東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ、なんかビジネスは華僑から学べみたいなシリーズになっちゃいましたけど、華僑の人から学ぶことは多いですよね。そもそも、華僑系のディストリビューターが結構多いっていうところから始まってるんですけど、華僑系が多いにしても、現地のインドネシアだったらインドネシアの、フィリピンだったらフィリピンの人たちがやってるディストリビューターもあると思うんですけど、最終的に皆さんパートナーだったり、ディストリビューターとどう付き合っていくか、我々が海外でビジネスを成功するには絶対必要だと思うんですけど、森辺さんなりにディストリビューターとの付き合い方みたいな、っていうのは何か。ここをやった方がいいよだとか、こう感じてるんだけどこうした方がいいんじゃないかみたいなことを教えていただくと、聞いてるリスナーさんも、ちょっとこれだったらやってみようかなみたいな話になると思うんですが。
森辺:まず、東ちゃんも知ってる通り、うちの会社ってアジアのほとんどの国のディストリビューターのリストがあるわけじゃない。それが更新されていって。じゃあ、そのリストにあるものって何っていったら、スキルのデータがあるわけでね。どれぐらいの売り上げで、どういう人で、GT市場の比率はどれくらいあって、MT市場の比率はどれくらいあって、何を取り扱ってて、営業マンが何人いて、配架能力どうなってて、その主要なクライアントどこか、みたいな。これ一つのスキルじゃないですか。このスキルでザクッと切ってくわけですよね。たとえば組もうと思った時に、例えば、3億円しか売れないディストリビューターといくら頑張ったって、すぐすぐはそれを大きく上回るような数字ってのはできないじゃないですか。
東:3億だったら、3億が上限になっちゃうから。
森辺:3億から上積みできる部分はあるにしろ、基本はその3億っていうのがベースで、その3億円の何%自分の商品を取り扱ってもらえるかなと。もしくは3億円が4億円になるかもしれないけど、そのうちの何%が取り扱ってもらえるかなと。10%だとしたら、4億だと4000万しか売れないよって話ですよね。だからこれ、いくらやれる会社かっていうのは非常に一つ重要です。ただ一方で、これが大きければいいかていうとそうじゃないですよね。大きいところっていうのは、必ずキラーコンテンツって絶対持ってるんですよ。キラーコンテンツっていうのは、絶対に市場で20%以上のシェアをもってる商品を必ず1つ以上持ってる。そういう会社は儲かってるんですよ。その代わり8割がマーケットシェア20%以上にぎってる商品で収益が立ってると。
東:たとえば、そのぐらいのディストリビューターの規模って、売り上げでいうとだいたいイメージとしては。
森辺:2~300億。
東:たとえば300億だったら、7割ぐらいだとすると、200億以上がキラーコンテンツって呼ばれるので、
森辺:誰でも知ってるマーケットシェア2~3割以上あるような商品を売ってますよね。そこに新しい商材持ち込んで「これやってくれ」って頼んだ時に、当然一番プライオリティ高いのは200億以上売ってるのだよね。そうすると、これが一番だっていうデメリットはあると。ただ一方でそういう会社がもしキラーコンテンツを1個2個しか持ってなかったとしたら、彼らは常に第3のキラーコンテンツ、第4のキラーコンテンツを売れる商材を探してるので、そういうメリットもあるよねと。
一方で小さいところっていうのは、売れる商材が欲しくて欲しくてたまらないわけですよ。4億やるのにちょこっとしか売れないようなものをしこしこしこしこやって頑張ってるわけですからね。だからものすごい頑張ると。コントロールしやすいと。でも一方で2~300億っていうとコントロールしにくいと。けど売れる。どっちをとるかっていうのは、いわゆるスキルで見ていくんですけどね。
ディストリビューターと付き合うときに一番重要なことって、現場とはスキルの話をしたらいいんですよ、現場とはね。どういうスキルの人間がどれぐらいいて、どういう今数字あげてるのかと。そこに自分たちの製品を持ち込んだ時にどれぐらいの可能性があるのかっていうのは勘定抜きで数字だけ見ればいいって。ただ一方で、そのディストリビューターのトップと、自分たちはこの商品でこの国でこういう世界観を5か年10か年で描いてるんですよっていうビジョンをね、こちらからディストリビューターの社長にバンってぶつけて、そのためにあなたたちと何ができるっていうことを、本当に深く話をして、そこに食いついてくれる社長さんとじゃなかったら、組んでも絶対うまくいかないですよ。そこってすごい重要で、現場責任者と話してどうのこうのとか、社長と話してどうのこうのっていうんじゃなくて、自分たちが売ろうとしてるこの商品を、この国でどういう位置づけにしていきたいのか。そこのビジョンがずれるとね、絶対にうまくいかないんで、その話は絶対して、最後ここで決まりますよね。どんなにスキルがあっても、自分たちが売りたいこの製品に対するその国での思いが伝わってるか伝わってないかってFace to faceで話したらわかるじゃないですか。そこがやっぱり伝わり切れてないな、なんか違うこの感覚っていうお客さんは、僕は「やめといた方がいい、ここは」っていうのをお客さんに明確に言いますね。最後はそこが通じなかったら伸びないんでね。なのでそこはすごい重要だし。それをやっぱり日本側のトップが来て自分の目で判断して、話をしないとだめなんですよ。だから僕がお客さんと出張に行くっていうときは、お客さんのトップを連れて行って、その人と会話をさせて、その感性、感覚そこがよければ行きましょうだし。
東:結構そこは深い話ですね。結構マニアックな話なんで、分かる人にしかわからないと思うんですけど。
森辺:すっごい重要ですよね。
東:それが、結局海外の売り上げを決めてくる。インドネシアだったらインドネシアでの売り上げを決めてきちゃうわけですよね。
森辺:だって、新しい商品を市場に投入するときのパワーって大事じゃないですか。それを取り扱うディストリビューターって、日本みたいに目標がこれなんで全社を挙げて頑張るぞ!みたいな話には簡単にならないわけですよ。社長がOKっていっても現場が動かないケースもあるし。だからスキルとマインド、この両方を僕はしっかり見て、その総合点でないと、ここと組むべきだとか、ここと組むべきじゃないとかってね。そこで腹を割って話させるためにゴルフに行くし、弱い酒も飲みに行くしっていう話なんですよね。すぐ酔っちゃうんですけど。そこをね、やっぱりあれしていかないといけなくて。
これだけアジアに行ってると、だいたいどの国のどのディストリビューターの社長はこういう人だ、とかって、この製品は興味あるけどこの製品は絶対興味ないなとか。興味ないのに興味ないって言って、何とかさん。言わないと。ほんとに興味ある?って。ほんとにやれる?ここまで5年までやれる?っていうのをほんとに深く話してって、それをアニュアルの計画に落として、マンスリーの計画に落として、ウィークリーの計画に落として、こんなことやんなきゃいけないんだよ、このビジョンのために。ほんとにやる?一緒に、っていうのをやっぱり言わないといけないですよね。そこまで話さないと、提携しました、YES、はい売れませんでした、はい終わり。そんなのいっぱいあるじゃないですか。今うまくいってる日本の消費財メーカーさんもころころころころ変えてますからね、代理店。3年に1回とか、5年に1回とか。その5年全くの無駄だったわけじゃないですか。だからそこはすごい重要だと思いますね。
東:そうすると最初にそこをやらないと、始まってしまったらそんなの確認しようがないし、今さら確認してだめだったって、やり直すしかないって話になっちゃうから、その時間を使うんであれば、最初にそこをきちっとやっといた方がいいよねって話ですよね。
森辺:Time is moneyってね、ほんとに最近すごく思うんですけど、お金いくらあっても買えないものって時間だけじゃないですか。その時間がアジアビジネスとかだと致命傷になるんですよね。だからほんとにそこはすごく重要。
東:華僑の人って、時間とか見えない、見えないじゃないですか、計れるにしても。見えないものに結構投資をすることにあんまり抵抗がないっていうか、見えないからこそ投資しろみたいな感覚を持ってるじゃないですか。でもやっぱ日本の企業って、どっちかっていうと、見えないことに何かを払うってことに対してまだまだ抵抗があるというか、時間の価値をまだアジアに比べたらわかんないっていうのはあると思うんですけど、森辺さんの言われる、時間が価値だっていうところが、アジアでは特にそうだっていうところは、どういったところでそう思われる、もしくはそう考えられるんですか。
森辺:結局、商機って一瞬のその隙間に張ったからそれが商機に変わるわけじゃないですか。基本時間にルーズなんで、そんなお前にTime is moneyっていわれたくないよって僕思うんですがね。彼らが言ってる時間っていうのは、その商機のことを僕は言ってるんだと思ってて、商機っていうのは、この一瞬の時間の隙間にしか起こらないんで、その隙間に入るかっていうことなんですよね。
東:タイミングを捕まえられるかどうかっていう。
森辺:欧米人が言うTime is moneyっていうのはそのまんまで、時間は1時間いくらっていう話なので。我々も年を重ねていくと、80で死ぬからあと40年しかないやって僕も最近すごい思うんですけどね。だから30代じゃそんなこと思わないし、20代ではそんなこと全く思わないじゃないですか。けど今年40になって、あと40年しかないっていうと余計焦るんでね。そうだと思うんですけどね。だからそこはすごく違いますかね。
東:最後にディストリビューターとの付き合い方で大事だっていわれたことを、ちょっと簡単にまとめていただくと。
森辺:まずスキルを見る。能力値を数字で見るってことは大前提ですと。これをやらずに出会ったディストリビューターと「よしやろう」って話は論外なので。その国のいわゆる産業、industryのディストリビューターを全部広げて、まず実力値を、つまりはスキルですよね。それを数字で見ましょうと。
東:具体的に、いろいろあると思うんですけど、これとこれだけは見とけみたいなのはありますか。
森辺:たとえば、自分がターゲットとしている顧客層に対する売り上げがどれぐらいあるのかって話なわけですよね。たとえばディストリビューター、日用品食品ディストリビューターっていっても、フードをやってるディストリビューターもあれば、ノンフードいわゆる食べ物じゃないものをやってるディストリビューターもいれば、日用品系やってるノンフードもいれば、両方やってるとこもあるわけなんですよね。自分が食品を売ってるんだとしたら、圧倒的にそのフードの比率が高いところいかないといけないじゃないですか。だからこういうのの軸を見るってのもそうだし、セグメンテーションとターゲティングが自分のやろうとしてることに合ってるディストリビューターなの、どうなのって。単純に売り上げだけ見たらでかいんだけど、実はセグメント違うよね、実はターゲット違うよね、なんてことは往々にしてあるので、そこを見るんですよね。
もう一つが、そのディストリビューター自身が自社の営業マン抱えてディストリビューションしてるのか、それともサブディストリビューターを使ってやってるのかによって、ディストリビューターの利益率だとか、ディストリビューターの情報の鮮度って全然変わってくるんですよ。そういうのも見ていく。あとターゲットエリアもそうだし。だから総じていえば、セグメンテーションとターゲティングが自分たちのやろうとしてることに合ってるか合ってないかっていうことを、スキル面では一番重要ですと。
もう一つが、一番トップの経営者の人。この人のビジョンが自分たちのビジョンとあってるかがすごく重要で。それを確認するのは、自分たちがその商品をその国でどういう姿にしたいんだっていう、自分たちの意思を絶対にこっちからぶつけないとだめなんですよ。これをやりたいんだ、一緒にやってくれるやつを探してるんだと、あんたやってくれるってことを腹割って話して、俺そのビジョン一緒にやるよって心から言ってくれる社長さんのいるディストリビューターじゃなかったら絶対、なんか状況が悪くなったときに、逃げちゃう。なので、非常に時間を無駄にするので、その2つが僕は一番重要だと思ってるので、僕がディストリビューター選ぶときはその2点を徹底的にしつこいぐらい
東:スキルとマインドを両方とも見ていくと。
森辺:その総合点で、どっちかって言ったら、マインドのほうが大切。
東:わかりました。結構素晴らしいまとめになったので、ここで終わりたいと思います。皆さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。