東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、失敗する企業の3つの原則みたいな話でお話をいただいたと思うんですけど。それって講演が販路構築とか販路関係の講演が増えているということで。その中で話される内容って、具体的に販路ができないから困っているとか、販売先が見つからないから困っているっていう。結局、売る相手がいないから、もしくは売る相手が少ないから困っているっていう日本企業が大半だから、そういう依頼が来ると思うんですけれども。そういった講演で具体的に森辺さんはどういった話をされるのか、簡単にでいいのでご紹介いただければなと思うんですけども。
森辺:その依頼される講演って1時間とか2時間とか、そういうものが中心なんですよね。稀に研修会社さんなんかから4時間とかね、事業会社さんというか企業から社内研修の依頼で行くと4時間とか5時間とかやりますけど。4~5時間あればある程度すべての説明ができるんですけど、1~2時間の説明だとお話しできることも限られているんですが。その少ない時間の中で私が皆さんにお伝えしたいことってのは、海外で売るためにはチャネルをデザインする、チャネルを構築するっていうことが1つで。そのチャネルって、単発の商売しに行くわけじゃないじゃないですか、海外に。そうすると持続可能なチャネルを作らないと、結局、その1回の取引で労力がかかりますよね。Aさんと取引するのにすごく労力がかかると。そしたらその労力をかけて作ったAっていうチャネルが持続的に収益を上げていくものにできなければ、投資対効果が非常に悪いわけですよね。だからそのチャネルを構築してデザインしていかないといけないっていう話をしてるんですけど。そこの重要性をまず理解していただくことをお話ししてるんですよね。
東:それは継続的にビジネスが、売上かつチャネルを作ることの重要性ってことですか。
森辺:そうですね。ゆっくり説明すると皆さん気づくんですけど、日本はすでに皆さんチャネルを持ってるじゃないですか。だからチャネルをデザインするとかチャネルを構築するなんて発想は、もともとないわけですよ。先人がデザインをして構築をしたところにひたすら営業力で商品を売っていくってことをやっているっていう。だから営業力が日本では重要ですよと。
ただ海外は、無の状態からチャネルをデザインして構築をしていって、それが完成して初めて営業が乗るわけですよね。だからチャネルファーストなんですよね。それを説明すると皆さん理解をしてくださってて。そのチャネルを作るっていうことの重要性もしくはその作り方、それを説明する前に、グローバルマーケティング全体を理解しないと、なかなかそのうまくチャネルが作れていかないんですよね。いろんな複合要素が多角的に関係してくるので、グローバルマーケティングを学びながらチャネルを作る。要は、グローバルマーケティングの一部なんですよね、チャネルっていうのは。なので、そこのグローバルマーケティングの全体から入ってって、チャネルにフォーカスしてって、そこをさらに具体的な構築事例で説明するっていうのが多いんですけど、1~2時間だとチャネル構築の具体的な方法までは行かない、説明でききれないですよね。
東:この番組のタイトルになっている「森辺一樹のグローバルマーケティング」ですから、森辺さんが考えるグローバルマーケティングっていうのは具体的にどういう、定義といったらいいんですかね、どういうことなんでしょう。
森辺:一言でいうと、世界のニーズに応えて利益を上げることがグローバルマーケティングの僕は一つの意味だと思っているんですね。その世界のニーズ、これは別に消費財でも生産財でも何でも一緒なんですけど、世界のニーズに応えるっていうことは、戦略が必要じゃないですか。どういうニーズにどういう風に応えていったらいいのかっていう。その戦略を作るためにやることが、グローバルマーケティングなんですね。その中にチャネル構築っていうのが入ってるわけなんですけど。以前にもお話ししたと思うんですけど、RSTPMMを他国版でやっていくということ、ターゲットとする国版で整えていくっていうことをまずやっていかないといけない。そこですよね。
東:そこがなかなか躓いてるのか、グローバルマーケティングを認識していないのか、わかっているけどできないのか、なかなか苦戦をしている企業が多いのも事実で。ただ一方で、うまくいっているところは結構とんとん拍子に、苦労はありながらもうまくやっているっていう、そこの境目というか境界線というのはどこにあるんですかね。
森辺:そうですね。結局うまくやれてる会社も、海外進出の歴史を紐解いていくと、「最近うまくいってるね、海外で」っていわれてる会社もその前10年20年って苦労をしてきて、ずっとやってきてるんですね。その中でノウハウを吸収してやってますよねと。70年代80年代90年代ぐらいから苦労されてきたノウハウが今、ようやく花開いているので、全体的な投資対効果で見たときには、まだまだマイナスなわけじゃないですか。これから累損赤字を取り戻していくっていう、そういうステージだと思うんですよね。
20年とか前のアジア新興国の経済成長のスピードってそんなに高くないですよね。競争環境もそんなに激しくなかったと。ただ、今のアジア新興国の経済成長のスピードと競争環境の激しさからすると、やりながら走りながら学ぶっていうことでは追いつかない。やりながら走りながらやらないといけないんですけど、闇雲に走ってても、まったく意味がないので、グローバルマーケティングのプロセスに応じて一気にやっていかないと、成功確率が確実に落ちて、戦略が立たないので、場当たり戦略みたいになるんですね。
僕思うんですけど、海外市場を獲得するってのは中長期でビジョン、目指すべき姿、to be像ていうんですかね、to beの像を描いて、そこに行くための中身を詰めていかないといけないじゃないですか。それが場当たり戦略だと、なかなかうまくいかないケースが多く見受けられるので。散々いろんな企業を支援してきて出した結論が、グローバルマーケティングとかチャネル構築っていう話なので。そこは僕はそうだと思ってるんですけどね。
東:簡単でいいんですけど、グローバルマーケティングの、先程プロセスとおっしゃったんですが、大きくここだけは押さえなければいけない、全部は説明している時間はないと思うので、グローバルマーケティングで今聞いているリスナーの皆さんも直面している、そういうことに、リスナーさんもいらっしゃると思うので、そういった時に具体的にどういったプロセスを踏んだらいいのか、大枠で教えていただいてもよろしいでしょうか。
森辺:ざっと流れでいうとね、どんな市場で、どんな敵がいて、そこに出たら何が起こりそうなのか。そして自分たちの商品ってのはどんな層に売ったらいいのか。その層の中でも具体的に言うともっとフォーカスしてどこを狙うべきなのか。自分たちの立ち位置というか、ポジショニングをどうすればいいのか。何が売れて、いくらなら売れて、どこでなら売れて、どうしたらその商品を知ってもらえるのかっていうことを完全に組み立ててしまえば、1つの戦略ができるじゃないですか。
東:もう一回じゃあ、ゆっくりと教えていただいて。
森辺:どんな市場なんですか、その出る市場が。そこにはどんな敵がいるのと。要は儲かる市場なの? 敵はいっぱいいるの? あんまりいないの? 強い敵、どうなの? そこに出ちゃったら何が起こりそうなの? っていうことをまず見る。これだけやれば、勝てないところに出て行ったって、負け戦をしてお金を摩るだけなので、出ないという選択肢は生まれるので、まず絶対にこれをやんないといけないわけですよね。
ここでなんか勝てそうだって感じて初めて、じゃあどんな層に売ったらいいのか。その層の中でも具体的にどこを狙うの。ほんとにターゲティングしていくわけじゃないですか。自分たちはどういう立ち位置でやりますっていう、たとえば、高いものを上位の人たちだけに売る戦略なのか、いやいや、中級品をマスに売る戦略なのか、そういうものを決めていくと。
すごく重要なのが、何が売れるのか。要は日本の企業がここで考えるときに、これを売ると決まってるんですね。なんですけど、いやそうじゃなくて、一回リセットして、なんだったら売れるの? 「いや、この価格で売るって決まってるんですけど」いやいやそうじゃなくていくらなら売れるのと。
東:さっき言ってたニーズに応えるっていうところなんですね。
森辺:どこでなら売れるのと。これチャネルですよね。どうしたら自分たちの製品が知ってもらえるのかっていうこと。これB to BもB to Cも、消費財も生産財も同じなので、これが一連のプロセスなわけですね。
これで戦略を組み立てていくわけなんですけど、この中でもやっぱりすごくすごく大事なのが、当然、経営資源は限られているし、ノウハウもいろいろ社内にあるないの問題があると思うので。ただ、この一連のプロセス全部全部重要なんですよ、どれか取れって言われたら、どんな敵がいるのかっていうのは、やっぱり戦略を立てる上ですごく参考になるんですよね。結局、先駆者が必ずいるので、その敵がどういうことで成功しているのか、もしくはどういうことで失敗しているのか。彼らがどういうチャネル構築をして商品が売れているのか、もしくは売れていないのかっていうことを見れば、自分たちがとるべき戦略って見えてくるんですね。だからどんな敵がいるのかってことは徹底的に調べないといけなくて。
これを自社で、事業会社がうにうに調べてても、全くもって事実は見えてこないので、我々のような会社に委託をして調べちゃったほうが早いですよってのは僕がずっと言ってることです。ここに逆に調べる費用を投資できないんだったら、そもそも海外に出ちゃいけないと思うんですよね。だからそこが一つのポイントで。これが終わったらそれに応じてチャネルを作っていく。要はどこでなら売れるのか、どうしたら売れるのか、っていうことをひたすら考えて導き出して、それを実行するっていうことを次のステージに行けるっていう。この二つですね。
東:じゃあもう一回その2つだけ教えていただいてよろしいですか。
森辺:どんな敵がいるのかっていう競争環境を徹底的に可視化する。B to BもB to Cも強豪はだいたい3カテゴリーなんですよ。1つが欧米外資、韓国も含めて、台湾も含めて外資。もう1つが日系。もう1つがローカル系。この企業それぞれ戦略の特性が違うんですね。この企業たちを見ていくと、ポジショニングもそれぞれ違うんですよ。ターゲティングも違ったりするんですよ。だから競争環境見るってのはすごく重要で。それぞれターゲットも違うし、いわゆる製品も違ってくると、当然チャンネルも違ったりするんですよね。これを見ていきますと。それを見たうえで、自分たちのポジショニングと自分たちのターゲットを決めて、自分たちのチャネルを作るっていう、どこでなら売れるのかっていうことをやっていく。この2点ですね。これがもっとも重要で。
単発商売しに海外に行くわけじゃないじゃないですか。なんか1000万売れましたイェーイっていうそういう話じゃないと思うので、いかに10億100億1000億の事業を海外で作るのかっていうことを考えると、10年先への投資なんですよね。10年先に投資ができないんだったら、海外とかあまり言わないほうがいいんじゃないかなって僕は思ったりします。
東:わかりました。じゃあ今日はここらへんでお時間来ましたので、森辺さんありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。