東 こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺 こんにちは。森辺一樹です。
東 では森辺さん、ディストリビューターの話が続いているんですけども。
森辺 うん。
東 では具体的にディストリビューターを使って、どうやって売り上げを上げていくか、というところの考え方が多分必要だと思うんですけれども。
よく、こっち、やる側がですね、戦略を持たなければいけないということは森辺さん言われるので、それの戦略の大枠になってしまうと思うんですが、そのへんをちょっと教えていただければと思うんですが。
森辺 はい。まあ、消費財のビジネスですよね。
東 はい。
森辺 消費財のビジネスで言いますとね、ボクはね、いつも逆算するように考えるんですよね。
結局、その消費者がその商品をつかめる売り場、ボクは間口と言いますけど、アカウントとか、間口とか、アウトレットという言い方をするんですけれども。
ここでは間口という言い方をさせていただいて、その間口に置かれていて、はじめて消費者の手に届くわけですよね。
東 そうですね。
森辺 それで消費財の世界で言いますと、Eコマースなんて、コンマ何パーセントの世界ですから、基本的にはオフライン間口なわけじゃないですか。
そうしますと、そのオフライン間口がMT、GT、TTと3種類くらいありますよ、というなかでMTの絶対数はですね。
例えばマレーシアでしたら4104、インドネシアでしたら18955、タイでしたら10883、インドネシアでしたら714、フィリピンで3000くらいで、なんか、そういう話だとしますと。
MTだけでビジネスをしていると、例えばいちばん少ないベトナムは714しかないわけですから、では、間口のカバレッジを100パーセント取りましたと、714に並びましたと、みなさんの商品がですが。
それで、そこで1日に1個売れたら、1日では714個しか売れないわけですよね。
東 そうですね。
森辺 それが1日に2個売れても1428個しか売れないわけですよね。そうしますと、1店舗当たり100個売れるというようなことは絶対にないわけじゃないですか。
そうしますと、そもそもMTが114の間口しかなかったら、どれだけそこで店頭シェアを上げようが、もう、売り上げの計算がつくじゃないですか。
東 はい。
森辺 そうしますと、MTだけではダメだ、という答えが出ますので、GT、TT、攻めましょうと。それでGT、TTが50~60万間口あるわけですよね。
この50~60万間口に上げていくということをしないと、いわゆる間口のカバレッジを上げないと、売り上げが立たないということが分かるわけじゃないですか。
そうしますと、この間口のカバレッジを上げられるディストリビューターはどこなんだろう、誰なんだろう、という話になっていきますので。
そういう逆算をしていけば、ディストリビューターを何社使えばいいのか、どの地域で使えばいいのか、どの人とやればいいのか、ということが見えてきますよ。そういう計算になるんですよ。
東 なるほど。ではそれを、まず計算したうえで、では自分たちがどれくらい、まずMTでやりたいのか、ということを考えるということですね。
森辺 MTが絶対じゃないですか。MTに入れるんですけど、MTが714しかなかったら、もうMTだけやっていたら儲からない、ということをベトナム市場では分かりますね、と。
そうしますと、GT、TTまでいって10万間口、20万間口を取らなければいけないですよね、と。
そうしますと、その10万間口、20万間口がベトナムの中のどこにあるのか、ホーチミンの何区にあるのか、何区にいくつあって、何区にもいくつあって、と。
そうしますと、何区ではどういうディストリビューターを使って、みたいなことですし。
それで、もっと細かく逆算していきますと、ディストリビューターの中にセールスが何人いて、そのうちの何人がウチの商品を担当してくれるんですか、みたいな計算をしていくんですよ。
そうしますと、1人当たり、いわゆる1日に増やせる新規の間口カバレッジ数の平均が、なんとなく割り出せるじゃないですか。1日に平均して5個は新規で取ってこれるんじゃないかとか、10個は取ってこれるんじゃないかみたいなことで、そうしますと何人のセールスがいないといけないのかというのが出てきますので。
では、200人のセールスが必要ということになるのであったら、その200人のセールスを1社で賄えるのか、10社で賄うのか、みたいな計算になってくるわけですよ。
そうしますと、ディストリビューターが決まってくるじゃないですか。それで、そうやって決めていくんですよね。
でも、日本の会社はそこまではやらないですよね。なんとなく、ここ。日本語喋れるし、いいなあ、みたいな。
東 そこまでやらないと、やっぱり計算できる定義は立っていかないということですね。
森辺 うん。だって東ちゃんだってベトナムでやっているのって、まさに、そこをやっているわけじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 なぜお客さんがウチに高いフィーを払ってお願いをするかというと、ウチはそこまで徹底的にやって間口を増やしていくわけですよね。
それを日系企業が、はい、フン・トゥイがいいな、ロータスがいいな、日本が喋れるし、みたいなことをやっていたら、そりゃあ間口は取れないですよね、という話だと思うんですけどね。
東 分かりました。では、まずMTに関しては、ある程度の統計上を調べていったら、各スーパーマーケットの店舗が載っているわけですから。
その間口数とかアカウント数というのは、ある程度は分かりますよねと。一般公開上では。それで一つ、ここはきちんとやらなければいけないというところはあると思うんですけれども。
では、ここから下に降りていったときに、ここでも分からないのに、ここからGTとかTTと言われても、なかなか理解できないと言いますか。日本では市場としては、ほとんどないじゃないですか。
そうしますと、昔は開拓してきて、ああいったパナソニックショップとかというのは、まさしくそういった、どちらかというとGTとかTTの市場だったと思うんですね。
ああいうのを開拓していったという経験がある人が、今はひと段落して抜けてしまっているので、その市場開拓を一からやった人たちが企業の中にいない、ということが企業側としての一つの悩みであると思うんですよね。
森辺 まあ、そうですね。はい。
東 そうなりますと、では新興国では、まだそこが主要なマーケットでGT、TTを取らないと利益が出ないということは、よく森辺さんがおっしゃることだと思うんですけど。
では、そのGT、TTを、どういう経営進路で増やしていって、どういうかたちで取っていったらいいのか。
その戦略を立てるところが定まっていないというのは、多分、一つの悩みとしてあると思うんですが、そのへんは、どうなのでしょうか。
森辺 まあその、経営指標、オペレーション指標ですよね。
ボクはね、やっぱりね、全ての オペレーションの指標を、間口のカバレッジと、その1間口当たりの店頭シェア、それで特に、間口がゼロだと店頭シェアなどは上がらないじゃないですか。
なので、間口のカバレッジが先で、例えば1万間口のカバレッジができたときに初めて、店頭シェアを上げるためのプロモーションを打たないといけないんですよと。
ただ1万間口でマスプロを打ってもしょうがないので、そこでBTLが登場みたいな感じですし。
むしろ1万間口のカバレッジを増やしていく段階で、BTLが同時に並行してやっていかないといけないことですし。
けれども、やっぱり、一旦設定した数字の1万にきたらBTLを一回やって、では次は2万までやって、3万までやって、と繰り返していくわけですよね。
それで5万くらいになってきたときに初めて、大々的にプロモーションをやりますと、その5万間口の店頭シェアが、グンと上がっていって、それの繰り返しなわけですよ。
ですから、そのオペレーション目標を、間口のカバレッジと店頭シェアにフォーカスします。
それをベースにディストリビューターも選定しますし、ディストリビューターのマネージメント方法も決めていうということですけれども。
これね、ものすごいノウハウを、いま言っちゃっていますけどね、これを言ったらね、もうコンサルの仕事が来なくなるんじゃないかなって思って。
まあ、そういうことなんですよね。我々がやっているのって、そういう話じゃないですか。
東 そうですね。
森辺 ですから、その、うん。そこだけだと思うんですけどね。
なので、別にベトナムだろうがアフリカだろうがやることは一緒ですよと、伝統小売なんて、とボクが言っているのは、そういう話なんです。
東 それを、どうやらせるか、というところは、やっぱり難しいということですよね。
森辺 そこはノウハウと知見ですから、結局やらせたいことを決めても、この人が言ったのならやらない、みたいな話があるわけじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 我々が言うからディストリビューターが動くとかね。
A社もB社もC社も、そこに連れて行っているから、オマエ、オレが言ってるんだからやりなさいよ、はい、分かりました、とそういう話もあるわけじゃないですか。だからね、まあ、それはそうなんですけれどもね。
東 では、まずは設定するところとしては、そういった設定をしない限り、いくらやってもなかなかシェアは伸びないですし、売り上げも伸びていかないということですね。
森辺 伸びていかないと。それで、その間口カバレッジを取ろうと、会社のね、目標設定を決めた段階で初めて、では、その間口がどんどんGT、TTに落ちていくわけですから。
そうしますと、初めてそこで、はい、プロダクトを変える必要がありますねと、今まで300グラムで売っていたものを100グラムの小さいパッケージにしましょうとか、小袋にしましょう、みたいな話が出てきますし。
プライスも、こうしましょう、みたいな話も出てきますし、1万間口でマスプロを打ってもしょうがないので、BTLをやりましょうみたいに今度はプロモーションの話も出てきますから。
いわば4Pというのは同時に考えていくんだけれども、実はチャネルを先行していくことによって、その他の3Pが決まっていくんですよ、ということを言いたいんですよ。
特にアジアはそういう市場で、それで世の中にある4Pが同時にというのは、あれは先進国でやるマーケティングの話ですよね。
新興国のマーケティングの話は、その4Pはたしかに同時なんだけれども、ちょっとチャネル・ファーストだと言いたいだけなんですよね。
東 商品の価格が、ということを置き去りにするわけではなくて。
チャネルから、それを導き出したほうが早いのではないか、ということですね。
森辺 そうです。アメリカや日本でやるんでしたら、4P、完全同時でレッツゴー!だと思うんですよ。
けれども、マーケットはアセアンですよね、アジアですよね、新興国ですよね、ということを言っているわけなんですよね。それで、これがなかなかね、固い人は分からないんで、いつもね、ケンカになっちゃうんですよね。それでね、あれなんですけどね。
東 はい、分かりました。では、そこの今日の重要なポイントを、もう一回お願いできますか。
森辺 ええと、なんだっけ。ええ。(笑)
東 チャネル・ファーストですね。
森辺 チャネル・ファーストです。全ての軸は間口カバレッジと、その間口における店頭シェアを上げること。もう、これが消費財ビジネス、アジア新興国ビジネスの秘訣なんですよね。
それで、全てをこの二つを基準に考えていけば、全部クリアできるんですよね。
間口カバレッジを上げられる商品なのか、金額なのか、プロモーションなのか、店頭シェアを上げられる商品なのか、金額なのか、なんなのか。
それからディストリビューターも、間口カバレッジを上げられるディストリビューターなのか、店頭シェアを上げられるディストリビューターなのか、ということも、全部この二つを軸に考えていけば答えは出るんですよ。
なので、それほど難しくはないんですよ。
東 はい。分かりました。では、森辺さん、ありがとうございました。
森辺 はい。ありがとうございました。
(第220回、終了です)