東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:前回は日本企業のグローバル戦略を考える時に、チャネルファーストになってないのがひとつの課題ではないかと。そんな時にチャネルが先なのか、アジア新興国でブランドを築くのが先なのかっていう議論になりがちじゃないですか。そうするとどっちが先であるべきかっていうのは、森辺さんなりにもう一度ご説明していただくと。
森辺:まあ前回同様、チャネルファーストなんですよね。チャネルファーストで、そのチャネルを通じてブランド力を作っていく。BTLから作っていくっていうことになると思います。
東:費用対効果を見た場合、チャネルを作る方が安いっていうのが、日本だとチャネルがあるからそこの算出ですとか、具体的にどうやってチャネルを作っていくかっていうところが明確に分かっている企業と、そうでない企業がいると思うんですけど、チャネルとブランドを作る時の費用対効果を具体的にどう見てるか詳しく教えていただけないでしょうか。
森辺:基本的にブランドを作っていくって、テレビとか新聞を通じたマスメディアの活用でのブランド作りっていうだけじゃないじゃないですか。ソーシャルメディアも出てきたし、いろんなインターネットメディアがあるわけですよね。それを通じてより安価にブランド力を作るっていうことはできるんですけどね。
そもそもなんで日本企業がブランドが先かチャネルが先かでチャネルが先っていう発想にならないかなんですけど。今日本にある大手の消費財メーカーさんね、100年くらいの歴史があるわけじゃないですか。そうするとその企業が一番最初に創業した時、ブランドが先なんて絶対考えてないんですよ、創業者は。何を一番最初にやったかっていったら、チャネルを作ったはずなんですよ。チャネルを作って販売をしていく過程の中で、ブランドがついてくるわけじゃないですか。100年っていうと創業メンバーはもう引退してますよね。名誉会長か、もうお亡くなりになられてるか。その次の次のその次の世代くらいが今引き継いでるわけで。そうするとチャネルを自分たちの会社の創業期に作ってきたんだっていうことを国内で想像できないわけですよね。だからチャネルが重要だなんていう発想には至らないんですよ。
けどアジアとか海外に行くっていうことは新しい会社をそこで興すのと同じことじゃないですか。そうするともう何をおいてもチャネル。ここが一番重要で、チャネルもブランド力がないと置いてくれないんじゃないかとか、製品が現地適合化してないと置いてくれないんじゃないかって言うんですけど、チャネルにそういうアプローチをすることでそれを学んでそこを変えていくっていうことをやっていくべきなので、頭1個も2個も先に出なきゃいけないのはチャネルなんですよね。それは、先進グローバル企業、つまりはASEANの市場でマーケットシェアを持ってる会社の参入戦略を全部開いていくと、絶対的にチャネルファーストなんですよ。これは変わらないっていうことです。僕はそういうふうに理解してます。
東:そうすると、ブランドを作る時とチャネルを作る時の費用対効果っておっしゃってたんですけど、当然チャネルを作る方が安いと森辺さんはおっしゃいましたけど、なんでそうなるのかを少し説明していただくと、どうなる?
森辺:例えばATLとBTLどっちがお金かかるかって、やる規模にもよるんですけど、基本的にはATLの方がお金かかるわけじゃないですか。マスにどーんとうつわけですから。で、マスにうった時にその商品がチャネルに並んでなかったら、いわゆる流通してなかったら、1億円の広告うちました、でも跳ね返りが悪いわけですよ。だからASEANなんかでよくあるのが、とにかくモダントレードの主要MTには商品並べたよと。そこでマスメディアにCM一気にうったと。けどそんなにマスにうったのに、売上が大して伸びない、もしくは瞬間風速で終わる。そりゃそうですよね。MTの市場が2割しかなくて、8割がトラディショナルトレード。このトラディショナルトレードに商品が置かれてなくて2割のモダンにしか商品が置かれてないとすると、この2割のチャネルしかない中でマスメディアに広告うつわけじゃないですか。当然跳ね返りが悪い。なので最初にやるべきはモダントレードに商品を置くっていうのはもちろんなんですが、トラディショナルトレードの間口をいかにたくさん獲得して、全体の2、3割くらい、ASEANでいうと2、30万間口は最低取った上で、いや取りつつBTLをやりながら、それが2、30万間口になったところで一気にATLをうっていかないと、投資対効果ROIが悪いですよね。同じ1億のCMうっても、100返ってくるのか1万返ってくるのかじゃ全然差が出るわけじゃないですか。なのでそれだけ費用には差が出てくるし。
一方でチャネルを取るっていうことは、特にトラディショナルトレードのチャネルを取るっていうことは労力はかかるけれども基本的にはディストリビューターと一緒にやるものなので、費用はそんなにかからないわけですよ。いわゆるチャネル獲得費用、営業費用なわけですよね。だから1間口獲得当たりの経費がどれくらいかかるのかっていうことを計算していくと、圧倒的にROIはMTに置いていきなりATLやるよりも、トラディショナルトレードの間口を獲得しながらBTLやる方が費用は安い。しかも着実に積み上がっていくっていうことなんですよね。
東:そうすると、TTをやる場合、ディストリビューターという名前が出てきましたけど、具体的にどういう手順で何をやっていけばいいかを簡単にご説明いただくと、そこがイメージできないからブランドをまず作ってそこからTTをやろうとか、そういう発想になると思うんですけど。
森辺:基本的にはチャネルは2つ必要なわけですよね。自分たちの現地法人が持つ営業マンで作っていくチャネル。これを先進グローバル企業といわれる企業はモダントレードにフォーカスしてるんですよ。そこは自分たちでやりましょうと。一方で8割とかのシェアを持つトラディショナルトレードの方にディストリビューターを活用しているわけですよね。これもエリア毎にディストリビューター決めて、そのディストリビューターと共に間口数を獲得していくということをやるわけなんですけどね。
ステップとしてはディストリビューターという人たちが、どういう規模のディストリビューターがどれぐらいその国にいて、どういう営業マンでどういう配架ルートを持っていて、どれぐらいのエリア占有率があって、みたいな情報を徹底的に取らないといけないんですよね。その中でディストリビューターを絞り込んでいって、最終的に自分たちに一番合ったところを抽出して、そこと交渉して、そこを教育して管理してっていうことをやっていくんですけどね。
そうすると、必ずしも大きいディストリビューターがいいかっていうと、先進グローバル企業はそんなとこ使ってなかったりするんですよ。そこに着手できてない企業っていうのは非常に多いですよね。どうしても小売りに目が行きがち。それは食品日用品で言ったら、日本で言ったら、セブンイレブンとローソンとイオンとヨーカドーに置けなかったら存在してないも一緒なわけじゃないですか。そうするとやっぱりそこに目がいくわけですよ。そのまんまの感覚をASEANでも持ち込むわけですよね。けどそんなことではないわけで、そういう近代小売りの数っていうのは限られているわけで、そこはそこで重要なんですよすごく。
ただ本当の意味で勝ちに行くんだったらそうじゃないよねと。トラディショナルトレードだよねと。そこも日本の上場企業の大手は分かってるんですよ。MTよりもTTだって。そこまでは分かってると。みんな言うと。MT論かTT論みたいなとこになると。そこから一歩先に進めないのはTTを取るためのディストリビューターを整備して、選定して、そこをマネージメントするっていう3ステップにイメージが湧いてないんですよ。ここがすごい重要なんですよ。
東:分かりました。キリがいいところで今日はここまでにしたいと思います。また次回よろしくお願いします。
森辺:よろしくお願いします。