・こんにちは。ナビゲーターのアズマタダオ(以下A)です。
・こんにちは。森辺一樹(以下 森辺)です。
A: 前回Puregoldの話で、PuregoldがひとつTTを攻略するためにも、重要なMTになっているということを、お伺いしたんですけど、具体的どういう流通形態になっているか教えていただけないでしょうか。
森辺:フィリピンの特徴としては、TTが商品をMTから仕入れるんです。普通、MTは一般の消費者にも商品を売ってる。その人たちは、ホールセラーの機能も持っていて、TTのオーナーさんにも売っている。もっと詳しく言うと、TTっていっても、ものすごい小さいお店ですよね。2万5千ペソ位のキャッシュを持ってたら、自分たちはそのバジェットを中心に、TTを回していくことになるんですけど。そういう人たちが、それぞれに商品を仕入れるっていうと、そうではないんです。TTの中にも、TTのドンみたいな人たちがいるんです。TTの中のホールセラー。TTの一件のパパママショップがあって、その人たちは、そのエリアのドンTTから商品を買うんだけど。このドンTTは、自分たちが元締めしてるエリアの、例えば100とかのTTのために、一括して商品をPuregoldとかに買いに行くような、そういう構造になってる。そうすると、一番下のTT、80万店ありますから、ドンのTTのホールセラーの人は、Puregoldに買いに行くんだけど、Puregoldに行くと、よく見てもらうと分かるんだけど、ホールセール・レーンっていうのがあるんですよ、レジに。ホールセールのレーンには、かごを3個くらいに大量に商品詰めて、商品を買ってる人たちがいて。あれが、いわゆるTTのドンみたいな人たちなんですよね。Puregoldのもうひとつの特徴は、アリン・プリン・プログラムっていうのをやっていて、これはどういうのかというと、TTのオーナーさん向けの商品を一式揃えてるんです。この商品を、そのまま全部買って行ったら、今すぐTT始められますよみたいな。期間によっては、キャンペーンで3%オフとか5%オフとかやってて。TTのオーナーのために、いろんなサポートをやってるんですよ。それがアリン・プリン・プログラムっていうんですけど。だから、TTのオーナーがそこに買い付けに来ますよと。結局、TTのPuregoldからTTの中のドンみたいなお店が、買い付けに行きます。その買い付けてきた物を、自分たちの下にある地域の、50とか100のTTに売るんだけど。結局、Puregoldが10個入りで売ってるわけですよ。その10個入りを買ってきて、10個入りに10%位のマークアップつけて、その下のTTに売ります。この一番下のTTっていうのは、その10個をバラにして、1個ずつ売るんだよね。さらにそこに、10%マークアップするとかっていう構造になっていて。そうすると、消費者にとって、実は1個当たりの単価っていうのは、直接Puregoldに買いに行った方が安いんだよね。だけど、Puregoldでは1個売りはしてくれない。そうすると、彼らにしてみれば、例え1割2割高かったとしても、1個売りで買いたいっていう事が、すごい市場のニーズとしてあって。どういうことかというと、フィリピンの市場って、消費者の収入レベルのD・Eランクの人たちが8割を占めているわけです、所得収入ベースの。そうすると、このD・Eランクの人たちっていうのは、日々のキャッシュフローが非常に重要。ホワイトカラーでも、フィリピンっていうのは、給料日が月に2回ある。そうすると、まとめ買いなんていうのは、Aのランクの人たちしかしないわけですよね。そのAなんて0.数パーセントで、基本は、使いたい時に、使いたい量だけ使いますっていうのが彼らのニーズで。そうすると、このサリサリストアっていうのは、そういう小分け売りをしてくれるし、彼らの住んでるすぐ目の前にあるし、ものすごい魅力的なわけです。そこが、市場の最大の特徴になっている、そんな構造です。
A:そうするとPuregoldが、ひとつのハブとなる可能性があると。PuregoldからTTに。TTのオーナーさんが買うだけではなくて、直接、当然TTのオーナーさんが、メーカーもしくはディストリビューターから買う所もあるんでしょうか。
森辺:メーカーからTTのオーナーが買うっていうことは、ほぼないと思う。ただ、ディストリビューターからは、当然買います。でも、ディストリビューターも80万店ある小売に、1件1件行くなんて。ネスレかユニリーバかコカ・コーラくらいしか、できないわけです。そうすると、50とかのTTを束ねてる、いわゆる、大きなサリサリ。さっきからTTのドンとか言ってますけど、ビッグサリサリとか、普通のサリサリっていうふうに表現した方がいいかもしれないですけど。地元の大きなビッグなサリサリに、ディストリビューターは営業をかけるわけです。そこから、仕入れるっていう。
A:ビッグサリサリに束ねる。
森辺:ディストリビューターとしては、この大きなサリサリ。ビッグサリサリって嫌だな。大きなサリサリに営業すると、そこが買ってくれたら、そこをハブにして、その下にある50とか100のサリサリに商品を並べられるわけです。配荷できるわけです。D・Eランクの所得の人たち割の市場ですから、そこを攻めないと全く駄目なわけです。
A:そこは、Puregoldから買う人もいれば、ディストリビューターから買う人もいる。その2通りに分かれる。
森辺:そうですね。メーカーとしては、MTは絶対整えないといけない。フィリピン人って結構見栄っ張りでミーハーなんです。そうすると、大手の小売りで売られてる商品か商品じゃないかって結構気にする。さすがに、D・Eランクの人はどこまで気にするかって、薄いかもしれないですけど。けど、Puregold、Rostans、SM、Robinsons。この4大小売は絶対におさえないと駄目っていうのが一つ。この4大小売りだけやってたら、リスティング費もかかるし、いろんなプロモーションコストもかかるし、あんまり利益率もよくないですと。そうなると、この4大小売りの中の、Puregoldのアリン・プリン・プログラムを使って、TTの市場に商品を流通させるっていうことと、大きなTTっていうのが、各エリアがあるんですよ。低所得者が住んでるエリアが。このメトロマニラにもいくつかあって。そういう所は自治体がちゃんとあるんです。結構、治安もそんなに悪くないんで、そこの大きなホールセラー、TTの大きいやつを使って小さなTTに流通させるっていう、この2パターンです。攻めるっていうほうと、向こうから買いに来させるっていうPuregoldのアリン・プリン・プログラムこの両建てで、TTを攻めていくっていう事が、絶対重要。
A:TTを攻めていく時に、買いに来るのはPuregoldのアリン・プリン・プログラムに導入されれば、それ以上メーカーとか、ディストリビューターができることって少ないと思うんですけど、ディストリビューターを使ってTTを攻める時に、具体的にどういったことを注意しなければいけないのか。もしくは、何がキーポイントなのか、簡単にまとめていただいて、終わりたいと思うんですけど。
森辺:まずTTに商品を並べるってことは、フィリピンに限らず、どこの国でも容易に出来るんです。物理的な話なんで。パパママショップのおばちゃんなんて、「頼むよおばちゃん、置いてよ」って言ったら、「分かったわ」って言って、置いてくれるんですよね。問題は、置いた後、それが継続的に売れるか、売れないかなわけです。そうすると、パパママショップのおばちゃんなんて、アジアのね。積極的に自分たちでこの商品売るなんてやらないわけです。お客さんが商品を選んで、それを渡して、お金を受け取るっていう、単純にそれだけなんで、基本、自動販売機みたいな話です。そうすると、売れなかったら返品されて、パパママショップのおばちゃんは、二度とそれを買いたくないわけです。そうすると、置かれた時に、いかに、それが継続的に売れるかっていう話なんで、いきなりTT全部でぼーんとやるんじゃなくて、ひとつの地区に限定して、その商品をTTに置いたと同時に、向こう3か月から6か月、その地区のエリアに住んでる人たちに、それをサンプリングして、ここで買えるからね、食べてみてね、どう美味しい? 安い? 大丈夫?っていうことを、根気よくディストリビューターと一緒にやっていかないと、絶対定着しない。それが一つです。あと、値段。彼らTTで売られてる物って、例えばお菓子とかだったら、12円とか13円とかで売られてるわけです。現地通貨でお釣りが出ない単位。
A:現地通貨に直すと、大体いくらぐらい。
森辺:5ペソとか、高くても10ペソとか。お菓子類、チョコレート類とかだと。そうすると、それよりも3倍もしたら、絶対買わないわけです。自分たちの商品は品質がいいから、原材料がいいからとか、そんな事は自分たちのマスターベーションであって、市場は全く気にしない。今、チョコが5ペソで売られてるんだったら、やっぱり5ペソじゃないと駄目なんですよ。6ペソだったら、お釣りがややこしいから駄目で。5ペソで売らないと駄目っていう。もう一つ考えないといけないのは、低所得層は、安かろう悪かろうでいいっていうのは大きな間違いで、彼らにとって5ペソっていうのは、ものすごい大きな価値なわけです。我々は5ペソ払って、食べてまずかったら捨てて、もう二度と買わない。あーあ、でいいじゃないですか。多分、5分後にはそのこと忘れてますよね。でも、彼らにとってはこの貴重な5ペソを使って、しくれないわけです。まずかったら捨てるなんてあり得ないわけです。そうすると、この5ペソで確実な物を買う。そうなってくると、もう知ってる、過去に食べた事のある、美味しいやつって分かってるやつを買うわけじゃないですか。新しい物なんか絶対買わないわけです。そうすると、この新しく参入するっていうことは、その5ペソを払う消費者に分からせるっていうことをしないと、絶対にそこをチャレンジしないですから。そこが、すごく日本企業は、浅い理解をしてやってしまうところで、それをディストリビューターとやるっていうのが重要。あと、ディストリビューターもTTに強いところ、MTに強いところっていうのがあるので、TTに強いところと組まないと駄目。あと、TTに強いところでも、どこのエリアに強いのかっていうのがあるので、そこと組まないと駄目。言ったらキリがないですけど、いろんなことをやっていかないといけないので。
A:最後に、ちょっとまとめていただいて、終わりたいと思います。
森辺:フィリピンの小売に関して、消費財メーカーは、まず、SM、Puregold、Rostans、Robinsons、ここで商品を並べるっていうことはマストです。TTが8割の市場で、所得収入レンジがD・Eランクの人たちが8割の市場なので、TT取らないと、儲かりません。TT取るには、Puregoldのアリン・プリン・プログラムをしっかり攻略するっていうこと。いわゆる、プル型のTT戦略です。もうひとつは、プッシュ型のTT戦略で、これは各エリアのTTに強いディストリビューターを選定して、商品の価格レンジは、今、現状の価格レンジに絶対に合わせる。品質がいいとか、原材料がいいとか、ジャパンブランドだとか、訳分かんない理由は言わない。その上で、置く事は簡単。置いた物が、いかに継続的に売れるかっていうことが重要なわけで、置いた所に対するBTNの店頭キャンペーンであったり、近隣地区の絨毯爆撃的なプロモーションをしっかりやるっていうことを、コツコツやっていかないと、間口は増えない。TTが80万店ある市場で、間口が上がらなければ、いくらMTの店頭シェアを上げたとしても、儲かりませんよ、というまとめでよろしいでしょうか。
A:分かりました。森辺さんありがとうございました。
森辺:はい。ありがとうございます。