東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き質問をいただいております。今回はTさんから質問をいただいております。
いつもポッドキャストを楽しく聞いております。私は去年の11月くらいから聞き始めました。二人の楽しいやり取りを毎朝通勤しながら聞いています。私自身は某日本メーカーに属しており、そこでマーケティング関係に従事しております。森辺さんの専門分野でもある消費財メーカーに属しております。やはり消費財メーカーの市場は欧米先進国企業が強く、日本企業はグローバルではなかなか苦戦を強いられている毎日です。森辺さんはよく欧米先進企業の方がチャネル構築が進んでいるということをおっしゃっていますけど、具体的に何が日本企業と違うのか、どう進んでいるのかを森辺さんなりのご意見をいただけないでしょうか。これからもポッドキャストをお聞きしますので頑張ってください。
森辺:ありがとうございます。
東:ありがとうございます。Tさんからご質問なんですけど、欧米先進企業と日本企業のチャネル構築の違い、特になんで欧米企業が進んでるんでしょうか。
森辺:まず、これ消費財メーカーさんって食品日用品メーカーさんだと思うんですけど、食品日用品メーカーのグローバルトップテンって全部欧米企業なんですよね。その代表格がP&Gとかネスレとかユニリーバとかコカコーラとかケロッグって企業になってくると思うんですけど、結局これらの人たちって大陸問わず進んでるんですよ。どの国に行ってもP&Gの商品はあるし、ネスレのコーヒーは置いてあるし、ユニリーバのシャンプーは売ってるわけなんですよ。何が違うのっていった時に、一番は歴史背景が全然違っていて、アジア新興国をマーケットとして捉えた時期が日本の食品消費財メーカーよりも20年くらい早いんですよね。結局アジア新興国でずっと投資し続けてきたという、非常に長い歴史の背景があって。
東:森辺さんの感覚として、日本企業がアジア新興国を商品市場として捉え始めたのはいつぐらいだと。
森辺:最近なんじゃないですかね。いや、工場出しましたとか、販売拠点置きましたとかはそりゃ10年前、15年前もあるんですけど、本当の意味で予算つけて本気でやるぞというふうになったのは日用品でここ数年だと思いますよ。
東:2010年とか2011年くらいから?
森辺:そう。いや、もっと早くから出てるんですよ。でも本気っていうのは出るから本気じゃないじゃないですか。お客さんとお付き合いをしてて、変わったなと思うのはここ3年くらいの話なんですよね。僕は日本の企業が本気になったのはその辺だと思います。
東:じゃあ20年前というと1990年くらいから。
森辺:80年後半くらいかな。そのくらいから欧米はやってるんですよ。80年後半というと、僕はシンガポールに住んでたんですけどね、もう既にありましたからね。シンガポールは当時良かったですけど今ほどじゃないし、インドネシアやタイやマレーシアやフィリピンなんかにも行くことありましたけど、とてもじゃないけど早くシンガポールに帰りたいと思うほどの発展してなさ度合、汚さ度合だったんですよ。そんなところで商売するなんてはっきりいって考えられない、儲からないに決まってるってみんなが思ってたわけですよね。
東:森辺さんは80年代後半だと何歳くらい?
森辺:14歳。
東:そうするとシンガポールで食べてたお菓子とか飲んでたものってどんなもの?
森辺:僕の好きなスナック菓子はチートス、キャンディー系っていうんですかね、日本だとハイチュウだけどスキトーっていうちっちゃいつぶつぶのキャンディー。本当はチョコボール食べたかったけどM&M's、本当は小枝チョコレート食べたかったけどスニッカーズみたいなそんな感じだったんで。百貨店の輸入品の棚に日本のお菓子があるんですけど。
東:どういうものがありました?
森辺:僕の大好きなたけのこの里、きのこの山とかね。僕、M&M'sがマーブルチョコレートだと思ってたんですけどね、日本のマーブルチョコレート食べたらものすごいおいしくて。チョコって日本の方がおいしいじゃんと思って。ガーナチョコレートとかね、ミルクチョコレートとかね、ハーシーズが一番おいしいと思ってたのに違うんだみたいな、そういう状況ですよ。でも日本のチョコレートとかお菓子って高くてね、輸入品棚に置かれてるのは。14歳でお小遣いシンガポールドルで50ドル、当時75円くらいだったかな。ランチ代含みだったので、アメリカンスクールってカフェテリアでランチ食べるんですけど、毎日5ドルくらい使うわけですよ。そうするとあんまり残らないじゃないですか。だから日本のお菓子はなかなか買えなくて、アメリカの安いお菓子を食べてた。話がだいぶ逸れましたね、すいません(笑)
東:その頃から欧米企業は輸入棚じゃなくて普通に売られてたと。
森辺:今でもASEANに行って、大手のスーパーなんか行ったら日本のお菓子置いてあるじゃないですか。特にイオンなんかには置かれてるんですよ。でもパッケージ見てもらったら分かるんですけど、結局輸入品なんですよね。そうじゃないのもありますよ、でも多くが輸入品で、インポーター通じて輸入されて値段がめちゃめちゃ高く売られてる。あんなもの現地で売ってるうちに入らないですからね。それに比べると欧米は早いですよ。現地の人たちが買う棚に現地価格で並ぶっていうのが欧米ですからね。そこに割って入っていかなきゃいけないっていう難しさが日本企業にはある。だから欧米はまず早い。
東:ひとつは歴史的な背景がありますと。
森辺:もうひとつは欧米の食品日用品メーカーさんってこのビジネスのことを本当によく分かってるんだなって思うんですけど。100円200円のものを売ってるわけじゃないですか。そうすると、どれだけの店舗に商品を並べられるかっていうこと、一店舗当たりどれだけ広いスペースに商品を置けるかっていう、店舗数の合計が売上に跳ね返る。もっというと店舗数の置かれてるスペースの合計がそのまま売上に反映するわけじゃないですか。それをよく分かってるので、とにかく棚を取る、間口を取るっていうことを徹底的にやるんですよね。
だから戦略がすごい違ってて、企業の戦略って、導入期、成長期、成熟期、衰退期とあるじゃないですか、欧米企業のアジア新興国における食品日用品の参入戦略っていうのは日本企業みたいにまずイオンと取引するとか、まず大手のモダントレードと取引するということではなくて、まず間口を取るってことなんですよね。だから間口を取るために徹底的に投資をすると。アジア新興国の近代小売りの間口なんてたかだか数千とか数万とかじゃないですか。一方で伝統小売りの間口って数十とか数百とかあるわけで。伝統小売り取らなかったらマーケットシェア取れないってよく分かってるので、近代取るのは当たり前、その上で導入期にいかに伝統で間口を取って、成長期に一気にプロモーションかけて、売上を縦にどかーんとあげるかっていう、全部この法則なんですよね全部が。だからそれがチャネルの構築に全部現れてるんで、間口を取るためのチャネル構築。日本企業の場合はモダントレード取るためのチャネル構築。ここが一番大きい違いですね。
東:じゃあ、導入期にそういった間口を取れるか取れないかというのが大きな違いですね。
森辺:そういえばこの題材で、日経ビジネスオンラインで連載持ってるじゃないですか、そこで書いたんですよ。「アジアにおける戦略的チャネル構築」っていうシリーズで連載を書いてます。その中でP&Gからもアジアのチャネル構築っていうのを書いていて、日本企業と欧米先進グローバル企業のP&Gとのチャネル構築の違いを書いているので、それをぜひ読んでいただければなと思います。「森辺一樹スペース日経ビジネス」とかですぐ出てくると思います。ちなみに「もりべ」ってうつと部活の部で「森部」って出ちゃうんですけど、僕の「べ」は一辺、二辺の辺なんで、「もりへん」って打たないといけないんですけど、そうすると「へん」が変態の変なんで、それをもう一回変換して「森辺」ってならないといけないんで、すみません、ややこしい名前で。ただ「森辺一樹スペース日経ビジネス」で出てくると思います。
東:ぜひ、日経ビジネスオンラインの「アジアにおける戦略的チャネル構築」第一回目の題材として「P&Gから学ぶアジアのチャネル構築」というところにも同じような形で記事が載っておりますので、ぜひこちらをご覧ください。
森辺:あとこの連載、下に評価をつけるところがありまして、ぜひみなさんの評価をつけてもらえればなと思います。
東:分かりました。森辺さん、今日はこの辺でお時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。