東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き金津さんにQ&Aということで引き続きやっていきたいと思うんですけども、今日はどんなことを?
森辺:今日はですね、ちょっと二つぐらい、前回は一つの質問で終わってしまったので、二つぐらいお聞きしたいなというふうに思っております。金津さん、よろしくお願いします。
金津:よろしくお願いします。
森辺:今日は、中国のネット通販事業の運営で最も大変だったことをお聞かせいただけますか。
金津:まあいくつかあるんですけれども、まず最初に思い浮かぶのは現地の中国の方の社員のマネージメントですかね。一人っ子政策で小さいころから自分の思いどおりにものが進む社会で大きくなってきた子どもたちを雇うというところで、俗にいうわがままで一切会社への忠誠心がないと。そういう社員のみんなのマネージメントというところが一番苦労したかなと思いますね。
森辺:なるほどね。LAMIUさんは当時350人ぐらい人がいましたもんね。それがほとんどが80後(バーリンホウ)になるんですよね。それをマネージメントするっていうのは、そりゃ大変ですよね。
金津:そうですね。
森辺:具体的な事例みたいなご紹介みたいなのを、もしできれば、どんなことが起きるんですかね。
金津:これは80後だからとか、90後(ジュウリンホウ)だからっていうことかわからないんですけど、基本的に社会自体がバックマージンを取るというのが基本的に、それは一般的に受け入れられる習慣になっていますので。
森辺:中国の社会全体がってことですよね。
金津:そうですね。なので、そういうことも併せのむ感覚っていうのが必要かなと。
森辺:そうですね。このバックマージンの問題は、私も現地に子会社を持っていたときに、こんなにいい子が、と。バックマージンを受け取っていたか、っていうことがありましてね。でも罪の意識なんて全然ないんですよね。そこがないので、それ自体が間違ったことじゃないと、当然だと。特に購買部なんかもう、バックマージンを受け取っていて当たり前みたいな、そんな世の中の中で、日本の常識で仕事をしていかないといけないんですけど、ここがやっぱり、締めるところは締めるし、放っておくところは放っておくっていうのが多分、非常に重要な部分だとは思うんですけども、こんなところで、なんて言うんですかね、野放しにしすぎてもだめだし、締めすぎてもだめだという、そんなお話ですかね。
金津:そうですね。中国の感覚に合わせるという経営が恐らく必要かなと。
森辺:なるほど。よく中国でね、現地法人のマネージしているような総経理、まあ社長さんですよね。日本企業の現地法人の社長さんなんかから言われるのが、うちの従業員、っていうか、中国人の従業員が全然ロイヤリティー持たないよ、という愚痴をよく言われることがあるんですけど、そもそもロイヤリティーなんて中国に限らずアジアでも持ちませんよと。今、日本でもね、うちの父親世代とか今65とか70の世代は、一つの会社で一生勤めるっていうのが常識でやってきたのかもしれないですけど、今日本ですら、転職が普通になってきていて、ロイヤリティーってよくよく考えると、そもそも終身雇用っていう絶対的な約束があって初めて生まれた考え方であって、今は終身雇用ないですよね。そんな中でロイヤリティーなんて生まれないのに、よくアジアに行くとロイヤリティーを求めるっていう経営者が結構多いんですけども、そもそも金津さんの場合はロイヤリティーなんていうのは期待をしてないと。その中でどうマネージメントしていくのか、そんなところの苦労がやっぱり多かったって、そんなイメージなんですよね?
金津:そうですね。やはり、どのようにしてインセンティブを与えて、モチベーションを高く保ってもらうかというところに苦労して、工夫していたという感じですね。
森辺:なるほど。日本の場合だとね、そんなに激しいインセンティブを与えなくても、まあロイヤリティーこそないものの、中国ほどややこしいことにはならないけども、やっぱり中国で中国人をマネージメントするっていうことは、彼らのモチベーションを上げるという意味では、制度とか仕組みみたいなものがやっぱり、非常に重要になるっていう、そういうことですかね。
金津:そうですね。
森辺:なるほど。あと、中国の事業運営で大変だったことって、そのほかにありますかね、人のマネージメント以外に。
金津:あとはそうですね、サプライチェーンマネージメントが、どの会社さんも苦労されているとは思うんですけれども、われわれは通販会社で製造販売一貫型の企業だったので、欠品もしくは不良品等が出るとですね、すぐに売り上げに直結して、なかなか中国の工場さんのマネージメントというのも社員と同じぐらい大変だったなと。
森辺:なるほど、そうですよね。LAMIUさんはマルチチャネルの、いわゆる製造業さんという取り方もできて、ECというところに着目はされていて、実際はECの売り上げが最大だということなんですけども、他社の商品を売っているんではなくて、自社の提携工場で作らせた下着を自社ブランドでeコマースとリアル店舗を使って売っている、まあメーカーさんだったんですもんね?
金津:そうですね、はい。
森辺:私も中国の工場ですね、2000年代前半ぐらいに検品とか品質の向上なんかで工場にずっと入ってたことがあったんですけどね、仕事で。まあ大変だったと思うんですけども、欠品とかクオリティコントロールみたいなところで大変なご経験されていると思うんですけど、何かそんな経験談みたいなお話って、いくつかお聞かせいただいてもいいですかね。
金津:中国の工場さんの工場で働いている方のプライドというのも結構高いものがあるので、購買しているという、そういう立場でいくとですね、全然協力をしてくれないと。まあその、同じ仲間だというその意識、もしくは態度を示さないと、なかなかついてきてくれないというところですかね。そこら辺のプライドと、向こうに対して、工場に対してのインセンティブをちゃんと与えて、気持ちの面とお金の面のインセンティブ、プラス、それでモチベーションを高く保ってもらって、できるだけわれわれのほうにいい商品を一生懸命早く作ってもらえるように説得するっていうのはちょっと苦労したかなと。
森辺:なるほど。あと、金津さんのこういうお話を聞いてね、もしかして中国ではeコマースの事業をやるには、全くその、創業を中国で、第二創業をするんだと。で、本社からの資本金というか、本社からの経営資源に頼らず、現地法人が現地法人でしっかりファイナンスを打って、やっていくことが必要だというふうに感じられているリスナーも多いと思うんですね。そんな中で金津さんがファイナンスをしている過程で、そこにも苦労、大変だったことってあったんじゃないかなと思うんですけども、そのあたりのお話って何かあります?
金津:ファイナンスですか。基本的にeコマースは、今の中国のeコマース市場は赤字会社が多いので、そうなるとファイナンスするときも基本的には成長率というところで投資判断の基準になっていくので、日本での感覚だと、いかに今日利益を上げるかっていうのが一番重要視されると思うので、そこの成長率だけを求めていくというそこに、その経営姿勢というのは、なんて言うんですかね、とりあえずそういう時期だったと思っていますけれども、長期的な視野に立って、ちゃんと社会に貢献できる会社を作っていくのが一番大事だなと思いますけどね。
森辺:金津さん、LAMIUのときにですね、日本のベンチャーキャピタルからも増資をしてもらってますし、アメリカのベンチャーキャピタルからも出資をいただいていると思うんですけど、日本と欧米のベンチャーキャピタルで違いとかってあるんですか。
金津:そうですね。リスクの取り方がやはり、狩猟民族の欧米の方のほうが取りたがると。そういう許容する会社の仕組みにはなっているのかなとは思いますね。
森辺:なるほど。まあ、日本のベンチャーキャピタルは銀行員が投資して
るような、そんな印象を、すいません、ベンチャーキャピタルの方、聞いていたら、大変失礼な話でございますけど、そんなイメージありますよね。私自身も3億ぐらい調達していますけど、やっぱりアメリカのベンチャーキャピタルは、投資と融資の違いを明確にわかっているので、投資家としてのプロフェッショナリズムがやっぱり、非常に長けているということですよね。それをいっても、1ディール当たりの投資金額も全然違いますもんね。やっぱり日本の企業さんが中国の会社に投資するっていったら、マックス1億とかそういうレベルですもんね。赤字の会社が多いっていうことだったんですけど、JD.comさん、旧360buyですかね、この辺ってまだ赤字なんでしたっけ。全然話変わっちゃうんですけど。
金津:そこら辺はどうなんですかね、まあ未公開なので、本当のことはわかるかどうかわかんないんですけれども、アマゾンさんがアメリカでも大体8年間ぐらいはずっと赤だったっていうことで、基本的にeコマースをやっていて、設備投資を旺盛にやっていくんであれば、先行投資の赤っていうのはありですね。
森辺:そうですよね。前回の話ですよね。なるほど。じゃあ次の質問に移りたいと思いますが、過去にご回答いただいたところと重なるところもあるのかもしれないんですが、中国ネット通販で最も重要なことって、金津さんの観点的にどんな感じですかね、もうフランクに。
金津:どうなんですかね。eコマースに限らずですけれども、ブランディングと価格、商品をしっかり熟成すると。中国のeコマースだと特にブランディングと価格。eコマース通販なので、まずブランディングと価格がしっかりしてないと初期購買がないと。で、商品がしっかりしてないと2回目のリピートがないっていうことで、まずこの三つはマストでしょうか。
森辺:なるほど。それって結局、誰に何をいくらでどう売るのみたいな、そういう話ですよね。
金津:そうですね。
森辺:なるほど。LAMIUさんの経営陣って、スタンフォード、ハーバード、ウォートンっていう、いわゆるアメリカのアイビー・リーグ出身のエリートが集まってつくっている会社だと思うんですけども、そういうMBA卒のエリートをもってしても、やっぱりマーケティングの基本プロセス、われわれスパイダー・エージェントが重要視しているR、STP、MMみたいなところっていうのはやっぱり大変だったんですかね。
金津:まず自分で経営に入ってしまうとですね、デイリーでやらなければならないことがたくさんあって、なかなか一歩引いたかたちでしっかりとそういう分析をするっていうのが難しいと。ベンチャーで立ち上げて、ファンドレイジングもしながら、商品も開発しながら、販売チャンネルも、というすべてをやろうとすると、一番大事なところが抜けているというかたちになってしまいがちでしょうかね。
森辺:なるほどね。やりながら検証をしていって、仮説が変わっていくわけで、それをまた練り直してっていうことが事業を操業するということだと思うんですけども、それがなかなかやっぱり手が回ってこなくなってくるっていう、そういうお話ですよね。
金津:そうですね。
森辺:なるほどですね、よくわかりました。はい、じゃあ、すいません。今回もこれぐらいで終わらせていただきまして、また次回も金津大輔をお招きしたいと思いますので、皆さん楽しみにしていてください。ありがとうございました。