東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、前回は世界標準化という話をされたと思うんですが、今、日本企業で成功しているところで、グローバル先進企業がこういう形で戦略を取っているというのを、ご紹介、前回、前々回していただいたと思うんですけど、森辺さんから見て、もっと世界で、もしくはアジアで売れるのに、まだまだもったいないなという商品とか、製品が、日本にもあると思うんですけれども、そういった商品とかって、具体的にどういったものが売りやすいとか、売れるなという可能性を秘めていると思われますか?
森辺:僕は個人的にやりたいのはチロルチョコとうまい棒。これは本当もったいなくて、チロルチョコもうまい棒も中堅企業さんじゃないですか。たぶんオーナー企業さんだと思うんです。どちらも10円です。コンビニで10円で売ってるんですよ。消費者のいわゆる小売価格が10円です。コンビニに入る前にうまい棒なんか、問屋一つ入ってるんですよね。製造メーカーがあって、販売会社があって、コンビニがあると。そうなってくると10円を三社で分けてるわけですよ。ですからこんなコスト競争力がある商品はなくて、例えばフィリピンとかでいうと、TTで売られてる商品、例えばグラム数の少ないスナック菓子とか、チョコレートスナックとか、ああいうものって、5ペソぐらいです。ていうと12、3円ぐらいなんです。そうするとチロルチョコとかうまい棒なんて思いっきりASEANのTT市場にはまる商品なんです。最初は当然工場が現地にないので、若干高めに振れちゃうと思うんですけど、ある程度市場占有率を上げられたら、現産現販ができるわけでしょ。究極消費財なんて現産現販をするべきじゃないですか。それは別にASEANでFTAがあるので、インドネシアで作ったものをASEAN中に輸出するっていうこととか、ベトナムで作った物をASEAN中に輸出するということも現産現販として捉えた場合に、彼らの商品は非常に可能性がある。
ただ、今僕がざっと見たところ、今、言ったチロルチョコとか、うまい棒は、商社さんを介して輸出ビジネスをしているだけなんですよ。ですから日本の貿易商社が海外に輸出して、海外のインポーターがそれを輸入してディストリビューターが海外のイオンとか、伊勢丹とか、そういう日系のMTの日本お菓子売り場コーナーに並べるみたいな、値段は35円みたいな。当然何社も入るし、輸出ビジネスしているだけなので、値段も上がるみたいなこういう商売をしているわけです。こんな商売をしてたらマーケットなんて、もう数%じゃないですか。市場全体の数%にもたぶんならない。イオンと伊勢丹だけでアジアで売ってたらね。そうすると、もしこういう企業が戦略をしっかりと作って、ASEANのTT市場をやったら、ものすごいおもしろいことになる。
これに近しい会社がエースコックですよ。カップ麺ですけどね。日本では日清との格差と言ったら、巨人の日清に対して、エースコックってですけど、例えばベトナムなんかだともう50%のシェアを超えているわけでしょ。圧倒的にエースコックだという話なので。チロルチョコとか、うまい棒、あと大阪のパインアメっていう会社があるんですよね。昔からパインのアメってあるじゃないですか。ああいうのも全然ASEANでやれて、結構日本の菓子メーカーさんの中堅クラス、そこそこ体力もあるし、内部留保もあって、けどグローバル人材がいません、海外ビジネスと言ったら輸出でしょって社長、会長が思っているみたいな会社が、もし変わることができたら、僕は日本の大企業よりも、もっともっと大きな会社になると思っているのでこういう会社はいいですよね。
東:そのチロルチョコもうまい棒もまさしく一点突破の企業に当たるということですよね。
森辺:一点突破させられるし、コスト感もいいんですよね。オーナー企業だと思うので、おそらくオーナーがある程度腹落ちすれば判断が早いでしょ。そうすると我々のような支援側も動きを早くできるわけですよ。無駄な社内の政治のあれがないので、おもしろいと思いますけどね。
東:なるほど。もう少し具体的に、森辺さんがおもしろいと思われるポイントというのはどういったところなのかということを教えて頂きたいんですけど。
森辺:まず一点突破できる強い商品を日本国内で持ってる。日本で売れてないから海外で売れようってこれはなかなか難しいわけで、やっぱり日本で一点突破の商品を持っている。うまい棒を知らない日本人なんていないですよね。チロルチョコを知らない日本人もいないよね。というこの一点突破の商品を持っているということが一つ。これがいわゆる安いわけじゃないですか。10円っていうね。昔から10円でしょ。僕小学校の時10円だったからね。今も10円じゃないですか。このコスト競争力の高さ、ものすごい企業努力をされていると思うんですよ。こういう会社は製造コストを現地化させるためのイノベーションをできる会社だと僕は思っているんです。なので、そこが魅力の二つ目です。
三つ目の魅力がオーナー企業であると。やっぱりオーナー企業はアジアでビジネスするのに強いです。アジアで成功しているアジアの現地の企業なんか全部オーナー企業じゃないですか。どこかと組むとかどこかと何かすると言ってもオーナー企業はやっぱり強いのでこの三つから判断をしているんですけど。僕がもしお手伝いをする機会があればやりやすい。うちの場合、7、8割ある程度やれると思わなければ、お仕事を受けないスタンスで僕は今までやってきているんだけれども、このチロルチョコとかうまい棒は9割5分いけるでしょっていう感覚値を持つっていうのは、そういう3点から判断しているんですけど。これはTTにはちょっとはめないですけど、なとりっていうお酒のおつまみばっかり作っているところがあるんです。サラミとチーズとかトリュフの入った○○チーズとか、こんなのも欧米ヨーロッパ含めてものすごい可能性があるけど、ここもおそらく輸出ビジネスしかしていない、チャレンジビジネスはやっていない。日本にはもったいない会社がいっぱいありますよね。
東:そういった会社が前向きに自社の戦略を持って出て行こうとすると、おもしろいんではないかと。
森辺:そうですね。今までの海外の輸出ビジネスでしょ、というこういう常識を打ち破れるかどうかなんです。これがいまいち「ん?」ってはてなが出ちゃってるんです。こういう会社って。だからそこを突破できたらものすごいおもしろいと思うんです。
東:わかりました。今日は時間がきたのでここまでにしたいと思います。森辺さんありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
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