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ポッドキャスト:森辺一樹のグローバル・マーケティング

【特別対談】明治大学 経営学部 原田 将 教授と語る – ブランド価値経営とグローバル市場 その2

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この放送の要点

  • 消費者の悩みを理解し、技術や製品がどう解決できるかを伝える。
  • チャネル選択や売り場の訴求を含む全社活動でブランドをつくる。
  • 従業員が価値と役割を理解し、誇りを持つインターナル・ブランディングが重要となる。
  • ブランド価値の観点から理念・組織文化・経営戦略を再設計する。

全社でブランド価値を高める取組について話す回です。原田将教授が、消費者理解とチャネルや売り場を含む活動の連携を解説。従業員が価値と役割を理解して誇りを持ち、理念や組織文化まで含めて経営を再設計する重要性を語ります。

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDER INITIATIVEの森辺です。今日も引き続き、明治大学の原田 将先生に来ていただいております。引き続き、日本企業のブランド価値経営、ブランド管理についてお話を伺っていきたいと思います。
原田先生、どうぞよろしくお願いいたします。

原田将先生(以下、原田):よろしくお願いいたします。

森辺:前回の続きで、ブランドってすごい重要ですよね、企業にとってというお話をさせていただいていたと思うんですけど、このブランドって、B2Cの企業もB2Bの企業にとっても重要で、これ、日本企業はそんなにうまくないんじゃないかという一面も、僕はあるもののね、ここ最近、上手いよねっていうような一面もあったり、結果としてうまくできているとかっていう一面もあったりしてて、でも、まだまだ高められると思っていて。ブランド価値を高めることで企業がどのように収益を上げていったって前回もお話がありましたけども、何ですかね、何が下手で何が上手いんですかね。その辺をちょっと整理というか、何かお話お聞きできたらと思うんですけど、先生、どう思いますか? 上手い下手。

原田:下手っていう言い方をしたらちょっと語弊はあるかもしれないんですけれども、ちょっと苦戦しているところの多くは、まず大前提として、まず自分たちは消費者を理解していると思っている、技術だとか製品が良ければ、それだけでブランド価値は上がると思っているって思っている企業はちょっと苦戦しているような印象があります。というのも、自分たち、例えば「消費者はこう思っているから、こういう商品を出しているんですよね」とかっておっしゃられたりするんですけど、「本当にそうですか」って聞いてみると、例えば消費者は全然違うところを気にしていたり、やっぱりまったく自分たちが想定していることとは違うような消費者の行動があったりだとかするので、まずそういったことをしっかり理解した上で、自分たちが持っている技術だったり製品とかサービスがどう消費者の悩み事を解決できるのかっていうようなかたちでアプローチをしていかないと、なかなか消費者の中でそのブランドに対する絆のようなものは生まれないのかなっていうふうに思います。

森辺:そうですよね。

原田:そこがまず第1点と。2点目が、要はブランドをつくっていくときに、製品、サービスはもちろん中心になるんですけれども、それだけではブランドはできなくて、それをどういうかたちで伝えるのかっていうようなところが非常に重要になってくると。例えば、じゃあ、良いものをつくって、広告を打って、それでブランドできますかってなると、そうではなくて、例えば適切な流通チャネルを選択する、例えば売り場での訴求ポイントも明確に消費者に伝わるようにするっていうような、トータルな活動で考えないと。

森辺:そうですね。

原田:要はブランドというのはできないと。

森辺:できないですね。

原田:ですので、このときにやはり組織の問題が出てきて、どうしても縦割り型の組織になっている中で、どういうかたちでブランドという横串をうまく刺せるのかっていう。

森辺:刺すかっていうね。

原田:この仕組みづくりも同時に課題になってくるっていう。

森辺:なるほど。そうですよね。そこすごい重要。今言った、小手先のCMで消費者に見せるというところのブランドなんて、もう本当小手先の話であって、インサイトによってそれはどう捉えられるか分からないから。欧米系は結構上手いとは思うんですけど。それもそうですけど、先生が今おっしゃったような横串なんですけど、極端な話で言うと、ちょっと話が飛びすぎてしまうかもしれないですけど、工場の工員の人たちが着ているユニフォーム、これがかっこいいか古汚いかで、そこでつくっている車なのか、家電なのか、製品のブランドも僕は大きく変わると思っていて。例えばね、フェラーリの工場の工員の人たちが着ている赤と白のユニフォーム、あれは見せているんだと思うんですよ、フェラーリ社のブランディングなんだと思うんですけど、工場がめちゃめちゃきれいで、工場がかっこいいんですよね。あと、スイスの時計ブランドって、まさにこの辺ってブランドの最たる企業じゃないですか。彼らの工房、これのまた時計マニアをそそる見せ方、それから、本当に横串って、全部に刺さないといけないし、もっと言うと従業員1人1人の心構え。

原田:そうですね。

森辺:自分たちはこの会社にこんな誇りを持っていて、こんなかっこいいんだよと。それがあるから、自分たちの立ち振る舞いが変わるわけじゃないですか。なんか、めちゃめちゃ嫌なやつがいて、そいつがその会社に勤めていたら、僕、その商品買いたくないなと思ってしまうのでね、そういうのってすごい重要だなと思うんですよね。

原田:森辺さん、森辺社長がおっしゃる通りで、そこはインターナル・ブランディングっていう分野になってくるんですけれども、結局やはり従業員が、全部の従業員が、どこまで自分たちのブランド価値を理解して、それを最終消費者にどう伝えるのか、その役割も自分で認識しながら誇りを持って活動するかによって、やはりブランド価値の向上だとかに影響するというような研究がたくさんあります。

森辺:そうですよね。

原田:だから、マーケティング部だけがブランディングを考えてもダメで、それはもちろん生産の人たちもそうですし、開発の人たちもそうですし、営業の人たちもブランドという観点から、それぞれに与えられた役割をどう考えるかということは非常に重要だというふうには思っています。

森辺:めちゃめちゃ、そう考えると深いですよね。身内がそう思っていないものを、社内がそう思っていないものを、社外にそう思えって、たぶん無理ですよね。

原田:無理ですね。

森辺:だから、結構このブランディングって、会社のフィロソフィーとか理念とか、そういうことにめちゃめちゃ直結してくるというか、なんかそういうことですよね。

原田:だから、私はブランド価値経営、価値経営っていう言葉がいいなと思っていて、たぶんブランドをつくるって、マーケティングの戦略ではなくて、経営そのものだと思ってて。

森辺:そうですね。

原田:ブランド価値の観点から経営戦略をもう1回再構築していく、再設計していくという、このプロセスがブランド価値経営だというふうに思ってますし。そうしないと、ブランド価値は上がっていかない。だから、前回お話したように、規模を追求する会社はそういうたぶんビジネスモデルで、それに強みがあればそれでいいと思うんですけれども。ブランド価値を高めて収益を上げていこうという会社はちょっと違うビジネスモデルというか、ビジネスに対する考え方が必要で、そうなったときに先ほど言いましたような横串の話だとか、全員が理解して誇りを持つだとかという話が重要になってくるんだというふうに私は認識しています。

森辺:めちゃめちゃ深い話ですよね、だから、ブランド価値経営って。

原田:私はもう、うん。

森辺:とてもとても深い、経営そのものというか、理念みたいなところにもう直結してきますよね。

原田:理念もそうですし、組織文化もそうですし、もちろん戦略もそうですし、もういろんなところに影響してくると思ってます。

森辺:その血液がちゃんとすべての部門に流れているから、初めてそのブランドは成り立つという話で。

原田:そうです。

森辺:そうじゃないと成り立たないですもんね。だって、本当にね、ブランド力トップ20とか、世界のブランド力トップ20の企業とかの人たちと話すと、どうでもいいことをめちゃめちゃ一生懸命説明してくれるんですよ。最初ね、僕はその企業を知らないから、めちゃめちゃ一生懸命説明してくれるんですけど、聞いてるうちに自分もそれに洗脳されていくというか、飲み込まれていって、それを他人に、「このブランドってね、このメーカーってね、こうなんだよ」って話している自分がいるみたいな、なんかその力って恐ろしいなというか、布教活動みたいなものですよね。

原田:そうですね。

森辺:キリスト教の布教活動の現代版みたいな、そういうことなんだろうなっていう気がすごくしますね。

原田:だから、社内で他の従業員に対してブランド価値を伝える人のことを、ブランド・エバンジェリストっていう言い方をするんですよね。伝道師っていう。まさに布教活動そのものであって、やっぱり自分たちが何を理想とするのか、何を目指すのかっていうようなところを、社外もそうだけれども、まず社内の人たちにも伝えていくっていう。

森辺:まず社内ですよね。いや、本当にそうだな。自分たちが、仮に鉛筆つくっていても、仮に自動車つくっていても、ロケットつくっていても、何でも、この鉛筆1本に何を思っていて、なんでこうなっていてみたいなところがちゃんとあるから誇りが持てて、僕はもうこの鉛筆が好きみたいな、それを買っていくわけですもんね。三菱鉛筆が好きとか、uniの鉛筆が好きとか、分からないですけど、BiCが好きとか、いろいろあるんだと思うんですけど。そう考えると、ブランド価値って深いなっていうのと。
あと、ちょっとプロモーション寄りというか、前線の話で言うと、CM、ATL、BTLバンバン打ってブランドを訴求するっていうこともそうなんだけども、一方でチャネルが整備されていて、売り場に置かれていることがブランドをつくるということにもなり得るので、本当にいろんなシーンでブランドって影響してくるんだなという気がしました。

原田:企業の人たちと話す中で最近よく出てくる言葉が、「志」っていう言葉がよく出てくるんですよね。「その志が何なのか」だとか、「志を共有しよう」って、まさにブランドがどういう方向に向いているのかということを共有しようという言葉だと思うんですけれども。最近よく「志」という言葉を使ってそれを説明される方が多くて、まさにそうだなと。何を、どの方向に向かって自分たちは行こうとしているのか、それに共感する人たちに製品だとかサービスを購入していただきたいということなんだろうなっていうことだと思うんですよね。それって、いろんなポイントで消費者に伝えることはできるんですけれども、やっぱり適切なチャネルで、適切な場所に、適切なかたちで置けるかどうかっていう。(置ける)かどうかによって、せっかく広告だとかでたくさんお金を使ったものが、やっぱり生きるか生きないかってそこだと思うんですよね。ブランドとチャネルって、あまりアカデミックにはそこまでたくさんの研究はないんですけれども、個人的には、大石先生と長年調査している中で、チャネルがブランド価値を決定しているんじゃないかと、チャネルの戦略の成否がブランド価値を上げたり下げたりしているんじゃないかということを、最近は仮説を持ちながら、われわれは調査しているというような感じですね。

森辺:関連性は非常に強いでしょうね。われわれもチャネルの専門として現場に行きますけど、やっぱりブランドの仕事ってそんなにわれわれはないんだけども、やっぱりチャネルとブランドの関係性が非常に強いことは現場で感じますのでね。

原田:だから、ブランド価値管理が上手い企業の1つの特徴としては、マーケティング部門以外の人がそのブランド価値だとかブランド戦略に対する理解度だとか解像度が高い。つまり、例えば営業の人がそれを理解した上で営業活動を行っているだとかというのは1つブランド価値が高い企業に共通する点なのかなというふうに思ってますね。

森辺:いや、ブランド、重要だわ。ここの会議室にモニターありますけど、これはソニーなんですよね。僕、幼少期に海外にいて、そのときにアメリカのヒップホップの黒人の人とかが「夢はソニーのトリニトロン」って、昔は「トリニトロンの大きいテレビを持つことだ」みたいなことを言ったりとかしてて、80年代だったかな、90年代前半じゃないな、80年代の後半ぐらいだと思うんですけど、こんな日本が、ソニーってこんな白人の社会でこんなすごいんだって。あと、ウォークマンのね。

原田:そうですね。

森辺:全盛期に、あまりにもソニーのすごいことが、自分が日本人っていうこととソニーが日本企業っていうことを重ねてしまって、海外で。ソニーに頭を洗脳されて、ブランド力がガーンと入ってしまって、そこからずっと、中国のTCLとかのテレビ、いいわけですよ、全然安いのに。なのに、会議室もソニーのテレビにしてしまうとか。あと、この間、つい1、2カ月前にテレビ買ったんですよね。有楽町のヨドバシカメラかな、ビックカメラかな、行って買ったときに、中国製の安いやつ、10万円ぐらいで買えるんですね、今ね、65、75。それを僕はソニーの65インチの何とかスピーカーシステムのセット、65万円もして。

原田:(笑)

森辺:いや、さすがにと思ったんだけど、そのときにソニーに対する忠誠をね。僕、ソニーなんか別にお客さんでもないし、何のあれもないんですよ。ただ、子どものときの脳ミソにインプットされてしまったことが、やっぱりソニーをまた選んでしまったっていうあれで。満足しているんですけど。最新のソニーのテレビを買ってしまったというね。
すみません、くだらない話で今日は時間が来てしまいましたが、次回もまた先生に引き続きお付き合いをいただければと思います。

原田:よろしくお願いします。

森辺:それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。

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