東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは森辺一樹です。
東:森辺さん。今日はどこからお送りしましょうか。
森辺:今日はシンガポールからお送りしております。
東:シンガポールってどんな国か。元々森辺さんお住みになっていたと思うので、ちょっと紹介してもらえればと思います。
森辺:シンガポールは暖かい国です。シンガポールは、僕は80年代に住んでいたんですけど、小学校を卒業してからこっちに来たので、中、高こっちにいたんですけど。
まあ当時から貿易、金融立国で、当時はまだまだ日本企業の生産拠点があって、80年代、90年代ですから日本人が一番金持ちで、シンガポール人なんて貧乏だ、そんな感じだったんです。
ただ、今こうして30年たって来てみると、日本人の数も減ったし、日本人は一番貧乏じゃんと。シンガポール人のほうが、よっぽどお金を持っていますよね、というそんな国に様変わりしていて。オーチャードもそうですけど、だいぶやっぱり変わっていますよ。僕がいたときには、ちょうど高島屋が建ったという状態だったので。そうですね、アイオンとかなかったし。高島屋に行くのが週末のイベントという感じで。平日はラッキーブラザか、ファーイーストプラザの前でたむろするみたいな、そんな感じでだいぶ変わりましたよね。マリーナ・ベイ・サンズなんてなかったですし。マリーナ・ベイの辺りはだいぶ開発が進んで、本当にすごいなという感じの国に様変わりしています。
東:なるほど。シンガポールは、昔は製造拠点でもあるという話があったんですけど。今、日本企業にとっては製造拠点というか、販売の拠点が多くて。主に日本企業で言うと、リージョナル・ヘッドクォーターみたいな機能を持たせている企業さんも結構いらっしゃると思うんです。
そもそもそのリージョナル・ヘッドクォーターということが、どういうことで、いつぐらいからそういうリージョナル・ヘッドクォーター、シンガポールに置こうみたいなかたちになったのかというのを森辺さんなりにはどう考えていらっしゃいますか。
森辺:ちょうどこのリージョナル・ヘッドクォーター構想があったのは早い企業で10年ぐらい前だと思うんですよね。7,8年ぐらいにものすごく大流行りして、皆さんこぞってシンガポールにリージョナル・ヘッドクォーターを作って。
そもそもリージョナル・ヘッドクォーターって何なんだという話なんですけど。日本の企業の場合、東京か大阪に本社があるじゃないですか。ヘッドクォーターがあって。グローバル・ビジネスが拡大していくと、普通の、いわゆる各リージョン、リージョンでヘッドクォーター機能を持たせることによって経営のスピードを上げましょうという目的で作っていくんです。それを先進グローバル企業がやっていたので、それに影響を受けて、日本企業もそれをやり始めたという経緯なんです。
グローバル・ヘッドクォーター構想みたいなので、結構スタディが進んだんです。僕も色んな会社に、欧米の進んでいる企業のリージョナル・ヘッドクォーターの仕組みとか調べろという仕事は結構あって。そんなことをやっていた時期があったんです。
シンガポールに設置するのは、例えばアセアン。タイとかマレーシア、ベトナムなんかをここで見ましょう。まあインドネシア、フィリピンを含めてここで見ていくことによって地理的な問題。時間的な問題。そういうものをすべてクリアして、経営スピードを早めましょう、というのがそもそもの目的なんです。
東:じゃあ、そもそもの目的が、今の現状だとどんな感じになっているんですか。
森辺:そもそもそういう目的でやったんですけど、本当の意味でリージョナル・ヘッドクォーターとして機能している企業は、正直少ないんじゃないかなという見方が大きいです。
東:それは、正直言って少ないんじゃないかなというのは、どんなところでそういう感覚をお受けになるというか。
森辺:例えば、リージョナル・ヘッドクォーターなので、タイと、インドネシアと、マレーシアと、ベトナムも見るという話なんですけど。タイにはタイに現地法人があって、タイで住んで、ビジネスをしている駐在員がいたり、社員がいたりするわけじゃないですか。そうするとタイのことは彼らが一番分かっているわけですよね。それを含めてマネジメントしていかないといけないわけじゃないですか。
そうなんですけど結局日本がやったリージョナル・ヘッドクォーターって、極論を言うと、シンガポール箱は作って人は置いた。だけど予算権限とか、そういう経営権限を与えずに、委譲せずに、それでアジアをまとめろという話なんですよね。そうするとリージョナル・ヘッドクォーターなんだけど権限がないわけですよね。もしくは小さい。なおかつタイや、インドネシア、ベトナムの現地法人よりもその土地のことを詳しく分かっていない。だから日本に変わる伝言板役みたいな。なくてもいいんじゃない、実はという感じで。本当に追及していくと本当にリージョナル・ヘッドクォーターは必要ですか、という会社は少なくない。それと、結局タイや、ベトナムや、インドネシアの法人、フィリピンの法人にしてみたら、本社にも報告するけど、シンガポールにも報告するという。ダブル報告している。リージョナル・ヘッドクォーターのつもりが何かややこしくなっていませんか、みたいな会社は結構少なくないんじゃないかなと思います。
これは結構日本の問題と言えば問題で、権限を委譲しないじゃないですか。だから何かを大きくリージョナル・ヘッドクォーターということでやらせる上で権限を委譲しなかったら何も始まらないので、責任と権限って一緒ですよね。そうなんですけど、責任だけはいって、権限が委譲されない。だからどうなんだろう。この会社のリージョナル・ヘッドクォーターはっていうのはありますよね。
東:なるほど。そうすると、そもそもあるべきリージョナル・ヘッドクォーターの姿というか、グローバル先進企業と呼ばれるところが具体的にどういうふうにしているのかというのはどんな感じなんですか。
森辺:結局、本社が判断するべきこと、という大枠の項目があるわけじゃないですか。それは絶対だと思うんです。だって100パーセント子会社なんだから。本社がある程度のところは決めます、という基準があって。だけどそれ以下のことを本社がいちいち判断していたら経営のスピードが遅れるので、その部分はリージョナル・ヘッドクォーターの移管をしましょうと。そしてそのリージョナル・ヘッドクォーターが各現地法人、アセアンの現地邦人をまとめてマネージメント、オペレーションをとっていきますよという話になるんですよね。
ただ日本企業の場合、そういうルールとしては一応作ったんだけど、そうは言っても本社の担当部長にちょっと了承をとらないと、これは勝手に決めたらまずいよねとか。そうは言っても海外担当役員に了承をとらないと、これを勝手に決めたらまずいよね、という感じで。ルールとして決めたはずなのに、実際のオペレーションとしてはその通りにいかないんです。何かこれは日本人の良さでもあって、悪いところでもあるんだけど。そういうことが残っちゃっているわけです。だから日本向きじゃないというか。何て言うんですかね。
東:なかなか日本の企業だと水に合わない部分もあるということですか。
森辺:契約書と一緒ですよ。契約書に書いてあることはするわけじゃなないですか。それ以上もそれ以下もないですよね。世界ルールで言うと。
だけど契約書にはこう書いてあるけど、だけどまあ、まあ、まあという話があるじゃないですか。それと同じですね。リージョナル・ヘッドクォーターとしては会社としてそういうルールで決めたけど、まあ、まあ、まあという話が起きるので。
東:なかなかそこは実態とオペレーションでは離れてしまっている。分かりました。ちょっと今日はお時間がきたのでここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。