東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:では森辺さん、前回に引き続き、金津さんをお迎えして、またQ&Aを引き続き続けたいと思うんですけども、今日はどんなかたちで質問を投げかけましょうか。
森辺:そうですね、今日も二つほど質問を考えてきておりますので、これから中国でeコマース事業に参入を考えているリスナーの皆様のお役に立てればというふうに思っております。また、eコマースの事業だけじゃなくて、金津大輔が中国で事業家としてやってきたことは、多分いろんな皆さんの参考になると思いますので、ぜひ楽しんで聞いていただければと思います。じゃあ金津さん、よろしくお願いします。
金津:よろしくお願いします。
森辺:じゃあ早速質問の方にいきたいんですが、金津さんがもし、もう一度中国でネット通販をやるとしたら、今我らがスパイダー・イニシアティブの取締役ヴァイス・プレジデントですから、もう一度通販やってほしくないですが、もし仮にやるとしたら、何を変えて、どうやりますかね。
金津:そうですね、今もう一度中国でネット通販をするとするならば、という質問ですが、まあ、マーケティングをもう一度、一から、基礎からやって、もう少し前回よりも精度の高いマーケティングプロセスを踏んで、しっかりとした戦略を組んでやりたいなと思います。
森辺:なるほど。前回のお話と少しかぶるのかもしれないですけど、結局、ハーバード、スタンフォード、ウォートンみたいな優秀なMBAがもってしても、やっぱりマーケティングが重要だという、そういうところに行き着いていると、そういう話ですよね。結局、商売するのは、何をいくらで誰にどう売るんだということであって、そこを組み立てていくというのがマーケティングでございますので、それをやっぱり、しっかりやっていきたいという、そういうことですよね。中でも、前回もちょっとお話あったと思うんですけど、ブランディングとか価格とか商品とかっていうお話だったと思うんですけど、あの辺の話ってもう一回お聞かせ願ってもいいですかね。
金津:そうですね。まあ、もう一度中国ネット通販をやるとしたら、今の中国のeコマース市場っていうのは、広告、オンライン公告の需要と供給のバランスが、あまりにも供給が少ないと。需要が多くて供給が少ないので、高止まりしていると思うので、そういう状況の中で、どうしたら利益が出せるのかというのをしっかり考えるべきだなとは思います。
森辺:なるほど。結局その、インターネット広告の価格が高過ぎるという、そういうことなんですかね。
金津:そうですね。なので、投資対効果のROIが著しく低くなってしまうと。それに寄与するためにブランディングと、商品もしかりなんですけれども、市場の需要と供給のバランスがあまりにもかけ離れていれば、いくらいい商品とブランディングがあっても、なかなか利益を、広告を打つというベースで出すのは難しいのかもしれないなと思いますけれども。
森辺:結局それって、eコマースのプレイヤーさんが利益を着実に出していくっていう戦い方をせずに、基本的にはファンドから巨額な投資を受けて、それをブランディング広告投資をすることによって会員を集めてトップライン伸ばして、時価総額上げてIPOして、みたいな、そういう日本とは違った経営スタイルがあるから、結局、広告に投資する金額が増えると。で、そういう企業がたくさんいるので、インターネット広告代理店も値段を下げなくて済んでいるという、そういうことになっているわけですよね。
金津:そうですね。
森辺:だから一台1,000万する車をインターネットで仮にもし売るとすると、1,000万円の車でございますから、利益が多いと。利益の多いものを売れば、広告にいくら投資してもROIは高いけども、一個いくらのものを、安いものを売っているんであれば、ROIが低くなっちゃうと、そういうことですかね。
金津:そうですね、はい。
森辺:なるほど。その、何を変えるかのところなんですけども、マーケティングをしっかり組み直すというところがあると思うんですけども、マーケティング以外だと、どんなことが言えますかね。
金津:そうですね。オンラインとオフラインの販売網っていう構築の比重を、恐らく今回、もしもう1回やるんであれば、見直すとは思いますね。
森辺:結局ね、金津さん、よく話しているんだけども、ECということで市場がバブっていると。まあ今は若干落ちついてはいるものの、投資が集まりますよね。投資が集まるんですけども、実はeコマースで売り上げを立てるんではなくて、オンラインの方で売り上げを立てると。ECというのは先ほど言っていた広告、外に広告出すと高いわけで、その広告の意味合いでECを利用していただけで、まあ当然、そこで売り上げが上がりゃあ上がるに越したことはないんですけども、実はリアル店舗戦略を本当に徹底的にやるっていうことが、中国でのECの必勝法なんじゃないかと、そういうことを言っているわけですよね?
金津:そうですね、そういう見方もできるんではないかなと、思っていますけれども、それはそのブランディングとか価格とか商品によるとは思うんですけれども、eコマース企業だからeコマースに固執して、オフラインは一切っていうところは、恐らく今の状況では難しいんじゃないかなとは思いますけども。
森辺:なるほどね。それが理由で結局、LAMIUを金津さんがやっていた時、も世の中的にはECという見られ方をしていましたが、LAMIUの経営陣はあくまでマルチチャンネルの下着の通販会社だということを自分たちで言ってたと思うんですけどもね、そういう、いわゆるポリシーなわけですよね。一時期LAMIUさんって、カタログ販売とかリアル店舗、それからEC、それから電話コールとかもやっていたんですよね?
金津:そうですね、はい。
森辺:そんな中で何が一番ROIが高かったんですかね。
金津:恐らく、そうですね、オフラインの実際の店舗。そこは着実に利益が出るというチャンネルだったと思いますけれども。
森辺:トップの営業成績残していて。カタログ通販とかって、やっぱあんまり…。
金津:カタログは、恐らくeコマースが先に出てしまった中国ではですね、もう一度カタログで、紙ベースで購入してくださいと、カタログを見たあと電話で、もしくはそれをECでっていうのをお客様に要求するのは、ちょっと難しい感じになっていますね。あと、カタログが届きにくいと。いろんな事情があるので、郵便事情も悪いですし、ポストも、あと引っ越しもされる国の方たちなので、カタログはあまり合わないなと思っています。
森辺:基本的にポスト小さいですもんね。カタログが入らないっていうのと、あとやっぱり、ある一定クラス、中間層以上の人たちというのは、マンションにガードマンがね、中間層の住んでるマンションでもありますから、なかなかカタログがポストに投函されないっていう問題もあるし、こんなこと言うと中国の郵便局に怒られちゃうかもしれないですけど、ダイレクトメールなんかは郵便局が配達するのが面倒くさいから裏で燃やしているなんてことは全然ありますもんね、中国とかではね。日本でこれやったら、お茶の間のテレビで集中砲火を浴びるんでしょうけども、そんなことは結構中国ではたくさんあるので、カタログはなかなか難しいということですね。じゃあすいません、もう1個ぐらい質問いきたいんですが、これから中国でネット通販事業に参入する企業にアドバイス、もちろんネット通販企業じゃなくても、これから中国市場並びにアジア市場でも結構ですけども、参入するような企業にアドバイスはありますかね。
金津:これは月並みなアドバイスになってしまうと思うんですけれども、日本と全然違う市場を持っている国、中国なので、より一層、日本で事業するときよりも事業計画を、マーケティングの調査をしっかりやって事業計画をしっかり描(か)くと。で、それをぶれずに着実に実践すると。いろんな誘惑があると思うんですけれども、それに惑わされずに、着実に事業計画を実践するということに尽きるんじゃないかと思います。
森辺:なるほど。マーケティングの基本プロセスに立ち返るということですよね。結局、マーケティングの基本プロセスの詳細に関しては、spyderagent.comを見ていただければいいと思うんですけど、マーケティングの基本プロセスというのは、いわゆるフィジビリティスタディで実現可能性を検証するためにやるものなので、われわれがそれを推奨してるのは、法人を作るためのフィジビリティスタディなんて全くいらなくて、それは手続きの話であって、いかにして売るのかっていうとこを考えると、やっぱりマーケティングの基本プロセスが絶対だという、そういうことなわけですよね?
金津:そうですね。
森辺:なるほど。あと何かありますかね。マーケティングの基本プロセス…。
金津:基本に忠実に、しっかりと、違う国なので特に、マーケティングの基本プロセスに忠実に、まあその…。
森辺:やっぱりそこなんですよね。
金津:そうですね。
森辺:なんか、マーケティングの基本プロセスの中でも、日本企業ってマクロ環境を分析して、市場が大きいとか、伸びているとかっていう分析は結構得意なんだけれども、一方でミクロ環境の方の競合の戦い方の分析とか、もしくは競合の脅威の分析みたいなことが全くできていなくて、SWOTにおいては自分たちは日本の会社だしメイドインジャパンだしすごい、みたいな、こういう勘違いをしている企業が結構多くてですね。特にeコマースなんて戦い方が違うっていう話を前回も前々回もしていただいたと思うんですけども、競合の戦い方を開くというのは、やっぱり重要なんですよね。
金津:そうですね。下着の場合も、いろんな競合がいたんですけれども、そこに門戸をたたいて、いろいろ教えてもらいながら、戦略を組み直していったっていう経験があってですね。けどそれよりも恐らく自分が何ができるかっていう、その自分の強みをベースに、恐らく経営したほうがうまくいくんじゃないかと思いますけれども。
森辺:なるほどですね。ちょっとリスナーの皆さんにご案内ですけども、スパイダー・イニシアティブではですね、金津大輔のアドバイザリーサービスというものをやっております。これからeコマース市場に参入を考えている企業の皆様、並びに中国アジア展開をされたい皆様ですね、金津大輔がアドバイザーとしてお手伝いをさせていただくということをやっておりますので、詳しくはcontactsi@spyder.grp.comまでお問い合わせをいただければと思います。はい。東さん、今日で最終日になりますが、ナビゲーターとして何かあればですね、お話いただければと思います。どうですかね、この掛け合い。
東:そうですね、貴重な掛け合いだと思うんですけど、金津さんみたいなかたちで中国のECを知っている人っていうのは、実体験をしてきた人っていうのは非常に少ないと思うんですよね。今38ですよね。38歳という若い…。
森辺:37じゃないかな。
金津:37ですね。
東:37歳で、若いということで、今まだ、まだこれから、いろいろな経験をわれわれとしても、していきたいと思っていますし、アドバイザリーサービスなんかは、こないだの講演会やったら、何社かもうお問い合わせいただいて、もう実際に始まっていると。で、いろんな企業さんが声を、金津の声を聞きたいというご要望が強いと思いますので、これからぜひ、アドバイザリーサービスを特に導入していただく企業さんが増えるんじゃないかなと思っていますね。
森辺:あとセミナーにも一度、スパイダーのグローバルマーケティングセミナーって毎月1回、無料でやっていますけども、そんなところにも金津大輔をですね、呼んでお話をしていくっていうのも面白いかもしれないですね。5月でしたかね、金津さん、リードさん、リードジャパンさんのセミナーに呼ばれて、金津大輔が講演をしたというのがありましたけども、あれも非常に人気で、あのあとアドバイザリーサービスに何社か入られてという、そんなあれがあったと思うんですけど。なるほど。じゃあまた、金津大輔をお招きしてお話をさせていただくこともあるかと思いますが、今日はこの辺でお別れとしたいと思います。どうもありがとうございました。
東、金津:ありがとうございました。