東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、質問をいきたいと思います。今回はHさんからお便りをいただいております。
森辺さんのおっしゃるチャネルの重要性はよく理解できますと。ずっと疑問に思っていることがあります。我々製造業であっても、チャネル戦略を持たずに海外進出するのは無謀というのはよく分かります。商社に任せるという方法は重要なことを他人に依存することになります。商社に任せるにしても、方針や戦略を共有しなければ駄目だということも分かります。しかし、製造業の中でもセットメーカーに部品を供給している会社にとってチャネルとは何だろうと考えた時に行き詰まってしまいます。中国に進出された多くの中小企業は元請けの進出に合わせてできた、もしくは既にある仕事のコストダウンのためにローコスト生産国だった中国に進出したという事情が大半だと思います。その場合、B to Cビジネスとは違い、B to Bビジネスの場合は直接取引をすることが多くなると思います。そうすると、チャネルという概念をB to Bに当てはめるとすると、B to Bのチャネルってどのように考えたらいいのかという壁に当たります。
特に中国は製造業が2000年前半から生産国として出て行ったと思うんですけど、そこでのチャネルということを考えた場合、それは中国だけじゃないと思うんですけど、どんな感じですかね。
森辺:最初に言った商社の話なんですけど、おっしゃるとおりで、商社って二種類あるじゃないですか。輸出商社と輸入商社。輸出商社っていうのは日本から見たら日本の商社ですよね。現地に輸出しますよと。一方で輸入商社っていうのは現地の商社で、日本から輸入しますよと。結局、商社モデルの時代ってとうに終わっちゃってるんですよね。日本の港から現地の港までが商社の仕事じゃないですか。チャネルっていうのは現地に着いた中の国の流通構造のことを指しているので、ここを取れなかったら、大陸間の間はチャネルじゃないんですよ。ここはまず大きな違いとして理解をしましょうねっていうのがひとつですよね。
B to Bのチャネルをどう考えたらいいかって、おっしゃるとおり、直販か代理店販売かじゃないですか。直販が多いのかもしれないですけど、直販チャネルか代理店チャネルかっていう話で、代理店チャネルの方は前回とか前々回にも話してるので、逆に言うとB to CよりもB to Bの方がやりやすいですよ、代理店戦略をしっかり考えてチャネル開拓すればいいだけなので。
そこはおいといて、じゃあ直販チャネルをどうやって強化したらいいかって話ですけど、これも結局プロセスで、日本で直販チャネルが強いところ、日本電産とか東ちゃんがいたところなんかそうだと思うんだけどね、売ることに長けている、直販チャネルに長けている会社って狂ったようにプロセス管理をしているっていう理解を僕はしているのね。逆に聞きたいんだけど、日本電産の時って、自分の与えられた目標数値があって、それを多くの企業は出来たか出来なかったかっていう結果至上で管理されると思うのね。出来なかったら駄目な営業マンだな、出来ればいい営業マンだなと、それが上司の仕事みたいな。でも本当に優秀な、営業の強い日本電産みたいな会社って、上司が営業マンのプロセスを管理してるっていう理解をしてるんだけど、そこは逆にどうだったの?
東:日本電産の場合だと、売上管理が月単位じゃなくてウイークリーなんですよね。週単位で売上管理表を見直すっていうプロセスがあって、それが一つの軸になってます。外資系もそうですけど、ウイークリーで管理すると一年間が何週間かっていうのが、52週じゃないですか、でも多くのメーカーの人に聞くと、そもそも知らない。そうすると、52回はないですけど、40数回の売上管理を毎週行ってる。それが月で出て。もうひとつ違うのは、月で出てきた時に、達成すればOKですけど、未達の場合は1000万未達であれば、その分を次の月もしくは今期中に補わなければいけないから、どこかで上乗せしないといけないですよね。でも多くのB to B企業は1ヶ月締りました、未達で1000万です、と。次の月も同じような形になってきちゃうっていうのが、そもそも違ってくると思うんですよね。
特に日本電産なんかもそうですけど、直販が強いところって代理店を使うっていう感覚が日本ではないし、海外でもないと思うんですね。その売上管理だけとってもそうだし、営業マンの管理も全てプロセスが決まっていて、サンプル一個発注するにしても、社内で全部ドキュメント化されてるんです。普通だったらISOになっていれば、そういう管理がされているはずなのに、日本の多くの企業はドキュメンテーションの管理がされていないから何に何が紐付いているのかがプロセスで追えないんですよね。誰がいつ何を発行して、そのサンプルがいつ出荷されて、そのサンプルの評価が具体的にどうで、具体的にセットメーカーに対するアプローチをこうしましたっていうのが全部プロセスになってて、それを上司みたいな人が管理していくんですけど。
森辺:結局、どれだけ因数分解してプロセスを管理できるか、直販の強い会社はそこが出来ているわけだよね。そこがロールモデルとして完全に出来上がっているから、そこに営業マンが入って、管理されていくとそういう話だよね。
東:B to Bの場合は、大企業は世界中に拠点があるじゃないですか。だとすると、生産国である中国に、開発は世界中で行うけど生産は中国とかインドネシアとかASEANで行うっていうモデルが出来てるんで、結局開発案件を全て終えてるんですね。でも中堅中小企業になると、開発は日本側では終えてるけど日系メーカーしか終えてませんと。他の欧米企業とか中国企業、韓国企業、台湾企業とかの開発を終えているかっていうと終えていないんですよね。そうすると、生産するのは中国ですけど、結局開発を終えていないと案件化しないんです。っていうのが悩んでるところだと思うんです。直接取引するにしても、日系のA社の仕事はずっともらえます、でもだんだん減っていきます、減った時にA社の売上が減ったからどこかでカバーしなきゃいけない。日系企業のB社、C社には当たれるけど、欧米企業のA社に当たったところで、開発関係が押さえられていないから、結局量産になってもここに決定権はありませんみたいなことになる。だとすると、どういった部品かはよく分かりませんけど、そもそも開発の本国を押さえていないとB to Bの上でチャネル構築っていうところは出来ないんだということですよね。
森辺:主たるクライアントの根幹を握るというのは大きい流れの中では絶対に必要なことじゃないですか、B to Bはね。一方でジェネラルな領域で言うと、営業マンのプロセス管理がどれだけ細分化されているかって、そこですよね。
東:たぶんB to Cの場合だと、その国の小売りがお客さんなので、基本的には開発っていうプロセスはないじゃないですか。でもB to Bの時に違うのは開発っていうプロセスが、まだ多くは日本だったら日本、アメリカだったらアメリカ、ヨーロッパだったらヨーロッパっていう本国でされているっていうところに違いがあって、B to Bのチャネルっていうことを考えた場合、そこを押さえられている企業と押さえられていない企業ではチャネルの構築の仕方が違うんだと思うんです。だから中小企業はそこで壁にぶつかってしまう。そうするとどこの企業をターゲットに絞って開発するか、アプローチをするかしないかっていう話だと思うんですよね。
森辺:そういうことです。Hさん、今回、東忠男のグローバル・マーケティングになっちゃいましたけど、そのとおりだと思います。なのでその二つを少し注意してやっていくのが重要なんじゃないかと思います。
東:チャネル構築としてはB to Bの方が簡単かもしれないですけど、開発というプロセスが一つ増えるとなると、B to Bの方がグローバルに展開してないと、中国一極だけを見てても難しいというのが悩みとしてあるんだと思うんですよね。日本の多くの中小企業が中国からアジアに行っても売上に行き詰まるのはたぶんそういうところで、そもそもの根っこの部分の開発が押さえられていない、押さえられていないのにチャネルなんか広がらないんじゃないですかっていうことです。
森辺:そうですね。その二点ですかね。
東:じゃあ今日はこんな感じで。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。