東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、このポッドキャストもついに200回の一歩手前まで来て、199回をついに。
森辺:ついに199回ですか。多くの方聞いていただいてるようなんですけど、このポッドキャスト聞く人って本当マニアックな人なんだろうなって、いつも思ってですね(笑) こんなマニアックなポッドキャスト聞いてくださって本当にリスナーの皆さんには感謝しております。ありがとうございます。累計ダウンロード確か30万超えたって。40万ぐらいいってるみたいなんで。本当にありがとうございます。
東:またこれからも、引き続き…
森辺:こういう内容になっていくのかなと思いますけど、社内で色々議論をしながらですね、よりよい番組作りに努めてまいりますので、皆さんのお役に立てればと思いますんで、よろしくお願いします。
東:200回目のゲストの予告といったら変ですけど、200回目に素敵なゲストをお迎えしようと思ってますが、森辺さんからご紹介いただけますか。
森辺:200回目のゲストはですね、明治大学経営学部の、ご存知大石教授をお招きして200回目の配信をする予定でございます。100回目もね、大石先生に出てもらって。このポッドキャストが始まった一番最初のゲストも大石先生なので。グローバル・マーケティングの権威ですから、基本的には節目節目で大石先生を呼んでいきたいなと思っておりますので、また皆さん200回目以降も楽しみにしててください。
東:200回目以降も、ぜひよろしくお願いしますということで。前回の続きなんですけど、ベトナムの件について色々とお問い合わせも多いし、こういった形で森辺さんなりに色々回答していただくのがいいのかなと思っていて。
前回市場の環境と小売がどうなって、ディストリビューターやっぱり活用しなきゃいけないですよね、っていうとこまで来たと思うんですけど。一つもう一回ハノイとホーチミンの市場を分けて考えた方がいいんじゃないかっていうところから、もう一回ご説明をいただければと思うんですけど。
森辺:ハノイとホーチミン距離が非常に長い。縦長な国なわけですよね。そのハノイとホーチミンのパワーバランスが非常に偏っていてね。ホーチミンの人がハノイに行っても、なかなか力を発揮できないっていう事情もあって。ホーチミンの会社がハノイでうまくディストリビューションできないっていう要因が非常に大きいんですよ。
東:実際に森辺さんが現地に行ってみて、ホーチミンの人はハノイに行ったときに、どんな感じなんですか?
森辺:アメリカのワシントンDCとロサンゼルとかニューヨークみたいなのが一番ライトだとすると、その後、中国の北京とその他みたいなのあるじゃないですか。上海とかね、上海と北京って。ワシントンDC、ニューヨーク、ロサンゼルと。北京と上海と。それよりも更に色濃いんですよ。
例えばね、ホーチミンの各省庁のトップが全部ハノイ出身の人なんですよね。ですから、お偉いさんは全部ハノイから来てるわけなんで。下っ端の人たちは全部ホーチミンなわけですよ。例えば通関でスタンプ押す人はホーチミン、みたいな。けど通関の一番上の責任者はハノイ出身、みたいなね。そういうのが、国営で全部そうなってるわけですよね。通信事業者、インフラ事業者、建設会社、全てがそうなってるわけなので。戦争に勝った方と負けた方ですからね。しかもそんなに古い話でもないですしね。だからそこは薄れていくんでしょうが、ややこしいというか面倒臭い。なので、ハノイではハノイのスタッフを僕は雇ってるし、ホーチミンではホーチミンのスタッフを雇ってるし。感じるんですよ。僕ベトナム語できないんですけどね、ホーチミンのスタッフ連れてハノイの国営企業回ってると、その国営企業の人たち「おうお前、ハノイか」みたいな。「は~ん」みたいな、そういうの感じるわけですよ、言葉わかってなくても。
東:「あ、ホーチミンか」って馬鹿にされる。
森辺:馬鹿にしてるっていうかね「ほぅ、は~ん」みたいな。そういうの感じて「おう、お前さっきなんて言われてたんだ?」って聞くと「ああいや、出身を聞かれてまして」みたいな。
東:じゃあ、ハノイのお客さんにホーチミンの人が行くと、ちょっと温度差があるっていうんですかね。
森辺:それが結構、致命傷にはならないけども面倒臭いっていうレベルであるっていうのが一つなんで。距離があるしディストリビューションとかっていうことを考えたときに、ホーチミンのディストリビューターに全土を任せるとかっていうのは結構難しいんですよね。あの市場は。
東:そうすると、難しい点は森辺さんがよく先進グローバル企業を例にとられて、例えばネスレとかユニリーバ、P&Gっていうところは、具体的に大枠の戦略でいいんですけど、ベトナムではどうやってる? やっぱりそこは分けて考えてるんですよね。
森辺:例えばね、ディストリビューターの数でいうとね、P&Gが一番少なくて、ユニリーバがその次で、ネスレが一番多いと。どの国行っても大体こんな感じなんですよ。P&Gもね、元々50とか60とかのディストリビューターを使って、それをどんどん絞っていってるっていう過程があるんですよね。それどの国でもそうなんです。
ベトナムでいうと、確か14社ぐらいだったと思うんですよ、P&Gは。比較的中堅以上というか大手系を使っていて、そこがディストリビューションしてるんですけど、エリア別に決めてるんですよ。あのP&Gですら十数社使ってるわけですよ。しかもかなり大手を。ホーチミンのこのエリアはここ、更に南部はここ、ハノイはここ、ダナンはここ。ハノイの更に北部はここ、みたいな感じで全部わけてるんですよね。モダントレードは自分たちでやるし、GT・TTの開拓を自分たちでやりながら、ディストリビューションを彼らにやらせるっていうのがP&Gですよね。
ユニリーバは100ぐらいあるわけですよ。ユニリーバぐらいまでいくと、でかいところも使うんだけど、結構小っちゃいところいっぱい使うと。小っちゃいところにGT・TTを網の目のように回らせるということをやります。
ネスレ。ネスレもやっぱり100以上ありますよね。ここも小っちゃいところを使うっていう。そういう戦略に分かれていて、ネスレなんか特にそうですよね。コーヒーとかね、クリームみたいなやつを売っていこうと思うと、そうなってくるわけなんで、そういう戦略になっていくと。
日本企業はね、好きですよね。一カ国一代理店制度、みたいな。これね、戦略を分解してないからそうなっちゃうんですよね。一社で売上100奥で、従業員100人で、本当にこの何十万間口を取れるのかって、普通に足し算割り算したら無理って出るじゃないですか。そこまで煮詰めてないから、とりあえず一社に、みたいな話になっちゃうんですけどね。大体ホーチミンのある一社、みたいな感じなんですよね、日系は。でもなかなかGT・TTは行けません、みたいな。これは日本の製品にも問題があるんですけどね。やっぱ戦略が大きく違いますよね。なのでマーケットシェアも大きく違うっていう。
東:日系は、ある一社だけを使ってることが多いですよと。P&Gは14社使ってますと。ネスレとかユニリーバになると100社以上使ってるっていう。そのディストリビューションネットワークの数だけでも、単純に違うということですよね。
森辺:全然違う。それをマネジメントしていくわけなんですけど。でもそんだけ数を増やすっていうことは、当然マネジメントも大変になるわけですよね。驚くのがね、本当に明確なんですよね。地図がものすごく細かく分かれてて。例えば先進グローバル企業の、いわゆる統括部長みたいなのがいるじゃないですか。その下にエリアマネージャーみたいなのがいるわけですよね。エリアマネージャーの下に、エリア担当みたいなのがいるわけですよね。そうすると、このエリアマネージャーは例えばハノイ担当のマネージャー、ダナン担当のマネージャー、ホーチミン担当のマネージャーがいて。このホーチミン担当のマネージャーの下に、更にホーチミンの区ごとの担当者がいて。でかい区だと3人ぐらいいたりするわけですよね。その3人が、その5区だったら5区のディストリビューターが例えば5社いると。そうするとその一人が5社を担当して、店舗を回りながら、ディストリビューターを回りながらっていう、そういうことをやってるわけですよ。それがすっごい細かくて、もう仕組みになってるんですよ、全部が。だから仕組みとして全部うまく動いてるんですよね。それだけチャネルに投資してきたんですよね、過去にね。
それをここ何年かでゴーンと出てね、チャネルに投資もせずに「うまくいったらいいな」ってのは、なかなかそれは難しいですよね。だから大手のP&Gとかユニリーバとかネスレが使ってるディストリビューターとかに会いに行くと、日本の会社は興味無くはないけど、すごい良いけど高い物持ってくるんでしょ、みたいな。チャネルには投資しないんでしょ、みたいなことをよく言われますよね。なので、先進グローバル企業はそんな感じでやってますね。
東:そうすると、これから参入するところもあるだろうし、どちらかと言うと再構築する企業さんも多いと思うんですけど、森辺さんなりに本当に簡単なアドバイスになるかもしれないですけど、プライオリティとして、なにを一番最初に持ってきたらいいと。
森辺:プライオリティとしてのチャネルですよね。チャネルの最適化をどうするかっていうのを、どうベトナム全体で考える。そうすると結論としては、いきなり全土やる必要は無いと思うんですよ。ホーチミン、ハノイ、ダナンっていう3エリアで、3ディストリビューターは、僕は最低必要になってくる。その3エリアで選定するディストリビューター、最も自分たちに合ったところはどこなのかっていうところに、しっかりと時間とお金とかけて選んでいくっていうことが一つ必要ですよね。
じゃあ、選んだから後は任せてお終いかっていうとそうじゃなくて、新しい商品なのでそれをマーケットに認知させるための、具体的にはBTLになってくるわけですけど、そういうものにはしっかり投資をしないと。ディストリビューターも、マーケットが認知してないものをディストリビューションするなんて無理ですからね。誰も何かよくわからないまま。そうするとメーカーとしての市場認知のためのプロモーションってのは、最低限やらなきゃいけないと。ここで言ってるのはテレビCMやれっつってんじゃなくて、BTLをしっかり投資しないといけないっていうことが一つだし。あとディストリビューターがいわゆるパパママショップの間口を取っていくための費用が当然かかるわけなので、そこには何らかの支援・投資をしていかないといけない、っていうのは一つそうですよね。
東:わかりました。じゃあ森辺さん、今日はお時間が来ましたので、また次回よろしくお願いします。
森辺:はい、ありがとうございました。
東:ありがとうございました。