東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、一点突破の戦略ですとか、いろいろ紹介はしてきたんですけども、ちょっと話をまとめると、商品として一点突破のほうがやりやすいですよね、というのはあると思うんです。グローバル企業はグローバル商品を決めて、それを世界標準化しているから強いですよねと。日本企業で言うと、商品で言うとチロルチョコとか、うまい棒というような日本で売れてる商品を輸出するだけじゃなくて、海外でチャネルビジネスをやってみたらおもしろいんじゃないかと。いくら良い商品を持っていても輸出ビジネスの限界というのがあると思うんですけど、具体的に日本企業はどうしていったらいいんですかというところにぶつかると思うんです。そうは言っても。その後はどうしたらいいんですか。森辺さんなりの見解として。
森辺:まず一点突破が絶対成功確率的には高いわけで、今、成功している日本企業も外資の企業の導入期の状態も一点突破で来ているんです。一点突破して、風穴開けて、商品群を横に増やしていきましょうというのは一つあります。結局世界標準化して現地適合化じゃないよっていう話がありますよね。結局これって何かというと、その現地の消費者が何を求めているかということは当然重要なんです。全くお話にならないものは一点突破といったってしょうがないので。ただ日本企業の場合、日本の特殊な半年に趣味趣向が変わるような消費者相手に新製品を年間100個も200個も作って残るの3つ4つもしくは1つ2つみたいな市場で戦っちゃってるから、何かちょっと頭が麻痺しちゃってるんですよ。消費者が何を求めているかということも重要なんだけども、実は新興国ビジネスってそれ以上に消費者に何を求めさせるのかということが重要で、ある一定の消費者の需要度が得られるという判断をしたら、もう「この商品だ、これを彼らに求めさせる」というある意味のプロダクトアウトも重要なんです。日本企業の場合も、超極論でマーケット・インかプロダクト・アウトかみたいな、どっちともなんです。ある一定のマーケット・インが得られるんだったらあとはがんがんプロダクト・アウトしろと。これが僕の言っている一点突破なんですよ。そこが決まった後、輸出ビジネスという頭からチャネルビジネスに変えなさいと。輸出ビジネスが何でチャネルビジネスが何かというのは過去散々話してきてるのでこのポッドキャストを聞いてもらうとして、簡単に言うと輸出ビジネスって、港から港の商売なので、日本の港もしくは相手国の港までをメーカーが感知してそれ以降のことは知りませんと。どんな流通経路をつたってどういう消費者がそれを手にして消費者が何て思っているのかということが全くわからないのが輸出ビジネスです。一方でビジネスのやり方としては輸出しているとしても、現地のどういう流通を使って、どんな小売がそれを買ってて、どういう消費者がそれを手にして、何を思っているかということまでを把握するのがチャネルビジネスなわけです。このチャネルビジネスに移行しないと、輸出ビジネスなんてもう古いんです。江戸時代のビジネスなわけです。今は、チャネルビジネスで先進グローバル企業も海外の企業も成功している会社はチャネルビシネスをやっています。このマインドに変わらなかったら絶対成功しない。
このチャネルビジネスに変わった瞬間にもうエキスポーターとかインポーターなんていうのは、相手にしなくなるわけです。何が重要かというと、やっぱりディストリビューターなんです。現地に法人があるんだったら、MTは直販、TTはディストリビューターというマインドになってくるわけです。そうするとこのディストリビューターもただ単にディストリビューションするだけなのか、セールス機能が付いているディストリビューターなのか、マーケティング機能が付いているディストリビューターなのか、そういうところが気になってくるわけです。最適なディストリビューターを使っていく。輸出ビジネスばかりしていると一ヵ国一代理店みたいな話になっちゃって、何で日本企業が一ヵ国一代理店やるかって言ったら、輸出ビジネスやってて、マーケットのことが何もわかっていないから、一ヵ国一代理店制度みたいなわけもわからない常識ができちゃうんです。マーケットを理解すると一ディストリビューターじゃ無理だっていうことが必然的にわかってくるのでディストリビューション・ネットワークを作っていくわけです。このネットワークのマネジメント方法を学んでいってそれを実行していくようになってくるわけなんですけども、そこまで行くと、初めてチャネル・ビジネスの全体像ができ上がってくる。ここのステージで戦わなかったら、新興国なんて絶対勝てないですよね。伸びてるんだから。世界中の企業が狙ってて、今現地のローカル企業の成長だって著しいわけじゃないですか。なのでここをやっぱり変えていかないといけないですよね。
東:例えば現地の企業で、その一点突破で成功している企業とかってあるんですかね?
森辺:ありますよ。
東:どういったところが?
森辺:例えばコーヒーアメのコピコ。コピコはインドネシアの会社なんですけど、フィリピンでもNo.1かな、No.2かな。コーヒーのスリーインワンコーヒーとかも作ってるんですよ。コーヒーキャンディーから派生して、スリーインワンコーヒー作って、ASEANとか新興国だったら、ネスレじゃないですか。スリーインワンコーヒーって。でもコピコ売上伸ばしているんですよね。なんでUCCじゃないのみたいな、なんでAGFじゃないのみたいな、何で日本のコーヒー会社じゃないのと。コピコのキャンディーのほうでいったらなんでUHA味覚糖じゃないの、何で龍角散ののど飴じゃないのと僕は思うわけです。龍角散ののど飴なんてものすごいいいですよ、あんなの。世界中の華僑が買う。その魅力をわかってないんですよ。僕は龍角散ののど飴めちゃめちゃ舐めてて大好きなんだけど、あんなのは世界プロダクトですよ。
東:森辺さん的に言うと毎日舐めている龍角散ののど飴はどういったところがいいんですか?
森辺:喉が痛い時にあれを舐めたら治るんですよ。スッキリするんですよ。龍角散ののど飴は後味も良い。味が良い、深みがある、コクがある。ホールズ舐めて喉の痛み取れるかって取れないよ。ただ甘ったるいだけ。レモン味とか何かわけわからない。そしたら龍角散ののど飴なんて、もう世界展開で…もっと言うと喉ぬーるスプレーなんて、もう本当に世界市場を席捲できる商品なわけですよ。黒綿棒だってそうです。そうすると実は日本の中には世界で成功する製品がたくさんあるのに、この多くの企業はまだ輸出ビジネスの発想なんです。台湾、韓国、香港に輸出しましょうみたいな。例えば小林製薬さんとかCMいっぱいやってるじゃないですか。あんなアイデアのいっぱい詰まったイノベーティブな会社って世界にないですよ。小林製薬の商品はいろいろあるじゃないですか。ああいう会社こそ、本当は一点突破する商品がたくさんあって輸出ビジネスの発想からチャネルビジネスの発想に経営が変われば、ものすごくおもしろいことになるって僕は思ってるんですけど。
東:最後にまとめとして、森辺さんからその一点突破する商品を持っている企業が、それはいっぱいあるじゃないですか。今挙げて頂いたような。そうすると、そういった企業が日本にはたくさんありますというような前提だと思うんです。そうすると、そういった企業さんたちがどう変わったら、アジアとかグローバルで成功、もしくは活躍、もしくは知名度を上げられるのかっていうのはどういったところなんでしょうか?
森辺:まず日本が少子高齢化していく、人口が減少していくということを本当に突き詰めたほうがいいですよ。アメちゃん舐める人口が減っていくわけですよ。喉ぬーるスプレー使う人口が減っていくわけですよ。チロルチョコを食べる人間が減っていっちゃうわけですよ。そうすると、海外に目を向けないといけないというところがまず根底にあって、日本があまりにもデカいからまだ大丈夫だろう、もうちょっと大丈夫だろうみたいな話でズルズルズルズル来てて、売上業績横ばいかやや右肩下がりみたいな。そうじゃなくて海外をやるんだと、その海外をやるんだという中で、今まで彼らがやってきたその輸出ビジネス、エキスポーター、インポーターにひたすら輸出していくっていうこのビジネスから、もう二段階ギアを上げて、チャネル・ビジネスに変わるっていうことをしないと、そのうちアジアのお菓子メーカーに買われちゃいますよ。アジアの製薬会社に買われちゃいますよ。だってシャープの今、騒動をやってるじゃない。あれが食品菓子、日用品の業界の話じゃないと思ってるわけですよ。今の食品菓子、日用品の経営者は。
東:そうですね。●●(11:15)なんかはね。
森辺:台湾の下請け会社ですよ。
東:アップルのiPhoneとかPS2とか、ああいったものを作ってる会社ですもんね。
森辺:それにシャープが買われるんですよ。でもそれは家電の世界でしょ、電気の世界でしょと思ってるんです。日用品、食品のメーカーの社長さんたちは。でも、その世界がもう間もなく食品菓子、日用品に来ますよという話で。それを自分ごとのように捉えられるかという話で、台湾企業に買収されるというと、報道は何か「悪が攻めてきた」みたいな報道をするけども、「ありがとう」以外の何物でもないよね。そこはやっぱり変わっていかないといけないと思うので、経営が変わらなかったら、下なんて変わらないから、そこが変わらないと、なかなか難しいし、そこが変わってない会社を、僕は一貫して今まで手伝ってきてないわけでしょ。社長とお会いさせてもらって、その古い考え方から脱却できない会社を手伝ったって効果が出ないので、「なんだお前は」って最後言われて終わっちゃうだけなんで。社長が変わらなかったら変わらないですからね。ということだと思うんです。だから僕は頑張ってほしいんですよね。特にチロルチョコとうまい棒と龍角散のど飴。
東:龍角散のど飴。わかりました。これを聞いている関係者の方がいらっしゃればぜひ森辺までお問合せ頂ければと。
森辺:そうですね。はい。
東:お待ちしておりますので。
森辺:すみません、生意気言って。
東:いえいえ。森辺さん今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
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