東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、そうしましたら、前回グローバルマーケティングを学ぼうっていう学問を、座学をするみたいな、であれば、戦略を持ちましょうということを言われていたんですけど、その辺から、ちょっと繰り返しになりますけども、もう少し詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。
森辺:結局、海外事業って戦略ありきだと思うんですよね。戦略って作ることの重要性と、作った戦略を実行していくってことの重要性がありますねと。結局、戦略は絵に描いた餅なので、目指したい姿じゃないですか。けど、この目指したい姿がないと、前には進まないんですよね。意識も統一されないし、明確な方向性も見えないし、目標の設定もされないので。この戦略ってのは数値と、その数値を達成するためのプロセスのいわゆる説明書じゃないですか。これがなくてなんとなくっていうことじゃないと思うんですよね。
今までの日系のお客さんに商品を売っていくっていうことであれば、恐らくなんとなく感覚値で、戦略チックな絵を描いて、そこにみんなでブワーッといけば、今まで何十年とやってきたことと変わらないからそれでいいんでしょうけど、海外で非日系から売り上げを上げるってことは、この戦略が非常に重要で。戦略を作るっていうのは、グローバルマーケティングを理解してなかったら客観的に見て、現実性のある、実現性の高い戦略なんて作れないんですよね。なので、グローバルマーケティングが重要だと言ってるだけで、マーケティングのいろはを学んで、僕はマーケティングに長けてます、なんていうお勉強チックなことは全く必要なくて。売り上げを上げる、利益を出すために必要なだけなんですよね。
だから整理すると、会社にとって一番大事なのは利益を上げることじゃないですか。利益を上げるためには明確な戦略がないとだめですよと。これが基準になりますから。目指すべき方向性。この戦略を作るためにグローバルマーケティングが重要ですよっていう、この3ステップみたいな感じですよね。
東:そしたら、そこまでは理解しました。じゃあ、今まで明確に戦略を持って海外進出してるところは、もうやってるってことですよね。そうすると、今困ってるところって、今までどちらかというと、なくはなかったけど、明確な、森辺さんが言われるような、利益を求めるための戦略ってのを考えたことがないとか、会社としてそうやらなくても儲かってきたから、必要性を感じなかったってところも、幸いにして日本企業は結構いい時代を過ごしてきたのもあって、そういったこともあると思うんですが。具体的に、戦略を考えてくださいって言ってもなかなか出てこないと思うんですけど、グローバルマーケティングが戦略になるっていうのが、具体的にそういった人たちが何をしていけばいいのか、っていうのはどういったことから始めればいいんでしょうかね。
森辺:戦略を作るときに、我々なんかもそうなんですけど、いきなり考えてポーンと生まれないじゃないですか。その戦略を作る前提となってるのは、知識と経験なんですよね。その人には絶対に負けない知識と経験が、戦略を生み出していくわけじゃないですか。この業種のこの業態のこの国のこの事業だったら、こうやるべきだっていうのを生み出していくわけですよね。それは長年の経験知見がそれを生み出すわけなんですけど。もちろんそれはそれで一つなんですけどね。
じゃあこれを、ほんとにお客さんを支援するときに、当然すべての国すべての産業すべてのなんとかにオールマイティなわけではないので、我々自身も情報を徹底的に集めるわけじゃないですか。その10年かけて集めてきた知識と経験に合わせて、数か月で狂ったように集める情報、これを掛け合わせて戦略を生み出すわけですよね。最初に言った10年かけて集めてきたものっていうのは、私には私のものがあって、企業も10年前から海外進出20年前からしてきた会社もあるんで、人は違っていようと会社の中にはナレッジがある程度あるわけですよね。それは一つ使えますと。ただやっぱり、この数カ月間狂ったように情報を集めるっていうことがすごく重要で、最新の、最先端の情報。この情報を分析することから戦略って生まれるわけじゃないですか。ここの精度が高ければ高いほど、実現性の高い戦略ってのが生まれるわけですよね。これが重要ですよって言っている話で。
面倒くさいこんなのって、とにかく戦うんだっていう話なんですけど。これはたとえが悪いかもしれないんですけど、第二次世界大戦に例えたいわけですよね。アメリカに戦争を仕掛けました、ただ事前にアメリカの軍事力をもっともっともっともっともーっと調べていた時に、結果が分かるわけですよね。そうすると、戦争をすることが得策か得策じゃないかって分かるわけじゃないですか。それと同じことなんですよね。
海外、言ったらビジネスは投資じゃないですか。いくら投資していくらリターン得るかっていう、ビジネスの根本ですよね。そうしたときに、そんなに凄まじい市場で、競合がすごいいっぱいいるんだったら、負けちゃうんだったら、出なかったらお金は減らないですからね。そっちのほうがいいわけじゃないですか。だからそういう防御をするっていう意味もすごく含まれていて。それだけ情報収集ってのがやっぱり重要で。
たとえば、一部上場の大手の企業さんでもお手伝いをするときに、IR出してるわけですよ、いろんな海外行く。えーって言うような目標数値を設定してたりだとか。一般の株主さんは素人ですから、そんなの見ても分かりませんから、アナリストじゃなければね。アナリストでも海外のことはよく分かってないでしょうから、企業がそう言えばそうなんだろうなってことで、それで通ってしまうのかもしれないですけど。事業計画なんか見せてもらっても、数字はきっちり立ててあるんですよ、当然、予算を振り分けたりしますから。ただ、これどう考えても現実的じゃないでしょうって戦略をたくさん見てきているので。その根本はやっぱり情報収集力の低さ、ここで躓くと、すごい変な方向行っちゃうんですよね。だからそこは基本中の基本だと思いますからね。
東:じゃあ具体的に情報収集っていうと、意外と幅が広くて、何を、何の情報を取集したらいいのっていう声も聞こえてきそうなんですけど。簡単に、いろんな情報の収集の仕方があると思うんですけど、簡単に、初心者じゃないですけど、できるような情報収集って具体的にどういったことがあるんですかね。
森辺:基本的には4つの情報を集めるんですよね。これが自社が実際に海外で戦いうる戦闘能力があるのかないのかっていうことを、より客観的に相対比較して見ていくっていう。これは自社でできますよね。やろうと思えば。客観的に判断してもらうってのは外部から見てもらわないといけないかもしれないですけど、一つはそこですよね。
そこはまあ置いといたとして、次に言う3つのやっぱり情報収集ってのはすごく重要で。対象となる市場、マーケットの情報を多角的にとっていくってことが一つですよね。対象となる市場に存在する競合に関する情報をとっていくってことが二つ目ですよね。対象となる市場の流通構造がどうなっているのか。これを多角的にとっていくっていうことは非常に重要で、この3つの情報を収集するんですよね。
今、東ちゃんが言った、情報をどうやって収集するのかって、これ市場の情報をとるっていうのは、例えばB to Bでも産業別のレポートが打ってたりとか、デスクリサーチでいろんな統計データがあるわけじゃないですか。それを捏ねくりまわせば、ハイレベルな、我々がやるような分析まではいかなくても、ローからミドルくらいの、情報収集と分析はできるんで。言ったら、それぐらいでも何とかなるっていえば何とかなる。ただ、競合と流通の情報の収集っていうのは、やっぱり専門職なんで、社内でどうこうできる話じゃないんですよね。誰かに聞きましたとか、ネットに書いてありましたとか、そういう話ではないので、それは我々のような会社にお願いをするしかないんじゃないかなっと僕は思うんですけどね。
我々も調査屋さんじゃないので、調査の成果というよりかは、その調査をしたことで得たものからどんな戦略を生み出せるかっていうところに我々の最大の価値があると思うんですよね。なので、そんなことだと思うんですよね。
東:じゃあ、市場環境については、ある程度、日本語だけじゃなくて英語のサイトとかを検索すれば、ある程度のレベルまではできると。
森辺:たとえば我々がお客さんから依頼されて提案書を作るときに、まだ予算が取れていない提案の段階で自腹を切って調査をするってことはできないじゃないですか。そうするとデスクリサーチということをやって、その市場の全体像をなんとなくあぶり出しますもんね、それはできるんでね。これは一般の企業さんでも社内でやれば、ハイレベルにはならないかもしれないけど、できるんじゃないかと思いますね。
東:今、森辺さんが言った、全体像が見えるかどうかってのは結構大きいと思うんですけど、日本企業がいろいろ見ていて思うのは、意外と自分が見えるところだけが全てみたいな形で、全体像を開いてみると部分最適だったと。でも欧米の企業ってそこを全体像はきちんと開いて、全体最適な戦略をとる。この2つの戦略って、最初は同じかもしれないけど、どっかで差が大きく開いてしまうと思うんですけど、その辺ってどうなんですかね。
森辺:まさにその通りだと思います。日本の企業は部分最適、グローバルで成功している企業はやっぱり全体最適がしっかりしているので、途中で大きく開きが出ちゃうってのはまさにそこですよね。
東:グローバルの調査会社のTOP10ってもう、結局インテージさんはBEST8か、7、8、9あたりに入ってますけど、他ってすべて欧米系じゃないですか。
森辺:消費者調査ですよね。インテージなんかはね。
東:欧米系は、調査にそれだけ投資をしているっていうような現れだと思うんですけど、その辺はやっぱりそういう投資を日本企業と比べた場合、どうなんですかね。
森辺:その通りだと思います。調査会社の規模が欧米に寄ってる、イギリスと米国、このあたりが多いんですけど。調査も消費者系の調査と、産業系の調査っていわれる我々が今やってる競合とか流通の調査っていう2タイプあるんですけどね。消費者系の調査がやっぱり大きいですよね。結構ここは調査のデータを見て自分たちで消費財メーカーさんなんかを分析してっていうことをやるんですよ。B to B の場合、重要なのって産業系のほうの調査で消費者関係ないんで、競合がどうだとか流通がどうだみたいな。結局これもこうでしたっていう事実を見せられてもあまり意味がなくて、その事実を元にどんな提言ができますか、その提言に対してコミットして支援ができますかっていうことが我々に求められているわけじゃないですか。
だから、調査って所詮調査なんですよ。ただ、されど調査みたいな。我々も戦略を作るために調査をしているっていうところがあるじゃないですか。だから、所詮は調査なんだけど、それがないと何も進まないっていう。そういうイメージですかね。調査も経験値なんでね。経験値のない人が調査をすると、とんでもないアウトプットになったりっていうケースもあるので、これもピンキリですよね。
東:B to B も、その調査を含めて、グローバルマーケティングをきちんとやっていかないと、なかなか難しくなってくるんじゃないかっていう。
森辺:そうですね。なってきているし、すでに気づいている企業では、B to B でも、そこに投資をしっかりしてますよね。そこがないと、いいパートナーを!とか、コネが!とかっていう海外進出やめませんかっていうのがB to B に今、求められていることじゃないですかね。あと、親会社についていきます!だとかそういう事業はもういいんじゃないのかなっていう時代にもう来てる気がしますけどね。
東:じゃあ、ちょっともう時間が来てるんですけども、最後に、我々も今結構、消費財メーカーがメインではありますけど、最近やっぱB to B の問い合わせも増えてきてますけど、そのB to B の今のお客さんに対して、森辺さんがグローバルマーケティングの重要性を少しまとめていただくとしたら、簡単に最後に一言お願いしたいんですけども。
森辺:「強固なチャネルを作りましょう」っていう、ここに尽きると思います。このチャネルは、戦略がベースにないといけないので、中長期で戦略を描いて、その戦略に伴ったチャネルをデザインしていく。そこをマネージしてコミュニケーションをとっていく、っていうここに尽きると思います。
東:わかりました。じゃあ、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。