【特別対談】明治大学 経営学部 原田 将 教授と語る – ブランド価値経営とグローバル市場 その1
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この放送の要点
- 日本企業はコスパ評価に比べ、ブランドへの誇りや愛着に課題を抱える。
- マツダや消費財企業は、収益力向上を目指してブランド価値経営に取り組む。
- 好き・愛着・推奨といったつながりが継続購入と顧客の維持を支える。
- マツダではブランド価値経営の導入後、顧客の購買単価が50万円以上上がった。
日本企業のブランド価値経営について話す回です。明治大学の原田将教授が、コスパだけでは生まれにくい愛着や誇りと収益力の関係を説明。マツダや消費財企業を例に、規模の追求よりも選ばれ続けるつながりを築く重要性を語ります。
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日は、久々に、なのかな、久々に大物ゲストを呼んでおります。明治大学の原田 将教授を番組にお招きしております。原田先生、どうぞよろしくお願いいたします。
原田将先生(以下、原田):よろしくお願いします。
森辺:原田先生はブランド価値経営の権威で、うちの2025年の『SPYDER Global Marketing Conference』でも登壇いただいて、今日は日本企業のブランド価値経営みたいなところにちょっとフォーカスをして、原田先生にいろいろと質問をしてみたいなというふうに思っておりますので、皆さん楽しみにしていてください。
原田先生、すみません、今日から4回かな、5回か、ちょっと何回になるかあれですけど、お付き合いをいただければと思います。まず、今日の1つ目のテーマなんですけど、原田先生をお招きしたからには、日本企業のブランド価値経営みたいなところの話をすごく深く聞いていきたいなと思っていて。これ、私もいろんな日本の企業のご支援をしながら、欧米の先進的なグローバル企業とかローカルの企業と比較していくと、いかに日本企業のブランドづくりが苦手というような、そんな印象を持たざるを得ないんですけども、この辺のことについて先生のお考えをお聞かせいただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。
原田:ありがとうございます。私は1998年に大学院に入ったんですけれども、実はそのときからずっとブランドの研究をしていました。
森辺:そうだ。先生のちょっと自己紹介、簡単にしてもらったほうがいいですよね。番組を聞いている人、たぶんおそらくほとんど知っている、原田先生のこと知っているとは思うんですけど、すみません、簡単に。
原田:原田 将と申します。現在、明治大学経営学部でマーケティングを教えております。私の専門はブランド管理、マネジメントのほうが専門でして、どういうふうな戦略だとか組織をつくっていけばブランド価値が上がっていくのかということを、30年ぐらい研究をしております。このSPYDER INITIATIVEのこのPodcastにすでに出演されている大石先生のもとでずっと指導を受けておりまして、その関係もありまして、グローバルな観点でもブランド価値をどうやって高めていくのかということについて研究しています。
先ほどの話になりますと、90年代後半は、実務でもアカデミックでも、ブランドというものに対する関心は世界的に高かったんですけれども、実は日本企業はブランドづくり、ブランド価値が高くないというのは、もうすでに80年代から指摘されていた点でありまして。1988年にダーリングとアーノルドという人たちが、ヨーロッパで、日本、アメリカ、当時ですので西ドイツ、イギリス、フランスの製品に対する消費者評価というのの調査があるんですね。それは1975年、80年、85年という経時的な調査になるんですけれども、その結果分かったことというのは、日本企業の製品だとかブランドの評価で、コスパはすごいいいと。でも、日本企業のブランドを持つことに対して誇りを持てるだとか、自慢ができるだとか、そういうところは弱いっていう結果が出ていて。つまり、コスパはいいけれども、要は同じようなかたちでコスパがいい商品が出てきた場合、そのブランドに対するつながりとかがないので、すぐにスイッチされてしまうと。これは、だから、今、日本企業で起きている問題というよりかは、もうずっと構造的な問題として、日本企業の本質的な課題として、しかもこれはグローバルな調査なので、要はグローバルなマーケティングの課題として日本企業にずっと突きつけられてきた課題なのではないかなというふうに私は考えてます。
森辺:そうですね。これ、何にでも当てはまりますよね。インダストリー。
原田:そうですね。
森辺:何をつくっててもね。
原田:そうですね。
森辺:ペンだろうが、菓子だろうが、車だろうが、部品だろうが、B2B、B2C問わず、何にでも当てはまりますよね。
原田:私はそう思ってますね。だから、研究のほうでも、2000年ぐらいのとき、ぐらいというのは、ブランド価値を高めると何がプラスになるのかということに関してあまり明確な議論がされていなかったような気がしてて、当時、経済産業省が、日本企業に対する調査があるんですけれども、売上高が上がることを期待してブランド管理をしていますって回答した企業が多かったんですね。でも、おそらく売上高を上げるために、じゃあ、その自社のブランド価値を高めようとしたら、例えばもうとにかく数を売りたいだとかいうようなかたちで戦略を組んでしまったり、例えば営業なんていうのはとにかく数、ボリュームを出さなきゃいけないということに焦点を当てて戦略を考えたりすると思うので、たくさん売れるかもしれないけれども、あんまり実は収益は上がってないというような状況が起きているのではないかと。そういったところに問題意識を感じた企業が、例えば自動車で言えばマツダさんだとか、あとは消費財で言うとエステーさんとかもブランド価値経営という言葉を全面に出して、2010年ぐらいに取り組んでたんですけれども。ほかにもいろんな消費財、花王さんだとか、ライオンさんだとか、味の素さんだとかもそうなんですけれども。そういう企業は何を目的にブランド価値を高めようとしたかって言ったら、収益力の向上だったっていうことを考えると、ブランド価値に対する考え方が、ブランド価値を高めることに対する企業側の期待というか、意図が、もう明確に収益力を向上させようと。それが今、日本企業に突き付けられている課題とももう非常にオーバーラップしているので、このブランド価値経営というのが非常に今、注目されているのではないかなというふうに私自身思っています。
森辺:このブランド価値とかっていうと、ブランド品のものだけが重要なのかなって思うけど、一見ね、一見すると。でも、鉛筆1つ取ったってたぶんすごい重要で、例えばユニクロのシャツを着ていても、それって何も気にしないんでそれを着ている、妻から与えられるので着るという人もいるんでしょうけど、でも、それでもそれを着てる中で、自分がこのユニクロのシャツを着ている、この、このことが結構好きっていう、そこに結構僕は誇りを持っているみたいな人がいるので、ユニクロのシャツを着ているとかっていうこともたぶんあると思うし。何て言うんですかね、さっき言ってたコスパはいいって、確かに品質対比で見たときのコストとか機能対比で見たときのコストはいいんだけども、これを着ていることに誇りを持つってすごい重要ですよね、使うこと。
原田:例えば誇りを持つだとか、好きだとか。
森辺:好き。誇りまでいかなくてもね、好きってことですよね。
原田:うん、そうです。例えばユニクロのこういうところが好きだとか、それで愛着を持っているだとか、それがどんどん進んでいくと、要は「ユニクロっていいよ」って周りの人に勧め始めるっていう。だから、企業がブランド管理の成果指標としてNPSを使うというのはそういったところもあるでしょうし。そういったものが伴ってくると、要は競合企業が同じようなコスパで出したとしても、もしくはコスパが少々優れていたとしても、なかなかスイッチが起きないっていう。そうなると、安定的に、しかも継続的にお客さんを確保できると。
森辺:確保できますね。
原田:場合によっては、値段を上げたとしても、しっかり価値を判断、理解、共感してくれて分かってくれれば、お客さんは離脱せずに買ってくれるという意味で。
森辺:そうですよね。
原田:どうブランドとのつながりをつくっていくのかということが、非常に収益性の確保という意味で重要なことなのではないかなと思ってます。
森辺:結局、商売って、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかにできるだけ多く永遠に買い続けてもらうかみたいなのが、特にB2Cになればなるほどそうだし、B2Bでもそういう話なので、そのときにいかに買い続ける力になるかっていうのがブランドが好きっていうことなわけですもんね。
原田:だから、たぶん順番があるんだと思うんですけれども、ブランドが好きになってもらって、買い続けてもらう人が徐々に増えていけば、売上だとかの規模とかも上がっていくと思うんですけど、最初に売上だとか規模を追求してしまうと、市場が成長しているときはいいんでしょうけれども、市場の成長が止まっていたりする中で、要は規模を第一優先で追及していくと、収益性というのはついてこない場合が出てくる。
森辺:そうですよね、そうですよね。
原田:だから、少し視点を変える必要があるのではないかなというふうに思ってます。
森辺:そうですよね。好きだと、単価が少々上がっても買いますよね。
原田:だから、マツダはブランド価値経営を導入してから、お客さんの購買単価が50万円以上上がったんですよね。つまり、2013年からブランド価値経営というものを標榜してマーケティングを始めるんですけれども、当時のお客さんがマツダに払ってもいいと思っている金額が、2022年だったかな、あのデータは、と比べると、50万円違うということが。マツダに対して、要はファンが増えた、もしくはマツダだったらこれぐらい払ってもいいやって思える人が増えたということなので。
森辺:そうですよね。ちょっと前までの、今が別に悪いと言っているわけじゃないですけど、マツダが、どれぐらいかな、5年、10年ぐらい前ぐらいに、ちょっとマツダがかっこよくなってきた、CMとかがね。
原田:そうですね。
森辺:ヨーロッパの車かみたいな時期あったじゃないですか。
原田:ありますね。
森辺:たぶんその時期のあれなのかな、今の調査結果なのか。
原田:そうですね。
森辺:すごいかっこいいな、マツダってこんなかっこよかったっけっていうような。3、5とか、なんか。
原田:そうです、そうです。
森辺:そういうシリーズで出てきたときでしたっけ。
原田:はい。
森辺:そうですよね。だから、このブランドって本当に重要だなと思って。
いいお話の途中であれなんですけど、ちょっと時間が今日来てしまったので、この続きを、先生、次回もさらに深堀っていきたいと思いますので。
原田:分かりました。
森辺:すみません。今日はこれぐらいにしますけど、また次回よろしくお願いいたします。
原田:いえ、こちらこそ。ありがとうございました。
森辺:それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。



