東:こんにちは、ナビゲーター東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:前回はディストリビューターに入り込まなきゃいけない、ディストリビューターの中にデスクがある状態までするほうが、望ましいのではないか、というお話でした。
よく森辺さんは、ディストリビューターを見るときに、マインド・セットとスキル・セットということを言われますが、スキル面は大きいかと思いますが、まず日本企業に戦略がないと、そういった内政干渉ができません、ということだとすると、そこのスキル・セットとマインド・セット、どっちが先か。卵が先が、ニワトリが先か、の話になると思いますが、今の現状のディストリビューターに手を突っ込むのか、もしくは併用するのか、変えるのか、という3択しかないと思いますが、そのときどういった形で次に進めばいいかと悩んでるメーカーさんいらっしゃると思いますが。
森辺:どっちも必要なんですけど、まずマインド・セットの話からしましょうか。マインド・セットというのは、誰のマインドを言ってるかというと、オーナー社長のマインドです。ここが御社の商品に対して、どれぐらい情熱を持てているのか、一緒にそれを実現しようと思っているのか、ということがすごく重要です。
ただ日本企業の場合は、自分たちの会社はこんなに大きくて、自分たちの製品はこんなに素晴らしいということを伝えるだけで、オーナー社長から情熱を得ようとします。だけど、そこがそもそも違っていて、自分たちのビジョンや将来像を明確にオーナーに伝えて、この国で、こういう戦略で、こういう世界観を作って、この国に貢献したいという、そのビジョンとストラテジーがあるから、オーナーがそれに共感してマインド・セットが高まるという話じゃないですか。最初から高まっていればいいけど、それをどうやって高めるか、という問題がひとつあります。それがまず一つ重要なポイントとしてあります。どんなにスキルが高くても、マインドが駄目だったらうまくいかないので、重要です。
一方でスキル・セットのほうは、かけっこに例えるんですけど、御社がやろうとしていることは、100メートル走なのか、400メートル走なのか、それとも42.195キロのマラソンなのかという話です。それは求めている売上に例えてもらえばいいですけど、1億やるんだったら、正直ディストリビューターなんてどこでもいいですよ。重要なのはオーナー社長のマインド・セットのみ。なんなら従業員2人でもいい、1人でもいい。なので絶対的にマインド・セットです。けど、何十億とか何百億になってくると、マインド・セットは絶対ないといけませんが、スキル・セットも同じように高いレベルで持ってないと、「めちゃくちゃやる気あります」「あなたのビジョンと戦略に共感しました」「がんばります」「けど、うち、3人しかセールスマンいません」みたいなところとやっても、100億絶対いかないですよ。そうなってくると、やっぱりスキル・セットの重要度があがってくるので、自分たちが今、何メートル走を走ろうとしているのか、ということです。100メートルならいいですよ、マインド・セットで。
東:短期決戦みたいな感じですね。
森辺:けど、マラソンやれって言ってるのに、スキル・セット低かったら、マラソンは走り切れない、途中で棄権になります。
東:ディストリビューターのオーナーさんがすごいやる気で、この日本のメーカーの商品をぜひ取り扱いたい、というのが一つマインド・セットだと思うんですね。スキルセットといったときに、オーナーさんのスキルというのも、経営スキルも重要だと思うし、ハード面で、人がいるかいないか、単純に小売とツテがあるかどうかもスキル・セットだと思うんですけど、そのへんはどう見分けたらいいですか。
そこは内部に入り込まないと、わからない情報だけど、取り扱ってもらってから知っても、意味がないところでもあるじゃないですか。森辺さんのいう、100メートル走るのか、42.195キロ走るのかで、42.195キロ走りたいです、でもそれをどう叶えればいいのかわからない、というのが結構今の状態としてあるのかなと。そのときに、スキル・セットをどうやって見分ければいいのか。マインド・セットはなんとなくわかりますけど。
森辺:すごく単純で、42.195キロを走りたいのなら、そのディストリビューターが42.195キロで走ったことあるかないか、というのはすごく重要じゃないですか。走ったことないやつが、走れますと言っても、ちょっと信用できないですよね。けど、こいつ走ったことあるし、タイムも早いよ、優勝してるよ、というのがわかれば、信頼できるわけじゃないですか。そうするとそのディストリビューターが取り扱う商品の中で、42.195キロ級の商品があるかないか、というところの一点です。
それができる会社は、その国でTT、MT問わず、42.195キロを走り切るということは、MTだけでは絶対走り切れないので、TTも走らないといけないわけですよ。そういう商品をいくつ持っているか、という話ですよね。それが2個、3個あると、そのメーカーは4個、5個、6個と増やしていきたいわけですよね。そうやって自分たちの規模を大きくしていくことになるので。そこを見ていくのはすごく重要で、自分たちと競合はしないけども、類似していて、親和性のある商品を取り扱っているか。親和性のある商品を取り扱っていると、親和性のあるチャネルを持っているので、そこに同じように入っていけるわけですね。その親和性のある商品を、親和性のあるチャネルにどう入れているのか、というのは彼らがわかっているので、そこを同じように、それをベースにやらせていく、ということをすれば、高い確率で配下率が上がるということになっていきます。そうやって見抜いていくしかないですね。
東:今、取り扱っている商品が、具体的にどういう商品なのか、ということをまずわからないと、そこは見極められない。
森辺:よくディストリビューターに行くと、自分たちは10万のアカウントがあるとかね、MTに1万アカウント、TTに8万アカウント、とか言いますけど、実際にアクティブなのは何万なの?と見ていくと、2万しかなかったりというケースがあります。けどそれは、ディストリビューターが自分たちは何万アカウントあるという資料を出してくるけれど、実際のマーケット、市場、小売を見てしまえば、大体どれぐらい入ってるかはわかるわけじゃないですか。そういう判断をしていくと、彼らが言ってることが実態からそんなにずれてない、ということが見えてくるのかな、というのはひとつありますね。
東:最後に振り返っていただいて、こういうところを見たほうがいいよ、というのと、客観的分析の重要性をもう一度おさらいしていだいて終わりたいと思います。
森辺:日本の製造業は、BtoBでもBtoCでも自分たちのディストリビューターの客観的分析を今までしてきていないので、それをしたほうがいいです。ディストリビューターというのは、自分たちがその国で売上やシェアを上げていくための、大きな要素になる人たちです。そうすると、それが競合と比較して優っているのか、劣っているのか、何が課題になっていて、何を補わないといけないか、ということを客観的に分析する必要があります、というのが一点。
それを分析していって、課題をつぶしていくということが、今までの次元で求めてきたレベルから、さらにステージを上げた次元に到達するための重要な要素なので、客観的分析が必要です、というのが一点。
客観的分析をどうすればいいのか、ということですが、ディストリビューターの客観的分析のポイント軸としては、競合のチャネル戦略を、ディストリビューター含めて全体をまず理解して、自分たちと比べてどうなのかということを把握することと、ディストリビューターのディストリビューション・ネットワークがどうなっているのか、自分たちと比べてどう違うのかを見ていくことと、ディストリビューターのマネジメント体制がどうなっているのかを見ていく、この3本セットになってきます。
最後に話したスキルとマインドセットの相関関係は、マインドセットはマストです。ただ100メートル走るのと、42.195キロ走るのでは、求めるスキルセットがまったく異なるので、そこを見ていきましょう、というお話でした。
東:森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。