東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃああの、森辺さん。今日は素敵なゲストをお迎えしてますけど、ご紹介いただけますか。
森辺:はい。二回目のご登場でございますが、一橋大学の米倉誠一郎教授をお招きしております。米倉先生、どうぞよろしくお願いします。
東:よろしくお願いします。
米倉誠一郎(以下、米倉):よろしくお願いします。
森辺:じゃあ先生早速ですけども。先生数年前から「アフリカだ」ということを熱く仰ってますが、今こそビジネス新大陸・アフリカに舵を取ろうということで。何で先生今、アフリカなんですかね。
米倉:そうなんですね。三つぐらい大きな理由があると思っててですね。アフリカっていうのは、人口10万人で、ここ2000年代になると5~6パーセントの経済成長を全体で遂げてるんですよね。そういう意味では、日本に残された最後のフロンティア。世界中もそうなんですけども、皆そこ行こうと。あとで話しますけど、ただその色んな「危険じゃないか」とか、「疫病があるじゃないか」とか言われてますが、アフリカって54ヶ国もあって、それぞれが違うマーケットなんですよね。だから、良いマーケットを見つけたらば、もう早くそこに行く必要があると。そういう意味では、最後のフロンティア。
もう一つの理由は、最初のフロンティアだと思ってるんですね。なぜかっていうと、日本ってこれまで頑張ってきたんで、「日本製品は良い」とか、「日本の技術は信頼できる」とかですね。アジアも欧米もですね、その種の神話っていうのかな、は、できあがってるわけですよ。もうホンダって言ったら「おお~」、トヨタって言ったら「おお~」っていうように。
ところが、アフリカはですね、情報格差があったために、中国製・日本製・韓国製の差は、ほとんど認識されてない。国としてもされてないんですよね。そうなってくると、利き腕が使えないんですよね。利き腕っていうのはどういうのかっていうと、「日本製だから、良いだろう」「もう間違いない」って誰も思ってくれないから、「へえ~、じゃあインド製と何が違うの?」「中国製と何が違うの?」それをきちっと言葉で説明して、しかもハイスペックだから高いんですよね。その高いのを売るんだったら、ちゃんと説明をしなきゃいけないし、ハイブランドっていうものを作らないと。そうでなければ、努力をしてですね、彼らが買える値段まで下げなきゃいけない。だから、今まで日本がアジア・欧米でやってきた、「良い物を作ってきちっと売れば売れる」っていう世界じゃない。
全く食習慣も違うし、日本に対する思い込みも無いし。まずは素でですね、中国・韓国、それからヨーロッパ企業と戦わなければならない。これで、そういう意味では利き腕が使えないんでですね、ビジネスをゼロからやり直さなきゃいけない。そういう意味では、最初のフロンティアって言ってるんですね。
だからアフリカは、最初で最後のフロンティア、っていうのは、そういう意味なんですよね。
森辺:なるほど、なるほど。
米倉:三つ目はですね、やっぱり日本企業の今一番の問題は、遅い!と。スピード遅い!その時のメンタリティで、グローバリゼーションのメンタリティで言うと、「いやいや、まずはそのね。韓国、中国、それからASEAN行ってからメコン。えー、まだ成長はリスクがあるから、もし上手く行くんだったらインド」。こんなことやってたら、もうバスは出ちゃってるんですよ、ね。だから今こそ、アフリカまで行ってみて、パッと振り返ると、ランドスケープと違う。これインド抑えてないとエライコッチャ」と。ミャンマー、カンボジア。そこに行く手を打ってないと、エライコッチャってのが見えるわけです。
ですから、よく言うように「幸運の女神には後ろ髪は無い」と。前に回って前髪を掴むしかないっていうのが、今の状況で、このスピードの遅い日本企業がまずアフリカまで行って振り返って、幸運の女神の前髪を掴んで、さあどこからスピードを持って攻めて行くかっていうのを見るのが、僕は大事だと思ってるんですよね。
森辺:そうすると、必ずしも、今年・来年アフリカの市場をやれっていうことだけではなくて、一番新興国で究極なところを見て、その上でアジアをどうするんだ、ASEANどうするんだ。そういう考え方もあるよっていう、そういうことですよね。
米倉:まあね。世界をバードアイ。要するに、日本企業の感じってどっちかっていうと蟻の目っていうか虫の目で、一個一個ステディだから良かったんだけども、ちょっと一度ボーンと跳んでみて、鳥の目で「どうなってるのよ」って見てみると、「あれ」と。こんな小さな山で手こずってる場合じゃ無かった。もっと大きな山はあるんだ。そこがね、大事で。
こういうふうに言うとね、僕は四つ目の視点で大事なのは、やっぱ日本、ビジネスチャンスって言うんですけど、それもそうなんだけど、逆に日本を待ってるっていう側面もあるんですよね。そうすると、どういうことかって言うと、やっぱり省エネルギーで、本当に品質が良くって、我々が一緒に授業を受けたタシミア・イシュマル先生が言うように、一日2ドルしか使えないようなBOP層だからこそ、品質が大事なんですよ。
我々みたいな金持ちだったなら、100円のシャープペンシル、買ってもう壊れちゃったら「ああ、やっぱり100円ショップだな」っていうふうに言える世界と、やっぱり100円のシャープペンシル買うって大変なことなんですよね。それが、3回使ったら壊れちゃったみたいななんだったら、彼らにとってはそれは許せないことなんです。そうすると、「ああ、やっぱり日本って本当に良いんだね」とか「日本の冷蔵庫って全くエネルギーのあれが全然違うね」と。
そういうふうに、日本の良い物を安く、良く作る。そういうノウハウも欲しいし、そういう製品も欲しいと。さらに日本企業が行ってそこで上手い開発をすれば、いわゆるリバース・イノベーションっていうこと。だって、安くて良くて省電力の物を欲しいのは、先進国も新興国も一緒ですよね。
だから、アフリカで愛されたのが日本に帰ってくるというのは、充分あると思う。そういう意味ではですね、ただ単に日本の物を持ってって、売るっていう世界だけじゃなくて、そこから互いに学び合ったり、21世紀の商品って何なのかとか。21世紀の90億人になるっていうこの地球規模でのライフスタイルとか。そんなことを考える機会になると思うんですよね。
森辺:なるほどですね。そうですね、南アフリカ、サウスアフリカに関しては、そもそもBRICsの「不明(えすおーじーふーと」(8'51.37)サウスアフリカで、言ったらマーケティングとしては非常に大きなマーケットですから、アフリカは、もう少し先だという風に思っている企業がいたとしても、サウスアフリカだけを見ればそれは一つのブリックスの中の、大きなマーケット…
米倉:もう仰る通りでですね、残念ながらもうナイジェリアに抜かれたんですけど、ナイジェリアって多分人口が1億…日本より大きい、1億5000万か3000万くらいで、掛け算すればGDP総額ではナイジェリアに抜かれたんで、今アフリカ…南アフリカ2位なんですけど。一人あたりにすると35位くらいで、中国のGDP一人あたりは80位ですから。
森辺:そうですよね。
米倉:そうすると、やっぱり購買力っていうのもあるし、アパルトヘイトも終わってですね、黒人地位向上がどんどん成し遂げられていったので、ブラックダイヤモンドという中間層、そこも出てきてるんですよね。そういう人たちを取り組んでいく。そこに大きなマーケットがあるし、先程で言えば…北の、西っていうのは、残念ながらイスラム国系でですね、非常に荒れている。ナイジェリアもボコ・ハラムっていうのがいて荒れている。プラス、隣ぐらいでエボラ出血熱があったと。でも南アっていうのは、一番南側で、オランダ東会社が入植始めたのは、1600年代ですよ。もう400年の歴史があるんですよね。ですから、ケープタウンだってね、本当にヨーロッパの町並みが残ってるし、ヨハネスブルグのショッピングモールなんてのは、日本のショッピングモールよりも規模が大きい。そういう意味ではですね、南アフリカが、攻め入るんだったら今、一番良いポジションかなと。
森辺:なるほど、なるほど。そうすると、これから日本企業はもっともっとアフリカに目を向けて、さっき先生が仰った蟻の目で見るんではなくて、一旦上空に跳んで、大気圏外からマーケット見ろって、そういう話しですよね。
米倉:そういう事ですね。
森辺:鳥じゃダメですね、大気圏外まで
米倉:大気圏まで行って、そうですね。
森辺:そこから地球を見ると。
米倉:それをね、ある程度本当で、単なるマーケットと捉えるんではなくて、じゃあそこで開発されたものは、アジアで欲しくないのって言ったら欲しいに決まってるし、アメリカで売れないのかって言ったらそんなこと無いですしね。だから、全世界的に見て、先を行く最初のマーケットで利き腕が使えないっていうことは、実は本当の実力が試されるんですよ。我々がこの間やったセミナーで、今回やるセミナーでも言っていきたいと思うんですけど、ホンダのオートバイって世界1位なのに、アフリカではそれほど知られてない。そうすると、あのホンダでさえゼロから自分達のポジションを作り上げていく。これをですね、もう一回彼らがビジネスの原点を探る上で、すごく大事な作業なんですよね。ですから、日本企業もですね、「えー、まだまだアフリカなんか」って言ってないで、まずアフリカに行って、素手で戦ってみて、自分達の強いところ・弱いところ、しっかり見極めると、今度はインドはもっとやりやすくなるし、アジア・ASEANなんか、もっとやりやすくなると。
他流試合をやってないんですよ、最近。だから、弱いところばっかし道場破りしててもしょうがないんで、利き腕使えない素手でやってみて、自分達がどれくらいまでできるか。そういう意味でね、アフリカ面白いと思いますよね。
森辺:VIP、ベトナム・インドネシア・フィリピンでへこたれてる場合じゃないってことですね。
米倉:そうそう。
森辺:分かりました、先生。じゃあ今回はちょっと、お時間も来ましたのでこれぐらいにして、次回またセミナーの話とかですね、先生と一緒にアフリカの…南アフリカツアーの話しをお聞かせいただければ。
米倉:11月にね、皆で行くっていうのを、やりたいと思っていますからね。その話を。
森辺:次回よろしくお願いします。
米倉:よろしくお願いします。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございます。
米倉:ありがとうございました。