東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き、金津さんをお迎えしているんですけれども、今日はどういうお話を?
森辺:そうですね。金津大輔はですね、日経ビジネスに「中国の下着を変えた日本人」ということで特集をされており、まあ前回のお話ですけども、中国で数少ないeコマースの事業を創業して、経営をしてきたと。なおかつ、ある程度マーケットキャパの大きい会社にまで成長させたということでですね、金津大輔にいくつか質問を投げかけながら、今後の中国のeコマースで日本企業はどう戦っていくべきなのかの、そんなヒントになればいいかなというふうに思っております。金津さん、どうぞよろしくお願いします。
金津:よろしくお願いします。
森辺:ではまず最初の質問でございますが、日本と中国のネット通販事業の大きな違いとはいったい何なんでしょうか?
金津:おそらく日本と中国の社会のいる時代背景、そこら辺がすごい関連してくるとは思うんですけれども、基本的には成熟期にある日本と成長期にある中国っていうことで、消費者動向が全然違うと。それにしたがって運営する側も、お客様に対してどういうことをしていったらいいかっていうのが違うなと思いますね。
森辺:なるほど、なるほど。まあ当然そうですよね。一方で成熟しきったところにインターネットのコマース、いわゆるECがポンと出てきた日本と、経済成長10%ブワーっと続けていながらもまだまだ一人当たりのGDPで見ると日本よりも低い中国、そこにECがポンと生まれてきたと。インターネットっていうのは同時に、先進国も新興国も生まれてくるわけですから、当然そこには大きな違いがありますよね。
金津:そうですね。あとは、お客様のインターネットでショッピング、もしくはオフラインでショッピングをした経験っていうのがまだ少ないので、そうすると目利きができるお客様が少ないと。そうするとその目利きができないお客様に対してどういうふうに訴求していくかというのがすごく大事になってくるんですけど。
森辺:なるほどね。目利きっていうのはその、中国の消費者にとって、それはeコマースであってもそうでなくても、基本的に新しいものがポンポンポンポンと経済成長の中で生まれてくるので、我々よりもいろんなものに対する見る目というのが浅いという、そういう認識ですかね。
金津:そうですね。あとは、自分が何が欲しいか、何が似合うか、これがいいものか悪いものかというのがちょっと判断できにくい。まだそういうお客様が多いと。
森辺:なるほど。そうするとその目利きができない人たちに、どうやって自分たちの商品がいいのかということを訴求しないといけない。なおかつ、当然中国のような国だと偽物なんかも横行しているし、いわゆるだましだまされみたいなのも非常に、日本以上に横行しているので、そういった意味でもやっぱり、この会社で買って安全なのか、ちゃんと届くのか、みたいなところも見てくるっていう、そういうことなんですかね。
金津:そうですね。そうなるとやはりブランド力というのが大事になってきますね。ブランド、聞いたことがある、見たことがあるブランドというのはやっぱり信用の対象になるんですけれども、何も聞いたことがない、見たこともないというと、特にインターネットでは販売にはつながらない。
森辺:なるほどね。よく日本のアパレルブランドって何千っていうふうにありますけど、日本ではデパートなんかに店舗が出て非常に有名なブランドであっても、中国に行くと無名なので、なかなかこう、そもそも値段高いですからね、中国で作っていても。非常に苦しいなんていうのもよくありますけども、それに近しいですよね。
金津:そうですね。
森辺:実は中国もアパレルブランドってものすごくあるし、台湾や韓国やローカルや欧米や日本という中で戦っていて、その中でブランドが非常に重要だっていうことを理解をして、私、LAMIUって非常にエッジのたったブランドでね、若い女性が非常に、つけていると、知っているというような認識を持ってるというイメージが非常にあるんですけども、このブランドを上げることで、LAMIUの時はどんなことをやってったんですかね?
金津:そうですね、まずは有名なモデルさん、中国でも有名な日本のモデルさんっていうのを使いましたね。
森辺:藤井リナさんでしたっけ?
金津:そうですね。藤井リナさんを1年間、専属というか、イメージキャラクターというものでやっていただいて。
森辺:そうですよね。LAMIUの立派なオフィスの正面玄関のとこにも藤井リナのポスターがバーンと貼ってありましたもんね。なるほど。あとはどんなことをやられたんですか?
金津:あとはそうですね、ブランディングだったら個別の、何て言うんですかね、オフラインのパーティーですかね。オフラインのパーティー、下着のショー、ファッションショーっていうのも数多くやりましたね。
森辺:なるほど、なるほど。イベントですよね。リアルイベントっていう話ですね。
金津:そうですね。
森辺:あと私、なんかね、インターネットで中国のネットの検索をしていたら、LAMIUのプロモーションビデオみたいなのがあったと思うんですけど、あれは?なんか、すごいおもしろいプロモーションビデオでしたよね。
金津:そうですね。あれは香港の、今もイメージキャラクターとして使っている女優さんに出ていただいて、けっこうコメディーの動画っていうのを使って、設定はオフィスなんですけれども、服を来てくるのを忘れた、そのままオフィスに仕事に来てしまったという設定で、それが中国の動画のサイトでおそらく数百万から数千万、24時間でヒットがあったと。
森辺:すごい効果ですね。あれ、女優さんって誰でしたっけ?
金津:あれは、クリッシー・チャウですね。
森辺:きれいですよね。下着で突然、会社に現れてみんながびっくりするっていう、そういうプロモーションビデオですよね。なるほど。あと、ブランド認知をする上で、ECのアパレル事業者さんって、なかなか日本だとリアルの店舗を出すっていうのってないと思うんですけど、中国だとよくオフラインとオンライン同時にやると。むしろオンラインで売るんではなくて、オフラインで売るためにECがあるんじゃないか、みたいな見方をする時もあると思うんですけどもね。そういう意味で、オフライン店舗を出していて、非常に百貨店の中でも売り上げがずっとナンバーワンだったっていうのを聞いたことがあるんですけども、そのオフライン店舗のお話をしていただいてもいいですかね?
金津:そうですね、中国のお客様っていうのは有名な、例えば百貨店、もしくはショッピングモールにお店を出しているということ自体がブランドになって、そこで信用力っていうのを得ることができるので、そこで出している企業であれば安全だということで、ECでも購入してもらえると、いう方程式になっていますので、まず、そうですね、オフラインの店舗っていうのは広告という位置付けもありますし、あとeコマースで日本の場合は便利さを求めたり、自分の時間を有効活用するという目的でeコマースっていうのがあると思うんですけれども、まだまだ中国のお客様の場合はですね、週末にデートも兼ねて買い物っていう、そういう生活パターンも多いので、そうなるとオフラインで購入っていうのが実は自然であるということも言えるかもしれないですね。
森辺:なるほど。結局、中国でeコマースを事業としてやっていくには、オンラインだけじゃなくてオフラインもしっかり考えていかないといけないっていう、そういうことですよね?
金津:そうですね。
森辺:なるほど。ちょっと今の金津さんのお話をまとめると、成熟期と成長期にある日本と中国では、やっぱり全然マーケットが違いますよということが一つですよね。これはどこのアジアでも同じ状況でございまして、ECが出てきた瞬間に、その国がどういう機にいるのかっていうことをしっかり見ていかないといけないので、インターネットでっても必ず日本と同じようにはならないよというのが一つですよね。中でも金津さんが特に気になったのが、中国人の目利きの部分ですよね。目利きができない消費者が非常にたくさん多いので、そこをどうやってクリアしていくかっていうことですよね。で、それにまつわってブランドっていうものがやっぱり訴求できないと、目利きができないとなかなか購買には至らないと。そのブランドを訴求させるためには、オンラインだけじゃなくてオフラインも、やっぱりやっていかないといけないということが一つですよね。そのオフラインをしっかり組んでいかないと、なかなか中国のマーケットでは成功しないと。もう一つが価格勝負というところで、安いものを、日本のeコマース以上にインターネットで買うっていうのは安さに対するコストコンシャスって言うんですかね、そこにやっぱり消費者が非常に重要視するということだと思うんですけど、その辺ってどんな感じですかね?
金津:そうですね。やはり偽物も多い、あとあまりよろしくないインターネット業者とかもまだいますので、そうなると、騙されてもしょうがなかったねと言える価格だったら、最初の初期の購買があるんですけれども、信用もない、聞いたこともないインターネット業者から、高価なものを一回目で買うっていうのは、騙された時のダメージが大きいので、イニシャルの購買はまず価格勝負だと。だめもとでも問題ないような値段だったら問題なく買ってくれると。
森辺:なるほど。これは日本と全然違いますよね。日本なんて高価な時計だったり、洋服だったり、スーツだったり、何なら自動車とか家までインターネットで売っていると。それに対して絶対に届くと、騙されることはないはずだというのが前提でeコマースで買い物をしているというのがたぶん日本の市場で、またそれを騙すような企業さんもいない。ただ中国という国は、その背景で、だまされる可能性が高いっていうことを疑っている前提でお客さん、消費者が購買をするので、そういうことでコストがやっぱりコンシャスになってくるっていう、そういうことですよね。あとお金待ちなんかは、重たい水とかペットボトルしかインターネットで買わないとかっていうのも、そんなのもあるんですよね。あと少しちょっと今日お話したかったのは、まだ時間あるんですけど、中国のeコマースって戦い方が全然違う、日本と。金津さんもファンドレイジングをすごくやられていると思うんですけども、日本と中国のeコマースのファンドレイジングを含めたところの戦い方の違いみたいなところのお話をちょっとしてもらってもいいですかね?
金津:そうですね。日本のたぶん企業さんの場合は、こつこつとじっくり売り上げを作っていって利益を出しながら、長期的な視野に立って経営をされるっていうのが多いと思うんですけれども、中国の場合、eコマースに限らずいろんな業界が短期勝負でいくという、そういう文化的背景があるので、そうなると大量に資金を調達して、最短でマーケットシェアを取り、その大きなマーケットシェアのポジショニングを生かして戦っていくという必要がありますので、そうなると大量の資金を短期間で調達して、それをいかに市場で投下していくかと、効率的に投下していって、マーケットシェアを取っていくというのが中国のやり方だと思いますね。
森辺:なるほど。だから今日明日の利益よりも、マーケットシェアを確保することが重要で、そのためにファンドから大量の資金を調達をして、それを投資をしていくと。で、最終的にはマーケットシェアを取ることで時価総額を上げて、いろんな株式市場に上場をして、キャピタル・ゲインを得て、さらに成長していくという、そういうモデルになっているわけですよね。一方で日本のeコマースの事業者というのは、基本的には日本からの投資、親会社からの資本金の注入で事業を運営しますから、数億円、数十億円ぐらいが限界になってきて、なかなか現地のファンドからお金を集めて戦っていく企業とは資金力の差が非常に大きいのでマーケットシェアがなかなか取れないという、そういうことですよね。現地の企業が、じゃあ、どれぐらいお金を集めているのかっていうと、100億以上集めている会社がけっこうたくさんあると思うんですけども、金津さん自身も数十億、お金、資金調達されていて、大きなところで言うと、どれぐらい集めているイメージなんですかね?
金津:たぶん、私募で数千億っていう企業もあると思います。
森辺:そうですね。また調達先も、中国国内のみならず、欧米、それから中東?
金津:中東、ロシア。
森辺:そうですね。莫なお金を集めて戦っていくと。そうするともう、日本企業が向こうでこのeコマースをやるっていうことに関しては、資金面においてもやっぱり桁が2つ、3つ違う、そんな状況で戦いを強いられてくるという、そういうことなんですよね。なるほど。分かりました。じゃあそろそろお時間でございますので、今回はこの辺にしてですね、また次回いろんな質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
東:よろしくお願いします。
金津:お願いします。