東:こんにちは、ナビゲーター東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:前回は、今、日本企業の方が使っているディストリビューターを、客観的に分析する必要性と、その有効性というお話を軽くしましたが、もう少し深く、何回かに分けてお話をしたいと思います。どんなことを言いたかったのか、前回のおさらいをしていただけますか。
森辺:基本的に上場企業になればなるほど、BtoBのメーカーでもBtoCのメーカーでも、現地にディストリビューターが存在してます。そのディストリビューターと共に、長年現地での販売を進めてきてるわけですが、そのディストリビューターが競合と比較してどうなのか、ということを客観的に分析しましょう、という話でしたね。
多くの企業は、もうそこでいい、ということでやってきてるので、客観的に分析したことないし、そんな想像すらしたことない、というのがたぶん現状です。「そういう観点で見たことなかった」と、我々はよく言われます。ですが、実際に戦っている土俵が市場だとすると、その土俵の上で戦ってる相手が競合になるわけで、その競合のディストリビューターと自社のディストリビューターの戦闘能力の強弱が、勝敗を大きく左右するので、基本的に客観分析はすごく重要です。
元々、付き合ったときは10億の売上を目標にしてたので、A社というディストリビューターでよかったけれども、今のステージは100億を目指しているので、A社では難しかったり、もしくはA社をこういうふうに変えていかないと100億は難しい、という現状は多々あると思います。そういう意味でも、今、ちょうど日本企業にとってはディストリビューターの客観的分析が重要な時期にきています。
東: 客観的分析が重要な時期にきている、というのは、日本企業は昔はこうで、今こうなったから重要なんだよ、というのは、森辺さんなりにあると思いますが、どうお考えですか。
森辺:昔はやり始めじゃないですか。言ってみれば、誰でもありがたいわけです。わらにもすがる思いというか。売上が0なので、0から1を作るわけですから、正直、そこを深く見るよりも、気が合うというか、ある程度一緒にやっていけそうだ、というところと始めてきたという背景があると思います。それはそれで正しい選択であったでしょうし、そこを否定しているわけではありません。
20年前のディストリビューターというと、選択肢が限られてたわけです。ディストリビューターという職種が、アジア新興国で生まれたのも20年ぐらい前です。そもそも当時、選択肢がそんなに多くなかったので、そことやらざるを得なかった、そんな事情もあると思います。ですが、20年経ったときに、ディストリビューター同士でも、成長に大きな差が起きているので、そういう意味では、ディストリビューター自身も変わっている、というのもひとつあります。
東:今は、どういうステージになっているから、ディストリビューターの客観的分析が必要になっているということですか。
森辺:20年前、進出した当時は0を1にして、1を2にして、2を10にするという戦いだったと思います。でも、これだけグローバル化が進んで、競合他社もスピーディーに市場を取っていく状況になってきているので、これからは10を100にする、100を200にする、そういう戦いになってくるわけです。
なので、昔のような戦い方とは、スピードも求める規模も大きく変わってきていると思います。その上で、本当にそこでいいのか、もしくはそこでよかったとしても、改善をすべき項目があるはずです。ディストリビューターを変えるなんて、そんなに簡単にやるべきことでもないし、大きな判断です。ただ、比べて自分たちのディストリビューター、もしくはチャネルの弱い部分を客観的に理解することができれば、そこに対策を打つことができます。それがすごく重要になってくると思います。
東:その差があるから、今重要なんじゃないですか、ということを、森辺さんは言いたいのだと思いますが、2、30年前に日本メーカーもディストリビューターを見つけて、各国でやってないことはない。ただ、もう一方で競合、例えばP&Gとかユニリーバとかネスレという、グローバル企業と呼ばれる会社は、2、30年前からディストリビューターと成長してきた、みたいなことを、ディストリビューター側が言うじゃないですか。そこの差というのは、具体的にどう考えられますか。
森辺:今、東さんが言った3社は、30年前にディストリビューターを決めて、そこに任せてきたのではなくて、そこの能力をメーカー側が主体となって上げてきた、というのが正しい。彼らは、2、30年の中で、ディストリビューターを選別して変えてきてます。駄目なところは切って、いいところは伸ばす。駄目なところと、駄目なところを統合させてよくさせるとか、そういうことをしてきました。一方で日本企業は、30年前はたいした市場ではないから、適当にディストリビューター決めて、勝手にやらせてきた。こういう大きな違いがあります。
だからグローバル企業というのは、この2、30年の間、ディストリビューターの実力を、意識的に上げにいってきた。一方で日本企業は、任せっぱなしで放任主義できた。消費財メーカーの業界でいうと、そういう大きな差があります。そこには大きな溝があります。
東:今日は時間がきましたので、次回もそのへんのことを詳しくお聞きしたいと思います。森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。