東 こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺 こんにちは。森辺一樹です。
東 では、森辺さん、リスクについて前回は話をしたんですけれども、最後に全体像が分かった戦略を持っているか、持っていないか、みたいなお話で前回は終わったんですけれども。
グローバル企業がいう全体戦略みたいなところというのは、具体的にどういうところのことでしょうか。
森辺 部分的な最適ではなくて、全体最適になっているということですので、いわゆる、何て言うんですかね。その・・・
東 グローバルと言いますと、例えば、その部分最適と全体最適の違いというのは、森辺さんはどのようにとらえていらっしゃいますか。
森辺 例えば、それってね、攻めるエリアに関しても一つだと思うんですよね。
単国の点で攻めるのか、グローバルで地球を見たときに、まず一旦、面で見てから情報を収集して、プライオリティを付けて、優先順位を決めていくということも。
これも全体的に最適するというのと部分的に最適するという話じゃないですか。
あと、そのオペレーションのプロセスもそうだと思うんですよね。
一つのオペレーションの部分だけを取って、そこを最適するというのは、これは部分最適になりますし、オペレーション全体を最適化するというのは全体の最適ですし。
ただ、木ではなくて森をちゃんととらえて最適化して、さらに、その木の部分をもっと最適化していくということですし。
こういう入り方をしていかないと、なんかリスクっていろいろなものに連鎖しているわけじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 部分でリスクがあるわけではないですので。なので、そういう意味では欧米というのは、一つの事業をするときの、何て言うんだろうな。
いちばん重要な軸が基本的にはしっかりと計算されて整っていますので、やる、やらないの判断が明確みたいなことですね。
あと、どこまで行ったらやめる、どこまでの数字をクリアすれば引き続きやる、ということが、やる前から決まってますよね。ですから、引くに引けない状態とかはないじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 なので、そういうことだと思うんですけどね。
東 分かりました。
前回、一つ目は70、80パーセントと、100パーセント、110パーセントという、その積み上げなのか、ある程度の見切りでいくのか、というのが一つのリスクに対する考え方が違いますね、ということでした。
それでもう一つ言われていたと思うんですけども。
森辺 もう一つ。スピードが7、8割でいくか、100、120で行かないといけないか、ということですよね。それともう一つは、何を言いましたっけ・・・もう一つね、前回ですよね。
東 はい。
森辺 そう。それと、もう一つのリスクといいますのは、ああ、そうそう。
このリスクが数字に置き換えますと、いったいどれくらいのものなのかということを、“リスク“という言葉をカタカナで言うので、なんか得体のしれない怖いものだ、という話であって。
いったいいくらなのか。100円なのか100億円なのか、というこのリスクを数字でとらえるということと、リスクを取るということは必ずゲインを得られるわけですので。
そのゲインの大きさが100円なのか100億円なのか1000億円なのか、ということを見ていったら、それは分かりやすいじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 ああ、なるほどと。カタカナで全てを“リ、ス、ク”とひとまとめにしてしますから、何か恐ろしいイメージがあるわけですよね。ですから、リスクを数字に置きかけるということを、ボクはいつもやるんですよ。
それで、リスクが消えることなどはないので、それで消えるためには、いろいろな情報を集めてそれを可視化して。
分からないからリスクなんですよね。分かってしまえば対策が打てますので、もうリスクではなくなるということですし。
そうしますと、元々100あったリスクというのは、いろいろ調べて可視化していきますと、いろいろなことが分かってきますので、30とかになるわけじゃないですか。
そうしますと不安が70パーセント減るわけですよね。
東 そうですね。
森辺 それで数字も70パーセント減るわけですよね。でも、ゲインは変わらないわけですよね。そうしたら、一気に行けるわけじゃないですか。
だから、ボクはリスクと思ったら、それを徹底的に数字に置きかけるようにはするんですけれどもね。
東 なるほど。それで、それをなかなか数字に置き換えないでやっていますと、どういうことが起こるんですか。
森辺 まず一つは、前に進まないということですし、ですから日本企業が出遅れた要因はそこにありますよね。
それが一つですし、あと、そのリスクが実際に起きてしまったときに、それに対して対策が打てない、もしくは対策を打とうとしてもそこから準備が始まりますので対策が遅れるということです。
そうしますと、本来は100だったリスクが200とか300に、どんどん膨れ上がっていってしまうわけですので、対策が遅れるということが、さらによろしくない連鎖につながってしまうということでしょうね。
東 そうしますと、歯止めがかならないということですね。
森辺 そうですね。それで、そうですね、気付かないままで、ずっと時間が経ってしまうということもあるわけですので、そうだと思うんですよね。
東 そうしますとグローバルの企業は、そのリスクを潰すためにいろいろな対策を当然考えて、リスクを取るわけですよね。
森辺 はい。
東 それで日本企業は、そのリスクをなかなか数字には置きかえずに・・・
まあ、置き換えてはいるけれども、その置き換える度合いが弱いということですが、多分、それが現実的かもしれないですけれども。
それに対する違いが、結構、そのスピード感とか、結局は日本企業は決断が遅いとか意思決定が遅いと言われるのは、意外とそういったところに起因するということなんですね。
森辺 そうですね。それでゲインは企業が成長していくためには得ないといけないことですので、そのゲインは取りたいわけじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 そのゲインの大きさを、的確に明確に数字で把握して、そのリスクの大きさも、的確に明確に数字で把握をして。
例えば10のリスクがあるんだとしますと、それをいかに小さくできるか、ということの対策をやっぱり考えるということはスマイルということですので。
それで、7、8割は行けると踏んだら、やっぱり前に出ていかないと、海外の企業にはなかなか勝てないですけれども。
でも、これは日本人の良いところでもあるんですけれどもね、その、きっちり、しっかりといったところは。
でも、なかなか世界で戦っていると、まあ、外国人はいい加減じゃないですか。
東 そうですね。
森辺 尊敬を込めて言いますけれどもね。でも、あの適当感がよくて、いろいろと世の中が回っているわけですよね。
だって、アジア人は適当だ、中国人は適当だ、と日本人はみんな言いますけど、それであれだけの大国ができあがって経済が回っているわけじゃないですか。
ボク、よくあんないい加減な感じなのに、海外の航空会社でも、こんなふうに事故がなくてよく飛んでいるな、とかね、なんか経済がうまく回っているな、とかね、思うんですよ。
ですから、もっと適当でも世界は回るんですよ。ですから、それほど日本人は真剣に考えなくても、ボク、いいんじゃないのかな、と思うんですけれどもね。
東 そこが良さでもあり、グローバルに出ますと弱さにもなってしまうと。
森辺 弱さにもなってしまうということで、難しいところなんですけれどもね。
東 そうしますと、ただ、グローバル企業と戦うというか、戦わざるを得ないということで。
それでグローバルでなくても、結局はその国々のローカル企業がいて、どちらかとは戦わなければいけないんですよね。
それで、そこに台湾、韓国の企業が間に入ってくるということになりますと。
森辺 やっぱりスピードというのはすごく重要ですし。
ボクね、スピードを遅らせる以上のリスクはないと思うんですよね。そんなギャンブルをするようなリスクを取る企業なんていないじゃないですか。
東 いないですね。
森辺 ですからリスクと言われるとドキッとするんですけども、実際に数字に置き換えてみて、ゲインの数字と比べてみたら、こんなものはリスクじゃないじゃん、みたいなことですし。
ゲインに対して1パーセントでしょ、みたいなことですし、それを、なんか得体のしれないとてつもない魔物のようにとらえるわけですけども、実際にはそういうことはないですよね。
東 そうですね。森辺さんは講演で、よく日本企業はリスク回避ですとかリスクヘッジですとかという言葉を使いますけれども。
リスクはマネージメントをするものだ、みたいなことを言われるんですけれども、それはどういったことなんでしょうか。
森辺 日本でしたらリスクはダメなもの、怖いもの、いけないもの、だからリスクを回避しましょうとか、リスクから避けましょう、逃げましょう、という感覚を持っているじゃないですか。
けれどもね、世界ではリスクとというものはマネージメントをするもので、悪いという認識はないわけですよね。
ノーリスク・ノーリターンじゃないですか。その通りで、リスクが小さくてゲインが大きいものなんてないわけですよね。
そうしますとやっぱり、リスクという魔物を知ることで、いわばリスクと言われているものの中身を数字で全部分解して表しますと、どういうものがリスクなのか分かるわけじゃないですか。
それで、リスクの正体を暴いてしまえば、なるほどと、こいつはここが弱点で、ここがちょっと気を付けなければいけないところだな、というのが分ければ対応できますよね。
よっしゃー、ここが弱点だから攻めてやれー、とか、うん、ここは怖いから気を付けなければ、みたいな感じですし。
それでマネージをしますと、リスクと言われているものの怖さが一気に減るわけで、ゲインを得られるんですよね。そこがやっぱり僕はすごく重要だと思っていて。
それで、マネージできないリスクというのはギャンブルなわけじゃないですか。
東 そうですね。
森辺 運なので。なので、そういうことではなくて、マネージをするものですよ、リスクは悪いものではないんですよ、と言っているんですけれどもね。
東 はい。分かりました、では、2回に分けてリスクについてお話をしたんですけれども。
最後に森辺さんからメッセージといいますか、リスクに対してどうやって考えていけばよいのか、というようなヒントみたいなものをいただければと思うんですけれども。
森辺 はい。まず、前に進まずスピードが遅れることが最大のリスクだと思いますので、それは駄目ですよ、ということが1点なんですよね。
それとあと、リスクは決して悪いものではないので、そのリスクの中身を徹底的に可視化して数字で表していきますと、それに対して備えることができますので。
やっぱり、ただ単に、なんか得体のしれない魔物の状態にリスクをしておくのではなくて、そのリスクを的確に可視化してとらえると。
そしてそれに備えてマネージメントをしていく、ということをやって、リスクを取ってゲインを得るということが、グローバルビジネスではすごく重要なのではないかな、というふうに思います。
東 はい。分かりました。では、森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺 はい、ありがとうございました。
(第224回、終了です)