東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回のお話ですと、ASEAN3、ASEAN6の中のBグループの、ベトナム、インドネシア、フィリピンに関してはTTをやらなきゃいけないんですよねと、いう話が出たと思うんですが。その日本の本社側からすると、やっぱり根強く多分TTやんなくていいんじゃないの、というような話がやっぱあると思うんですよね。TTがなくならない、なくなるにしても時間がかかるというのが多分森辺さんの持論だと思うんですけど、もう少しTTを実際に森辺さん見てきていて、なんでなくならないと思うのか。もしくはTTをやらなきゃいけない本当のところの理由を2つ言われていたと思うんですけれども、そのへんを具体的にもうちょっと解説して、TTを見たことないとか、そもそも外国に行ったこともない開発者とか生産者の方って結構いらっしゃると思うんですけど、そういった方に対して森辺さんがTTの必要性を説くとしたら、どんな感じになるんですかね?
森辺:MT化は絶対的な流れなのでしていくんですよね。MT化はしていくんですけど、そのスピードっていうのが長くて。だって僕80年代にASEANに住んでいた時にね、いろんな国に行くわけじゃないですか。タイとかインドネシア、フィリピン、ベトナムってね。90年、2000年、30年経っているわけですよ。30年経って、じゃあTTなくなってるかっていったら、なくなってないですよ。確かに当時に、メガストアみたいな、ハイパーモールみたいなのは少なかったけど、それは増えましたよ。けど、じゃあTTで人々の生活はやっぱり支えられているわけで、ここ10年ものすごく著しい経済成長してるといえど、向こう50年でTTが消えるなんていうことは考えにくいっていうのが僕のASEANで生活してみた中での実感値ですよね。
その中で、待つんだったら待つでもいいんですけど。待ってね、MT化して、じゃあ世界中の企業がそのASEAN狙うわけじゃないですか。そんな急激にMT化していくってことは経済成長が著しいっていう話で。世界中の競合が狙っている市場で、TTに置かれてなかったものがね、いきなりMTの棚をどーんととれるかって、とれないですよね。アジアの企業がどんどん真似してくるわけじゃないですか。かっぱえびせんの偽物みたいなのいっぱい出てるわけですよ。そしたら、かっぱえびせんが本物で、かっぱえびせんもどきみたいなのが本物か、なんてのはアジアの人にはわかんないわけでね。なので、結局MT化した時にもマーケットとれないっていうのが僕の持論。
逆に言うと、ASEANのことだけを見たグローバル展開なんてすべきじゃなくて、ASEANの後にはインドというものすごい市場が残ってるわけですよ。99%TTみたいなね。で、その先にはアフリカ市場も残ってるわけですよ。向こう100年企業がそこのマーケットで巨大な利益を生めるポテンシャルを持った大陸が2つも残っているわけですよ。で、そんな中でTT一度もやらずに、そんなMTだけ待ってやるんです戦略でね、世界の競合と戦って、またアジアからどんどんメーカーが生まれてきてね、勝てるわけがない。今やらなかったら一生やれないって僕はすごく思う。結局ガラパゴっちゃう。
そんな事例がいっぱいあるわけじゃないですか。家電だってそうですよね。ハイ機能、ハイスペック、僕たちはMade in Japan、特別な商品です、高級店にしか置きません、買える人買ってください、値段は引きませんよ、機能いっぱいついているんだからってやったわけじゃないですか。そしたら今見てください。やれ昔は日本企業しか作れなかったのに中国、台湾、韓国でも作れる。アジアのマーケットはそっち買うわけですよね。で、超高級エレクトロニクスはヨーロッパ製を買うわけじゃないですか。で、そんな状況が食品、日用品、菓子、ステーショナリーでも起きちゃいますよっていうことを僕は非常に強くメーカーの経営陣に言いたいっていう、そんな気持ちでいっぱいです。
東:なるほど。そうすると、MTだけをやってるんだったらASEANやらない方が…
森辺:やらない方がいい。
東:いいんじゃないかと?
森辺:もうね、リストラして規模縮小。国内集中。これがね、もっとも利益率高いですよ。利益率上がったら株主喜ぶんだから。その方がいいです。海外に出たら利益率下がりますからね、しばらくは。
東:ただ海外をとらないことには規模も、企業規模も大きくならないし、当然利益率だって上がんないと思うんですけど、そうするとその二社一択しかないと?
森辺:ない。
東:やるんだったら徹底的にTTまでやると?
森辺:グローバル競争してるわけでね、世界のね、食品、日用品のトップ10ってもう全部欧米企業でしょ。世界中がそれに支配されていっているわけじゃないですか。そうしたら、今は想像つかないかもしれないですけど、日本の大手の食品メーカーとか、日用品メーカーがね、その傘下に入るってことは往々にしてあるわけで。コカ・コーラの傘下になる、P&Gの傘下になる、ユニリーバの傘下になる、ネスレの傘下になる、そんな世界って、今はまったく想像しないかもしれない。この国内の圧倒的な強さを見てたら。けど、それグローバルで見た時に、彼らと日本メーカーのあまりの差をね、僕は日々アジアの現場で見ているわけでね。そんな世界なんてもうすぐくるわけですよ。逆に上場してても、もうそんなことはさせないって言って傘下にならなかったとしたら、それこそ日本国内市場だけをターゲットにするガラパゴス企業の代名詞になるわけじゃないですか。戦うのか、戦わないのか、どっちかっていうところまで僕はきていると思うんですけどね。
東:なるほど。そうしないと、今では日本の中でちょっと想像できないかもしれないですけど、企業規模がこれだけ違うと、医薬品業界みたいに、海外の企業が日本企業をM&Aするっていうことも起こり得るですよね。
森辺:他のメーカー見たらそうじゃないですか。三洋がアクアブランド売却、ハイアールにね、あんなんだって起こり得るわけですよ。で、日本人がどんどん減っていくわけで。8000万人きっちゃうんですよ。
東:そうですね。
森辺:そしたらそんな世界もうそう遠くない。僕はアジアのスーパーに行って、スナック並んでいるレーン見ると、日本スナック会社さんのことを想像するわけですよ。もしかしたらタイのスナックメーカーの傘下になるかもしれない。飲料のとこだってそうですよ。
東:そうですね。
森辺:ビールだってそうだし、チョコレート。ものすごい数のチョコレートがあってね、日本の僕の好きな、社名は控えますけど、某チョコレート、そんなんになったら嫌だなと思うわけですよ。だから、そういうメーカーを支援しているわけなんですけどね。
東:なるほど。最近でいうと、ケチャップの大手のハインツさんと、食品大手のクラフトさんが、2015年の後半に合併するみたいな話もあるじゃないですか。そうすると、やっぱそういう生き残りをかけて規模を拡大することによって、チャネルを共用して商品を流すっていうことを世界のグローバル企業は考えていると。それに取り残されてしまうと、日本企業っていうのはなかなか立ち行かなくなってくるっていう構図が見えているってことですよね?
森辺:そうです。それを国内市場にいたらほんとに見えない、そんなことは。だって日本製品で溢れているんですもん。
東:そうですね。
森辺:けどやっぱ世界に出たら、違うなっていう思いが非常に強くなってきて。我々すぐそこに事例があるのにね、ガラパゴっちゃった事例があるのに、それがなんか自分の業界じゃないところの話って思うんですけどね。いやいや、自分の業界に当てはめて考えたら、そんなに想像するのは難しいことじゃないってほんとに強く思うんですよね。
東:なるほど。わかりました。じゃあ今日はちょっと時間がきたのでここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:はい。ありがとうございました。