東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:東京に本社を移してきてからの話をしたんですけど、最後にお金の問題か人の問題か、最終的にはお金の問題ですと。そこの苦しみがあったということだったんですけど、最終的にお金と付き合っていく上で友達になろうと思ったって言ってたんですけど、具体的になるきっかけっていうのは売上で苦しんだとかいろいろあると思うんですけど、どうやってなったかとか、お金の問題で苦しんでる企業家の人もこのポッドキャストを聴いていただいてると思うので、その苦しみは分かるけど、そことどうやって付き合っていったらいいのかということがまだ分からない人もけっこういると思うんですけど、そこはどんな感じなんですか。
森辺:コストとプロフィットなんですよね。儲かってないからお金がないじゃないですか。苦しいじゃないですか。ここを変えれる方法は2つあるんですけど、ひとつは悩むわけじゃないですか、どうしようお金がないって。スイッチを切るっていう能力がすごく重要で、その問題を考えても突き詰めてもしょうがないから、考える時は考えるんだけど、それを24時間考えてもしょうがないわけなんですよ。何の解決にもならない。だからいったんスイッチを切る。この習慣ができるかどうかっていうのがひとつの重要な要素になる。ただそれって究極的な解決法じゃないんですよ。自分の精神状態をフラットに保つためにスイッチをいったん切れる。例えば1日のうち12時間はお金のことを考える。けど12時間はスイッチを切らないと寝れないわけですよ。僕当時ね、お金が1億がグッと減っていった時に、夜中3時にガバッと汗かいて起きるわけですよ。会社が潰れる夢を見てね。そんな状態が長く続けてたら身体がもたないんで、スイッチを切れる能力っていうのをひとつ養ったんですよね。けどそんなことは究極的な方法じゃなくて、やっぱりお金の悩みから開放されるだけ儲けないといけないんですよ。そこに到達しないと絶対にこの悩みから開放されなくて。
じゃあどうやって儲けるのっていう話なんですけど、一番簡単なのはプロフィットを出すっていうこと。今お金が減っていってる、要は月に回っていかないから苦しいわけじゃないですか、経営者って。月に回すっていうことがすごい重要で、単黒、単黒、単黒、単黒ってこれの積み重ねじゃないですか、通期の決算黒字って。そうすると単黒してればしてるだけ、精神状態ってずっといいわけですよ。そうすると、自分の会社のプロフィットが100でコストが200だったらもう苦しいわけじゃないですか。そうするとプロフィットを200とか300にするよりもまずコストの200を100にするということを先にやった方が絶対に楽なんですよね。効果が早い。それを絶対にやらないと駄目。それができないと潰れていくし、若手の経営者なんかは飯とか食いに行ったりすることもあるわけですよね。そうするとやっぱり分かるんだよね、今こいつ弱ってるな、とかって。こいつ強いこと言ってるけど今弱ってるよね、っていうのがやっぱり分かるし、自分も分かられちゃってるかなってのが自分でも分かる。それが非常に辛い。けど当時はやっぱりそういうのがあって、ここ5、6年そんなことは全くない、ほんと楽だなと思いますけど。その2点がすごい重要ですよね。プロフィット100でコスト200の状態を続けてたら途中でおかしくなっちゃうんですね。プロフィットの方を200にしよう、300にしようって頑張るのに1年かかるじゃないですか、けどその1年の間に弱りきっちゃうんで、まず200かかってるコストを100にするということを先にやって、その苦しい時期を半年にしちゃう。半年にして、そこからプロフィットをやるってことをしないと、経営にいい影響を与えないって僕は思ってるんですよね。
東:そういった形で付き合いを変えていったら、徐々に稼げるようになっていったってことですね。
森辺:そうですね。怖い感情あるじゃないですか。経営者になった瞬間から始まるお金っていうものにまつわる感情。その感情とお友達になることでそれをクリアしていけるわけなんですけど。
東:そうすると、コストを削減していって、実際にプロフィットをあげる段階になっていくと、どうやって稼いでいったかは、そこでまた何かターニングポイントじゃないですか。コストは削減できました、でも稼げない人って企業家の中にもいるじゃないですか。そこで稼げるか稼げないかっていうのはひとつの分岐点なんじゃないかと思うんですけど、森辺さんはなんで稼げるようになっていったのか、何か自分の中でありますか。
森辺:僕は選択と集中だと思っていて。よく聞くじゃないですか、こういう言葉って。世の中にはいろんな人がいろんないいこと言ってるんですよ。選択と集中もそうだし、御社のコアコンピタンスが何か、とかね。みんな意味は理解してるし、頭では理解してるんですけど、実際にそれを自分の経営のステージに落とした時に本当にそれができているかっていうと、できてないんですよ。自分の会社はこれもできる、あれもできる、それもできる、みんなできる、全部できるんです、うちはって言うんだよね。なんだけど、いやいやそうじゃなくて、お前ができる一番は何なんだ、誰にも負けない一番ってどれなのっていうことに本当に絞って経営をできるかっていうとすごい少なくてね、実際やれてるかっていうと。
東:怖いですよね、絞るのって。
森辺:なんだけど、僕はそれをやったんですよね。それをやると、やっぱり伸びましたよね。その選択して集中したところが、本当に伸びる市場環境にあるのか、競争環境にあるのかっていうことは非常に重要なんだけど、やっぱり一番強い自分のフィールドで風穴を開けないと、何でもできます、みたいなのは無理だと僕は思うんだけどね。
東:何でもできますっていうのが成り立たないじゃないですか、大体。っていうのはなんでだと思いますか?
森辺:だって特にベンチャー企業じゃないですか。ベンチャー企業は経営資源が少ないわけで、何でもできるわけなんかないんですね、普通に考えたら。でも気持ちは何でもできるんです、気持ちはね。なんだけど何でもできないんですよ。そうするとやっぱりお前が本当にできることは何なのかっていうことなんだと思うんですけどね。でも僕もそれを理解するのにすごい時間がかかったから人のことはあんまり言えないんだけどね。そこはすごい重要なこと。
東:それがどうして森辺さんには分かったっていうか、走りながら分かっていったってのもあると思うんですけど、何が最終的に後押しになった?
森辺:まず予算権限ないところにいくら営業したって予算なんか出てこないじゃないですか。それで日本に来たっていうのがひとつあって、それは何か気付いたんですよね、動いてて。とにかく動かないと駄目だよね。動かないやつは気付きも何にも入ってこないから、とにかく動くっていうのは重要な要素だと思うんですね。動いても気付かないやつはまた駄目だから、それもまたなんだけど、とにかく動かないと気付きは入ってこない、チャンスも巡ってこない、オポチュニティは入ってこないわけだからまず動くよね。動いても気付かないやつはずっと動いてることになるから、ぐるぐる同じところを回ってるっていう、だから気付くっていうことが必要で。
東:気付くっていうのは何をきっかけに気付くんですか。けっこう動くのは意外と誰でもできると言ったら変ですけど、やろうとするじゃないですか。たぶん多くの人は気付きが。それはたぶん森辺さんが自然に身に着けてる力なんでしょうけど。
森辺:なんか神が降りてくる時があるんだよね。感覚的になんだよね。あっこれだって、なんか思う時が。
東:東京に本社を移したっていうのは、たぶんこれだって思った時じゃないですか。じゃあ東京に本社を移して、もうワンステップ行こうとした時に、稼ぐっていう力を身に付けるためにこれだって思った時ってなんかある?
森辺:東京に移そう、予算権限のある本社に営業しようって行ったのは、自分で営業して中国や香港の法人に予算がないっていうことは分かるじゃない。一方で東京の方に行くと予算を持ってる、こんなに違うんだ、これは東京だって気付いたんですよ。そこから選択と集中をした時に、端から見てて、この規模でこれもできる、あれもできるって、仮にできたとしても、ROIが徹底的に悪いんですよね。Return On Investmentが。だって10のことを同時にやるってことは10のことを学んでいかないといけないわけじゃないですか。その時に10のあげるスピードと、1個に絞って1個をあげるスピードって絶対1個に絞った方が早いんですよね。全部が中途半端じゃん、10個こんなことやってるけどって。結局、経験値がどんどん知識となって積み上がっていくわけじゃないですか。そうすると10種類のものの経験値を10段階積み上げると100じゃないですか。けど1個のことを10段階まで積み上げると10なんですよね。そうすると、1個のことを積み上げた方が10倍早いわけですよ。だったら絶対そっちでしょうというのを途中で気付いたんです。10をまず1個で積み上げて、10積み上げたらお金が儲かってるわけですよ。そしたら、隣のもう一列に10をまた積み上げるっていう投資ができるわけじゃないですか。そうやっていった方が絶対早いなって思ったっていうね。
東:10を積み上げた段階で具体的にどんなことを森辺さんがやっていったのか過去を振り返ってどんな感じですか。
森辺:とにかく数だよね。数をこなすっていうことと、あとお客さんに育てられたっていうのが本当に多くて、海外のマーケットリサーチなんて、いろんなことあるわけじゃないですか。それをお客さんと一緒に作っていったというのがすごく多いですよね。我々の技術とか我々の知識とか我々の何とかっていうよりも、本当にお客さんに助けられたっていう思いが強いですかね。それが積み上げを作っていってくれたっていうんで、今の僕があるのも今までお付き合いしてくれたお客さんが今の僕を作ってくれたっていう思いがすごく強くて感謝していますよね。
東:そろそろ時間が来てしまったので、今日はここまでにして、また次回、本来であればこれで終わりですけど、また次回引き続き少しお聞かせいただきたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。