東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、引き続き、徳重社長をお迎えしてるんですけど、今日はどういう話を?
森辺:ええ、徳重さん、今日は少し会社の話に戻って、お話を進めていければなと思っておりまして、前回、前々回と、アジアで挑むということは第二創業だとかベンチャー企業でアジアに挑むということは非常に今やっていることと同じことを単純にアジアでやればいいから、実はベンチャーのほうがアジア向きなんだ、みたいなお話があったと思うんですが、僕これ、アジアで事業をなしていく、業を起こしていくっていうことに非常に近しいなと思ってるのが、テラモーターズさんの株主の構成なんですけど、そうそうたる株主さんがいらっしゃって、この人たちから出資を受けたということで、一方でアジアで事業を作っていくのと同じぐらい難しいチャレンジングなんじゃないかなというふうに考えてましてですね、元ソニーの出井さんとかApple Japanの元社長さんとか、いろんな方から出資をいただいてるんですけど、そんなところのお話を中心にちょっとお聞かせいただいてもよろしいですかね。
徳重:そうですね。まずアジアの市場開拓の共通点かもしれないなと思う点で言いますと、キーワードで言うと、例えばだめもとでやってみるとかやってみろとか、とにかく動いてみたらいろんな人につながってみるよ、とかですね。それって僕はアジアとかの市場開拓するときの非常に大きなキーワードだと思うんですね。もう一つはこれは社員によく言ってることですけど、天井を設けるなと。つまり自分で勝手にここまでだとか、ここら辺じゃないの、みたいな。もうとにかく天井を設けるなみたいなことをよく言ってるんですけど、その辺の全部リンクしたことかなと思ってまして、キーで言いますと、もともと、だから10人ぐらいですかね、有力な方々。早稲田のMBAの松田(修一)先生とかトヨタカローラ新大阪の久保(行央)社長とか、コンパックの村井(勝)さんにしても、あとはベネッセの会長とかですね。で、僕もともとテラモーターズ始める前に知ってたというか、人ってコンパックの村井さんだけなんですよ。村井さんはもう10年来のつき合いでシリコンバレーのときからおつき合いさせていただいてる方なので、「おまえが何かやるときには応援するよ」というのはずっと言われてたんです。だけどあとの方は全然知らなかったです。で、どういうふうにこんなんになったかって言うと、一つは、例えばGoogleの代表は辻野(晃一郎)さんなんですけど、僕は若いやつによく言ってるんです。例えば本読んで、これは、という人がいたらどんどんアタックしろと。今、例えばFacebookとかね、Twitterとかあるじゃないですか。それをどんどんチャレンジしろというふうに言ってまして、それでうちの若いのが辻野さんに連絡取って、それで会いたいですと。そしたら辻野さんがうちのホームページ見ていただいて、今も確かあると思うんだけど、僕がなんでこの会社をやってるか、みたいな動画があったんです。それを辻野さん見ていただいて、ぜひやりたいということで親交が始まりましてね。という流れなんですよ。だからたまたまというか、それで感じていくと。だからそういう意味では、何を目指してますかというビジョンも大事ですね、今のキーワードで言えばね。何を考えてやってますかと。で、その流れで出井さんにつながったりとかして、実は僕、出資を受けるときに、普通出資を受けるときって何をするかって言うと、ベンチャーキャピタルとかだったら、細かい事業計画を見せて、このお金はこういうこういうのに使って、こうするんですと。で、3年後に売り上げこれで利益こうなんでこうしますみたいな、そういうのがメインであって柱なんですね、当たり前ですけれども。でも僕はこの個人株主の方々に細かい事業計画は誰しも言ったことないんですよ。ただ失礼なんであとでメールで送りましたけどね、資料で送りましたけど、会ったときは何をもってこの会社をやってますか、何を目指してますか、しか言ってないんです。じゃあ皆さんどこに共感していただいてるかって言うと、やっぱりもう、よく日本だったらソニーが復活するだとか、どうやったら復活するかっていう話は多いんですけど、ソニーは言ってみたらもうおじいちゃんなので、ソニーはもうおじいちゃんだから、おじいちゃんにこれからもう1回やれっていうのはなかなか厳しい話で、ソニーはもう役割は終えてるんだろうと、つまりソニーとしてのね。ただもう一回、やっぱりソニーみたいな会社を出してほしいと、日本から、みたいな思いがすごくあって、それが僕が言ってた日本発メガベンチャーの創出っていう、企業理念に近いところがありまして、こんな面白い若いやつがいるんだったら、それはちょっと応援してやろうみたいなそういう流れなんですよ。僕はだからそのビジョンが大事だなと思ってるし、それも単に社会をよくするとか貢献するとか、誰もが言ってるような話じゃだめだし、本当にそう思ってないとだめだし、それは。だから単に形式的に言ってるだけじゃ響かない、伝わらないので。本気でそう思ってることをぶちまけていって、だから合う人合わない人、当然あると思うんですけどね。っていうのが大きなポイントですね。で、もう一つポイントとしては、要は天井を設けるなっていう意味ではですね、僕は何を考えたかっていうと、こういう方々ですから、例えば日本でプレゼンするときもアジアでプレゼンするときも聴衆に響くわけですよ。ただ自分がプレゼンしてて、何か一つ足りないなあと思った。何を言ってるのかっていうと、ソニーだ、Googleだ、コンパックだとかマッキンゼーだとか、ネッツトヨタだとか言って、何か一個足りねえなあと思って、何かって言ったらAppleじゃないですか、今だったら、しかもアジアだったらっていうのがあって、で、僕考えたんですね。Appleの人で有名な人いないかなあと思って。スティーブ・ジョブズさんちょっと性格悪そうだから、ウォズニアックっていう一緒に創業した人がいますけど、ウォズニアックは性格が、教育者だし、ウォズニアックに当たれば多分いけるんじゃないかと思って、シリコンバレーの昔の友達にウォズニアックに何か、誰かアポできない?って言ったら、見事撃沈というか、誰もいなくて、そうこうしてるうちにどっかのタイミングで、Appleの本社の副社長で日本の代表だった山元さんっていう方がいるんですね。っていうのを知って、これだと思って。で、失礼ながら、山元さん会社やってるので、そのホームページからぜひお会いしたいってメール打って、で、会って。1回目会ったときその場で、すごい失礼なんだけど2週間後ぐらいに増資を考えてるのでちょっとご協力いただけませんかって言ったらすぐ、まあ山元さんもすばらしい方なので、OKいただきましてね。
東:すごいですね。
徳重:すぐFacebookで、今決めました、とか言って。いや、本当の話なんですよ。だから社員にもよく言ってるのが、何が理想ですかと。まず理想のとこから始めて、で、当時僕はこういう発想はアジアで極めて重要だと思ってるんですよね。アジアってやっぱり人間関係であって、人間とのつながりだから、動けば動くほどいろんなのに、いろんな大きな、これを知ることによって大きな道ができるとかっていろいろあるんですよ。あるいはどんどん動けばね。どんどんやってみるとかね。だから日本のメンタリティとは逆の発想でいかないといけないと思いますよね。
森辺:そうですね。ちょうど徳重さんの『世界で勝つ!』に書かれてる、「常識ではなく理想から考えよ」と。まさにそういうことですよね。
徳重:そうですね。そういうのを今、日本は本当、忘れてると思うんですよね。
森辺:そうですね。
徳重:頭がよくなってる分、こうこうしたらこう、そういうのいるんですよ、ロジックもいるけれども、で、シリコンバレーのやつらが何がすごいかって言うと、あいつら頭がいいくせに考えてるレベル半端ないので、それ無理でしょ、みたいなことも平気で言ってるんですよね。そこが違うんですよ。
森辺:そうですね。いや、確かにこの「常識ではなく理想から考えよ」というのはまさにそうで、結局、こんなそうそうたる人たちからお金を投資をしてもらうって、想像しちゃった瞬間に無理だろうなって思うわけじゃないですか、常識だったら。けどとりあえずやってみようよっていうことでやってみたらそうなったっていう、そういう話ですよね。
徳重:そうです。ただ僕たちも撃沈してる例もたくさんありますよ。だけどそれは別に失敗じゃなくて、まあ別にいいわけですよ。だからそういうのに慣れていく必要もありますよ。
森辺:そうですね。だから何か、世の中がアジア、アジア言ってるから、アジアだ、ミャンマーだ何とかだって言ってる人、結構多いんですよね。やるんだったらお手伝いするし、やらないんだったらもうやらないからもう向こう行ってって思うことってすごくあって、そのぐちゃぐちゃぐちぐちやってても、多分3年後も今の現状のところにしかいなくて、もしくは日本の国内市場はこれだけ停滞してたら、今よりももっと下にいるかもしれない。その中でとにかくやってみるっていう思い、やっぱりすごい重要だなっていう。
徳重:アジアでは極めて重要ですね。僕もいろんなとこで言われるんですけど、マレーシア行ったときもそうだし、ミャンマーだけ僕行ったことないんですよ。ミャンマー行ったことないんですけど、ミャンマーの友達が言ってましたけど、2年前からコンサルしてて、ミャンマーとかってやっぱり新しい国ですから、ベンチャー国ですから、やっぱり政商、政府とのつながり。で僕の友達は日本の会社を政府とつなげることをやってたんですけど、2年やってさすがにへとへとに疲れてきたと。で、もう向こうの政府の高官からはもう日本人いいですと、なってるらしいんですよね。何かと言うと、まあ来るわけですよね。で、リサーチするわけですよ。で、リサーチするんだけど、一生懸命、結局ノーアクション。で、そうこうするうちにまた中国勢とか韓国勢が来て、彼らはちゃんと投資をして、もしくは販売網作って現地でやろうとするわけですよ。で、一方でメルマガとかでミャンマー、ミャンマーとかってもうなんか、毎週、毎月のように来ますよね、セミナーだか、ビジネス。多分一点とか年齢でそういうの見てるから、上司は、「おまえ、ミャンマー分かってるのか」とかって言われて、多分ですよ、いや、知らないと怒られるとかって、いやそりゃ怒られるじゃねえだろうっていう話ですよね。本気でそこでやる気があるのかっていう。そこ、すごい大事なんですよ。
森辺:本当そうですよね。アジアの日本のプレゼンツね、日本であるだけで信用と信頼と品質と、すべて70年代、80年代培ってきたわれわれの先人が作ってくださったこの環境を今のわれわれは無にしていて。
徳重:いや、本当に、僕すっげえそれは思ってるんですよ。それもあって僕たちは絶対成功しなければいけないと思ってるんですけど、さっきの野茂ですよね。すごいもったいないですよ。だって僕はプロジェクトXとか好きだったからよく見てたけど、当時見たホンダでもソニーでもトヨタでも、もう安かろう悪かろうで、アメリカの高速道路を日本車走ったら、ポンコツだから、ボンネットとかぽーんと開いて止まってみたいな。そっからやって、今の中国じゃないですか。そっからやってんですよ、彼らは。僕たちは、もう言ったら、さっきの300から始まるわけですよ。それなのになんでやらないの、みたいな。
森辺:本当、そのとおりですよね。当時の日本企業が作ってくれた土壌を無にしてね。さっきの政府とつなぐなんていうこともやるんですけど、何言われるかって言ったら、何て言ってたかな、彼ら略してNATOだとか。
徳重:NATO、あれです、no action only talk。
森辺:no action only talkっていうのをね、すごい言われるじゃないですか。もうまさにそのとおりで、で、来るんだけど何しに来たのって、特にインドとかああいうせっかちなところって、いわゆるミーティングが設定されるとそのミーティングには必ず目的があって、情報交換でミーティングなんかしないんですよ。情報は高いので、そんな時間取るなと、俺の時間を。情報交換したいんだったら、聞くばっかりじゃなくて情報くれっていう話になるんで。そこの感覚が鈍ってるから。
徳重:とりあえず会ってみようっていうのはもうないんですよね。僕らもインド行っても、もういきなり最初から役員が出てきて、いきなり合弁しましょうってきますから。僕はEVこれから伸びると思ってるとかEVで日本でトップやってるとか言ったらもうそれだけでOKなんですよ、向こう的には。だから最近僕もちょっといろいろ研究というか学んでいて、ここ行ったらこうきそうだなっていうのがあるところはちょっと会わないですね。つまり間違いなくそう言われるのわかってるので、こっちも相当事前に調べたうえで会うような感じですね。だから僕らもとりあえずやれみたいな突っ込めみたいなアクションも大事にしてるけど、そういう調査というか事前の準備というか、分析とか、そういうのも極めて重要にしてるので、じゃないと話進んじゃうので。よっぽどこっちで調べていかないと、会って情報交換しましょうみたいな、そういうのじゃないんですよね。僕この前すごいうれしかったのが、インド行ったときに、やっとこういう日本人来たかって言われて、僕ソニーの盛田さん尊敬してるんですけど、やっと盛田みたいな男が来たか、日本人が来たかって言われたんですよ、インドで。インドで多分だから、盛田さん有名だったんだろうと思うんですけど、何かと言うと、僕なんかまず一人で行くでしょ、当たり前なんですけど。そこからびっくりするんですよ、向こうからしたら。大体大行列が、5人とか10人とかでずっと来るじゃないですか。で、例のごとく最初から本題なくて、どうですかみたいな話とか、午前中来たよとか言われて、日本人がとかペラペラ言われて。大手の食品メーカーと広告会社の大きいのと、もう一個僕も知ってるコンサルの会社、三者連名でね、多分複数で来て、結局何かよくわからない話をしたから、こういうのがまた来てね、みたいな話をされたんですよ。
森辺:敵に見せますもんね。
徳重:それに比べておまえはない、みたいな話があって。だから求めてるんですよね、彼らは。でも僕らみたいな動きができるのはやっぱりベンチャーの経営者だと思うんですよ。やっぱり中堅中小企業のオーナー会社であればできるし、大企業であるんだったら例えばスピンアウトっていうか別組織作って、とにかく任せるっていうことをやるとかね、っていうとこじゃないかと思ってるんですけどね。
森辺:アジアでものを売るのに一番重要なことって僕は流通を作るということだと思ってるんですよね。流通含めてのマーケットメイキングとかマーケットクリエーションだと思っていて。そうなると大企業であっても中小ベンチャーであっても結構スタートラインが一緒で、なんならスタート切っちゃったらベンチャー企業のほうが早いわけですよね。そうすると1億2000万人の縮小してる市場の中でうじうじやっていて、大手撤退のシェアの中でいつの間にか自分たちは中小のままでいいみたいなマインドに侵されちゃってるんであれば、やっぱり世界60億、70億をターゲットにやったほうが、僕はそこに可能性もチャンスもあるし、ロマンもあるなあと思って。そんな感じですね。
徳重:面白いと思うんですけどね。僕もだから、僕の会社もワクワク感っていうのは重要にしてるし、シリコンバレーもそのワクワク感っていうのあるんですけど、まあ面白いですからね、率直に。まあいろんなことありますけども、まあよく映画で言われるような、何だっけ、ALWAYS三丁目の何とかの世界で、戦後そのまんまみたいな感じなんで、むちゃくちゃだし法制度も含めてっていうのはあるけども、逆にそれをネガティブに捉えるんじゃなくて、それぐらいのアローワンスというか寛容性をもってね。いや面白いんだみたいな、楽しめばいいと思うんですよね、ビジネスを。面白いと、僕は本当、だからアジアのビジネス、うちの若いやつどんどん経験してもらいたいですよ。非常に面白いですよ。リスクもあるからいろいろアレンジしなきゃいけないけど、だまされることもあるけれども、総合的に考えて面白いと思うんですよね。
森辺:可能性は大きいですからね。なるほど、わかりました。じゃあ今回もちょっとお時間が近づいてまいりましたので、この辺で終わらせていただきたいと思います。また次回、社長、よろしくお願いします。
徳重:はい、お願いします。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございました。