森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「自分には絶対に当てはまらない」という誤った妄想についてお話をしていきたいなというふうに思います。
前回ね、「良性の前提条件」と「悪性の前提条件」のお話をしましたが、今日は、参入戦略をつくっていく際に、こうすると成功確率が下がるとか、こうすると成功確率が上がるという、多くの場合は、こうしないと成功確率は上がりませんよというファクトが分かっても、その「こうする」というのが非常に大変なので、いわゆるあまり大変じゃない方向、つまりは成功確率が下がっている方向、みんなこれで失敗していますよと。例えば「消費財メーカーが、インドネシアで、ベトナムで、フィリピンで、伝統小売をやらなきゃマーケットシェア獲れませんよ。利益出ませんよ」と言っているにもかかわらず、伝統小売のチャネル構築が後手に回るという話とか、あと、「タイで、CPとセントラルと2強の小売市場なので、まずは御社の製品群だとCPとしっかりやらないと、なかなかプレゼンス上がりませんよ。シェア上がりませんよ」という中で、まずは日系のドラッグストアからとか、こういう実際のファクトとは反するアクションを取るというケースは往々にしてあるんですよね。調査をやって勝ち筋を見ていくと、この市場ではこうやらないと駄目だなというファクトが客観的に合理的に証明されているにもかかわらず、それをやるのには今設定している前提条件を崩さないといけないと、製品を変えないといけないと、近代小売じゃなくて伝統小売に行かないといけない、チャネルをつくらないといけない、今の既存のディストリビューターと別の販売網をつくらないといけない、今のディストリビューターとも揉める可能性がある、これは大変だと、いろんな難題が降ってくるんですよね。
何かを成し遂げようとか、何かを得ようと思ったら、当然難題はいっぱい降ってきて、楽な道はあまりないので。そういう状況になると、これ人間って不思議で、いや、そうなんだけど、自分たちはこれ切り抜けられるんじゃないかと、自分たちには当てはまらないぞと、伝統小売やらなくても、近代小売だけで良い商品持っているんだからと、プレミアムなんだからと、機能性だと、高付加価値だと、これ、ブレークスルーできるよねみたいな議論になっていって、結局それを1回やってみるというケースが非常にやっぱり多くて。1回やってみたらね、それは1年2年で終わりませんから、3年4年5年とやるみたいなね、そういう時間が流れ、そして、やっぱり駄目でしたと、1%のシェアから脱却できませんということで、またふりだしに戻るんだけども。このときに失うものってね、やっぱりこの駄目だと分かっていてやってしまって失うことというのは、時間がやっぱりものすごく大きくて、あの5年前に、もしくは7年前にこういう手をちゃんと打っておけば、今勝ててなとかね、もっと言うと、あの15年前に、駄目だ、品質悪い、こんなんじゃ駄目だっていうアジアの企業、タイの食品メーカーもしくはインドネシアの食品メーカー、タイのなんとかメーカー、買ってたら、もっとこうなっていたなとか、結構、時間を無駄にするというケースはものすごく多くて。
やっぱり重要なのは、「自分には当てはまらない」というね、この思考をもう絶対に切り捨てないといけなくて。いや、当てはまるんですよね。もう確率論なので、こうしたら失敗するという失敗事例がたくさん今あるわけですよ。B2CでもB2Bでもね、新興国市場の日本の製造業の進出形態として、こういう傾向にいくともう失敗の確率がめちゃめちゃ上がりますよと、こうすると失敗ですよ、こうすると成功してますよというのがあるにもかかわらず、それを無視して「自分には当てはまらない。なぜならばわれわれの製品は特別だ」、これが僕の言う1P戦略なんですけど、この「自分には当てはまらない」、これは何て言うんですかね、人間というのはやっぱり最後自分の見たい姿、見たいものしか見ないんですよね。だから、脳が麻痺してきて、見たい、自分の見たい世界にガーッと入っていくというね。これがやっぱり非常にね、僕はたくさん事例を見てきたので、もう、「自分にも当てはまる」と、「思いきり当てはまる」というふうにしっかり捉えられるかどうかというのはすごく重要になりますので、ぜひ、「自分には当てはまらない」とは思わないでいただければなというふうに思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。