い品質、良い機能の商品あるからいいでしょ、ダーッてやっていた。中国の競争力がこれだけ強くなっているのを、サムスンの、韓国の競争力がこれだけ強くなっている、20年前、25年前を思い出してください。「いや」って、そんなこと無視して「われらはメイドインジャパン」とかって言いながらね、行ったわけですよね。グランドデザイン、まったく無視。だって、「自分たちはメイドインジャパンだよ」と、高い品質、技術力、「技術の日本」とかって言って行って、結局、今、どうですかということで。こういう状況に消費財メーカーの市場もなり得るので、一刻も早くマクロのグランドデザインとミクロのグランドデザインを描くということが僕は急務じゃないかなというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。