東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん。前回の続きなんですけど。市場の調査を、よく日本企業はして、消費者に答えを求めがちになるみたいなことを最後に。お菓子とか、していたと思うんですけど。市場に答えはあまりないよね、ということだと思うんですけど。そもそも日本企業のフォークというのは、やっぱり消費者調査というのは、一つマーケティングのコアになっているような認識があると思うんですけど。
森辺さんが考えるマーケティングは、グローバル・マーケティングで言うと、この番組の題名にもなっていますけど。マーケティングってどういう観点から見たものが、特にアジアでは重要だとご覧になりますか。
森辺:消費者が何を求めているのかという、いわゆるプロダクト・イン的な話ではなくて、かと言って、自分たちはこうだからという、それを押し付けるようなプロダクト・アウト的な発想でもなくて、どちらでも僕はないと思っていて。むしろ消費者に何を求めさせるのかということが、マーケティングだと思うんです。
それを特に先進グローバル企業というのは、よく熟知していて。例えば、キットカットはタイの人が望んでいるから、とかやっていないじゃないですか。アジアの人はこれを求めていますと言って、キットカットを作っているのではなくて。キットカットを欲しがらせているわけですよね、彼らは。M&M`Sを欲しがらせるわけじゃないですか。それがマーケティングなわけですよね。だから、消費者の意見を大切にとか、それは分かるんですよ。それはそれで、そうだし。でも日本みたいに、食品メーカーが年間に100も200も新製品を開発して、結局コンビニに残るのは1,2製品のような、そういう市場じゃないわけですよ、アジア新興国というのは。まだそこまで消費者の要求が高く、かつ頻繁に変わらないわけですよ。そうすると、やっぱり彼らに何を求めさせるのか。もっと言うと彼らに自分たちの商品をどう求めさせるのかということが、マーケティングなわけですよね。
それは別に食品、日用品に限らずなんですけど。iPhoneとかAppleのiPhoneなんか究極じゃないですか。だってAppleのiPhoneって形が一個しかないんですよ。でかいか小さいか。このデザイン嫌いな人もいるかもしれないじゃないですか。でもそんなことは関係ないわけですよね。これが我々の思っているクールなんだと。それを市場のみんなは欲しいだろうって、バーンと出すわけじゃないですか。その信念というかポリシーというか。Appleの姿勢に対して、消費者が酔いしれるわけですよね。当然iPhoneの中には色んな機能とかが入っていて、そこは考え尽くされているんでしょうけど。基本そういう話ですよね。だから、消費者が何にアンテナを張っていて、どういうマーケティング・アプローチをすると、それを求めるのかということを考えていかないといけない。これは携帯とか、家電とか、消費財それぞれ考えるポイントって違うんですよね。家電系はこういう考え方をしないといけない。消費財系はこういう考え方をしないといけない、というのはそれぞれ違うものの、同じ共通点というのは、やっぱりそこなわけですよね。
今のアジア新興国だけに問わず、世界の消費者を見ると、やっぱり企業の顔がちゃんとあるというんですかね。僕たちはこういう会社です、という一つの信念を持った会社の商品が、売れている気がするんですよ、僕はね。はい、お子様向け、老人向け、何とか向け、八方美人みんな大好き、I love you.みたいな、マーケティング手法をとっているメーカーの商品というのは、結局中国や韓国や台湾で、コモディティ系のメーカーとの競争力で、アドバンテージを発揮できず。だけどコストとしては彼らには勝てないので、ものすごい中途半端なところにいっちゃっている。先進グローバル企業、欧米企業なんていうのは、もうその戦いを日本企業に強いられたので、顔作りをこの30年やってきたわけです。どのメーカーも顔があるじゃないですか。
ダイソンって掃除機どんだけコモディティ化している商品ですか。なのにあんなダイソンという顔があるわけですよね。あの顔に惚れるわけじゃないですか。吸引力がすごいからあの掃除機を買っているんじゃないですよ。ダイソンの顔に人々が惚れて買っているわけじゃないですか。吸引力がすごいって言ったら、別に日本のメーカーの吸引力なんて負けているはずがないので。なので、そこがすごい重要なんじゃないかなと僕は思っているんです。
東:そうすると、そこが重要と言われるところが、欧米企業が今で言うと長けていて、日本企業が少しそこに後れをとっているというような形になっていると思うんですけど、こうやって見ると。それはなぜそういう構図になっているんですか。
森辺:難しい質問ですね。例えば、それは家電みたいなものって、すごいそれが必要じゃないですか。でもお菓子みたいなものって、むしろそういうものよりも、そこをあまり気にして買わないと思うんです。そこが少し安全、この会社の商品は安全だと信じられるとか、この会社の商品ってユニークだから好きとかいう。かっこいいというより、ユニークみたいな。そういう親しみやすいとかいうものが必要だと思うんです。
なんで日本がそうなってしまったかと言うと、恐らくなんですけど、結局1億総庶民というか。我々1億2,700万人みんなが、同じように均等的にバランスを保たれているじゃないですか。皆まで言うな。空気を読め。顔を見ろ。こんなの世界では通用しない、日本人だけですよね通用するのは。そうすると日本の同じような感じの人たちの中で、老若男女があって、そこに合わせちゃってきているという、国内を重視してきたというメーカーが、海外にボーンと出ようとすると、彼らは違うわけじゃないですか。あんな人もいるし、こんな人もいるし。そんな人もいるし、あんな人もいる。だから、日本人というのは大体一緒ですよね。細かく言ったら違うんですけど、流れの方向性としては全員1億2,700万人が同じ方向に流れているじゃないですか。だけど海外にいくとそれがもう四方八方、いろんなところに流れているわけです。そうするとメーカーは自分たちのポジショニング設定を明確に持たないといけない。だけど日本では万人が右上45度に流れているわけだから、右上45度という顔をすればいいわけです。そうするとそこがすごく大きい違いだと思うんです。そういう市場に慣れちゃっているから。
だから日本でのそういう常識とか、概念とか、何とかを全部ぶち壊してゼロから設計しなきゃ駄目だよってだいぶ前に書いた、僕が出版した、アジアで儲かる会社になる30の方法でも書いていますけど。そういうことなんですよね。
東:そうすると、そもそもそこの概念と言うか、マインドセットをしていかないといけないということですね。
森辺:そう思うんです。もしかしたら、これからお菓子の世界でも、カッコいいお菓子メーカーの商品が売れるという時代が来るかもしれないし、そういう世界が待っているかもしれないじゃないですか。アメリカではもうこれを食べていたらカッコいいみたいなお菓子があるじゃないですか。例えばスニッカーズとか。ダブルミントのガムを出している会社が出す、シナモンのガムとか。そういうのもあるわけで。必ずしも日本で培ってきた常識、概念みたいなものが、そのまま通用するという話でもないよね、ということだと思うんです。
東:分かりました。じゃあ今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
ナレーター:本日のポットキャストはいかがでしたか。番組では森辺一樹へのご質問をお待ちしております。ご質問は、podcast@spidergrp.comまでお申し込みください。沢山のご質問をお待ちしております。それではまた次回お目にかかりましょう。森辺一樹のグローバルマーケティング。この番組はスパイダーグループの提供によりお送りしました。