東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:前回まではTTを最終的にはやった方が、やらないといけないよね、というようなメッセージだと思うんですけれども、ちょっとそのへんを振り返って、もう一回整理してお伝えいただきたいんですけれども。
森辺:ASEANだけじゃなくてね、これから先のインドとか、アフリカとかっていう市場を考えた時に、TTのペネトレーションというか、攻略方法を企業の強みとしてやっぱり一度は理解をして経験をしないと、インドもMT化するのを待つのか、アフリカもMT化するのを待つのか。要は売上もコントローラブルにならないし、常に後追い。後追いでグローバル企業や成長するアジア企業と勝てるのかっていったら勝てないわけでね。ここのアジアっていうのは、アジアのことを考えるとそうなんだけど、アジアの先の市場も考えて、やっぱりやっとかないといけないって思うんですよ、強く。
東:そうするとやっぱ自社にノウハウが残ってないと、ないっていうことですよね、そうすると?
森辺:なんでユニチャームがね、あれだけASEANで頑張れるかっていったら、そのTT攻略のノウハウが社内にもうあるからですよ。それを次の国、次の国、次の国って展開していくだけの話で。彼らはきっとインドでもアフリカでも成功しますよ。だってもうすでにノウハウがあるからね。そのノウハウを今後のさらなるグローバル化に見据えて持っておかないといけないし、そんな後押し戦略で勝てる世界じゃないですよっていうのが1つと。あとASEAN3に関しては確実に今TTやらないと向こう50年儲からないよ、利益出ないよ、というのが1つだと思いますけどね。
東:そうすると自社内にそういったリソースじゃないですけど、ノウハウを残すために1回はTTでそういった経験をして、それを水平展開するっていうところまでいかないといけないということですね。
森辺:それがチャネル力じゃないですか。もう時代は大きく変わっていて、作る時代よりも売る力の方が重要視されているわけですよ。なぜかっていったら、いろんなメーカーでもつくれるようになっちゃったから。いろんなものがコモディティ化しちゃったから。これが日本企業しか未だに作れないんだったらいいですよ。作る力で買ってくれるMTばっかりやっておけばね。上ばっか狙っていればいいですからね。けど時代は大きく変わっているわけなので、そうしないといけない。他の業界でもガラパゴっちゃってる事例があるわけだから、そこを自分たちの業界に置き換えて考えていかないと、日本企業はなくなっちゃいますよっていう危機感は僕は強く持ってます。
東:そうすると、TTをやるって決めなきゃいけないと思うんですけど、やるには数字だったり、最終的にそれがどう利益につながるのかっていうのが、やっぱボードメンバーとか上の方だと考えることだと思うんですけど、それって森辺さんは、TTやらなんだったら出ない方がいいって言うぐらいですから、利益が出るっていう確信があると思うんですけど、その確信がまだ日本企業が持ち得てないって1つ考えられると思うんですが、そのへんはどう考えるんですか。
森辺:ユニチャームのIRシート開いてみてくださいって言いたいんですよね。彼らはあれだけのマーケットシェアを持ってる理由の大半がTTの攻略なわけじゃないですか。間口数の多さじゃないですか。で、IR資料に全部載ってるわけなんでね。それを見れば一目瞭然だっていうのは1つあるわけだし。あとTT、TTって言うんですけど、日本だとMT、TT論みたいな話なんですけど。別にTTっていったって、1段階から5段階ぐらいまであってね、一番下のTTやれって言ってるわけじゃなくて、BOPやりなさいって言ってるんじゃないんですよね。上位TTまで間口数増やさなきゃだめですよっていう話をしてるし。今すぐTTっていうんじゃなくて、向こう3年、5年でどれだけTTの間口数をとっていくかってことを言ってるわけなんでね。中長期的な会社としてのアジア戦略みたいな、間口戦略みたいな、それを工場の稼働率を見つつ。数字は嘘つかないんで、数字でね。
戦略が明確にないから、いや、TT大変だ、TTにいったらブランド力が落ちる、先ずはMTでブランド力つけてからTTだ、とか、そういう議論になっちゃうわけで。で、経営は経営で絶対自分が任期中に海外事業を思いきりやるなんてことはやりたくないんです。利益率下がるから。で、その大前提がある中で、下が明確な戦略持たない限り、上はうんとは言わないですよね。
東:そうするとやっぱりそこを明確に先ず持っていくっていうことが必要で、それを持つためには具体的に経験をするのが一番速いとは思うんですけど、いきなりそこをやらないっていう企業がそこで経験を持つっていうのは、ちょっとジレンマというか、少し現実的にはない部分があると思うんですけれども、そういった企業ってどうやって、戦略だったり、情報だったり、根拠を持っていけばいいっていうのはどう思われますか。
森辺:その固定概念に縛られ過ぎで、調べてなさ過ぎ。いわゆる先進グローバル企業はどうやってマーケットシェアをとっているのかって、そのチャネル戦略はどうなっているのか、明確に理解している会社ないですよね。いや、うちはそんなでかいところ競合なんて思ってないんでって。いやいや、あんた、競合だから、そこって。国内でこれだけあるんだからグローバルで競合そこ以外ないでしょって思うんですよ。自分たちは国内でこうやってきたからと。こうやってきたんで、ここから大きく変えられないんです。いや、変えられないんだったらアジア戦略なんてやっちゃだめだよねっていう企業がやっぱ多いんですよ。そういう国内の成功体験が根強く社内に残っちゃってる、国内に。尚且つ、海外の先進グローバル企業は競合じゃないって言い切っちゃうんですけど、いや、競合だからっていうね。そこから先ず正していかないといけなくて。現実を調べてなさ過ぎだし、そこから分析をして、考えてなさ過ぎ。
東:じゃあ先ず現実を知れ、ということなんですね。最終的に現実を知るには当然調査会社だったり、我々みたいなプロに頼んだ方が一番いいというのはわかるんですけれども、ある程度ベースを調べるのに、森辺さんなりに今デスクリサーチと呼ばれるようなインターネットで調べるだけでもある程度出てくると思うんですけど、大枠を調べる時、森辺さんだったらどういう形で競合のチャネルだったり、不完全でもいいので、こうやったら調べられるんじゃないかっていうのはなんとなくどういったものを調べていけばいいんでしょうか。
森辺:競合のチャネル戦略なんて、メーカーは自分たちで調べられる範疇のものじゃないんですよ。お遊びリサーチみたいなことを社内でやってね、どこにでも落ちている情報とってくるならいいんですけど、結局、僕アジア関わって25年でしょ。欧米系の戦略コンサルから、国内のシンクタンクのリサーチエンジンとして10年やってきて、それでももっとやれると思っているわけでね。それはやっぱ餅は餅屋で、そういうとこにお願いしなかったら、なかなか難しいですよね。調査会社っていったってもうこれ経験値なんで。この業界のここの情報を知りたかったら、こういう手法をとって、こういうことやらないと絶対出ないとかってあるわけですよ。なのでそんなの時間をお金で買った方が圧倒的に速いって僕は思いますけどもね。
だから、ここでシェアできるやり方があるとかっていう話じゃなくて、そんな調査みたいな事実を明らかにするようなことは餅は餅屋に任せて、それをどう分析するか。当然餅屋に分析させるっていうのも1つなんですけど、自社のことを一番理解してるのは自社じゃないですか。だとすると、それをメーカーがどう分析して、また正しいことをやりましょうっていって、まかり通る組織じゃないわけですよね。組織っていうのは、いろんな人のいろんな利害関係だったり、政治力だったり、いろんなことがあるわけで。それをじゃあどううまく導いていくかっていうことに神経なり、労力を使った方が僕はよっぽどいいんじゃないかなと思いますけどね。
東:わかりました。そしたら、森辺さん、少し時間がきたので、最後にちょっと最終的に森辺さんの考えることもう少し1つにまとめてもらってリスナーの皆さんに伝えていただきたいんですけれども。
森辺:先ずASEAN市場に対して、コンシューマプロダクツね、食品、日用品、菓子、ステーショナリー、その他諸々のコンシューマプロダクツのメーカーは、MTだけじゃなくてTTへの脱却をしなきゃいけないっていうのが1つですと。それはなぜかっていうと、TTがMT化するのには50年以上かかる。尚且つ、ASEANが仮にMT化したとしても、その後インド、アフリカっていう市場を攻略するためのノウハウを今得ておかなかったら、常に後追いになる。だからこそ今やらないといけない。そうはいっても、ボードにしてみたら、海外はやればやるほど利益率が下がるっていうのが今の現状なので、それを変えられるだけのやっぱ戦略をしっかり組み立てていかないとなかなか首を縦に振らない、じゃないかなと思います。
東:わかりました。じゃあ森辺さん、今回はありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。