アジア新興国事業の本当の敵は内にいる ― 経験者が改革を止めるジレンマ
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この放送の要点
- 次の成長段階へ進む際、現地法人の経験者による抵抗が半分の確率で起きる。
- 「あれもこれもやったが駄目だった」の裏に、未知の打ち手はほぼない。
- 同じ施策でも、いつ誰がどう実行したかで結果は大きく変わる。
- 伝統小売の配荷は設計の問題。競合が30店回る中で15店では差がつく。
アジア新興国市場で一定の成果を出した後、さらに成長させる段階で最大の障害になるのが、「あれもこれもやったが駄目だった」という社内の経験者の抵抗です。実際には未知の打ち手が眠っていることはほとんどなく、同じ施策でも誰がいつどう実行したかで結果は大きく変わります。過去の施策を分解し、やり方の精度を検証することが突破口になります。
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。前回まで明治大学の名誉教授の大石芳裕先生にゲストとしてお越しいただいて、いろんな話を4回にわたってさせていただきました。その中で、売上が鈍化する企業は課題となる要因は中にあるんですよと、ちょっと過激な表現ですけども、「本当の敵は内にいる」というようなお話をさせていただいたと思うんですが、それが非常に反響が大きくて。YouTubeのほうでも同じような話をしたんですけど、それもやっぱり反響が大きくて。いや、「うちのことかな」と、「うちもそうなんだ」ということで結構やっぱりいろんな企業で同じような状況であるというケースがあるので、今日は改めてその話をもう1回しようかなというふうに思っています。アジア新興国市場に展開をして、ある一定のところまで来ましたと、売上なりシェアなり。そこからさらに成長をさせていかないといけないステージというのが今までも何回かあったし、ここに来て本当にそれがレベルの高い戦いになってきている、本当の意味でさらに次の成長のステージという企業が多いんじゃないかなと。そんな中で、やっぱりコンサルタントという立場で本社から命(めい)を受けて現法に入って、客観的に組織とか今の現状とかを見ていく。そうすると、やっぱり前に進めない状況が中にあるというのは非常に多くてね。これは例えば長くその地域を担当している人、これは長ければ長いほどノウハウが中に蓄積されていって、それが個に結び付いてしまっていて、組織に落ちてないのでそれが問題だみたいな話は過去にしたと思うんですよね。だから、長く人がいるところはうまくいっていて、長く人がいないところはうまくいってないみたいな、そういう話は過去にしたと思いますけど。それと真逆の状態なんだけども、もう結構紙一重で。結局、長くいるので、「自分たちはあれもやったし、これもやったし、それもやった。でも、駄目だったんです」ということが頭に完全にこびりついてしまっているので、それを例えば誰かが、例えば本社がとか、それから本社が雇ったコンサルがそんなことを言おうものなら、かなりのトーンで抵抗が入るというのは、これは結構よくパターンで、確率的に半分ぐらいのパターンであるんですよね。現地法人の気持ちも分かりますよね。自分たちの仕事を否定されているようなかたちになるので、「あれもやった。これもやった。それもやった。でも、駄目だったんです」と。でも、結局、「あれもやった。これもやった。それもやった。でも、これはやっていませんよね」というようなウルトラCが出てくるようなね、そんな魔法のような選択肢が別にあるなんていうことはほぼないんですよ、「ああ、これには気づかなかった」なんていうことは。だって、日本の企業は優秀ですし、そこで働いている本社のメンバー、現地のメンバー、みんな優秀なので、だいたいやるべきことというのはもうテーブルの上に上がっているんですよね。「これ、なかったじゃん。上げてないじゃん」なんていうことはなくて。おおよそ上がっていてトライもしているんだけども、結局、どの時期に誰がどういうふうにそれをトライしたのかによって成功するかしないかって大きく変わってくるんですよね。だから、ほとんど今までお客さんの課題を解決した答えって、過去にお客さんが自分たちでやってみたけど駄目だったっていうことをわれわれがもう1回やってブレークスルーするケースが大半なんですよね。われわれが入ったことで、「ウルトラC、新しい方法を」なんていうことはなくて。でも、それは当然ですよね。誰が…。同じようにね、例えば伝統小売の配荷を増やそうと、日用消費財でね、FMCG、食品・飲料・菓子・日用品で伝統小売の配荷を伸ばそうと考えたときに、例えばディストリビューション・ネットワーク、今のディストリビューション・ネットワークじゃどう考えても配荷できないものを配荷できるネットワークにつくり直すとか、それってもう設計じゃないですか。そもそも設計思想がない中で、とにかく回れということでやっていたけども、実はもう設計なんですという。設計そのものがなかったから、設計したらうまくいったとか。
あと、回っているんです、回っているです、伝統小売、回っているんですと言っているんだけども、じゃあ、1日に何店舗回っているんですかと。競合が30店舗回っているのに、あなたたちは15店舗しか回ってないじゃないですかとか。あと、回っていると言ったって、月に何回オーナーに会えていますかとか。回っていると言ったって、現場でSKUの確認とか、自分たちの商品の置かれている場所とか、そういうものに対してオーナーと話せていますかと。話せていません。だから、同じ回っている。確かにやったんだと、回ったんだと。でも、駄目だった。でも、回り方1つで駄目になるのか、良くなるのかって、全然違うんですよね。そういう大きな違いがあるんだけども、結局、長くいる人が「いや、それもやったけど、これもやったけど、駄目だったんだ」って言われたら、これは本社の支援、メーカーの本社の支援するチームもやっぱりもうそこで何も言えなくなってしまう。だって、自分たちは見てないのでね、現場からそういうふうに言われたら、やっぱり「ん…」となってしまう。でも、「何か現場が言っていることはおかしいよね」と思うので、われわれのようなところにたぶん相談をされるんだと思うんですけど、そういうケースって本当にやっぱりあって。これもね、さっき5割の確率でそういうことがあるって言いましたけど、やっぱり謙虚な、性格の良いと言ったらあれですけど、人、社風、そういう会社は素直なので、「前にこういうふうにやったんだけど、自分たちはここがやりきれてなかったから、じゃあ、今度こうかな、ああかな」という前向きな議論ができるんだけども、その議論をするタイミングでもう自分たちの否定される意識が強くて、なかなか前に進まないというね。強引に進めてしまうんですけどね。でも、やっぱりそういうことというのは多いですよね。実際に「あれもやった。これもやった。それもやった」ということを分解していくと、「いや、その方法じゃやったって無理ですよね」とか、「その方法じゃ全然駄目ですよね」とかっていうことを整理をしていく、そういうのはやっぱりすごく重要だなというふうに思いますね。
ちょっとここで時間が来てしまったので、次回この続き、3つぐらいあるんですよ、中の敵ってどこにいるかというと、1つはいわゆるその事業を長く担当している人、多くの場合は現地の駐在員が敵になってしまっているというケースもあるし、あと、ナショナルスタッフというのも1つあって、ディストリビューターというのももう1つあるので、過去のわれわれのね、僕の経験の中でお話をするので、すべての皆さんに当てはまっているかどうかはあれですけど、反響が大きかったので、たぶんそういうケースもあるんじゃないかなと思います。次回、ナショナルスタッフがどういうふうに敵になるのかということについてお話をしていきたいと思います。
それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。



