東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回はですね、価値の源泉が変わったということで、作る力の時代から売る力の時代っていうことで、売る力をフォーカスして取り上げないと。作るのは当然重要ですと、製造企業なんで。そこは根底として日本の企業が、できるかできないかっていったらできますよねっていうとこだと思うんですよね。そうすると、売る力に力を入れていかないと、そもそもグローバル・マーケティングとか、グローバル企業にはなっていかないと思うんですけれども、その中で1つこの間も言われていた、ディストリビューターとか、よくパートナーが重要だ、みたいなことを海外で言われるじゃないですか。
森辺:はい、はい、はい。
東:その重要性っていうのを、森辺さんもいろいろな国に行かれて、さらにその重要性っていうのを増して感じてもらえると思うんですけど、今森辺さんが感じているところ、もう少しもう1回話をしてもらうとわかりやすいと思うんですけど、如何ですかね?
森辺:パートナーの重要性みたいなところ?
東:よくセミナーで、いつまで経っても導入期みたいな話をされると思うんですけれども。
森辺:特にASEANってGTとかTTって言われるチャネルをとらないとシェアが伸びませんと。つまりは利益が出ませんと。なぜならばMTの比率が低いから、という話があるじゃないですか。で、VIPと言われるグループBの国たち、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかはGT、TTチャネルの攻略が非常に重要ですよ、というお話をしますと。そもそもMTの間口数が圧倒的に少ないわけですから、そこでリスティングフィーとられながらいくら商品を置いたって、現地の法人のオーバーヘッドは超えられないと。ですから赤字がずっと続いていつまで経っても導入期と。これだったら輸出でやっていた方がいいんじゃないのって。そんな中で現法GT、TTを頑張るんですよね。
けど頑張るんだけれども、なかなか浸透していかないみたいな中で、間違いはいくつか要因があって、1つはディストリビューターの選定が間違えてる。例えば、非食品系のメーカーが食品系のディストリビューターを使ってる。で、大体食品、日用品のディストリビューターってフード、ノンフードって言われて、どっちか片っぽに強いところもあれば、両方やっているところもあるし、最初はフードだと思っていたら、いきなりノンフードに変わっていっちゃったりとか、いろいろあるんですよね。その中で今現状でどちらに力を入れている会社なのか、ディストリビューターなのか、それはすごく1つ重要なポイントなんですよ。で、あと、そもそもこのディストリビューター、GTとかTTのチャネル強いの?みたいな。そこは1つですよね。で、僕は、ASEANのディストリビューターいろいろ回りながらいつも思うのは、ネーションワイドに強いところって、GT、TTに、そんなにないんですよね。少ないんですよ。ですから、ネスレとかP&Gとかユニリーバみたいな先進グローバル企業ってエリアごとにディストリビューターを分けて、100とかっていう数を使うわけですよ。そこの戦略がそもそも甘いっていうのは1つですよね。どういう戦略に基づいて、どういうディストリビューターを選んでいるのかっていうことをもっと議論した方がいい。結構そこでつまずいている会社が多いです。
東:甘いっていうのは、もうちょっとわかりやすくいうと、どんな感覚…?
森辺:例えばなんですけどね、ベトナムの話しましょうか。ベトナムでいうと、ホーチミンのディストリビューターがハノイで売れることなんてないんですよ。これはもともとの歴史的な背景もあってね。差別かって言うぐらいやっぱりホーチミン企業がハノイに行くと力を発揮できない。そうするとやっぱホーチミンのディストリビューターでハノイをやろうなんてのはそもそも間違ってるし。そうすると必然的に2つできるわけじゃないですか。なんならダノンもあるわけだから。3つぐらいディストリビューターを持たないとなかなかうまくは回らないですよね。例えばそういう問題もそうだし。そもそもディストリビューターも、例えばベトナムなんかでいうと、数百億ぐらいです、売上で。おっきくてもね、前半ね。そうすると、そんなところで全部カバーできるわけないですよ。
東:そうですね。
森辺:40万とか、50万とかあるGTとかTTをね。そうするとやっぱり先進グローバル企業の事例を見ると、エリアごとに全部分かれてる。ホーチミンだけ見ても1区から何区まで全部担当が違うわけですよ。そうするとやっぱそこを理解しないまま、なんかここ、みたいなっていうケースが非常に大きいし。あとディストリビューターも現金な人たちですからね。いいディストリビューターっていうのは必ずすでにマーケットシェア20%ぐらいあるような会社持ってるわけですよ。そこがやっぱり一番重要。新しく新規でやろうっていう商品なんて、口ではいろいろ言っても、本腰入らないじゃないですか。
東:そうですね。
森辺:当然新規の顧客なんで。それを如何にやらせられるかっていうところがすごい重要なので。なんかディストリビューター決めました、よろしくお願いしますね、月1回定期訪問して今月どうですか、来月どうですか、みたいなことをやってても、絶対本気にならないですよね。5年先、10年先のビジョンをしっかり先方のオーナーに伝え、それに基づいてこちらで戦略を握って、それをどう進めていくのかっていうことを彼らと議論しないといけないし。そこに対して月1回の定期ルート訪問みたいな、日本の営業でやるようなね、そんなことをやってても間口は増えないですよね。やっぱそこもしっかりやらないといけないし。そういうことですね、具体的には。
東:そうすると、現地の、さっきのホーチミンとハノイの話なんかは、現地側から見れば当然のことだけれども、日本企業がベトナムに進出する時に、それを知っててディストリビューターを選ぶのか、そうじゃないのかっていうのはすごい大きな違いだと思うんですけど、そうすると、ホーチミンからハノイを攻めようったって、いかないわけですよね。そうするとそのへんの基礎的な知識というか、情報収集が1つ甘いっていうことも言える…?
森辺:言えますよね。日系のメーカーが使っているところなんて、ホーチミンの某1社ぐらいなわけですよ。ベトナムでいうとディストリビューターね。けどじゃあ、ベトナムで成功していると言われるエースコックがそこ使ってるかっていったら使ってないわけですよ。ネスレが使ってるかっていったら使ってないわけですよ。P&Gが使ってるかっていったら使ってないわけですよ。で、彼らはものすごい数のディストリビューターを使って、GT、TTチャンネルを攻略してきているわけですよね。それが具体的にどういうチャネル戦略で、どういうふうにやっているのかってこともわからずに、ここ、みたいな話になっちゃってるわけですよね。必ずしもでかいところがいいとは限んないですよ、それは。
東:そうですね。
森辺:だから、製品のポジショニングにもよるし、その会社の戦略にもよるし、いろんなことを多角的に検討をして組んでいかないといけないわけなんですよね。だから、そこは一概には言えないですけどもね。でもやっぱり知らないのが多いですよね。うまくいっている企業がどうやっているかを知らずして自分たちはこうやってます、みたいな。いや、それは前の担当が決めて今に至ってるんで、その体制を変えるっていうのは大事じゃないですか。責任生じますよね。
東:そうですね。
森辺:なのでいまだにそれやる、みたいなのが多いですよね。
東:なるほど、なるほど。わかりました。そうするとやっぱりディストリビューターも最初にボタンが掛け違うと、当然あともううまくいかないですよね。
森辺:ベトナムなんか、あれですけど、例えばマレーシアとかだとね、もう立派なマレーシアの製造業とかもあるわけですよ。そうすると、そういう製造業と日本の製造業が合弁をしますと。技術指導して向こうで生産して、日本の日用品を売るわけですよ。けど一方で、その現地の製造業も現地の製造業で食品を売るわけじゃないですか。そしたら、ローエンドとハイエンドと両方つくるわけですよね。
東:そうですね。
森辺:けど、相手先のパートナーからしてみたら、自分たちのローエンドの製品売った方がよっぽど利益率いいわけですよね。合弁でやってる商品を売るよりも。そしたらいつの間にか自分たちの商品ばっかり売っちゃってる、みたいな。そういう事例も出てきてるわけだから。
僕はね、製造業同士が海外に出る時にパートナー組むのはうまくいかないと思うんですよね。うまくいってる事例が1つも見当たらないし、買収しちゃうんだったらいいですよ、100%で。じゃあP&Gやユニリーバやネスレがね、同業種のメーカーと提携してやってるかっていったらやってないですよ。だから、そういうのも悪い事例ですよね。
東:わかりました。じゃあ、ちょっと今日はお時間がきたのでまた次回引き続きお願いしたいと思います。今日はありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。