東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、前回森辺さんがどんなことを具体的にやっているのかというのを教えていただいたんですけども、もう少し国を絞って、今年から去年の末にかけて、ベトナムの案件が非常に多かったということなんですけれども、そのベトナムの市場について教えていただければと思うんですけども。
森辺:ここ3年、ベトナム絡みというか、特にVIPの中でも特にベトナム、多いですですよね。インドネシア、フィリピンも当然多いんですけど、ベトナムは多くて。ベトナムは今、消費市場が非常に拡大しているということで、消費財系のメーカーさんがやっぱり多いですよね。特徴としては、ベトナムって首都がハノイにあるじゃないですか。けど経済の中心はホーチミンにあつて、縦長細長い国なんですよね。真ん中にダナンがあると。大体これが3大都市になるんですけどもね。日系の会社さんはホーチミンが主戦場になるわけなんですけど、1つ言えるのが、縦長で距離がすごいんですよ。ベトナム戦争の名残で、ハノイとホーチミンが全く違う。全く違うというのは何かというと、ホーチミンの人たちよりも、やっぱりハノイの人たちのほうが威張っているというか、ホーチミンの会社がハノイに行っても叩き潰されるというか、その特性が想像以上に強いと。ですから、うちもホーチミンのスタッフをハノイに連れていくということはしないんですよね。ホーチミンにはホーチミンでスタッフを置き、ハノイにはハノイでスタッフを置くと。ホーチミン出身、ハノイ出身ということをしないと、いちいち面倒くさいというのが、僕はいつもフラストレーションに思うことの1つなんですけどもね。基本的にはそういうあれがありますと。
東:そうすると、ホーチミンとハノイは全く別で市場としてとらえないと、それを一緒くたに、ホーチミンからすべてハノイもフォローしますというのは、構図としては難しいということですかね。
森辺:難しいですね。結構別の国って考えたほうがいいんですよね。上海と北京と深センと、広東省みたいな。国境を超えてパスポートを見せるか見せないかの違いじゃないですか。だから例えばホーチミンのディストリビューターがハノイでうまく商品をディストリビューションできるかというと、必ずしもそうじゃなかったりするんですよね。逆にハノイの企業がホーチミンに入ったりするのは、やりやすかったです。例えばフランチャイズ系のお店でも、ハノイスタートかホーチミンスタートかによって、ハノイとホーチミンの合計店舗数が大きく変わっちゃったりとか、ホーチミンからスタートしたから、なかなかハノイに入り込めないみたいな、そういう事例もあるし。
ちょっと具体的な名前は避けますけど、そういう事例は多いんですよ。ディストリビューターも結構日系とかだと、もうホーチミンのある1社みたいになるんですよ、消費財系は。食品、日用品系は。けど、そこだとハノイ全然売れないとか、ダナン問題外みたいな。そんなケースもやっぱりあって、ハノイにはハノイの強いディストリビューターがいるし、ホーチミンにはホーチミンの強いディストリビューターがいたりするので、なかなか難しかったりしますね。ベトナムのいわゆるコンシューマープロダクツの会社で、うちのランキングで3位の会社があるんですよ、P&Gとかやっている会社。この会社はホーチミンに営業の主拠点があるんですけど、本社がハノイなんですよ。両方強いとかね、そういうのも中にはあるし。
東:そうすると、主に今問題を抱えているというか、課題を抱えているのは消費税メーカーで、FLCGの市場だと思うんですけども、全体のベトナムの小売市場って、森辺さん、どう見ているのか、少し教えていただきたいんですけど。
森辺:エリア別シェアみたいな。5、6割はホーチミンですよね。ハノイが2割ぐらいですかね。
東:具体的にどういう小売りプレイヤーが。
森辺:コープマートってあるんですよね。ここはイオンが今資本を入れているところですけど、ここがやっぱり大きいですね。地場の大手なんですけど。大きいといっても72店舗ぐらいしかないんですけどもね。あとメトロというところが、メトロ・キャッシュ&キャリー。グローバルの大手ですけど、ここも19店舗ぐらいあったりして、あとBig C。これはいろいろなところにありますけどね。マレーシアとかにもありますけどね。28店舗ぐらいたしか出ていたと思うんですよ。あと、10店舗しかないですけどロッテマート。ロッテデパートとかと一緒になっていますけど、非常に大きいきれいな近代小売りですよね。あとは地場中堅のサトラマートとか、イオンも今、ハノイのほうにも作っていますしね。2店舗あって、イオン、モールもでかいですよね。あとファミリーマートはいろいろゴタゴタありましたけど、今また頑張っていたりとか、あとビーズマートとか、コンビニだと有名ですよね。あとShop&Goという100店舗弱ぐらいあったと思うんですよね。そういうところも大きいし、シティマートとか、ビナテックスマートとか、そんなところもありますしね。そういうところが大きいですよね。大体今多分、10兆円ぐらいじゃないかと思うんですけどね。ベトナムの小売市場って。
東:MTと、例えばTTとかGTと呼ばれる市場の比率というのはどう見られているんですか?
森辺:店舗数でいったら、もう本当に0・何パーとかですよね。金額ベースでいって、これも商品によるんですよ。日用品なのか、食品なのか。食品の中でもお菓子なのか、食糧なのか。その食事の食品、加工食品なのかによって全然違うんですけど、大体ざっと均して、MT比率15パーみたいな。どんなに多く手も気持ち20パーぐらいなそんなイメージで、その他がGT、TTという話になってくるんですよね。MTの店舗なんて、今1,200店舗ぐらいしかないんじゃないですかね。そんなにないかもしれないな。本当に主要と言われるところで773店舗とかなんでね。まあまあMTにカウントしようかなと入れたとしたって、1,000店舗とか、そんなものですよ。いかにGT、TTのマーケットが重要かという。要は773店舗に1個入れても、1日1個売れたとしても、773個しか売れないわけじゃないですか。そうすると、なかなか苦しいですよね。なので、GT、TTを奪わなきゃいけない市場というのは、このポッドキャストでも繰り返し言っていますけど、そういう市場ではあるというのは1つですよね。
東:例えばそのMTはMTで自社でやるにして、GT、TTを攻略するには、大枠の戦略でいうと、森辺さんなりにどういうことをベトナムではやればいいのかというのは。
森辺:基本的には自社で営業マン抱えて、支店出してやっていくというのが1つの方法じゃないですか。直販。もう1つがディストリビューターを使うという方法だと思うんですけど、ぶっちゃけ直販限界があるわけですよね。例えばMTは直販します。それからホーチミンの一部地域は直販します。ハノイの一部地域は直販します。これはまあまあいいんでしょうけど、先進グローバル企業のP&Gとかネスレとかユニリーバでさえ、MTは直販しますけど、ホーチミンでもハノイでもダナンでも基本的にはディストリビューターを使っているわけですよね。自分たちが小売り店舗のフォローはするけども、ディストリビューションとか、それから棚取りとか、間口の新規開拓とかって、自分たちも当然やるんだけども、やっぱりディストリビューターと一緒にやるということをやっぱりやっていますよね。でもそれがディストリビューター任せじゃなくて、自分たちがあくまで主軸をとってやっていく。特に新規間口開拓なんというのは、やっぱり絶対そうでないと、なかなかできないし、だからディストリビューターの活用というのはすごく重要なんですよね。
けど一方で、ディストリビューターにとっても、新しい商品の間口をいっぽい増やして、いきなり契約切られて、あとは自分でやりますとメーカーが言い始めたら、今までやった苦労が全部損じゃないですか。なので、チャネルに投資をするということは、新規商材をする上でやっていかないといけない。間口1個獲得したら、どうだ、ああだみたいな。もしくは最初の1年間は特別掛け率で出すとか。そうしないとやっぱり、なかなかディストリビューター動かないですよね。今ある既存の商品を売ったほうが、よっぽどいいわけなので、それがチャネル投資というやつなんですけどね。先進グローバル企業は参入当初にチャネルへの投資をさんざんやるんですよ。そのチャネルの投資も、ただ金をあげればいい、ただインセンティブあげればいいというだけじゃなくて、自分たちメーカーが主軸を持って、イニシアティブを持ってやっていって、管理をして、把握をしていきながら、インセンティブをばらまいていくということをしていかないといけないので、そのさじ加減は非常に難しいんですけどね。ただ、そういうことをやっていかないといけない。
東:わかりました。もう少しお聞きしたいんですけども、今日はお時間来たのでこの辺にしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。