東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、山本先生を引き続きお迎えして、今日は日本企業とグローバルマーケティングみたいな題材でお送りしたいと思うんですけど、どうですかね。
森辺:前回、前々回といろんな面白いお話を、先生の人間性なんかもリスナーの皆さんに感じていただけるようなお話をたくさんいただきましたが、今日は日本企業とグローバルマーケティングということで、そもそものこのポッドキャストに合致した内容になってくるかと思います。ぜひ楽しんでください。じゃあ先生、よろしくお願いします。
山本:はい、こちらこそよろしくお願いします。
森辺:じゃあ先生、まず始めに、グローバルマーケティングに関してお話をしていきたいんですけども、先生が考えるグローバルマーケティングっていったいどんなものになりますかね。
山本:そうですね、やはり日本の国ってのは1945年の戦後からのアメリカの植民地時代を経て2013年迎えているんだけれども、こんにちにきて、グローバルってのは何か新しい語彙として捉まえているでしょうけれども、私自身からはもう戦後からの、やはりグローバルっていう認識は重要だなあっていうことは自分では確認しておりました。というのは、市場ってのは動いているもんなんですよね。人間がやっぱり毎日24時間生活しているがごとく、市場は絶えず動いているというこの事実をきちっと把握していけば、日本の市場を構成している人口の構造とか、あるいは需要の構造とか競争の構造とか、あるいは情報の構造とか、いろんな構造そのもので構成されている市場環境の変化を見ていったら、少なくとも日本のこんにち、あるいはこれからの市場環境は国内だけの需要ではもうもたないと、いうことの視点を見つめていったときに、いやがうえでも僕は日本以外のアウトオブジャパン、というところの視点においた経営姿勢、経営の方向性を持つのがごく当たり前ではないだろうかというふうに判断しています。だから言葉ができないから、海外うんぬん、それが第一条件でとどまっているっていう時代じゃないと。大切なことは、言葉できることは大切ですよ、だけどそれが第一の一つの課題どうのこうのじゃない。やっぱり企業存続させ、社員の何千人、何万人をきちっと生活していただこうとするからには、やはり将来の、3年、5年、7年、10年先のわが社はかくあるべきだなあと思ったら、やはり海外に目線をおいて、そしてなおかつ自社の隆盛を極めていこう、いう発想を持とうと思えば、いやがうえでもやはりグローバルマーケティングだと。だからマーケティング概念がたまたま国内のマーケティング趣向をグローバルに視点を置くということであって、ただ言葉で始まっただけじゃ意味がないんで、やっぱり市場環境を地球に持っていけということの視点からいくと、日本以外の国にやはり商品を持っていくのか、あるいは新しい商品を開発するのか、あるいはその国のための喜んでもらえる商品をそこで創出するのか、あるいはそこで売買する場所を新しくつくり上げていくのか、あるいはそこの国の国民の創出のためにいろんなビジネスの機会を与えてあげるのか、自社だけでどうのこうのじゃなくて、やはりその国のためにもなっていくような働き、これが働きかける、これが僕はグローバルマーケティングだという認識です。だから自社だけが、自分の国だけが、あるいは自分だけがという認識の人はまずグローバルって言葉使うこと自体が、僕は資格ないと、あほちゃうかと、いうふうな判断しています。
森辺:なるほど。なんかそうですよね。僕もまさにそのとおりだと思っていて、でも戦後からもうグローバルっていう動きが始まっているんですけど、日本の多くの企業であったりビジネスマンを見ているとまだまだグローバルマーケティングっていう概念ってすごく定着してなくて、われわれみたいな考え方をしている人って多分すごく少数派で、一方で日本企業が早くからアジアにも出ているんだけど、それはあくまで生産拠点として出てって、結局消費しているのは日本国内なんですよね。日本国内が中途半端に1億2,000~3,000万の大きかった市場が、逆に今の日本のグローバル化の足を引っ張っていて、一方で韓国なんかは5,000万人の人口の中で、どのみち出ないとやられちゃうという、上には日本、下には中国と、そんな図式の中この20年非常に頑張ってグローバルマーケティングを徹底してやってったんじゃないかなっていう、そんなふうに感じるんですけど、その辺は?
山本:はい、そうですね。僕もそうだと思う。ただ、重複するかもわかんないけど、日本は島国という視点から見ていった場合に、言葉の優先性はあっても行動の領域の中でなかなかそこで成り立ってないっていうのが現状だし、最近若い人たちがどんどんどんどん足しげく外へ出ていくことで、その辺の気づきはしていただけているとは思うんだけれども、僕から見ればまだ自社だけ、自分だけ、自国だけ、という視点に置いたものごとの進め方にはちょっと違和感を感じているんで、本質的ににグローバルにはなってないのかなあ。英語ができたらグローバルだというふうな認識になっているというのはもう、全然本旨にはまってないなあっていう危惧の念は持っています。
森辺:そうですよね。韓国とか台湾の企業なんかを見ていると、まあ企業もそうですけど、そこで働くビジネスマンも、ガッツの度合いが日本のビジネスマンや日本の企業とは全く違うし、ビジネスマンでいえばガッツの度合いが全然違いますよっていうのと、企業でいうと、リスクの取り方が全然違う。リスクに果敢にチャレンジをして、そのリスクを取る、マネージしてくっていうことを積極的にやっていく。リスクって高いリターンを求めればリスクも高くなるわけで、結局ローリスクだったらローリターンなので、ハイリスクを取っていかないといけないんですけど、取るっていうことは、それはマネージするっていうことだと思うので、そういう姿勢が非常に多いのに、日本企業はなかなか、全部が全部そうじゃないけども、なかなかそういう感じになってないなあってのはすごく感じて、僕もまだ生まれてない時代というか、まだ小さかった頃の話なので先生に今回、いい機会なので聞きたかったんですけどね、よく学者さんが、プロダクトアウトっていう考え方じゃだめだと。プロダクトアウトというのは、いわゆるメーカー側が自分たちの意志に基づいて市場に商品を押し売りしていくっていう、簡単に言うとそういうやり方で、マーケットインであるべきだというふうにおっしゃると。マーケットインは逆に市場のニーズから製品を開発して市場が求めているものを出していくことだと。ただ、僕これ、プロダクトアウトでもマーケットインでもなくて、マーケットクリエーションみたいなことを、とか、マーケットメーキングみたいなことを実は日本企業は求められていて、僕らの先代の日本の企業さんって、マーケットメーキングを欧米ではやっていたと思うんですよね。だから欧米で認められていて、今アジアでそれができているかっていうと、僕は、ほとんどできていない。例えば、キッコーマン、アメリカ人が照り焼きソースを食べたのも、キッコーマンがバーベキューフィールドで自分たちの醤油を牛肉にかけて、照り焼きだって言ってアメリカ人に食わしてみて、あれだけの認知がされたし、ヤクルトだってそうだし、サロンパスだってそうだし、あと、ホンダの二輪のバイクも、アメリカでバイクといえば、チョッパーとかハーレーとかって、いわゆるでかい男がでかいバイクに乗るっていうのがバイクの定義だったところに、女の子や若い子や学生なんかも小さなスクーターに乗るみたいな文化を定着させた、これはホンダがマーケットをつくったっていうふうに僕は思っていて、昔の日本企業はマーケットを作れたのに、今の日本企業ってマーケットメーキングっていうかマーケットクリエーションみたいなことが全くない。イノベーションが全く起こらないっていわれていますけど、まさにそんなところにあるんじゃないかなっていう気がするんですけど、その辺は?
山本:全く賛成、全く同意見です。これはやっぱり、各企業もさることながら、やはり先輩諸氏のマーケティング感性そのものがやはり目覚めてないところに落とし込んでいるのかなっていう気はしている。それと目標設定の置き方、やはり収益向上のどうのこうのと、言葉では言うんだけれど、先ほどあなたおっしゃったように、韓国とか台湾とか中国の方々の収益向上の設定の仕方が普通じゃないですよね。かなりアグレッシブだし、集中しているし、うまくいけばいいなあっていう生ぬるい中途半端な、そういう姿勢でないところが、僕は、日本人との大きな違いかなあというふうに判断しているんですよ。だからこれからの若い青年諸君は、僕は、韓国の人がどうだとか、台湾の人や中国、そんなの別にして、これからの市場環境ってのは、今までの生半可な観念だったらだめだぞということをもっと気づいてほしい、というのが僕の今の主張です。賢いのは賢いですよ、最近の今の青年諸君は。頭いい。だけど市場に落とし込もうとするプロセスに、何かしら私にとっては生ぬるさ、あるいは本当にもうけたいという信念がそこにあるのかどうかっていうのが疑問感じる。でも隣の若い国の青年諸君は、命懸けて利益創出のために頑張っているあのビヘイビア、シーン、スタイル、もう涙出るぐらい感激しますよ。
森辺:そうですよね。僕、ちょうど今38なんですかね、僕の同級生が、アメリカンスクール行ってたときの韓国の人たちが、韓国に戻ってサムスンとかLGに就職していて、そういう話を聞いていると、当時僕がいろんな本やいろんな人に聞いた戦後の経済発展を支えたマーケットメーキングを欧米でやっていた日本企業のあの時代のビジネスマンと同じトーンの仕事をアジアでやっている印象をすごく受けて、今先生がおっしゃった、生ぬるいっていうのはまさにそうで、お客さんのご支援していても、本当に売りたいんですか、売りたくないんですかっていうことをすごく感じるんで、そういう生半可なあれだったら僕も時間もったいないから、もう来ないでくださいって言いたく、言わないですけどね、言いたくなっちゃうような(笑)お客さん、いっぱいいらっしゃる。
山本:いらっしゃるよ。多い、まだ。僕も去年でも、ある大手メーカーの役員レベルの研修時に何て言ったと思う?「あなた方の数名は給料泥棒が多い。言葉は上手だ、でも具体的に市場に落とし込んでいった場合の自社の持っていき方を若い青年諸君、社員に対しての指導、気づかせ方、全くなってない。命令レベルで終わっている。そんなことしたら反発があるだけで、実際に市場で戦争なんかできないじゃないか」と言って、すごい僕は憤った。)。そしたら「あんた出て行け」言うから「はい、出て行きます」言うて出て行ったね。「あほちゃいまっか」言うて「給料泥棒でっせ」ちゅうて。そしたらあと、むちゃくちゃな謝罪と、「今後ももっと継続してくれ」言うて。「いや、あんたの会社いらん言うた。俺、ちゃんと三度飯食えるし、悪いけどあんたよりもうまいもん食えているぞ、定期的にうまいワイン飲んでいるぞ」言うて。そんな失礼千万なね、「あんた首なったら俺やるわ」言うて。「あの人くびにしたら俺、継続したげる」そんなん生まれて初めて、異動させたよ。
森辺:すごいですね。私もお年が先生ぐらいになりましたら、それぐらい言おうかなと思いますけど(笑)。
山本:でもまだ継続している。それぐらい僕ね、やっぱり、きちっとした認識を持ってやっている。
森辺:なるほどね。けどまあ、そうですよね。本当、アジアで売らないといけないんだって言いながらも、「本当に本気なのかな?この会社さん」っていうのはたくさんいますよね。
山本:で、韓国の人たちはもう家族で行かせるでしょ。
森辺:そうですね。
山本:日本みたいに単身で行かしてないでしょ。あれはすごいじゃ。頑張らざるを得ないよ。
森辺:そこはやっぱり大きい違いですし、日本企業もこれからもっともっと本気でマーケットを取っていくっていうことをやっていかないと絶対にだめだなあというふうには思いますね。
山本:まあでも僕は、若い青年諸君にも期待しています。そういう目覚めている人が増えてきた。
森辺:そうですね。一時に比べたら。何か一時はね、商社でも海外駐在嫌だなんて人が多かったっていいますけど、最近は増えてきているみたいなんで、皆さんでどんどん頑張っていってくれれば。あと先生、一つお伺いしたかったんですが、先生のご専門でもあると思うんですけど、マーケティングとブランディングの関係性みたいなところで、一つお話をお聞かせいただければと思うんですが。
山本:ここで使っているブランディングっていうのを企業名を指して主張しようとしているのか、あるいは商品群を指して主張しようとしているのか、まあいずれにしてもブランディングっていうのは一つのシンボルであるだろうし、企業の哲学でもあるだろうし、あるいはプロモーションツールでもある。ついてはやはり、そこで付加するデザインにしても色にしても形にしても、自社の魂がどれぐらいそこで含ませているかどうか。なおかつ社員一人一人がブランディングのビヘイビアがなされているのかどうか、あるいは頭の先から足の先までがそのブランディングになっているのかどうか、その辺の基本の理解、認識をきちっと整理なさることを僕はすすめたい。なおグローバルに展開していこうと思えば、自らがブランド、自らがブランディングという実体を示しえられる、そういうスタイルが求められると思うし。
森辺:特に海外行ったら、BtoBであってもブランディングみたいなところが求められますもんね。
山本:そうです。この前も韓国のLGの研究所へ行ったとき同じこと言ったらすごく喜んでくれた。LG生活健康社サプリメントのね、そこの研究所行って、役員の人たちフォローしてあげたりとかね。やっぱり同感、そのノウハウとか手法とかいろいろまた講義を仰ぎたいって。また来月行くよと。
森辺:なるほどなるほど。そうですか。わかりました。じゃあ、これで3回にわたって山本先生にお話を聞いてまいりましたが、東さん、どうですか。大変面白い3回、
東:(笑)個性的な先生で。最後に、日本企業が今アジアですごい今、苦戦しているっていうことを森辺ともお話をしていたと思うんですけど、日本企業がじゃあグローバルマーケティングっていうものを具体的にどう活用すべきとか、どういったことに注力したらいいのかみたいなのを、山本先生なりに何か考えをお持ちであれば、ぜひアドバイスをいただければと思うんですけど。
山本:グローバルっていうそのボキャブラリー自体は、自分の国のポジショニングから発する場合はグローバルだけれども、その相手の国に入った場合はむしろ、相手の国の歴史、文化、習慣、嗜好性、あるいはその市場の環境、等々、やっぱり主観の中で落とし込んでいくという習慣がなかったら、僕は伸びないと思う。ただ日本でいろいろな立場でグローバルという言葉をそのままその相手の国で利用する、使用するという必要はないと判断しています。だから韓国で商売しようと思えば、まさに韓国人になりきる。あるいは韓国人の嗜好性を持つ。あるいは韓国人の文化、習慣をあたかも自分も韓国人になったごときスタイルのビヘイビアを起こせるようになってきたら、僕はその人はグローバル感性の旺盛な人だし、日本へ帰ってきた場合は、まさにあなたはグローバルにビジネスしているね、というふうな主張が、僕はできるんじゃないかなというふうな理解です。けどその辺が日本の人は足らないと思う。何かその国にいながらにして、日本の国でいながら仕事をしているという、習慣も、あるいは感覚も、あるいは相手に対しても、その国の人に対しても、そういう行動を平然と行っている。失礼千万だと思う。そこでお金もうけさせてもらえているんだとするならば、この国に対して、自分の商いをやりながら、何を貢献して差し上げられるんだろうかということから入っていかないと、グローバル感性の中でグローバルというマーケティングの中で、グローバルというブランディングの中での、僕は銭もうけはできないというふうな理解です。
森辺:そうですよね。なんかこれ、日本のもしかしたらいけないところなのかもしれないんですけど、自分たちの習慣とか、まあ商習慣とか文化等、違うもの、これが外国人だったら受け入れられるんだけど、日本人が違っちゃうと、例えばアメリカナイズされた日本人を少し曲がった目で見るとか、ちょっとこう、なんて言うんですかね、変わっちゃいけないみたいなのはすごくあるなあっていう気がしていて、僕も帰国したばっかりのときに、「変ジャパ」っていうあだ名がついたんですよ。変なジャパニーズっていう、「変ジャパ」っていうあだ名でね、まあそれは愛敬で呼んでいただいてたんですけど、やっぱり違うものに対する抵抗がすごくあって、そこの壁を日本国民1億2000万人全体で越えていかないと、自分との違いを受け入れれる、そういう国にならないとなかなか難しいですよね。これ、大陸続きの国はみんな受け入れれるんですよ。
山本:そうですよ。アクセプト(accept)。
森辺:だから、そこはすごくもったいないな、いいところもいっぱいあるんですけどね。いいとこいっぱいあるんですけど、そこの壁だけね、あと100年かけてぶち壊すんじゃなくてね、50年、30年でぶち壊せたら、日本とか日本企業すらもっともっとよくなると思うんですけどね。
山本:全くそう。大賛成。
森辺:わかりました。じゃあそろそろお時間になりましたので、先生、本当にどうもありがとうございました。
東:ありがとうございました。
山本:ありがとうございました。
森辺:またよろしくお願いいたします。
東:よろしくお願いします。
山本:よろしくお願いします。