東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、いよいよ2015年、年が明けましたけど。
森辺:明けましておめでとうございます。
東:明けましておめでとうございます。今年もぜひ、森辺一樹のグローバル・マーケティングを、よろしくお願いします、ということで。
森辺:皆さん、よろしくお願いします。
東:去年は意外と二人での対談とか、ゲストを招いての対談が多かったんですけど、質問が結構溜まっておりまして。感想とかもいただいてるので、まず感想を。去年いただいたものなんですが、少し遅くなってしまいましたが、読ませていただきたいと思います。ちょっと長めにいただいてるんで、抜粋してペンネームというかイニシャルでA.A.さんから。中国に勤務されてる方からいただいております。
何度かメールをしようと思いながら、なかなかできないでいましたと。してくれればよかったですけど(笑) 私は記念すべき一回目より聞いてますと。
森辺:ありがとうございます。
東:ありがとうございます。私は某メーカーに勤務し、中国ビジネスに関わり10年。駐在は7年を迎えます、と。今では中国以外の国を含めたグローバル・マーケティングを担当しており、新しいことに対する商品企画の責任者です、と。ちょっとずらずらっと色々書いていただいていて、森辺さんのポッドキャストの話で印象に残ってるのは、3つありますと。1つは、水野さんとの出会いの話。水野真澄さんですね、ゲストに登場いただいている。2つ目が、日本製の綿棒のクオリティの高さ。3つ目が、ボールペンビックの話と。全くグローバル・マーケティングと関係ないところが響いていると(笑)
森辺:ビックなんかグローバル・マーケティング…うん。綿棒はね、黒い綿棒が好きだって話をしたのかな?なんだけど、補足をすると黒い綿棒も二種類あって、普通の黒い綿棒と、溝打ちしてある黒い綿棒があって。
東:ねじりですね。
森辺:ねじりが。あれなんか本当に、日本が産んだいい商品で、もっと世界に出て行くべきだと思うんですけどね。
東:ちょっと引き続き、感想をつらつらといただいておりまして。日本製の綿棒、先程言った。僕も日本へ出張すると、感心しますと。中国ではスポーツジムの会員となっており、また国内出張も多いので、年間100回は飛行機に乗ると。すごいですね。日本とは違う綿棒をよく使いますと。それと比較したときの日本製のクオリティの高さに感心しますと。もっとうまくプロモーションできたら、もっとうまくいけるのになと、いつも思いますと。
僕も素晴らしいと感じるものはたくさんありますと。その一例として、日本のブックカバー等、あと歯ブラシとかを挙げていただいたり、ボールペンのビックも僕は年に3回フランスへ行くこともあり、モノポリックスで売ってるボールペンを毎回買って帰りますと。
飛行機が遅れ3時間待ちだったので、時間ができたので感想を書きましたと。だらだら徒なるままに書きましたが、とにかく応援していますと。頑張ってくださいと。日本へ行ったときに、事務所に挨拶に行かせてくださいと。半分本気、半分冗談と書いてありますけど(笑)
森辺:ぜひ遊びに来ていただければ。
東:上海にお住まいなら、我々も上海行ってるのでね、どこかでお会いできたらなと思うので。Aさん、ありがとうございました。
森辺:本当にありがとうございます。
東:Aさんからの質問ではないのですが、別の方から。Hさんという方で質問をいただいていて。簡単に読ませていただくと、こんにちは、いつもポッドキャストを楽しく聞いていますと。途中から聞いたんですけれども、グローバル・マーケティングに近いところに携わっている仕事をしており、色々と悩みがありますと。森辺さんのポッドキャストのタイトルになっている、グローバル・マーケティングなんですけれども、森辺さんが考えるグローバル・マーケティングで、一番重要なことってどんなことと考えますか? みたいなことでご質問いただいてるんですけれども。グローバル・マーケティングに関わっていて、常日頃仕事でグローバル・マーケティング関係をやられている方だと思うんですけども、森辺さんがグローバル・マーケティングの中で最も重要なことって、どんなことですかっていう、ご質問です。
森辺:僕が色んな企業の方とお話してて、一つ思うのはやっぱり、マーケティングの基本プロセス、全体のフレームワークですかね。ここをもう一度、分かってるようで深く分かってないというかですね、ここをもう一度スタディするっていうことは、非常に重要なことだって思うんですよね。
なかでも、チャネルを作るっていうことが一番重要になってくるので、グローバル・マーケティングで一番重要なことは何かっていったら、多分その二点だと思うんですよね。チャネルだけ必死にやっても後でガタが出るので。マーケティングの基本プロセスを理解しつつ、チャネルを徹底的に磨くっていうことが一番重要じゃないかなと思いますけどね。
東:そうすると2つあって、1つめがマーケティングの基本プロセスを理解すること。ここもう少し教えていただきたいんですけど、そもそもマーケティングの基本プロセスってのは、具体的にどういうことで、どんなところが重要なんでしょうか。
森辺:一般的にRSTPMMって言われるもので、RはResearch(リサーチ)の略で、マクロ環境の分析とミクロ環境の分析してスウォットをするっていう、この3つの過程なんですけどね。どこの企業さんも、市場環境の可視化はできてるんですよ。いわゆるマクロ環境の可視化ってやつはできてるんですよね。弱いのはミクロ環境、つまりは競争環境の可視化っていうことが全くできていなくて。結局敵のいないところで戦うなんていうことってほぼ無いじゃないですか。
東:そうですね。競合する製品がない製品を持っている会社っていうことですよね。
森辺:もし自分たちしか作れないオンリーワンの企業があったとしても、おそらくその市場には、それにとって代わる別の形の商品が必ずあるわけで。競争環境が、例え企業としての競争相手が存在しなくても、マーケットとしての競争環境って絶対存在するんですよね。そうすると、その競争環境を明らかにして、戦略を作るってことはすごい重要で。特に敵の強さを理解せずに行って、当たり前のようにやられてしまうっていうことが非常に多いわけでね。そこが一つですよね。
ここまでやっちゃうと、進出するべきじゃなかったとか、戦っちゃいけなかったとかね。もしくは戦うべきだったとか、もしくはどの国にプライオリティを置いて戦うべきかっていうことの優先順位が出るんですよね。ですから一番最初のリスクを軽減できるっていう意味では、このRっていうのは非常に重要で。我々も企業さんのコンサルをやるときに、必ずそこから入るじゃないですか。だからここは一つですよね。
二番目のSTPってSegmentation(セグメンテーション)、ターゲティング、ポジショニングなんですけど。要はセグメンテーションとターゲティングが柔いんですよね。もっと因数分解して、めちゃめちゃ細かくセグメンテーションしてターゲティングをするっていうことをやっていかないと。日本ではやってるんですよ。それが海外に行くと、すごくザックリしてしまうってのは一つ大きな特徴としてあるのかなという気がしますよね。
ポジショニングなんかは、日本だとこういうポジショニングであるとするじゃないですか。それを海外でも同じようにそのポジショニングで取りに行く。必ずしもこれがいいってことじゃないんですよね。だからそこは変えていかないといけないし、一番ポジショニング変えてて、私たちの生活の身近にある会社でいうとね、100円ショップのダイソー。日本のイメージと海外のダイソーのイメージ全く違うんだよね。日本のダイソーさんって本当に、100円ショップ!安いよ!とにかく安いよ!っていう、本当に庶民向けのイメージでバーンと打ち出してるじゃないですか。ただ海外に行ったらダイソーの店舗の表面の色は黒だし、英語でDAISO JAPANって書いて
東:ちょっと高級っぽいですよね。
森辺:フランフランとかを想像してしまうような店作りになってたりするじゃないですか。フランフランは言い過ぎかな(笑) すみません、フランフランにすみません。ただ、かなりポジショニング変えてるわけですよね。
東:こないだベトナムのところにもありましたよね。
森辺:だから我々の身近なところで言うと、ダイソーなんかはポジショニングが完全に変えてますよね。だからこれは、消費財のメーカーさんでも、B to Bのメーカーでも当てはまることなんで。
東:それは森辺さんなりに、ダイソーさんは何でそのポジショニングを変えたのかっていうところを、分析じゃないですけど、森辺さんなりにどう考えてるんですか。
森辺:僕は日本で100円ショップっていうと、庶民じゃないですか。100円で何でも買える。安い物が買える。あまり高級な物は期待してないわけですよね。けど日本の100円ショップってアメリカのワンダラーショップとか99セントショップに比べたら、売ってるものが明らかに良い。両方とも中国で作ってるのに何で良いかっつったら、企画料が全然違うわけですよね。日本人が日本で企画したものを中国で作らせるみたいな。アメリカ人が企画したものを中国で作らせる物よりも、圧倒的に利便性の良いものがたくさんあるので、同じ100円でも良い物が作れるという話なわけなんですよね。
日本だと本当に庶民向けなんですけど、100円ってASEAN持ってったときに、必ずしも100円っていう物が我々日本人が感じる価値よりも高いわけですよ。そうすると、日本では安いショップ、100円ショップっていうイメージですけど、アジアに行ったら別に100円ショップって安いショップには必ずしもならないわけで。
であれば、ポジショニングを変えないと、本当に安いショップのポジショニングで行くんだったら、10円ショップとかにしないといけないだけでね。そこのギャップをポジショニングで埋めたっていう風に僕は理解してるんですよね。
東:それで結構うまくいってるということですよね。
森辺:そこが一つですよね。最後、最も重要なのがMM、Marketing Mix(マーケティング・ミックス)って言われるところで。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションということなんですけど。この中でプロダクトは日本の企業さん、どこも最高の物を持ってるわけで。海外行って言われるのは、高い。プライスのところ一つ言われるわけじゃないですか。もう一つが、チャネルがないわけですよね。結局チャネルを掴むっていうことをしないと、チャネルがないと絶対商品って売れないんですよ。だからここが一番重要で、チャネルがあれば商品が売れるか売れないか分かんないですけど、買う人のところまでは到達するわけじゃないですか。買う企業さんなり、買う消費者なり。そこの反応を少なからず見れるわけですよね。チャネルを先に作ってしまえば。そうすると、プロダクトの現地化もできるし、プライスの現地化もできるわけで。チャネルっていうものが一番不足してる、弱いっていうところですよね。だからこのマーケティングの基本プロセスのフレームワークをもう一度理解をして、それをターゲットとしている市場に当てはめて考えていく。ここがすごい重要なんですよね。中でもチャネル構築が非常に重要で。
先程のRであったミクロ環境の競争相手を知ると、競争環境を知るっていうところと、チャネルっていうところが、2つ選べと言われたらおそらくマーケティングの基本プロセスの中ではその2つが一番重要だという風に僕は理解をしています。
東:分かりました。じゃあ今日はお時間が来たので、この辺にしたいと思いますが。最後に森辺さんから少しお知らせがあるということで。
森辺:2015年、弊社スパイダーイニシアティブのグローバル・マーケティングセミナーの第一回目が、1月の20日だったかな?午後1時半から2時間半。消費財向けなんですけど、アジア新興国市場における戦略的チャネル構築ということで、かなり具体的な事例を用いてですね、食品消費財メーカーのためのチャネル構築のHow toのセミナーを実施する予定でございます。今回少人数で30人ぐらい限定で行うので、もし消費財食品関係のメーカーさん、ご興味があれば弊社のホームページにお申込ページがございますので、そこから見ていただければと思います。
東:ありがとうございました。ぜひ皆様の迷わずにお便り、もしくはメール等で感想をいただければと思います。またよろしくお願いします。
森辺:はい、ありがとうございます。