東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、今日はどんな話から…
森辺:しましょうか。
東:じゃあ、よくセミナーでは話してると思うんですけど、作る時代から、作る力の時代から、売る時代へってことで、価値の源泉が変わってきてますよっていう話をセミナーでは冒頭によくされると思うんですけど、多分Podcastだと詳しく話をしたことがないと思うんで、その話をしていただいてもよろしいでしょうか。
森辺:はい。ちょうど4月21日の産経ビジネスアイの連載、朝刊で、ネットだとサンケイビズで僕の名前検索してもらったら出てくると思うんですけど、そこで作る時代から売る力に、価値の源泉が変わりましたよっていう話を書いたんですね。ここってすごくアジアビジネスとかグローバルビジネスをする上で重要な根本的なところで、価値の源泉が昔に比べて大きく変わっちゃってるんですよね。
価値の源泉って、例えば40年前とかね、1970年代とか80年代って、作る力が非常に重要視されてたじゃないですか。例えばわかりやすいところでいうと、白物、黒物家電の業界を思い出してもらうとわかるんですけど、基本的には日本でつくったものを欧米に輸出して、最初はいろいろ馬鹿にされて、日本製なんてっていう時代がありましたよね、戦後。けど、それが欧米市場に認められて、浸透していきましたと。もともとアメリカが作っていたものを日本企業が作り始めて、技術や品質を極限まで磨き倒したおかげでアメリカからその座を奪ったわけですよね。プラザ合意ぐらいで円の価値がぐんと高くなってしまったので、生産拠点をアジアに移しましたっていうのが70年代ぐらいから始まってるわけですよ。このあたりから、言ったらもう日本企業以外つくれなかったわけですよね、白物、黒物家電を。そうするとJapan as No1と言われた時代がまさにその時代で、価値の源泉っていうのは作る力こそ正義だったわけですよ、すべて。
それが今大きくパラダイムシフトを迎えてしまって、生産拠点をアジアに移したおかげで、アジアの企業でもつくれるようになってしまったと。具体的には中国の企業でも、台湾の企業でも、韓国の企業でも。そうなってくると結局競争環境が大きく変わったわけですよね、昔から。昔は競合がいなかったと。今は競合がいるので、競争環境が大きく変わったということと、今って先進国だけがターゲットじゃないじゃないですか。新興国もターゲットになっていると。そうすると市場環境も大きく変わっているんですよね。こうやって時代が大きく変わった中で、作る力よりも売る力の方が重要視される時代になってしまったと。つまりはマーケティング力を駆使した売る力が求められる時代にきちゃったんですよね。
これが家電の業界ですでにもう何年も前から起きてるわけじゃないですか。ガラパゴス化って言われますよね。それが起きてしまっていて、そこにすごくいい事例があると。車はね、別に考えた方がいいと思います。やっぱトヨタ強いし、これ日本の産業だし、もう自動車産業そのものがね。だから車はうまくいってるし、一旦置いておいたとして、白物、黒物家電の業界でそういうことが起きてしまっていて、まさに作る力よりも売る力を重要視されているんですよね。そして、韓国のサムスン、LGが出てきて、その後中国勢が出てきて、ハイアールが出てきて。今世界最大の家電メーカーっていったら中国のハイアールでしょ。
そんな売る力の時代にいまだに技術力みたいなこと言ってるわけですよ。ものづくり、みたいな。これは日用品とか食品とか消費財の業界でも当てはまる話でね。そういう業界の人はこの家電の世界の話は家電の話だと。自分たちの業界には関係ないって思ってるんですけど、実は関係おおありで、そこにものすごくいい事例があるのにね、なぜそれを自分たちの業界に当てはめて考えないんだろうと。必ずこれが他の業界でも起こり得ることなので。やっぱりこれからの時代というのは、作る力、これも重要なんですよ。けどそれ以上に売る力が重要ですと。なぜならば、競争環境が変わったし、それは競合が増えたってことね。あと市場環境も変わったと。これは先進国プラス新興国が加わりましたという、そういうことなんですけどね。
東:そうすると、企業としては売る力の時代ってことは、どういう形で対応していったらいいんですかね?
森辺:結局作る時代は輸出でよかったわけじゃないですか。ひたすら輸出してればよかったわけですよね。けど売る力の時代って輸出じゃだめなんですよ。輸出って港から港じゃないですか。日本の港から相手国の港まで、みたいな。作る時代は市場がその商品を求めてますから。だって日本企業しかつくれないからね。港から港に運んじゃえば、あとは向こうで求めている人は待っているわけですよ。けど、売る時代っていうのは、日本企業だけじゃなくて他国の企業もそれをやるわけなので、如何に相手国の港に着いた後のチャネルを制覇するかっていうことがすごく重要なので、もうグローバルビジネスって輸出ビジネスじゃないんですよね。その先にいかないといけない。つまりはチャネルをとらないといけない。つまりはディストリビューターのマネージメントをしっかりする、もしくは自社チャネルを最適化する、その能力が求められる新たな時代にきた、というふうに僕は理解をしてます。
東:そうすると、新しい時代がきたってことは、企業として、日本企業が輸出じゃだめですよと。ディストリビューターを使って現地で売上を立てていくっていうことを、森辺さん言われていると思うんですけど。そこで具体的に、じゃあ日本企業がまだ変わったという認識がないのか、あるけれども具体的なやり方がわからないか、今の現状って森辺さんはどう見られていますかね?
森辺:あのね、時代の変化って瞬時に起こんないんですよ。1日で変わんないんですよね。
東:そうですよね。
森辺:10年とかっていうスパンの中で時代って変わっていくって僕は理解をしていて。なんとなくそういうのにちらちらちらちら気づく10年があって。10年した時に完全に市場が変わっていっちゃってる。要は何でもそうなんですけど、いきなり0から100にバーンと変わらないじゃないですか。どんどんどんどんどんどんどんどん、25、50、75、100ってなっていくわけですよね。まさに今そういう状況にいるんだと思うんですよ。だからこのじわじわ変わってくる10年の間で、どれだけ先を読めるかっていうのが企業活動の中で非常に重要になってくるって僕は思っていて。それに気づいていながらもなかなかやっぱり切羽詰らないとやれない。
日本は国内のマーケットが相当大きかったじゃないですか。今でも世界第3位の経済大国ですよね。これがあと20年したらどうなるかって推計が、予測が出てるわけじゃないですか。中国にもうすでに抜かれているわけで。これを日本にいると、言ってもまだ大きいんでね、なかなか見えにくい。でもそれを如何に見ていくかってことがすごく重要で。経営がそれを見ないといけないし。
欧米は速いですよね。先進グローバル企業と呼ばれるところは、その見方が速いですよね。動きが速いし。気づいた時に投資を始めても、もうできあがっちゃってるじゃないですか、市場が。中国の内販マーケットだって日本は出遅れたんですよ。2000年の前半ぐらいから本格的に中国の市場をマーケットとして捉えましたからね、日本企業は。一方で先進グローバル企業っていうのは90年代から捉えてるわけですよ。早いとこは80年代から捉えているわけで。そこに10年、20年の差があるわけですよね。ASEANでもまた同じような状況になっている、ということなので、なかなか難しいんだと思うんですけどね。先を読む力っていうのは今すごく求められているんじゃないかなと思いますけどね。
東:わかりました。最後にどういう変化があったのかっていうのをまとめていただいて、今日はお時間なんで終わりたいと思うので。価値の源泉ってとこが変わったっていうお話を最後にもう一度お願いします。
森辺:いわゆる作る力の時代から今の売る力の時代に大きく変わってしまいましたよと。その理由が2つしかなくて。1つは競争環境が変わったと。日本企業だけしかつくれなかったものがアジアの企業でもつくれるようになっちゃった、ということと、市場環境が変わった。それは先進国がタ-ゲットだったのが、プラス新興国も加わってしまいましたよと。その影響で作る力よりも売る力が求められる、価値の源泉が大きく変わった時代に突入したっていうお話でございます。
東:わかりました。じゃあ森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございます。