東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き質問が来ておりまして、質問がたまってるのにあまり紹介してなかったという、申し訳ないですけども、これから質問に答えていきたいと思います。今回はSさんという方からメールをいただいております。
いつもポッドキャストを楽しく聴いております。去年の10月ごろからポッドキャストを聞き始めて、森辺さんの口調の虜になって、第一回より繰り返し聴くようにしている毎日です。今、通勤で東京まで通っているので、その中でポッドキャストを楽しく聴かせていただいています。私は現状某メーカーに勤務しており、海外営業部に属している5年目の社員です。森辺さんの得意分野であるチャネル構築がまさに企業として課題となっており、特にアジア新興国でのチャネル構築を全社的に推進している最中です。
その中で私はアジア新興国の担当になっているんですが、我々の会社も先進国では意外とうまくいっています。ただ、それがなぜうまくいっているのかが私にはよく理解できないので、もしよろしければアジア新興国と欧米先進国でのチャネル構築の違いについて、森辺さんなりのご意見をお聞かせいただけませんか。これからも引き続き聞きますのでよろしくお願いします。
東:Sさん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございます。アジア新興国と先進国でのチャネルの違いはなんですか。これは一言で言うと、未整備か整備されているかの違いなんですね。アジア新興国は未整備、先進国は整備されている。
じゃあなんで未整備と整備されているのがあるんだっていうと、時代背景なんですね。欧米先進国の方が先に発展しているわけで、何事においても言えると思うんですけど、全てが整備されているわけじゃないですか。当然チャネルも同じで整備されてるんですよね。整備されているっていうのがどういうことかというと、優秀なんですよね。その中でのオペレーションがちゃんと回っている。しっかり回りきっちゃってる。
例えば、日本とアジアを比較した時に、日本って代理店さん優秀じゃないですか。ディストリビューターとか代理店とか特約店とか販売店とかって呼ぶかもしれないですけど、この人たちが、言ってみれば「みなまで言うな」ですよね。両者で決めた目標数値、今期いくらっていうのがあったら、それを黙ってでも遂行してくれる。ですからメーカーとしてやることは定期的なルート営業をして、代理店さんとの関係構築をして、引き合い管理をして、大型案件にはメーカーも一緒にユーザーさんに出突張ってって営業すると、いうことだけをしてれば回るんですよね。これが欧米先進国では近しい状況であると。だから比較的うまくいくっていうのは、どの日本企業も日本でその経験値があるわけで、それと同じようなことを若干欧米風に現地化してしまえば、それで回るわけですよね。アメリカのセールスマンなんかも売るものによって若干の差はあれ、セールスのプロですから、日本の営業マンよりセールスに関してはプロフェッショナリズムが高い。それがうまくいくっていうのは、まあ楽なんですよね。
一方で、アジアではなかなかそうはいかない。代理店としての歴史も短いし、機能やノウハウも少ないし。優秀なところはいっぱいありますよ、けどやっぱり欧米先進国や日本の代理店に比べたらまだまだなので、その人たちを教育していくってことをやらないといけないんですよね。ここがすごく難しさを感じるところで、多くの日本企業はそこまで考えていない。とにかくいい代理店を選んで、選んだらそこに任せる。あとは日本や欧米先進国でやってきたルート営業というものをやるんだけど、なかなか数字があがらないので苦労する、ということが一番大きな違いですよね。
東:なるほど。このSさんも5年目ということで、欧米ではうまくいってる。欧米流を会社としてアジアに持ち込もうとしているから、そこで違いが分からないから悩んでるのかなって思うんですけど。日本と欧米はほぼ一緒ですといった時に、大体の日本企業さんはそこでは成功している、それをアジアに持ち込んでうまくいかないっていう一番の理由はどこにあるんですかね?
森辺:メーカーがディストリビューター、まあチャネル、代理店、特約店、販売店に対する出突張り方が少なすぎるんですよね。日本や欧米だとそんな出突張るなよメーカーはっていう話なんですけど、アジア新興国だといわゆる引き合い管理みたいな生ぬるい管理ではなくて、代理店の営業マンのプロセス管理っていうところまでやらないと、なかなか数字がたたない。そんなの日本でやったら、何様だって話ですよね。メーカーが代理店に介入しすぎだみたいな話になると思うんですけど、アジア新興国ではそこまでやらないといけない。その介入度合いが深くないとなかなかうまくいかなくて、チャネル構築もB to Bの方が僕は楽だと思ってるんですよ。日用品、消費財とかファーストムービングコンシューマーグッズっていわれるFMCGなんかはものすごく大変で、100円、200円のものを何十万間口みたいな店舗に商品を並べて、ものすごい早いスピードで回転していくわけじゃないですか。そうするとチャネルつまりはディストリビューターに求められることって、すごく大きいんですよね。それをするためにP&Gとかネスレとかユニリーバなんていうところはチャネル、まあディストリビューターに対する介入度合いがめちゃめちゃすごい。ディストリビューターの会社の中に席があるとかね、毎日製品研修やってる、売り方研修やってる、なんなら彼らと一緒に売りに行く、そんなことをやってるわけなんですよ。だから一番大変な市場は、そこまでやってるよっていうのが大きい違いですよね。
東:逆にもう、そこまでやらないとアジア新興国どの国でも売りが立ちにくいってことですよね。
森辺:任せててバンバン売れて止まらないってなかなかないですよね。逆に怖いのが完全に任せてて、日本だと代理店がメーカーを裏切るっていうことはほぼないですよね。仮にその代理店にとって裏切って別のところとくっついた方が会社の業績が上がるって分かってたとしても、それを実行に移す代理店さんってそんなに多くないですよね。けど、ASEANだったら儲かるんだったら儲かる方にいくっていうのは普通の感覚ですからね。罪悪感なしにそういうことも起きうる。そうすると、チャネルを管理しきれていないと、せっかく売れてきたのに別の会社に変わってたとか、そういうことも往々にして起きるわけで、やっぱり一番エンドのところまで管理をしていかないと現状のアジア新興国では難しいですよということですね。
東:そうすると、ディストリビューターの教育と管理がポイントになってくるのかなという感じなんですけど、先進国でも、日本は最初のころは当然やってたんでしょうけど、それをやってた世代が今は引退していないですよね。そうすると、アジア新興国でそれをやれって言われてもやり方が分からない、どうやったらいいか分からないっていうのがそもそもの課題として、悩みとしてあると思うんですけど、森辺さんがひとつだけここだけはやっておいた方がいいってあげるとしたらどんなことですかね?
森辺:営業プロセスの管理ですね。例えば、年間の売上目標に両者が合意した時に、それをどうやるの?Howですよね。誰がやるの、Whoですよね。いつやるの、Whenっていう3つをすごく細かく分解をしないと、デイリーでプロセス管理まではさすがにディストリビューターも根を上げちゃうんで。でも少なくともウイークリーでは管理していかないと、月の売上数字が年間の売上数字を作るわけじゃないですか。ウイークリーの売上数字が月の売上数字を作るわけじゃないですか。そうするとやっぱりそこまでのプロセスを追っていかないと、なかなか難しいですよね。ただ、プロセス管理をやるっていうのはどういうことかっていうと、ディストリビューターも人間ですから、何だよお前らうるさいなあって話になるわけですよ。そんなこと言われる筋合いないよって当然思うわけですよね。そうなった時に、それでも一緒にやっていくっていうことはメーカー側にはすごく大きな覚悟が必要で、彼らのウイークリーのプロセスを管理するんだったら、我々もウイークリーで彼らと一緒に動く時間を作らないといけないし、もし両者の目標が達成できた時に、どんな世界が待っているのかっていうことも、ディストリビューターの経営層、ならびに最前線で営業する営業マン、こういう人たちにも本当の意味で理解させないといけないし、当然それに対するインセンティブも与えていかないといけないので、そんなに簡単な話じゃないですけどね。
東:分かりました。じゃあプロセスの管理がまずは重要であるということですよね。Sさん、これで少しでも役に立てればと思います。森辺さん、今日は時間が来ましたので、また次回よろしくお願いいたします。
森辺:よろしくお願いします。