東:こんにちはナビゲーターの東忠雄です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん。まあ前回の引き続きで交渉術じゃないですけど、ディストリビューターと関わっている中で、ディストリビューター側から、ものを売ってもらう側から見て、日本企業がどう見られているかというのは一つ大きなポイントだと思うんです。その中でそういったオバマさんのような振る舞いをしろというのは一つだと思うんですけど。ほかに何となくディストリビューターのオーナーですとか、華僑を覚えて、中国語をしゃべったり英語をしゃべったりいうような言葉の言語の違いがあるのと。あと欧米企業に感じている接し方と、日本企業に感じている接し方というのはまた違うと思うんですけど。ほかに森辺さんが感じるところとか、聞いたところというのはどんなことが。
森辺:まあ華僑じゃないですか。どこのアジアにいってもね。国によってそれぞれあるんですよ、やっぱり。ベトナムのディストリビューターはちょっと気張っちゃっている社長さんが結構多かったりして、なめられちゃいけない、という多分気持ちが強いんでしょうね。
フィリピンとかにいくと、結構フレンドリーでファーストネームで呼び合ったりとかするし。マレーシアのでっかいところなんかいくと、もう先進国並みだったりするし。色々国によって違いはあるんですね。
ただどの国でも共通して言われるのは、日本企業はよく来るけど結論がない、と言われるんですよ。会議に来るんだけど、何も決めないで帰っていくと。自分の会社の説明をして、色々ヒアリングをするだけして、Ok,we considerと言って帰っていくって。要は、分かりました。帰って社内で議論、会議しますみたいな。相談しますと言って帰っていくと。そのあとレスがないみたいな。返信がないみたいな。何のために来たんだ、あいつらみたいな。そういうのが非常に多いんですよね。
一方で欧米企業は、自分たちの戦略はこうなんだよね。こういうことを考えて、あなたたちに求めることはこういうこと。なのでexpectationとしてはこうですと。できますか、できませんか。できる、できる、できる。本当にできますか。よし、じゃあやりましょう、という感じなんですよね。結論があるんですよ。会議に。そこがすごい大きい違いで、結論がない日本企業と、結論がある先進グローバル企業みたいな。それと、あと決められない日本企業と、決められる先進国グローバル企業ということはよく言われる。
東:やっぱりディストリビューター側からすると、決められないのに何をしに来たのみたな感じになっちゃうということですかね。
森辺:そしてディストリビューターたちは売り上げ数百億ぐらいあるのでね。社長はオーナー企業だし、オーナーと会わないと意味がないし。そしてオーナー決めれるじゃないですか。まあ口の悪いオーナーなんかは、結論のない会議に来るな、というのを言う人もいるし。あと決められないやつが来るな、というのもあるしね。
東:結構手厳しいですね。
森辺:だからそうは言ってもさ。俺らがちゃんと決めさせるから、みたいな話をしないといけないわけですよね。でもそれは僕らが思っていてもそうで。じゃあ、ちょっととりあえずいってご挨拶をみたいな。いや、ご挨拶しにいっても意味ないですよという。お土産を持っていくんですけど。ちょっと厳しいですよね。P&G、ユニリーバ、ネスレなんかのことを知っているだけに、何たる違いみたいなのはやっぱりよく感じるけど。私もお客さんなのでそんなに強く言えないし。
東:打ち合わせとか欧米企業は、基本的にはリサーチをして、やると決めてからいくという感じなんですか。
森辺:そのディストリビューターが何ができて、何ができないかなんていうのは、調査会社を使って調査をしちゃってあるんですよ、もう。コンサルにお願いして、ある程度下積みができていて。そしていくというのは、そのある一定の絞られた候補にいくわけですよね。そこにはもうコンサルと一緒に考えた戦略があるわけですよね。それを提示しにいって、expectationが合っているね、じゃあやろう、やらないということのためにいくんですよね。だからとにかく行って、色々聞きにいこうみたいな話にはならない。そこが大きい違いですよね。
東:そうすると市場に参入するスピードも違うし、参入してからのスピードにも大きく違いが出てくるのはそういったところですか。
森辺:そうですね。だから日系企業の海外進出は、とりあえず行ってから学べと。箱を作って人を送り込んで、行ってから考えろ。走りながら考えろみたいな話じゃないですか。走りながら考えるのは重要です。ただ走る前に、もう考えられているんですよね。そこはすごい大きい違いで、走りながら考えている人と、走る間に考えが決まっている人って、どっちが早いかって、目的地が決まっている方がめっちゃ早いじゃないですか。そこに向かって一直線に走ると。走りながら考える人は、右にいこうかな。左にいこうかなと考えるわけだから、当然スピードが遅くなるわけですよね。
やっぱり最初から戦略があるというのはすごい重要なんですよね。日本企業が遅い、遅いと言われるのは、よく承認がどうのこうのって言うじゃないですか。承認なんて関係ないですよね。何も戦略がないから遅いというだけの話で。僕はそうじゃないかなと思っているんですよね。
東:そうすると戦略があれば、目的というのは売り上げを上げることだから、売り上げまで一直線に走れるから、そっちのほうが早いですよね。戦略がないと走りながら決めるから、寄り道をどうしてもしてしまう。その寄り道をすることが悪い事ではなくて、戦略がないことによって寄り道をして時間が遅くなるということが、売り上げを上げることが遅くなるということにつながるということですよね。
森辺:そうです。戦略や仮説があった上で、その目的地に一直線に走っている段階で学ぶことというのはいいですよね。基本的には一直線に走っているわけですから。ただ行き先がないまま右から左かな、いや違った、また右かな左かなというのはジグザグ走行している話なので。それは全然意味が違うし、スピードが違うよね。
東:そうすると現地に駐在員と呼ばれる人たちも、迷いながらやっているから、どうしても目の前のことになってしまうというのは、そういうことですよね。
森辺:そうです。全体像が見れない。森が見れなくなってきて木ばっかり見ちゃうんですよね。本社からしてみたら、お前ら何やってるんだと。現場からしてみたら、本社は分かってないくせにみたいな。お前が来てやってみろみたいな話になるわけですよね。
だから何でなんだろう。まあ極論を言うと、本社に戦略がないのがいけないんですよ。だから行ってから学べとかいう話じゃないですよね。
東:行く前に、ある程度答えが分かっていて、その答え合わせのために、進出をするという感覚が欧米企業にはある。
森辺:戦略ってマーケティングじゃないですか。日本の製造業はもの作りが素晴らしかったから、そっちに重きがずっと置かれてきたんですよね。戦後70年。だから戦略がなくたって、ものが発明から大して時間がたっていなかったから、技術力と品質さえ磨いちゃったら、バンバン売れていた時代というのがあったわけじゃないですか。だけどこれだけ多くのものが発明から時がたって、クオリティ化してきたら、やっぱり戦略がないと、技術力だけじゃ売れないという、そういうことなんだと思うよ。
僕はねすごく考えたんですよ。何で欧米には戦略があって、日本企業には戦略がないんだろうと。どういう社内の組織プロセスが、それを作っちゃうんだろうということを散々考えたんですけど、そういうことなんじゃないかなという気がしていて。
東:分かりました。森辺さん今日はありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。