東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、久しぶりに2人でなんですけども、まずなんか告知があるようで。
森辺:実はですね、ずっと死にアカウントだったツイッターを最近マメにあげてましてですね、僕が、海外出張が多いんだけども、海外出張の中で見た面白いものとか、感じた事なんかをマメに写真付きであげてますんで、ぜひリスナーの皆さんもツイッターのほうも併せて見ていただければなという風に思います。アドレスが@kazukimoribeです。ぜひ探してみてください。お願いします。
東:よろしいでしょうか。じゃあ本題に入りたいと思うんですけど、今日は、最近結構いろんなところで講演を受けていると思うんですが、どういったテーマで講演を受けられてることが多いですかね。
森辺:総じて傾向として多いのは、販路開拓っていうキーワードがすごく多くて。海外進出したはいいんだけど、販路が獲得できなくて撤退とか、販路が拡大できないまま赤字だけが積み重なる、そういうのが非常に多くて。結局、日本の会社さん、大手さんだとM&Aやったりをしますけど、まあM&Aした後の販路を獲得できないとか。あと箱をとりあえず現法出して駐在員を送り込んだんだけれども、販路が獲得できないっていう。そこの開拓の方法がやっぱり多いですよね。
結局、販路の構築、販路開拓とか販路獲得とか販路構築とかっていいますけど、販路ってデザインするものだと思っているので、基本的には好んで販路構築っていう風な言葉を使っているんですけどもね。結局、販路を構築するには、グローバルマーケティングの概念を理解してないと、うまく販路って構築できないんですよね。だから講演ではグローバルマーケティングの概念の話から、販路構築の具体的な手法みたいなものをお話しすることが多いですかね。
東:中小企業白書とかでも、中小企業になりますけど、販売拠点を持っている企業の持つ悩みとか課題とかで1番、「販売先の確保」が52.7%ていうのが出ていて、約半数。複数回答なんですべてが直近で50%とは言えないけど、約半数が販売先の確保で悩んでるっているデータが出ているので、それだけ、日本にはお客さんはいるけれども、海外に出てしまうとなかなか自分たちだけで販売先を確保するっていうことが難しいっていうことを言えると思うんですけど、どんな感じですかね。
森辺:特に中小企業問わず大企業もそうなんですけど、いろんな経営資源がそろっているので、大企業のほうが比較的販路を獲得しやすいってのは当然傾向としてはあるものの、販路が獲得できても、現地に進出している日系企業への販売でとどまってしまっているケースっていうのが非常に多いですよね。4Pってあるじゃないですか。marketing mix、product、price、place、promotionと。
東:マーケティングの4Pといわれるものですね。
森辺:日本だと当然productありきで考えていくので、productがあって製品があって、price価格があって、placeチャネルがあって、promotionというようについてくるんですけど、結局これB to Bの企業、B to Cの企業で、消費財でも生産財でも、メーカーさんの販路獲得って海外行ったときに必ずplaceが先にくる。チャネルがありきなので。そのチャネルが求めている製品がなにかで、価格帯がなにかで、それをどうやってpromotionしていくかっていう、その順番が絶対的に違うんですよね。
東:そうすると、国内と海外で4Pの優先順位が違うということでよろしいですかね。もう一回、国内と海外でどう違うかってのを説明していただきたいんですけど。
森辺:国内は、product製品、price価格、placeチャネル、promotionですよね。ただ海外に行くと、3つ目にきたplaceいわゆるチャネルが一番最初に来て、product、price、promotionというふうに繋がっているので、結局チャネルがなかったら何にも商品なんて売れないんですよね。これはB to CもB to Bも同じで、いかにしてチャネルをデザインしていくか。
このデザインというか、インフラをデザインするわけじゃないですか、チャネルというインフラをデザインして。で、そこをマネージメントして、そことコミュニケーションをとっていくから、どんどんどんどん商品が売れていくっていう、そういう仕組みなので。特にアジア新興国だとこのチャネルが整備されきっていないわけですよね。先進国みたいにどっかのディストリビューターにボーンと投げればそこからビャーっと消費者まで、もしくはB toBだったエンドユーザーまでぐわっと商品を販売してくれるっていう仕組みが成り立っていないので、メーカー自身が自らチャネルを作っていかないといけないっていう、そういう大きな違いがあって。結構ここ軽視してきたんですね、日本の企業は。なんで軽視してきたかって言ったらproductが優秀だったから。そしてまた先進国では成功してきたので、チャネル作りっていうものを軽視してきたけど、最近そこに気づきはじめてきていて、講演依頼はほとんどがこのチャネルにまつわるところですよね。
東:そうすると、よく大企業でも中小企業でも「パートナーを紹介してください」とか、「いいパートナーいませんか」みたいな問い合わせだったり、森辺さんの講演のなかで聞かれたりすると思うんですけど、チャネル=パートナーみたいな、なんとなくイメージが出来上がっちゃってるじゃないですけど、そういう風に思われている方々も多いと思うんですけど、それはどう思います?
森辺:その多くの日系企業の発想の中には、自分たちはいいものは作れるんだよと。その生産拠点を海外に移転することで安くすることもできるよと。ただ、その海外アジア新興国の市場で売ることができないと。だから売れる企業とパートナーシップを結んで、自分たちが作ったものを彼らに売ってもらう。もしくはそのパートナー企業が製造業であれば、その地で一緒に作って合弁会社かなんか立ててですね。彼らの販路を使って売っていくっていう、こういう安易な進め方をするケースが非常に多いんですけど。そのケースで成功している企業って、その方法が必ずしも悪いとは申し上げないんだけども、どこまで売りに関わっていけるか。仮にパートナーに売るという面をお願いするにしても、自分たちが末端のセルスルーの概念で、その末端の購入をする人たち、もしくは企業までの一連のチャネルのプロセスを理解してなかったら、そんな事業提携であったり、合弁の戦略っていうのはなかなか成功しなくて。
結局どんな結末が待っているかというと、たとえば製造業とそれをやった時にね、現地のね。現地の製造業は現地の製造業と商品を持っているわけじゃないですか、自分たちの。そうすると、そこと製品コンフリクトが起きるし、実際に現地の製造業は当然現地でも製造業なので、製造することには長けていたとしても、販売をすることには長けていなかったりするケースも当然あるので。欧米のトップ企業がほんとにそんなことやってるかってのを見ていくと一目瞭然なんですけどもね。
もっと言うと、失敗する企業の法則みたいなのは講演でもよく話をするんですけど、3つありましてね。1つがコネとか人脈頼りの属人的な海外展開。コネや人脈ってのは海外展開する上ですごく重要じゃないですか。これは僕も認めます。ないよりはあるほうが圧倒的に有利ですと。ただ、自社の確固たる戦略があった上でのコネクションや人脈であって、コネや人脈頼りの属人的な海外展開は、結局は失敗をしてしまうので、それはなかなか難しいと。中小企業にはよくあるパターンですよね。
大企業になってくると闇雲にコネや人脈頼りってことはあまりしなくて、どちらかというと現地パートナーということになってきて。そのパートナーも財閥系とか同業種の製造業とかっていう話になるんですけど、これもやっぱり失敗をする要因になる。さっき説明した合弁のあれですよね。
東:莫邦富先生の回で、某企業が瀋陽の市長を知ってるから瀋陽に進出するって言ってて。日本の場合だと大阪の市長を知ってるから大阪に進出するかって言ったらしないだろう、みたいな話を森辺さんとされてたんですけど、そういう発想になってしまうってことなんですよね。
森辺:日本で政治家に紹介された企業と、合弁会社しないじゃないですか、でも海外だと政治家に紹介された企業と合弁会社をしてしまうケースってのがあって。特に日本の企業には強い傾向なのかもしれないですけど、日本語の喋れる外国人に非常に弱い。だから海外に出て日本語の喋れる外国人と出会うと、この人しかいないって。これは結局、事業を現地で作ってるのは人なので、大企業にいる人であっても、中小企業にいる人であっても、基本的には傾向は一緒ですよね。その今言った現地パートナー。1つが企業でも現地パートナーっていう、自分たちは売れないんだって諦めてる会社は、現地パートナーっていうそっちのほうに行くんですよね。コネとか人脈とかいう現地パートナーみたいな、そっちの方向に。いやいや自分たちはやれるぞと、やってやるぞという会社さんは、現地法人ありきの箱だけ海外展開をやる傾向が非常に強くて、とにかく現地現法だと。現地に営業法人を設立して、そこに駐在員を送り込んで、ひたすらやっていくという方法があるわけなんですが、ここもやっぱり国内でずっと活躍してきた営業マンを向こうに飛ばしてやるわけなんですけど。国内では営業っていうのは素晴らしかったかも知れないですけど、これが海外に行っても通用するかっていうと、先ほど言ったようにチャネルをデザインしていくのが先じゃないですか。営業ってpromotionに含まれるので、マーケティングの世界では。そうするとその対人のプロモーションじゃないですか、営業っていうのは。営業で物を売るというよりかチャネルで物を売るという仕組み作りが海外では先にくるので、日本はもうすでにそれがあるから営業がワークするんですよね。営業がすごく重要だっていうことなんでしょうけど。結局それって突き詰めるとpromotionなので。そういう3つの失敗する企業の法則がありますよねっということですかね。
東:わかりました。今日は少しお時間が来てしまったので、次回引き続き、講演内容含めてお聞きしたいと思います。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。