東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、引き続き石原先生をお迎えしてやってますが、今回はどういった話を。
森辺:石原さんどうぞよろしくお願いします。今回はですね、我々もそのアジア新興国を中心とした海外展開の支援をする際に、当然国内のマーケットの主張っていうのは、大枠では当然業界別に見てはいくんですが、なかなか国内でなにかお客様のご支援をやっているのかっていうと、必ずしもそんなに多くはないので、ご専門の石原さんにちょっとお伺いしたりっていうのを。国内ってどうなんですかね、我々が知りうる情報の中で、市場が変わってきてるってのは感じてるんですが、実際に企業を支援する立場から、もう少しミクロな話として、実際どんな風にとらえて。
石原明(以下、石原):一番わかりやすく言うと、どの業種でも社数がどんどん減ってるってことですね。製造業でもそうですし、建設建築もそうですし、いろんな意味で。日本って70年ぐらいずーっと右肩上がりで、どんどんどんどん拡大してますよね。それが皆さん分かるように、人口減少して、どんどん縮小して、ある種成熟した業種になり始めていると、世界になり始めているってことなんですけど。いろんな業種ではですね、廃業することもあるし、MAすることもあるし、合併することもある。その中で、驚くほど皆さんがイメージしてるよりも、その業をやってる会社の数が減っているんですよ。たとえば、僕が昔コンサルしたベビーベッドを作る会社さんが、日本中に何社あると思います?ベビーベッドを製造する会社。
森辺:今ですか。もうそんなにないんじゃない?なんか全部中国とかインドネシアで作ってるイメージが。
石原:全体で日本が消費してるベビーベッドのですね、約8割ぐらいがアジア中心に海外から来てますね。あとの2割は何社ぐらいで作ってると思いますか。
森辺:10社以内ですか。
石原:これね、5社しかないんです。その昔だと、木工の、例えば産地なんかだと、大体その地域だけでも30社とか50社とかね。さらにその下請けでどうのこうのっていうとですね、すごい数のかなりの工場があったんですけど、どんどんどんどん廃業し集約していって、もう5社しかなくて。びっくりするんですけど。その5社は逆にフル生産みたいなことをしてるんだけど。それと同じように、実は会社の数がどんどんどんどん減っていて、勝ち組は完全に勝ち、負けるところは無くなっていくぐらいの感じなんで。
森辺:100万人ぐらいですよね、日本で生まれてる。その100万人の8割が海外っていったら80万台は海外企業が売って、残りの20万台を5社で分けてるって。これがどんどんどんどん少子高齢化が進むと、
石原:たとえばそのベビーベッドの業界じゃなくてもですね、ただそこが後10社しかありませんってなったときに、ここで後継者問題っていうのがあって、大体半分消えますもん。1社もしくは2社もしくは3社くらいが強大化して、あとは無くなってくっていう、ほんとにマーケットの理論が激しく動くって感じなんですよ。だから今、マスデータをとりましょうみたいな形で、大手の会社が中小企業のデータを軒並みさらいたいとかって思ってるんけど、意外にしっかりした会社がなくって、びっくりしてしまうような感じなんですね。
生き残った会社は、実は何が結構重要かっていうと、継承者がしっかりしてるかどうかみたいな形なんですね。そのしっかりした継承者がいるところは、ほぼほぼ日本のマーケットが富裕層化に向かい、大手の企業にくっつくように、もしくは新たなマーケットに進出するようにということで、結構中国中心に東南アジア、シンガポール、タイとかベトナムとかそういうところへ出て行くような会社はすごく多くて。僕は素養のある会社さんには、なるべく早いうちに、ビジネスをするしないはどちらでもいいので、雰囲気とかですね、向こうの熱気とか。僕も仕事が忙しいので、あんまり海外行かなかったんですけど、こういうところですごく意識していくように、自分自身でしていてですね。去年と一昨年の11月かな、毎月ずっと海外に、月1回行くみたいなスケジュールを作って。最初は無意味に行ってましたけど、最近はそちらでコンサルしたりとかするようになっていますけど、ほんとに10社とか15社連れてツアーに出かけたりすることもあって、やっぱすごく重要だなって思うようになりましたね。
森辺:中小企業にとっても、海外市場ってのは起死回生するとか逆転するチャンスがそこにはあったりする。
石原:そうですね、森辺さんの専門ですけど。一般的にニュースで流れてる内容とか、テレビで取り上げられるその国と、ほんとに生で行ったその国の、人と人との関係とか全然違いますよ。
森辺:そうですね、違いますね。テレビを鵜呑みにすると怖いっていうのは当然ありますよね。テレビ雑誌を鵜呑みにするのは怖いと。
石原:なんでそういうのも肌に感じてもらって、あるいは向こうでやっぱり中小企業でも成功してる会社とかあって、そこを見学に行かせるんですね。そうするとみんなメモとって、聞いて、そのあと繋げていくので、長居しなくて行ったり来たりすることをしますけど。やっぱりその勝った会社は、ほぼほぼ何らかの形で、今アジア中心ですけど、出てくような準備をしてる感じがしますよね。
森辺:中小企業の海外展開っていうのは、ハードルが高いというか、非常に支援する側も大変なことなんだろうなというイメージを持っていましてね。先生の著書にも『社長、会社は小さいままじゃダメなんです』という本があったじゃないですか。今、残念ながら我々の会社のクライアントって100%?上場企業になっちゃってるんですよね。中堅中小企業の支援もしっかりやっていきたいなという思いはあるものの。ここを石原さんにすごい聞いてみたいなと思ったんですけど、著書で『社長、会社は小さいままじゃダメなんです』でも書いた通り、日本の中小企業とアジアの中小企業って全くマインドが違うっていう。アジアの中小企業ってどっちかというと成長意欲が非常に高くて、日本でいうところのベンチャー企業みたいな。
石原:みんなそんな感じですよね。
森辺:一方で日本の中小企業というのは、どちらかというと、「俺たち中小企業なんだから」と。「このままでいいんだよ」と。「誰か支援してよ、経産省支援してよ、政治家さん支援してよ、行政さん支援してよ、コンサルタントさん支援してよ、お金はないけどね」っていう、そんなふうなことを心のどこかでイメージがすごくあるんですけど、それってどうなんですかね。たぶん石原さんのところにご相談しに来る、石原さんに興味を持ってもらって支援してもらえる中小企業っていうのは、たぶんさっきおっしゃってた面白い会社、やる気のある会社、そういうところが中心になると思うんですけど、そうじゃない中小企業っていっぱい見たことあって、どんな風に受け止められてるのかなっていうのをお聞きしたかったんですけど。
石原:人間って生まれ育った環境で身についたものがすべてみたいな感じでしょ。日本は得した面と損した面があって、やっぱり戦後すごいいいタイミングで、本当の成長ですね、70年代のバブルに向かってくじゃないですか。そうすると、ほっといても社会が発展するっていう感覚がDNAの中に染みついちゃってるじゃないですかね。結局いいかいいかによって、企業が儲かったり儲かんなかったりするみたいなことを普通に言うじゃないですか。ほんとは景気いい時に儲かって、景気悪いときはもっと儲かるほうがいいわけなのに、俗にいう社会とか国のせいにするっていうのが強い感じはどうしてもしますよね。
森辺:テレビのモニタリングで、中小企業さんとかにそうですかって質問してる時にね、「景気が戻ってくれれば」って景気が景気がって言って、あなたたちのビジネスは全部そのアンコントローラブルな、外のものに左右されて業績決めるなんて、そんなこと僕やったら社内にも社外にも怒られちゃうっていう感覚があるんですよね。そんな景気が云々とか言ってられないじゃないですか。まさにおっしゃってる通りだなってのはなんとなくわかります。
石原:もちろんたぶん、100人ぐらいインタビューしてる中で3人ぐらいは、全然平気っていう人もいますけど、その人がニュースでないから、余計逆にそっちのマイナーな意見が世界を征服しちゃうっていうかね、支配しちゃうと思いますけど。中小企業の場合は、サバイバルで生きていけることをほんとに普通に考えた方がよくて、やっぱり人を頼りにしないような考え方を持ってないと、今後ますます大変でしょうね、っていう気はしますね。
森辺:海外進出もまさにそうで、海外進出って誰も頼れないじゃないですか。よくありがちな問題に、パートナーに頼りすぎて泥沼にズドズドっと入っていくっていう企業さんっていっぱいあって、パートナーって確かにすごい重要なんですけど、なんか依存してしまうようなパートナーシップの関係ってほぼ成り立たないですよね。だからそういうところはしっかり気を付けていかなきゃいけないっていうことなんですかね。
石原:日本人は人がいいですよね。ビジネスってもちろん長期的には信用信頼じゃないですか。ただ100%信じるっていう考え方と、30%信じるっていう考え方があって、ちゃんとした経営者は「俺は彼のことを信頼してるよ。30%はね。」って言い方をするんです。これは微妙だと思いますよ。じゃあ7割信用してないってことは信用してないんじゃないの?いやいやちがうちがう、3割は信用してるんだと。この感覚ってわかります?あの人は15%信用してるかな、みたいな。100%信用するってことはないんですかって言ったら、やっぱり身内じゃないので、100%信用するってことはお互いに難しいよねっていうようなことを、ちゃんと言う人はいます。
たとえばお互いに子供がいて、なんかよくあるじゃないですか、吊り橋の上でどっちか落とさなきゃいけないってときにうちの子を守ってよ、まではいわない。だから100じゃないでしょ。人間はその信じる度合いは、日本人って信じたら100で信じなければ0でみたいなのだけど。その感覚でやるレベルの人は行かない方がいいと思いますよ、っていう感じですね。そうすると信じてる面と信じてない面と、っていうことがあれば、信じてるけど、ここは信じてないよっていうのを相手に伝えながら、緊張感を持たせながら、コミュニケーションをしますよね、っていうような。そういうことも教えますけどね。
森辺:じゃあその海外には視察で行かれてるような、10社15社みたいな人たちは意識が、
石原:変わります変わります。
森辺:行って変えていく?
石原:行って変えていく方が楽ですね。言ってもわかんないでしょ?中国とかでご縁がある会社があるので、上海とか、ちょっと奥の成都とか行くんですね。成都なんか今すごくわかりやすくて、半年とか1年後にもう1回行くとですね、全く変わってるんですよ。2年経ったら別の国じゃないですか。こういう感じで僕、定期的に行かせると、ものすごく肌で感じる感じ方が全然違いますね。今回もですね、今年の夏ぐらいに成都に行って、たまたまご縁があって、セブンイレブンさんの本部さんにも寄らしていただいて。
彼らがどんなことやってるかとか、和幸さんっていうとんかつ屋さんがあるんですね。あそこのやり方とかが全然違ったりして、非常におもしろかったり。今回僕がちょっとお世話する内装屋さんなんだけど、完璧な日本風の内装屋なんですよ。これ上海で立ち上げて、もともと福岡なんですよ、2代目の方が単身乗り込んで、上海でやって、成都ですよ、成都のイトーヨーカドーの中にブースを入れてて。最後、あちこち行ったんですよ、大手の会社にね、数社行って、最後そのところいったんですけど。まったく、畳と障子、襖、こたつ、これが月に8件、日本円で50万から80万。完璧に成功するつもりで行ってます。僕ら行きますからって言って。僕面白いんでコンサルすることになったんですけど、上海だと、これが月50件来るんですよ。そういうのを生でやると分かるけど、彼らなんか見てたらほんとに強いですよね。
森辺:個人の家を和風にしてっていう
石原:そうですね、マンションの一部屋を和風にするってね。向こうパーセンテージが大きい、人数が多いから、1%でもすごい人数いるんですよ。そうすると日本に行ったりして日本好きですとか、アニメの影響って相当あったりとか、貿易系の社長さんっていうのは庭作りますよね。松の木輸入しちゃったりとか、すごいんですって。錦鯉とか。そうすると、ものすごい数の中で、0.何%でも成り立っちゃうわけですね。
今回上海から成都へ行って、行った月から次週が普通にあるってわかったんで、全部征服するっていう勢いでやってますけど。それとかイメージとか現場に入った違いで、ほんとに彼らが掴んだノウハウですよね、っていうことじゃないですか。だからそんなふうに、数々裏切られたりとかね、失敗したりとかもしてるけど、行く気になってやればそういう会社もあるっていうのも、生で見てきてるので。だから一般的な中国に持ってる印象と、僕が中小企業の社長さんたちに教える中国の印象はだいぶ違うんじゃないかと思うんですよね。僕が全体に進出するんだったら、タイとかベトナムとかアメリカとかいろいろなところあるじゃないですか。それよりも、経済的に成り立ってってしまう国っていうのがあんまりないでしょ。シンガポールはあるかもしれませんけど。B to B、Cでいったときには、恐ろしい数の富裕層がいるので、日本よりも儲かる可能性がある国としては僕はその政治の問題もあるかもしれませんけど。中小企業が中国に行って、少ない数の人に高く売るっていうのはアリかなと思いますね。
森辺:わかりました。そしたら石原さん、ちょっとお時間来てしまいましたので、また次回お願いいたします。どうもありがとうございました。
石原:ありがとうございました。