東:こんにちは、ナビゲーター東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:前回はディストリビューターの、グローバル企業と日本企業の比較というか、客観的に分析することが、今、必要だね、という話をしてきましたが、一方で2、30年前からグローバル企業はディストリビューターと共に成長してきた、メーカーが主導を握って、ディストリビューターを成長させてきた、というような背景があると思いますが、多くの日本メーカーは、そこを今からキャッチアップしていかなくてはならない、という状況に追い込まれているというか、せざるを得なくなっている状況にあると思います。その状態の中で、森辺さんとしては、ディストリビューターの客観的分析とか、今、使ってるディストリビューターが競合と比べてどうなのか、ということを見て、具体的に次に何をやって、それがどう次につながるのか、というのをもう少しリスナーの方にご説明ください。
森辺:日本との大きな違いは、BtoBでもBtoCでも、製造業のディストリビューターさんって優秀じゃないですか。メーカーがディストリビューターを成長させるなんていう概念なんて、そんなにないと思います。どちらかというと、ディストリビューターが勝手に成長していくし、一緒になって成長していくという気持ち的な部分はあると思いますけど、メーカーがディストリビューターを教育するなどということは、製品教育はやったとしても、事業の運営、経営そのものに口出すというのは内政干渉じゃないですか。そんなことはしてこなかった。
一方で、アジア新興国ではそれをやらないと、ディストリビューターは成長しないわけです。彼らにとってみたら、ディストリビューターという業種の歴史自体がそもそも短いわけですから、それを今までやってこなかっただけに、日本企業はこれからそれをやっていかなくてはいけない。大手の先進グローバル企業の商品を扱っているディストリビューターは、長くても歴史20年ぐらいじゃないですか。その中で、我々はどこどこに育てられてきた、ということを、ディストリビューターのオーナーさんがすごくおっしゃる。すごく強固な関係で、P&Gの商品と競合するような商品を扱うというのはないじゃないですか。ユニリーバと競合するような商品を取り扱うというのもないし、ネスレと競合する商品を取り扱うといのは絶対しない。だから彼らのチャネルというのは強固で強い。そういったものを日本企業も作っていかないと、なかなかこれからの販路の戦い、チャネルの戦い、販売網の戦いには勝てないのではないかと思います。
東:まず違いを明確にする。今の現状の日本企業のディストリビューターと、欧米の先進グローバル企業と呼ばれるところが、使っているディストリビューターを比較対象して、違いを見つけることだと思いますが、具体的に大枠でいいんですが、どういったことがまず違いますか。
森辺:我々がよくやるのは、一つ目は、チャネル戦略そのものがどういうふうに違うんですか、ということを見ます。二つ目は、ディストリビューション・ネットワークがどう違うのかということを見る。三つ目が、チャネルそのもののマネジメントをどうしてるのか、組織体制含めて。その三点を特に見ます。
一つ目のチャネル戦略そのものがどうなっているのか、というのは、チャネルに対する考え方が、競合さんと自社とどう違うのか、ということをまず見ます。メーカーのチャネルに対する考え方があるから、ディストリビューターをどう使うとか、どういう規模のディストリビューターを使うとか、何を業務としてやらせる、ということがあるわけじゃないですか。なので一番最初にそこを大前提として知る必要があります。
ディストリビューション・ネットワークも、日本企業は1カ国1代理店制度みたいな傾向が強いわけですが、消費財の世界でいうと、伝統小売の攻略が新興国では必須になってくるので、1カ国1代理店制度なんかでは物理的に何十万、何百万の伝統小売を取れないので、必然的に複数のディストリビューターを使わざるを得ない。それがネットワーク化されるわけです。なので、そのネットワークの違いを見ていくと、いかに自分たちのディストリビューション・ネットワークというのが、いかにTT向けでないか、ということがわかってきたりします。
三つ目が組織やマネジメントの方法。結局、ディストリビューターに何人セールスマンがいて、そのうちの何人が自分たちの商品を取り扱ってくれているのか、ということが肝になるわけです。1000人セールスマンがいるディストリビューターと組んでいるので、うちは安心です、と言ったとしても、その1000人のうちの何人が、自分たちの商品をどういうふうに広めてくれているのか、ということが肝なわけです。1000人のうちの5人しか、自分たちの商品を扱っていないとしたら、従業員30人しかいないけど、30人全員が自分たちの商品を扱ってくれているディストリビューターのほうがいいかもしれないですよね。なので、そういうことを数字で見ていく、というのが客観的比較ですね。
東:そういったところって、日本で商売してる人の感覚からいうと、内政干渉みたいな感じで。ディストリビューターといっても、日本企業のA社さんと、ディストリビューターのA社さんがあるとしたら、基本的には別会社じゃないですか。そうすると、そこまで手を突っ込んでいいのか、みたいな、リスナーの方もそう思われる方がいると思いますが、そこまでしないといけないものですか。
森辺:日本でいったら、アウトですよね。日本ではアウトですけど、残念ながらアジア新興国ではそこまでやらないと、ディストリビューターとの根本的な成長はできないし、当然嫌がりますよ。嫌がるんだけど、そこをやっていかないと、そこまでの実力値がディストリビューターになかったりするケースも多いし、事実、先進グローバル企業は、ディストリビューターの中に自分たちの駐在デスクが置いてあります。
東:それはディストリビューターの会社の中にですか。
森辺:なんなら部屋がある。そこに常勤者がいる。主要なディストリビューターにはメーカーの人間が入り込むわけです。そして、そのメーカーの人間が、率先してディストリビューターのセールスのケツを叩いていく、ということをやってます。ただそれをやるには、誰よりも市場のことをわかってないといけないし、誰よりも消費者のことをわかってないといけないし、誰よりも流通のことをわかってないといけなし、BtoCだったら誰よりも小売のことをわかってないといけない、BtoBだったら誰よりもユーザーのことをわかってないといけない。誰よりも競合や製品のことをわかっていないといけない。それだけわかっていて、明確な戦略があるからそこまでできるんですよ。
日本企業みたいに、いまいちわからないけど、言うことだけ言います、みたいな感じで入っていったら、そりゃ、お前ら、わかってないくせに何言ってるんだ、ということになるので、それはだめですけどね。入るということは、自分たちが彼らよりもわかるということが重要で、わかった上で、明確な戦略をもって入るということが重要で、戦略もないのに入ったら、お前、バカか、という話になりますので、そこがとても重要なところです。
東:今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。