東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、引き続き、共著で出された「わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書」という形で、その中で森辺さんのパーツを紹介していきたいと思うんですけども。
前回、競争環境ですとか、参入する国のマーケット分析だったんですけど、よく大手さんでもあるのが、どんな市場を狙えば良いのか。既に、例えば輸出だったり、日本からだったり、アジアっていう輸出を何十カ国でやってますと。でも、そのプライオリティが中々付いてなかったりする企業さんも多いと思うんですけど、この「どんな市場を狙えばいいのか」っていうので、インドネシアとマレーシアにおける日本企業の挑戦って書いてあるんですけども、この辺のお話を…この章の、市場と企業の持ち味を活かす、とあるんですけど、どんなことを書かれてるのか。
森辺:これ何だっけな…
東:インドネシアのユニ・チャームと、マレーシアのマンダムさんを挙げられたんですけど。
森辺:ああ、なるほど。これかな。黒田先生が中心でまとめたかな…
東:ああ、そうなんですね。
森辺:ええ。ここは、いわゆる先行している企業さん…ユニ・チャームもマンダムも、インドネシアでは先行している企業じゃないですか。マーケットシェアもいずれの企業も非常に高いと。じゃあそれが、どうやってマーケットを…今のマーケットシェアを取るに至ったのかっていうことを、事例として挙げてるんですよ。だから実際にユニ・チャームにいらっしゃった方、駐在してる方の実名を出したりして書いてるんですね。
なので、本当にリアルなお話し。彼がそのとき何を考えて、何に気をつけながら、どう判断して行動したのかっていうことを書いてるんですね。
これは非常に参考になるんじゃないかなと。いずれの企業もそれができるかっていうと、そんなことは無いと思うんですけどもね。ただ、一つの参考値としては、非常に面白いんじゃないかなと、いうふうには思います。
東:その次に行くと、標準化か現地化か、みたいな。グローバル・マーケティングの考え方、とあるんですけども。
森辺:標準化と現地化。どこまでを標準化と言って、どこまでを現地化って言うのが良いのか。判断が微妙なところはあると思うんですけどもね。例えば、標準化の事例としては、スターバックス。現地化の事例としてはマクドナルドなんかを取り上げてやっているんですよ。これも、スターバックスなんてどこ行ったって標準化じゃないですか。
東:そうですね。
森辺:現地に合わせてなんかっていうのは一切無いんですよね。ただ一方でマクドナルドは、若干変わってますよね。いわゆる基本的なビッグマックとか、ダブルチーズバーガーっていうのは変わらなくても、いわゆる、インドに行ったら、ノンベジのバーガーがあったりとか、中国に行けばちょっと中華風のメニューがあったりとか。そいうことがあるわけなので、その違いを、事例として挙げていると。
結局、企業が現地に行った時に、標準化なのか現地化、どっちなのかというそういう問題ではなくてですね。基本的には僕ね、世界標準化だと思ってるんですよね。世界標準化をする中で、現地化をしなきゃいけない部分も当然あるわけで、標準化する部分と現地化する部分の見極めが、すごい重要だと思ってるんですよ。
だから、現地適合化とかっていうことでは無いと思っててね。その考え方自体が僕はもう古いと思ってるんで。世界標準化である必要があって、その中でどこを部分的に現地化していくかっていう、そういう話だと思うんですけどもね。そんなことを、スタバとマクドの事例で書いてるっていうのが、この章の話ですかね。
東:その世界標準化っていうのは、森辺さんの言葉というか定義で言うと、どういうことを世界標準化…
森辺:例えば、P&Gとかユニリーバとかネスレさんなんかがやってるようなものを、僕は世界標準化だと思ってるんですよね。B to Bの会社で言うと、GEとかシーメンスとか、ああいう会社が採ってる戦略が世界標準化戦略だと思ってるんですよ。企業としての基本軸は、絶対変わらないんですよね。あとアップルなんかも、まさに世界標準化の代表例みたいなもんじゃないですか。
東:そうですね。
森辺:全く変わらないっていう。企業としては、あれがやれれば一番良いわけですよね。例えば、CMも世界で一緒、マーケティングの手法も一緒、ブランディングのやり方も全部一緒。ですから、中央で集中管理・コントロールができて、一つの場所で作った物が世界中で使えるので、例えば広告一つとっても、効率が圧倒的に良いわけじゃないですか。これができるのが、企業にとっては一番良いわけですよね。それぞれの国で現地化なんてしてったら、ものすごいコストが、進出していく国の掛け算になっていくだけなので、非常に非効率なんですよね。
先進グローバル企業っていうのは、絶対に標準化なんですよね。世界標準化してて。その世界標準化が基本にあって、現地化をする、みたいな。そういう形を明確にとってるんですよね。だから、スーパー・グローバルであり、スーパー・ローカルである、みたいな。なので、僕はそういう企業を、世界標準化っていうふうに言ってるんですけど。
東:はいはい。その世界標準化をベースに、現地化を考えるということなんですね。
森辺:はい。そうすると、全てのオペレーションが、どの国でも一緒じゃないですか。オペレーションの一番先端のところは現地化するんで、現地に全部任せていくわけなんで、本社がタッチするところ・タッチしないところが明確に分かれていると。そういうものなんですけれどね。
東:そうすると、本社で管理する部分と、現地、中国だったら中国、タイだったらタイで管理する、役割分担が非常に明確であると。
森辺:明確であると。
東:その時に、やっぱり人の問題って付いてくるじゃないですか。現地化ですとか、世界標準化をやるにしても、たぶん現地化をやるにしても、人の活かし方っていうのは…次の章に書かれてるんですけど、そこは付いてくると思うんですけど、欧米企業と例えば日本企業の駐在員の使い方じゃないですけど、あり方みたいなの、違うと思うんですけど、森辺さんそういうのを見られると思うんですが、それってどこにどう違いがあるっていう…
森辺:基本的には、統治を現地人にさせるか・させないかっていう話だと思うんですよね。先進グローバル企業は、本国の人間が現地に行くんですけど、それはあくまで現地人だけの統治・オペレーションができるような状態にしに行くんですよね。
けど一方で日本企業の場合は、日本人が駐在しに行ってナンボじゃないですか。それが入れ替わり立ち替わりされていって、その日本人が現地人を使って売り上げを上げていくんであると。あくまで日本人が現地法人の上層部を牛耳るわけですよね。それだとなかなか、現地人が定着しないとかね、日本人が結局上にいるから、自分は偉くなれないんでつまらない、みたいな問題が、何年も前から言われてきていて、じゃあ現地人を社長にしようとか、現地人を部長にしよう、みたいな取り組みはされてるんですけども、結局その隣には日本から来た部長もいる、みたいな。役職的には現地人のワンさんの方が上なんだけど、日本から来てる人は日本人だから、暗黙の了解で日本人の方が偉い、みたいなね。中途半端な現地化、みたいな話なわけですよね。
東:そうすると、森辺さんが言う世界標準化と、そこの人の問題って付いてきますよね。
森辺:付いてきます。だから世界標準化っていうのは、あくまで、どの国の現地法人も、オペレーションのやり方は一緒で、それは本社が決めて本社が管理するんですよね。そのオペレーションのやり方をインストールするために、本国の人間が一定期間そこにいるだけであって、現地で優秀な人間を採用して、それが現地人で回れば、その人たちは基本は戻る、戻るのかリージョナル・ヘッドクォーターに行って、そこで現地法人をマネジメントしていくっていう話になるわけなので。人の育成にはね、すごい関わってくるんですけどね、日本人の言うことを、阿吽の呼吸で聞ける人を採用するじゃないですか。だから、日本語ができたら出世するみたいなね。通訳のくせしてやたら会社牛耳ってる会社とかあるじゃないですか。日本語ができるから、日本人と近いから、社長の通訳だから、みたいな。でもそれって、本末転倒ですよね。結局、そういう採用になっちゃうと。でも世界標準化しようとすると、そういうふうにはならないんですよね。いかに現地の法人をオペレーションできるか・統治できるかっていう人を採用していくんで、そこで全然、先進グローバル企業と日本企業が採用している現地人の質っていうのが、大きな開きがあったりするんですよ。
なので僕は、圧倒的に世界標準化していかないと、ダメだと思うんですけどね。
東:分かりました。じゃあちょっともう、今日お時間来てしまったので、また次回も引き続きお聞かせいただきたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。