東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回のASEAN6の話をしていたんですけれども、なかなか日本企業がASEAN含めて、特にグループBと呼ばれるベトナム、インドネシア、フィリピン、では結構苦戦をしているじゃないですか。日本で一兆円とか数千億をあげてる企業が、なんでアジアに行くと、当然それより大きなライバル企業が、競合が、P&G含めて、ネスレ含めて、静観してるっていうのはあると思うんですけれども、それにしてもFMCGと呼ばれるような業界は特にそこが苦戦しているように思えるんですけど、森辺さんなりにそれどう見られますか?
森辺:そうですね。一言で言うと、もったいないに尽きるんですけどね。これ別に、前回まで話してた食品、菓子、日用品、いわゆるコンシューマプロダクツと言われる、そういう商品じゃなくてもそうなんですけど。80年代、90年代の日本の絶対的な地位とステータスみたいなのあったじゃないですか。そういう時代がね。
東:特に森辺さんなんかシンガポールにいらっしゃったんで、海外から日本を見てたと思うんですけど。
森辺:やっぱ誇らしかったわけですよ、その時っていうのはね。日本食で世界が溢れていたんで。また、ある限られた層しか買えなかったっていうね。特にアジアなんかではね。だからその名残りなんだと思うんですけど。結局アジアのマーケットに入って、その上位の人たちだけを狙うんだったら、富裕層の数なんて先進7か国の方がまだまだ多いわけで。やっぱりそのマジョリティーのマーケット、中間層のマーケットに入っていかないと全然いけない。
例えばお菓子とか食品とかでいうと、日本製品の加工食品は高級なんだから、とかね。日本のお菓子は非常にいいお菓子なんだと。だから、売れるでしょ、みたいな。いや、買いたいと思う人だけ買えばいいんだよ、みたいな。そういうのがやっぱ非常に大きくて、本気でマジョリティーのマスマーケットに入っていっている企業が少ない。それが非常に残念で。例えばチョコレートね。高級なチョコレートなんてヨーロッパ行けばいくらでもあるわけですよ。超高級なチョコレート買う人はそれ買うんですよね。そうするとやっぱりど真ん中の中間層のマスマーケット狙わなかったら、まったくもって意味がないわけじゃないですか。日本の素晴らしいお菓子ね、アイデアが素晴らしいわけじゃないですか。食感とかね。味も然ることながら。そしたら、かっぱえびせんのモノマネお菓子とかね、おっとっとのモノマネお菓子とかね、日本のチョコレート菓子のモノマネお菓子みたいなものはアジアの企業がいっぱいつくって出してるわけですよ。で、アジアの人たちはそれがどっちが本物かわからないまま買っているわけですよ。カップラーメンにしたって、何にしたって。それが非常にもったいなくて。
ほんとにこのままやっていたら、ガラパゴス、ガラパゴっちゃうよっていうね。携帯がガラパゴったわけじゃないですか。家電もガラパゴったわけですよね。それが事例がそこにあるのに、日本の産業で成功してるの車しかないわけですよ。そんなガラパゴっちゃう事例があるのに、なんでまだガラパゴるようなことやるのっていうのが、やっぱ根本的に僕はあると思ってて。各メーカーのね、海外事業部はすごい一生懸命やってるんですよ。それに開発がついてこれてない、みたいな。企画がついてこれてない、みたいな。
東:なるほど、なるほど。
森辺:そんな悪いものつくるのは僕たちの会社の、何だろう…
東:ブランドが、とか?
森辺:ブランドが、とかね。それは日本人基準で言ってる話でしょと。現地で言ったらそんなことないんだよ、みたいな話で。極端な話で言うと、日本でやきそばにゴキブリが入ってた時期があったじゃないですか。
東:そうですね。
森辺:別にアジアでそれ入ってたってあんな大騒ぎにならないわけですよ。どのチャネル変えたってやきそばゴキブリ混入事件のニュースしかやってないわけでしょ。そんなことは起きないわけで。ニュースにすらならない。そういう市場なわけですよ。だから品管を疎かにしていいって言ってるんじゃないですよ。ただ日本とはマーケットの特性が全然違うんだよ、ということをやっぱり理解して、開発もね、企画もね、生産も、その上でやっぱりマスマーケット狙っていかないと、どんどんガラパゴっちゃう気がしてて。
東:なるほど。そうすると、海外事業部は一生懸命やっていて、そういった危機感も意外と話をしてると…
森辺:ある。
東:持っているじゃないですか。ただ海外事業部っていうのはあくまでも、日本企業っていう中で見ると、メジャーかマイナーかっていうと、どちらかというと、マイナー…
森辺:マイノリティーですよね。
東:はい、入ってきて。マイノリティーの中で、やっぱ開発部門とか、そういった生産部門を動かさないと、TTのマーケットに入っていけないと思うんですけど、そのへんを森辺さんなりにどういう形で変えていくのか、もしくはそういった変えていかなければいけないと思っていると思うんですけど、それはどうしたらいいんですかね?なかなか開発とか生産っていうのは、企業の中でも、基本的には製造業なわけで、そこの部分っていうのは非常に強い力を持っていると思うんですけれども。
森辺:組織図というのか、オペレーションモデルというのか、わからないですけどね。開発、生産、営業とかあるわけじゃないですか。基本国内でそういう流れになっているわけで。開発があって、生産があって、その上に国内営業部がのっかってるわけですよね、簡単に言うと。なんですけど、そのまんま開発、生産の上に国内営業部がのってるちょっと横に海外営業部がのったっていう、こういうイメージなわけですよ。で、国内営業部の方は、ある程度開発、生産とも…
東:連携を?
森辺:ナレッジは共有されてますからね、日本国内の事情なんで。ある程度意思疎通なり、お互いの理解なりが、海外に比べたらしやすいと。ただ一方でまったく開発とか生産なんて海外行かないじゃないですか。海外に工場出さない限り。
東:なかなか行く機会がないですよね、多分。
森辺:まったく未知の世界の話をいきなり海外営業部から言われても、何言ってんのっていう話になっちゃうわけで。結局海外で売るには、それに合った開発や、それに合った生産っていうものがないといけないし、その横串をブスっと通すって言うんですかね。その海外事業部だけがどんどんグローバル化していっているんだけれども、当然全社員数の人数的にはマイノリティーなわけで。こんなの人間の意見なんて多数決なわけじゃないですか。どこの国行ったって民主国家である以上ね。そうすると組織の中でもそうなわけで。大体数がAだって言ったらAなわけですよ。
東:そうですね。
森辺:ほんとはBなのに、Bの海外事業部の人たちは非常に少ないわけだから、その人たちがいくらBって言ったって、大多数にAって言われたらやっぱ負けちゃいますよね。
東:そうですね。特にオーナー企業以外は、そういう構図がすべて成り立っているでしょうから…
森辺:成り立ってますよね。そうすると日本でね、グローバル化が成功している会社なんて、オーナー企業か、素材系の日本企業でしかつくれないようなものを持っている、いずれかになっちゃってるわけじゃないですか。だからそこが非常にやっぱりネックになってる気がしていて。アジアに行くんであればやっぱマスを落とさないと。日本企業でしかつくれないんなら別にいいんですよ、ゆっくりちんたらやっていれば。ただ今そうじゃないじゃないですか。タイとかインドネシアの食品メーカーとか恐ろしいですからね。で、彼らがASEANで一流面してるわけですよ。すみません、一流なのかもしれないですけど。で、欧米も入ってきてるわけじゃないですか、そこにね。だからそういう意味でいうと、そもそも本社の経営に、ASEAN戦略とかグローバル戦略っていうものが明確にないっていうのがね、1つの原因なのかもしれないですけど、欧米系の先進グローバル企業はそこの戦略がかっちりしてますよね。もう、はい、インドネシア、マスとります、それをベースに戦略が全部組み立てられているんで。開発や生産がごちゃごちゃ言わない。
東:なるほど。わかりました。今日はちょっと時間がきたのでここまでにしたいと思うんですけれども、引き続きこの話題についてお話していきたいと思いますので、また次回よろしくお願いします。
森辺:はい、よろしくお願いします。