東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん引き続き石原明先生をお迎えしているんですけれども、今回はどんな話を?
森辺:石原さん、前回の続きになっちゃうかもしれないんですが、中小企業さんの海外展開で石原さんが気をつけているというかしていることって何かあるんですか?
石原明(以下、石原):僕あちこちの国に肌で行ってみたんです。ベトナムに行ったりシンガポールに行ったりマレーシアに行ったりとか、あと香港も上海も行っています。森辺さんがやっているように大手の企業が本当に計画性を持ってそこのマーケットをある種征服をしていくみたいな計画を作らないと入っていけない会社と、中小企業がアジア全体に対してどういうふうに入っていくのかということで、特に製造業以外であれば、製造業は大手に紐づいていかないとなかなか難しいと思いますけれども、例えばアジアのマーケットに対して本気でモノを売るというふうに考えた時に、考えないといけないのが実際の採算性なんです。例えばベトナムと日本だと貨幣価値ってだいたいどのぐらい違うんですか?
森辺:ものすごい違いますよ。ベトナム一番ややこしいですね。ゼロがものすごいあるので。
石原:行ったらすごい金持ちに…。何だこのドンはみたいな感じになるじゃないですか。そうですよね。僕は笑った話があって、そこは8年ぐらいで行ったのかな?最後の日に「僕がおごってあげるから何でも食べていいぞ」って言って腹いっぱい食べて「もう食べられません」って言って「じゃあ僕お金払うね」って言って何かすごい札数を払ったんですけど、「これ日本円でいくら?」って言ったら「4,000円」って言われてガクッときて。プチ富裕層気分を体験できると思いましたけど、実際ベトナムでビジネスをして中小企業が採算性が合うかといったら、向こうに住むんだったら別だけど成り立たないです。それが大企業がちゃんと入って行ってインフラ整えてそこのマーケットもちゃんとオープンになり上場するみたいなところまでの上場益みたいなところまで考えればなくはないとは思うんですけど。生きて仕事してて今月の売上がどうなるかっていうスタンスの中小企業がモノを売りに、そういう貨幣価値があまりに違うところに行っちゃうと、きついんじゃないかなと思っています。
あともう一個は何でもそうですけど、行ったら全てのことが変わります。お金使えないし情報がないし困っちゃって往生してしまって、その辺の人を信じて騙されるみたいなことがすごく多いです。だからかなり時間をかけて皆が騙されてくれて、その後僕は人的なインフラっていうんですけど、ガスとか水道とかじゃなくて、例えば「電気切れちゃったんだけどこれどこで交換するの?」って言ったら「あー、俺も苦労したんだけどさ、あそこ行ったらOKだよ」とか、例えば「こういう問題で実は人を採用するのに困っちゃってるんだけど、これどうしました?」っていう時に「俺もね、来た時にすごい苦労して○○」とかってあるじゃないですか。ああいう失敗してくれた人たちが何となく人的インフラを作るっていうんですか?アフリカの砂漠でヌーの大群が移動するって知ってますか?
森辺:いいえ。
石原:川があるじゃないですか。川の前であれは止まるんだよね。川にはワニがいっぱいいて渡ったら食われるわけだよね。若いヌーが意を決して行って食われて、何人かが食われているうちにワニが食っててその上を通るみたいな、最初に食われるやつになったらきついなって。だから皆が食べられちゃった後ぐらいの国に行ったほうがいいんじゃないのっていう。それと貨幣的な価値が日本円で成り立つっていうと、僕はたぶん中国ぐらいしかないんじゃないかっていう。しかも富裕層に向かえばっていうような、意外に行くんだったら中国いいんじゃないのっていう逆説的なことをうちの子会社には言いますけどどうなんですかね?
森辺:僕ね、今いいこと言うなって思ってたんですけど。確かに上場企業さん、例えば消費財メーカーさんを支援してると5年でマーケットのシェア2割取れないんだったらもう出るなっていう話をするんです。だってそれだけのコストを使うわけです。参入戦略作るのに色んな調査を科学的にやって戦略を作ってチャネル構築をしてみたいな動きをやっていくと、2年3年かかるわけです。5年でマーケットシェア2割を目指さないのに出ても、結局求めている売上が上場企業って100億とか500億とか1000億とかそういう世界じゃないですか。マーケットシェア2割ぐらい取るからそういう世界が生まれてくる。
一方で中小企業ってたぶんマーケットシェアを取りに行くんではなくて儲けに行くっていう発想がたぶんすごい重要で、だからさっき言った費用対効果というのがあって、いちいち調査なんてちょこちょことやってガチガチに作っていたら費用対効果が悪いというまさにその…。
石原:全くそうなんだよね。うん。
森辺:ですから一番売上というか利益が上げられるトリガーを見つけてそこにスパンと行かないとたぶん難しくて、そこで成功してお金が入ってきたら初めてマーケットシェア5%まで頑張ってみようかとか10%まで頑張ってみようかみたいな、たぶんやり方が全く違うっていう話ですよね。
石原:そうですね。結構サバイバルな話をして、「交通費を回収できるものを何か持ってけ」っていうような言い方をしますし、社長が日本で仕事をしていた時に普通に売上の金額って50万だったら2泊3日でたぶん「売ってきたら」って言いますからね。それができるような何かがあれば永遠に行きつけられますよね。要するに中小企業の場合はコストの持ち出しが結構痛いので、それを解消するようになれば何度も行けるし、社員ももう文句を言わないしみたいな、だから何かしてくるものをまず見つけようというそういうのがありますね。
森辺:そうするとチャネルに直繋ぎされるっていう、買ってくれる人を探すんじゃなくて売ってくれる人を探すみたいなことをやるのが一番早いんでしょうね。
石原:そうだよね。大昔だったら本当に情報の格差があって、例えば昔仲良しだったおもしろい子がいて、学生の時からカナダにいてヨーロッパに行ってて、日本とヨーロッパに行ってたらモノの値段が違うじゃないですか。アンティークのバーキンなんかが向こうはすごい安いのに日本はめちゃ高いみたいな。その差額で見つけて世界一周したやつがいたんですけど、あんな感じですよね。今見つけるのがすごい大変なんだけど、それぐらいのことを考えて行けるぐらいでないと会社を連れて出て行けないよね。
森辺:そうですね。今ネットですぐ海を渡っちゃいますから。
石原:海外格差がないのがちょっと楽しくないですよね。色んな問い合わせが森辺さんのほうに来ると思うんですけど、中小企業がこれをやっちゃいけないとかこれは気をつけてねみたいなことを逆に3つぐらい挙げるとすると何ですか?
森辺:そうですね。日本語の喋れる現地人、そういう人を見ると「ああ、もうこの人しかいない」という現象になるんです。その人を信じ切っちゃう、その人頼りになっちゃうという傾向がものすごい強いので、日本語のできる現地人というのは一つです。最近は日本人が日本人をというのもアジアではものすごく横行しているので、現地にいる日本人が日本から来る日本人を日本企業をというのは一つあります。皆が皆そうじゃないですよ。優秀なコンサルタントもいますし、ただそういうことを年に何回か耳にしますというのが一つです。あと中小企業さんも「僕たちの製品は絶対すごいです。こんなに品質が良くてこんなに品格があってこんだけすごいんだって言うんですよ。「だから絶対世界でも売れるはずだ」って仰って持ってくるんですけど、「それ日本で売れてるんですか」っていうのを僕は必ず聞くんです。日本で売れてないモノをアジアに売ろうって言ったって結構難しくて。
石原:それはおもしろいね。
森辺:それは必ず確認をするんです。どちらかと言うと日本で売れないから格下のアジアに持って行こうという発想なのでそれは難しいし、生き残りをかけて的な、絶対アジアでサバイバルするより日本でサバイバルしたほうがいいので。
石原:そうですよね。
森辺:だとすると国内で延命処置をしたほうが僕はいいし、国内を立て直してから体力ついてアジアに行くほうがいいと思うので、必ずそこは確認をするようにはして、「これだけの期間とこれだけの費用がかかるけど本当に社長やりますか?」と僕は聞くようにしています。
石原:すごいいっぱい多種多様な質問がくるわけでしょ?
森辺:そうですね。
石原:同じ回答を何度もしたりみたいな感じになったりとかするわけですよね?でも向こうで言葉が通じないのにうっかり日本語を喋る外人がいたら危なそうだね。
森辺:結構いますよ。それでその人頼りで。
石原:どうすればいいんですか?そういう時は。
森辺:言うことを聞かないので一回騙されるまで待ってるというか。
石原:あ、そう?
森辺:絶対言うこと聞かないですよ。例えばセミナーか何かで会って、「私は向こうにパートナーのなんとかさんがいて、彼は現地の人で日本語が喋れて」って言って紹介されたりするんです。「私のパートナーはなんとかさんです」って。胡散臭そうだな~と思いながら「胡散臭いんで気をつけたほうがいいですよ」って言っても絶対言うこと聞かないし…。
石原:怒りますもんね。そう言えばね。
森辺:言わないですよね。2年ぐらいして…。
石原:そっか。森辺さんは帰国子女だから海外の人を見た時に日本人っていうフィルターがないからわかるんだ。
森辺:匂いというか。
石原:あ、そう?
森辺:2年ぐらいして「社長どうですか最近?」って言うと「いや~実はね、2年前に紹介した何々君いたでしょ?あの後4,000万ぐらい振り込んでね、どうしたらいいかな?」みたいな。
石原:お金を不用意に渡したら二度と返ってこないですよね。
森辺:そうですね。そういうのは。でも共通してます。人に依存して自分たちの戦略とかは全くなくて、完全に依存型のアジア展開…。
石原:僕のクライアントって海外にいっぱいいるわけですよね。それで香港で実は新卒でいきなり香港の日本人企業が勤めた会社に行った人がいて。それで彼はおかしくて、その社長に「パスポートっていうのはすごい大事なものだから預かっとく」って言われて「5年ずっと預かられて帰って来れなかった」って言って、本当に香港の人たちと一緒に新卒でやってずっと頑張って独立した人なんです。その会社が創業してから15年ぐらいいるわけですよ。でも騙されないって言ってましたね。何種類かの型に分かれて、「騙されない人って何ですか」って言ったら「目を見ればわかる」って言ってましたけど、それくらい苦労を、ちゃんとした日本人もいてそういう人を見つけるかどうかというのと、根付いて商売していない人がいるじゃないですか、フワフワしている人。あの人の言うことを何で聞くのかというのは全然わからないんだけど、それは怖いですよね。
森辺:「日本でその同じことを言われたらそれ信じます?」って言ったら「いや、信じない」、「何で中国で信じるんですか?」みたいな感じなんですよ。
石原:それはおもしろいですね。
森辺:そういうのはよくありますよ。日本で人が来て、「僕は政治家にコネを持ってて、僕の言う通りにすればこのエリアで大商売ができるよ」って言われて近寄ってきたら100%信用しないじゃないですか。それをアジアでやられると何かそんなことが起きちゃうのかもしれないって思い込んじゃうんじゃない?
石原:そう。ちょっと突っ込み入れたいんですけど、僕はすごい人脈を持っているとか王様知ってるとか貴族を知ってるとかって、ああいう話っていうのはどう考えればいいですか?
森辺:万に一つです。
石原:ですよね。
森辺:僕もこれ10何年こんな仕事してますけどもう万に一つですよね。
石原:千に一つじゃない?
森辺:万に一つです。能ある鷹は爪を隠すって言うじゃないですか。あれは世界共通で、アジアでも欧米でも能ある鷹っていうのは爪をそんなに容易に出さないし、「自分が何かできる、こんなにすごいんだ、あんなすごいんだ」…。
石原:これを聞いててドキドキしている人がいっぱいいると思うんですけどあり得ないよね?
森辺:絶対言わないです。あり得ないです。
石原:風習の違いで、日本人って割と一人対一人で仕事をするじゃないですか。彼らの場合もし権利を持った時に同じことを30人にも言いますよね。言われたほうは自分だけっていうふうに勝手に解釈する日本人がいて、「じゃあ君にこの権利を渡そう」と、権利文を渡してるんだけど、自分は相手からこの権利を僕だけもらったというように思っちゃうけど、それは「頑張ってごらん。やれたら確実になるよ」ということだから、例えば3,000万円で商品を売ってきたら次の扉が開くしっていうだけの話でしょ?オープンな代理店契約みたいな代理店約束なので個別なものはないって思わなきゃいけないんだけどすごい信じていっちゃう人がいるんだけど何なんだろうね。
森辺:向こうは独占くれとかってこっちがメーカーだと必ず言ってくるんですよね。逆に言うと。コネの話がさっき出たと思うんですけど、コネも普通に考えたらわかるんですけど、僕これはよく言うんですけど、コネって同じクラスと言ったら語弊があるかもしれないですけど、同じレベル感にいるような人たちがつながり合うから何かそこで生まれるわけじゃないですか。クラスが全く離れてる、例えば「アラブの王様を知ってるんだ」って言われても、小さな中小企業がアラブの王様と会って中小企業にはメリットがあるかもしれないですけどアラブの王様には全くメリットがないじゃないですか。コネって双方にメリットがないとビジネスはそこから生まれないと思って、ほとんど可能性でも確率でも。そうすると何かものすごい人を知っているとかっていうものの話が来た時に、そんなものと僕がくっついて何ができるんだろうというのと、向こうに何の得があるんだろうということを考えたら、たぶんそれは易々と信じなくて済むんじゃないかなと思います。
石原:その人には価値があって、その王様はあれだけど、その間に入ってくれる人にはおいしいんだ。それっていつぐらいからそんなことを思い始めました?
森辺:自分で創業した時に、「どこどこの会社の社長を紹介してあげるよ」って言ってくださる方が…。
石原:それは日本で?
森辺:日本でね。その方はたぶん純粋に森辺君とこの偉い社長が会っておいたらきっとどっかで何か生まれるんじゃないかなっていう気持ちで紹介してくれてるわけじゃないですか。僕は万全の準備をして会いに行くんですけど、悲しいがなレベルが全然違う。今の僕にはこの大社長の役に何も立てないっていう経験を創業時に何回もしてて、結局コネってそういうことだなって。もしコネを使うんだったら自分がその位置まで上がんないとなかなか生まれないなっていうのを感じてたので…。
石原:良い話ですね。
森辺:海外でも同じっていう。
石原:海外の場合はよりはっきりしているかもしれませんね。
森辺:そうですね。石原さんそろそろお時間なので今回はこれぐらいにして、また次回引き続きどうぞよろしくお願いします。
石原:はい。よろしくお願いします。
東:よろしくお願いします。