東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、ちょっとご案内があるそうですが。
森辺:はい、FacebookとTwitterがんばって更新しております。皆さんぜひフォローしてください。以上です。
東:どんな情報を流しているんですか。
森辺:海外に出張に行った時の面白く感じたこととかですね、あといろんな海外ニュースなんかを私なりの視点で流したりしてますんで、ぜひ聞いてみていただければなと。
東:最近だといま森辺さんのを見たんですけど、ぬいぐるみを被ったおじさんと映ってましたけど。
森辺:これはですね、海外あんまり関係ないのかもしれないんですけど、一橋大学の米倉先生とですね、象牙反対運動に参加をして、その時の写真が上がってますけど、たまに変なプライベートなことも上がっちゃってるんですけど、そこは無視していただいて。いろんな弊社の活動を上げていますんで、ぜひ友達をいっぱい増やせればと思っておりますので、よろしくお願いします。
東:はい、じゃあ番組の方に入りたいと思います。前回、MTはショウウインドウなので、TTのトラディショナルトレードとか伝統小売っていうところをP&Gさんは重要視してますよと。その中で間口を広げるっていう話があったと思うんですけども、具体的に日本企業さんもしくはリスナーさんがそれをやってる人もいると思うし、これからやろうとしてる人もいると思うんですけど、森辺さんの視点からどうやって間口を、間口を広げるって言葉でいうと簡単だと思うんですけど結構大変だと思うんですよね。それをちょっとリスナーさんにも共有してもらえたらと思うんですけど。
森辺:まず、なぜ間口を広げなきゃいけないのかっていうところの話からなんですけどね、そもそもその近代小売りの間口って、そもそものその近代小売りの比率が少ないので、間口の横の軸っていうのは狭いわけですよね。数千店舗とか、インドネシアとか数万とかになりますけどね、コンビニエンスとかドラッグストア入れたらね。けどそもそも間口が少ないんですよね、そうすると縦の軸で伸ばしていかないといけない。ただ、縦って限界があるじゃないですか、1店舗で売れる金額ってね。そうすると、伝統小売ってのは何十万店とか何百万店あって、要は横の軸がすごい長いんですよ、それがアジア新興国の小売りの8割とかを握ってるわけですよね。そうすると、縦の軸を伸ばすっていう、要は1店舗当たりの売り上げを上げることもそうなんですけど、それ以上に横の軸を伸ばすっていうのが、アジアの一般消費財及び食品を売るにはすごく重要なことなんですよ。
P&Gはそれをよくよく分かっているので、横の軸を伸ばす、間口を徹底的に伸ばすと。で、縦を伸ばすっていうのは当然、1近代小売りあたり売れるのって想定ができるわけじゃないですか。伝統小売も1伝統小売あたりの個数ってのは想定できるので、キャンペーンを打つとかなんとかして、縦の軸を伸ばすっていうのはいわゆるプロモーションのステージなんで後のステージなんですよね。まず横の間口を増やすっていう。横の軸を増やさないと、縦のプロモーションには入れないと。結局テレビCMを打つにしてもラジオでプロモーション打つにしても、横の軸が少なかったら縦に伸びるのが足りないじゃないですか。要は横の間口×縦の高さなので、そうするとやっぱり最初に横の間口を伸ばしてくっていうことがすごく重要になっていて、そこをP&Gはよくよく理解しているんですよ。
東:インターネットでいうとロングテーブルはそういう考えに近いかもしれないですね。
森辺:そういう考え方に近いかもしれないですね。だからまずは横の間口を、横の軸を伸ばしましょうと。間口を伸ばす、広げましょうと。
東:1店舗あたりの売り上げは小さいかもしれないけども、その数が無数とは言わないけれども、数百万あるんでここを伸ばしていかないと、そもそもそこにCMを売っても何も返ってこない。
森辺:返ってこないんですね。で一方で近代小売りっていうのは、高いリスティングフィーを要求してきたり、最後はプライベートブランドを出す小売であってもアジア新興国に出てきてるわけですよね。なのでその後でいうと、伝統小売の重要性ってのがアジア新興国のものすごくポイントになってくるので、そこでそれだけ間口を広げれるかっていうのが、そもそもアジア新興国を狙うっていうのは、つまりはそういうことなんですよね。
東:そうすると伝統小売って先ほど、前回でも森辺さんパパママショップっていわれてたじゃないですか。そういったパパママショップの小さな店に行って、儲けが出るのか利益が出るのっていう単純な、なんとなくイメージがあると思うんですけど、それはどう思われますか。
森辺:出るんですよね。なんで出るかっていうと、結局10袋入りで近代小売りで売られてるものがばら売りされてるのが伝統小売なんですよね。でも伝統小売っていうのは、10袋で90円ですと。けど1個ずつバラ売りすると1個10円ですと。そうすると10個まとめて買うから100円じゃなくて90円で買えるわけじゃないですか。けど伝統小売は1個10円で売ってるんで、そもそも売られてる値段は伝統小売のほうが高いんですよ。伝統小売で買ってる消費者はそれを分かって、高くてもいいから1個で買ってるんですよ。
なんでかっていったら10個まとめて買うなんてことは、家庭のキャッシュフローを悪くするので買えないわけですよね。今日使いたい分だけ、今使いたい分だけを高くても買うと。要は手の届く1個だったら、10円は届くけど90円は届かないと、そういう話ですよね。それってすごくシンプルで、アジア新興国って我々は給料月に1回ですよね、25日。ですけどアジアでは2回3回4回って給料日があるわけですよね。それだけフローに考えながら生きてるんですよ、アジアの消費者っていうのは。だから、貯金があるわけじゃないですか、我々だったら。そうすると会社の経費立替だって全然できるわけで。けどアジアの人たちはそんなことはできる人は少ないのでね、そうすると伝統小売が重要になってくるし、伝統小売っていうと、実は貧困層を買うんじゃないのって勘違いされてる人が結構多いんですけど、いやいや思いっきり中間層ですよと。なんなら上位中間層を買ってますよと。
スーパーとかの近代小売りで買うのは、給料日の後だけだと。あと普段は家の近くの伝統小売で買うなんて言う人たちはたくさんいるので、消費の大半は伝統小売でまだまだされてるんですよね。ですから、この伝統小売の間口を広げるっていうことがすごく重要になってくるっていうのがありますね。
東:そこの構造が的確にわかっているのが欧米企業ということですね。
森辺:そうですね。最初にそれをこの間お話しした4Cをしっかり可視化してるからそういうことが分かっていて、だから戦略が理に適ってるわけですよね。多くの日本企業は伝統小売の獲得を現法を立ててから考えるみたいな、いやいやその前から考えないとっていう、そういうことですよね。
東:勘違いとしては、中間層をきちんとその伝統小売で買っていると。
森辺:むしろ中間層を買っている。
東:そこを伝統小売でもきちんとした利益が出るってのは欧米企業で実証済みだし、そこを取りにいかないと、旨味がないと。
森辺:そうですね。伝統小売で1日分しか買えない、1回分しか買えない人たちが、強いては将来10個入りで買えるようになる、スーパーで買うようになる。その時に伝統小売で買ってたな、いつも買ってたやつだな、よし10個入りで買おうって、こうなっていくわけなので。伝統で売れなければ、結局その年齢層が低い、平均年齢が低いっていうアジアの最大の魅力を活かせないんですよね。そういうことを考えて伝統小売で間口を広げるっていうのは最優先事項。成功している企業は全部そこをやってます。
東:そしたら、伝統小売の重要性ってのはすごい理解いただいたと思うんですけど、実際その間口を広げるってことになると、間口をどうやって広げていくのっていうところの疑問にぶち当たると思うんですけど、それは具体的にどうでしょうか。
森辺:たとえばP&Gとかだと、近代小売りの方はもう鳥瞰してるんですよね。自分たちが現地法人を持ってそこで社員を雇うってことは、近代小売りなんていう、いわゆる都市部にしかないような本舗の小売りに自社の人間をとっていけないようなことはしないわけですよ。ディストリビューター使うと当然ディストリビューターマージンが発生するので、仮にディストリビューターを使ったとしても、マーチャンダイジングの業務をアウトソーシングするとか配送させるとか、そういうところでできる限り支払うマージンを少なくさせていて、基本的には鳥瞰取引していると。
一方で、重要な伝統小売の間口を広げる、ここにこそディストリビューターを使ってるんですね。そのディストリビューターに「あなたたちが間口広げてきてね、お願いね」で終わるのが日本企業で。そうじゃなくてそのディストリビューターの中に自分たちの籍を置いて、ターゲットエリアを決めて、目標数値決めて、デイリーで今日は何間口達成しましたかっていうことをゴリゴリ詰めていくわけですよ、PDCを決めて。それをぐるんぐるんぐるんぐるん回していって、エリア制覇をしていくんですよね。今日はA地区、明日はB地区、そしてC地区。どんどんどんどんエリアを広げていくっていうことを根気よくやっているんですよね。そこに全社員を使ったら、ものすごい数の社員が必要になるじゃないですか。そこにこそ伝統小売はリスティングフィーもなにもかからないので利益が出るわけじゃないですか。だからディストリビューターにお金を払ってでもディストリビューターを活用してそういうことをやっていくと。
そうするとおもしろいのが、P&Gの伝統小売のディストリビューターって、ほぼP&Gの商品しか扱ってないみたいなのがいっぱいあるんですよ。別にね、子会社とかじゃないんですよ、資本も何も入ってないんですよ、なんですけど、ほぼP&Gのディストリビューションしかやってないっていう会社って結構あって。たとえば10社とかねP&Gのディストリビューターがあったら、うち8社9社はP&Gしかやってませんみたいな。エリア別にディストリビューターが分けられていて。そんな会社っていうのはやっぱりアジア中にあるわけで、そうやって間口を広げていくんですよね。
東:そうすると、ディストリビューターを使って間口を広げていきますっていうところが重要なんですね。
森辺:そうですね。そこに、ディストリビューターに単に任せるんではなくて、自分たちが主になって、ディストリビューターをどう動かしていくかっていうことを考えていく。達成をしたらディストリビューターに国内旅行をプレゼントしたりだとか、研修会なんて2か月に1回か1か月に1回やってるんですよね。セールス研修会みたいな。懸賞金を出せばいろんなベネフィットをあげて、アメとムチですごくうまくディストリビューションマネージメントをやっていってるっていうのがP&Gですよね。僕がいろんな国で見てきてるP&Gがそういうことをやってます。
東:わかりました。じゃあこれで具体的に伝わったと思うので、最後に伝統的小売を攻略する上で必要なことっていうのを森辺さんなりにちょっと整理して伝えていただくと、どういったことになるかっていうことを教えていただいて終わりたいと思いますけど。
森辺:基本的には間口を広げるということと、ディストリビューターを活用すると。ただし、それは自分たちが主になってディストリビューターに任せるんではなくて、自分たちが主になって間口を広げるアクションプランを進めていくっていうことを地道にやっていかないと、任せっきりじゃ間口は絶対に増えない、っていうことですね。
東:わかりました。じゃあ、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。