東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、デジタル版が出版になったということで、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』からダイジェスト版をお送りしているんですけど、123ページの「売れないのは売る方法を間違えているから」っていうことなんですけど、これは言いたいことは具体的にどんなことなんですかね?
森辺:これは食品日用品とかの一般消費財メーカー向けに書いてる話なんですけどね。大手の企業さんがアジアに進出しましたと。進出したんだけど、いつまでたっても導入期。全然売上あがらない。ちんたらちんたら売れてると。で現地法人作って日本人の駐在員送り込んじゃったもんだから、一人当たり3000万くらいかかるわけですよ、上場企業とかだとね。そうすると赤字が垂れ流れていって、何億とか何十億とか累積赤字が積み上がると。3年が過ぎ、5年が過ぎ、けどマーケットシェアはなかなかあがらないし、いつまでたっても導入期っていう、そういう会社が非常に多いんですよ、日本企業ってね。
結局それって売る方法を間違えていて、大きく分けると2つ間違えているんですよ。アジアの小売り流通って伝統小売りと近代小売りと2つあるんですけどね、数でいうと圧倒的に伝統小売りなんですよ。例えばアジアの中でも一番近代小売りが多いだろうと言われているインドネシアでも近代小売りの数は1万8000から9000くらいなんですよ。2万ない。一方で伝統小売りは250万店とか260万店とかっていう数があるんですね。桁が違う。ベトナムなんかだと近代小売りはあって800から900。伝統小売りが50万店から52、3万店くらい。圧倒的に数が違うじゃないですか。確かに伝統小売りは1小売り当たり平均1個しか商品を置けない。けど近代小売りの中の3割くらいは300くらい置ける。300倍の差がある。けど、何十万店とか何百万店あったら、300倍置けたとしたって意味ないじゃないですか。
そうすると、導入期だから近代小売りなんだと。成長期になったら伝統小売りに行くんだっていう会社はいつまでたっても導入期。だって横軸の間口が増えないと、商品を陳列させる間口が増えなかったら一生成長期になんか行かないじゃないですか。いくら何のプロモーションをどうやったって成長期になんか入らないんですよ、永遠に。だからアジアに出て近代小売りばっかりやってる会社はずっと導入期。ここが大きな間違いで、アジアに出たら導入期にこそ間口を増やすことをやらないといけない。けどそもそも近代小売りの間口が少ないんだから伝統小売りの間口を徹底的に取るってことに3年くらい投資をしないと、一生成長期になんか行けませんよっていうのが食品や日用品、飲料品に言えることなんですね。ここがひとつの間違いですと。
もうひとつの間違いは何かっていうと、商品をお客さんに知ってもらえなければ、小売りに並べても意味がないんじゃないかって思ってるんですよ。買ってくれないから。だから間口を取る前にその商品が何なのかを知らせる必要があるんじゃないか。テレビCMどかーんってうつわけですよね。何千万、何億もかけてね。瞬間風速で終わるわけなんですけど。結局間口ってチャネルじゃないですか。チャネルでビロウ(below)のプロモーションをうつことによって、その商品が何なのかを消費者に伝えられるプロモーションツールなんですよ、チャネルって。チャネルは単なる売るための間口だって思ってるんですよね。けど実はチャネルっていうのはお客さんにその商品を知らしめることのできる非常に重要なプロモーションツール。それを活用し切れていない。僕が言っている、間口を取れ、導入期にはまずは間口だっていうのは同時に取った間口でプロモーションかけろ、アバブ(above)じゃなくてビロウのプロモーションをかけろっていうことを申し上げていて、そこを大きく間違えている会社が非常に多い。だからいつまでたっても導入期と。
東:特に売りにくい商品とか商材、その国にまだないとか、ないと思っている、日本企業さんが売りにくいと思っているものを売ろうとした時に、森辺さんのところにもそういう、商材を広げるのが先なのかチャネルを取りに行くのが先なのか、みたいな質問が来ると思いますけど、どっちが先なんですか?
森辺:一緒なんですよね。チャネルを取るイコール商品を広めるということになるので。単なる、チャネルを取るって並べてくるだけじゃないんですよ。並べてその店頭で何をするかっていうことを、そこに組み合わせることによって費用対効果があがるわけじゃないですか。間口を広げるっていう1つの行為で2つの成果を生めるわけですよ。何なのかを知らしめて、売る間口も獲得できる。
よく考えてほしいんですけど、お客さんでもいいんですけど、チョコレートみたいな誰でもアジアの人が見て分かるようなものは間口取れば売れるんじゃないのと。コーヒーみたいなものは並べたら売れるんじゃないのと。我々の商品はそうじゃないと。日本由来の商品で、向こうの人たちは口にしたこともないと。その商品を並べても何なのか分からないから買わないんじゃないかとおっしゃるんですよね。いやいや、それは違いますよと。コーヒーが何なのか分からない時にネスレは間口を広げることで、その間口をプロモーションツールに変えてコーヒーの味を知らしめていったわけじゃないですか。チョコレートを食べたことがない時代に欧米系のチョコレート会社は間口を取ることでチョコレートをアジアの人たちの口に突っ込んでいったわけですよね。ガムなんて噛む習慣がなかった時に、ガムっていうものを広めていったわけじゃないですか。その時に使ったプロモーションっていうのはチャネルなんですよ。だからチャネルをプロモーションに使うっていうことはものすごく重要で、そこを間違えちゃってる。
東:そうすると、今勘違いなのか、そこの理解をなかなか出来ない方々っていうのは、チャネルがプロモーションツールになるっていうのが腑に落ちないんだと思うんですけど、チャネルがなんでプロモーション効果を発揮するのかっていうのはどう考えているんですか。
森辺:チャネルっていうのは消費者が直接買いに来て手に取るわけですよ。テレビでは見る。けどチャネルでは手に取るわけですよね。その手に取る現場でこれが何なのかっていうのを知らしめれたら、ものすごく即効性が高いわけじゃないですか。そのチャネルでそれを売ってくれる伝統小売りの店の人が、それの説明をその場で出来るわけなんで、お客さんに直接的に語りかけれるもので、マスマーケットに向けてドンとやるのはもっと後なんですよ。広め方として。まずは買ってくれるコア層をまずは掴んでいく。そこがある一定の量になったら一気にマスに広告出したらいいですけど、一番最初はやっぱりそこですよね。最初からテレビやったって難しいですよね。
例えば、我々日本人がシャンプーしたことないとするじゃないですか。とにかくシャンプーがお店に並んで、誰もシャンプーなんて知らないんで言語も知らないんで買わないですよね。じゃあテレビCM流してシャンプーはこういうものですよっていって売れるかっていうと売れない。それよりも店先でシャンプーってこうやって使うんだよっていうことを教えることが先で、そこでコアな層を掴んだ後に、ある程度シャンプーが浸透してから、テレビCMうつからシャンプーが売れるっていう話で。アバブは後なんですよ。テレビCMはアバブ。ビロウっていうのは店頭プロモーションで、そういうのが先っていう。それをチャネルで一緒にやっちゃいましょうっていう。ネスレもユニリーバもP&Gもそうして大きくなってきてるんですよ。
東:今でいうとレッドブルなんかもそんな感じですよね。日本でやってきたのって最初クラブとか特定のところでサンプリングして、今コンビニで置いてあってCMもやってますけど、地道なことやってボーンと来てCMやってっていうような。
森辺:まず堅い層を掴む。そこからCMで、CMはマスマーケティングなんでもっと後なんですよ。それが日本のマーケットに慣れすぎちゃってるんで、アジアでそれをやらない。だからチャネルがプロモーションになるっていう発想自体がそもそもなくて。新規でそんな市場で売ったことがない人たちがやってるわけだから当然そういう発想にはなっちゃうんですよね。だからみんなそうですよね。
東:「売れないのは売る方法を間違えているから」っていうことは売る商品が悪いから売れないわけじゃなくて、売る方法とか手法が違うんですよって言うことをおっしゃりたいんだと思うんですけど、この章をまとめていただくとどんな感じになりますか。
森辺:伝統小売りの比率が高いんだから、まず伝統小売りの間口を取っていくっていうことが重要ですよっていうことは先ほど申し上げた通りで。その伝統小売りの間口をプロモーションにも同時に使えるんだから、つまりは間口を増やすっていうことイコールプロモーション機会も増えるってことなんですよね。で、その両方が実現できるのがチャネルですよと。だからアジアに進出したら最初の3年の導入期で勝負がついちゃうんですけど、導入期にやることはとにかく徹底的に間口を増やすこと。間口がある一定量いったら今度はテレビCMやったらいいですよと。そうしたら横軸に広げた間口が一気に縦軸に膨れ上がるので。そこで挽回点じゃないですか。だからそこまで頑張りましょうねという話で、いつまでたっても導入期でちんたらちんたらしている会社は売り方間違えてますよっていうことを申し上げている章がこれです。
東:最後に『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』をまとめて、この本に対する思いとか、これを読んでどんなことを分かってもらいたいかっていうのをまとめて終わりたいと思うんですけど。
森辺:僕は本を読むのが実は嫌いでして、飛行機の中でアジアに到着するまでの3、4時間で読める本を目指して書いた本なんですね。非常に読みやすい本なので、デジタル版で買っていただいてもけっこうですし、amazonで本で買っていただいてもけっこうですし、またぜひ一度読んでいただけたらなという風に思います。ポッドキャストでも感想を募集して、その感想や質問にも答えていきたいと思いますし、今も別の本を何冊か書いてますけど、この『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』も2が出せるように頑張っていきたいと思いますんで、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
東:森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。