東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:前回なんですけど、ASEANについてお話をいただいたと思うんですけど、もう一回振り返りからさせていただいてもよろしいでしょうか。
森辺:ASEANのマーケットというのは10カ国ありますよと。東南アジア諸国連合と言われる10カ国ある中で3つのグループに分かれると。ひとつはシンガポール、マレーシア、タイ。ここがグループA。インドネシア、フィリピン、ベトナム。これがグループB。で、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ。これがグループCとした時に、グループCは正直、マーケットポテンシャルがまだ未知数。ミャンマー、カンボジアはこれからですよというところはあるものの、かなり上級者用というかまだまだBOPのマーケットだったりもするので、いったんちょっと置いておいて、また今度話しますけど、基本的にはこのグループAとグループBの攻略をどうするかと。このグループAとグループBの攻略の方法が全く違いますよという話を前回した記憶をしています。
東:グループAとグループBに分かれてると思うんですけど、グループAはそこそこ日本企業も出来てる市場ではあるというような感覚を受けるんですが、具体的にどう違うのか、その違いをもう少し分かりやすく説明いただいてもよろしいでしょうか。
森辺:グループAは先進ASEANなんですよね。グループBは発展途上ASEANというふうに僕は理解をしていて。グループAのシンガポール、マレーシア、タイっていうのはモダントレードの比率が半分くらいまで来てるんですよ。基本的にはモダントレードに商品を並べれば、日本企業は赤字にはならない。これは食品、菓子、日用品、ステーショナリー等々のいわゆるコンシューマープロダクツの話をしてますが、赤字にはならない。食に関して言うと、日本食ブームみたいなものもしっかり確立されているし、ある程度日本食材を専門に取り扱うディストリビューターなんかもしっかり確立された国であると。なのでそこを通じてMTだけをターゲットにしても利益は出ますよと。一方でグループBのインドネシア、フィリピン、ベトナムというのはまだまだトラディショナルトレードの比率が高い。8割とか85%とか。日本食材を専門に扱うディストリビューターも少ない。あったとしてもレベルが低い、小さい。そうなってくると、なかなかMTだけをターゲットとしても黒字化にすることは難しいと、こういう市場なわけです。
東:そうするとグループAについて日本企業はどういう形で成り立ってるというような感覚を受けるんでしょうか?
森辺:基本的には輸出でビジネスをする。例えば、日本食材を専門に扱うようなディストリビューターが日本の商社さんから混載で商品をコンテナで輸入して、それを自分たちのクライアントになるレストラン、ホテル、スーパー、ハイパーにディストリビュートしていくというわけなので。日本企業としては日本の商社を使ってやってるところもあれば、並行で出ちゃってる会社もあるし、現地に法人作ってやってるのもあるんですけどね。比較的日本食材が売れるモダントレードが確立されてるので、まずはそこからやる。ただ言っても半分トラディショナルトレードが残ってるわけで、日本食材専門スーパーだけに商品が置かれたって意味ないわけじゃないですか。そんなのアジア展開ではないわけなんで。いかに現地の残った半分のトラディショナルトレードを取るための優秀なディストリビューターを活用するのか、自社の営業部隊を組成するのかして、そこのマーケットを取っていかないといけないという市場。ただ半分のモダントレードの日本食びいきの市場があるので、まあ出ても大きい火傷はしないですよ。ある程度市場が出来上がってる。けっこう多くの日本食は出てますからね。それはメーカーが直接出してる場合もあれば並行で出ちゃってる場合もありますけど、っていう市場ですよね。
東:もうひとつグループAでいうと、今タイ、シンガポール、マレーシアと言われた、特にシンガポールであると思うんですが。大企業なんかはシンガポールをビジョナルヘッドクオーターとしてASEANを見てるみたいな消費としてのシンガポールと、そういう統括拠点としてのシンガポールとして機能している企業もあると思うんですけど、そういう企業が具体的にどうやって統括してるのかとか、もしくは森辺さんが感じる印象っていうのはどうですかね。
森辺:もともとね、シンガポール1980年代に生産拠点を出してるんですよ。その流れで、そこにビジョナルヘッドクオーターをくっつけた、みたいな。そうこうしているうちにタイにも工場があるし、ベトナムにも工場があったりとかして、その辺で作った商品をシンガポールとかマレーシアとかタイとかで売ってますよという、いわゆる少し進んだタイプの会社と、あと日本から商社通じて輸出してるという2つのパターンですよね。
基本的には輸出でやる時に前金で全額もらって商品を出荷するんで、国内取引と同じようなリスクがない商売をしてるんですよね。けどその多くが日本がらみのスーパー、もしくはローカルの大手のスーパーでも日本食とか輸入品専門コーナーにしか並ばないみたいな感じなので、ビジネスの大きな拡大はないですよね。毎年101%、102%、103%成長、みたいな。そういうイメージですよね。ここを変えていかないといけない、グループAに関しては。
どうやって変えるのかっていう話なんですけど、結局ディストリビューター任せで、そのディストリビューターがどこに配架してるのも多くの日系食品メーカーは分かっていないし、何ならTTに手を出すなんてことを言うとアレルギーがあるわけなので、なかなか手が出てないわけなんですけど。欧米の先進グローバル企業のキャドバリーとかリグレーとか見てみたら、思いっきりローカルのマーケットに入ってるわけですよ。そこと勝負しないといけないわけで。韓国の菓子メーカーやタイの菓子メーカーやインドネシアの菓子メーカーなんかも今はいっぱしのメーカーとしてガンガンASEAN市場に商品を流通させてるわけでね、そことの差がだんだん縮まってきちゃってるので、かなり急がないとやばいですよという。そんな状況なんだと思うんですけどね。
東:グループAに関しては、最終的にはTTまで入っていった方がいいと。
森辺:このTTも、レイヤー5つとか4つとかに分けれるわけですよ。いわゆる上位TTみたいなところ、上位2レイヤーくらいでいいんですよね。そんな下のね、横2メートル、奥行1メートルみたいなTTに日本の食品並べる必要ないんでね。まあ駄菓子とかだったらそこまで行けると思いますけど、いわゆるテレビCMやってるような日本の菓子メーカーさんがそこに商品を並べる必要は全くないので、少なくとも上位2レイヤーのTTくらいまでは入らないと、そのうち全部MT化するんじゃないかって言ったって、25年50年の話ですよ。なくならないですから、それで消費者はTTで買ってるものをそのままMTで買う傾向が強いので、なかなか厳しいですよね。
東:分かりました。そしたら今日は中途半端なところですがお時間が来たのでここまでにして、また次回お願いしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございます。