東:こんにちは。ナビゲーターの東忠雄です。
(0:10)
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
(0:13)
東:引き続き、ちょっと聞きづらいかもしれないですけど、ヒルトン大阪からお送りしております。森辺さんが前回、スーツの件で話をして、ドリーム・プロダクトかコモディティー商品か、で、結局は中途半端になっているから、なかなかグローバルで受け入れられない。この間、米倉先生がアフリカセミナーのときに、まったく関係ない話なんですけど、「高くて良い物よりも、安くて良い物には絶対かなわない。」みたいな話をされてたじゃないですか。そうすると、ドリーム・プロダクトっていうのは、高くて良い物で、ブランドがついているからそれが成り立つと。で、コモディティー化は安くていい物なので、それがやっぱりグローバルには受け入れられる、っていうような感じなんですかね。
(1:08)
森辺:僕ね、この「高くていい物は、安くていい物にかなわない」という、一橋大学イノベーション研究センターの教授の、米倉誠一郎大先生が言ってるね、この言葉。実はね、僕はまったく反対なんだよね。もう、米倉先生ごめんなさい、ホントに。で、僕は、総論で言ったらそうかもしれない。そりゃ安い方がいいじゃん、と。ただ、世の中には高くなければ求められない物ってのがあって、例えばラグジュアリー・ブランドなんか、まさにそうだよね。あれは、高くないといけないんだよね。高くないと誰も求めないし。あと、コモディティー化された製品でも、高い方が求められるっていうのは、AppleのiPhoneなんかそうだよね。128メガで12万円て、変態でしょ?携帯の値段としてはね。あと、dysonの掃除機だってそうなんだよね。だから、「高くないといけない物」っていうのはあって、けど、結局、人がお金を払う、高いお金を払うっていうのは何に払ってるかっていうと、技術や品質っていうものは、ある一定のところまでしか払われなくて、その上にのっかってるブランドとか、その会社のポリシーとか、その会社のいわゆる理念とか、ヒストリーみたいなものに、高いお金を払うんだよね。その高いお金を払ったことによって、お客さんは、ものすごい自己満足をするわけなんですよ。だから僕は、米倉先生とは実は意見は反対で「高くていい物は、安くていい物よりも勝るんだ」と思うんだよね。これは、企業側の立場に立っても、僕はそうだと思ってて。米倉先生、ホント申し訳ございません。わたくしのような人間が、米倉先生のご意見に真っ向から反対するなんていうのは、ホントに申し訳ございません。この、Podcastを聞かないことを望みます。そういうことなんですよ、僕は。
(3:13)
東:そうですね。このPodcastを聞いて、苦情があるんであれば、至急Podcastの宛先までご連絡いただければ、菓子折りを持って参じますので。そうは言いますけど、高くていい物っていうのは、ブランドがついてないと「高くていい物」で成り立たないじゃないですか。そうすると、ドリーム・プロダクトって森辺さんが呼んでるのは、ブランドが、高くていい物に、付加価値されてるわけですよね。そうすると、一般的にグローバルで受け入れられてるのって、当然「高くていい物+ブランド」っていう物はあるけれども、総じて言うと、「安くていい物」っていうのは受け入れられてる、っていうのは事実としてありますよね。例えば、ユニクロのアレもそうですし、キットカットとか、ああいうところもそうでしょうし。そうすると、企業側から見たら、利益率が高いのは、もしかしたらドリーム・プロダクトと呼ばれるものだけども、誰もがドリーム・プロダクトを生めれば、苦労はしないというか、生めないから、安くていい物に走る、っていう企業もいると思うんですけど。日本の企業ってどっちに行くべきだと思います?
(4:31)
森辺:僕は、日本企業は絶対に、コモディティーで戦うべきじゃないと思う。ドリーム・プロダクトを生み出すべきで、特に、コモディティー化されてしまった、いわゆるアジアの企業でも作れるような商品に関しては、やっぱりドリーム・プロダクトに振るべきなんですよね。ブランド力がやっぱないんですよ、日本企業って。いい物を安く作ることは、もう、やってきたわけじゃないですか。もともとは欧米が作っていたものを、いかに安く、いかに良く作るかってことは成し遂げたと。けど、それを、追いかけられてるわけですよね、中国や韓国に。それを引き離すには、ひたすら最後、あとコンマ何ミリとか、何センチの技術とかね、その品質を争うんではなくて、そのブランド力「ドリーム・プロダクトにどうやってなれるか」みたいなところがやっぱすごく重要で、昔のソニーのウォークマンみたいなね。iPodじゃないわけですよ、もともと。ウォークマンなわけじゃないですか。テレビと言えば、サムスンじゃなかったんです。ソニーのトリニトロンだったんですよね。それを生み出せることがすごく重要だと。今ヒルトンのカフェにいるんですけど、コーヒーがブーっていって、すみません、聞きづらくて。
(5:53)
東:なるほど。そうするとやっぱり、高くていい物のほうに、製品開発というか企業の方針を振るべきだ、って言うのが森辺さんの考え方で。ただ一方で、今まで松下とか、ああいったソニーはBtoCを中心としてたけども、それができないので、BtoBに移行してしまう企業もあるし、なかなか、高くて安い物っていうところを目指そうにも、それが何となく中途半端になりがちなのが、日本企業じゃないですか。今の現状を見ると。ただ、生み出せる力があるか、ないかっていうと、あるんだと思うんですよね。そうすると、そこをブレーク・スルーできないところに、グローバルで苦戦してる、ってのが一つ大きい要因としてありますよね。そこって、一つはチャネルっていう問題があるのは事実なんでしょうけど、そのチャネルをきっかけに、どう日本企業が見てったらいいのかなっていうのは、森辺さんなりの、答えはないと思うんですけど、こうなんじゃないかなっていうような何かがあれば、ちょっとヒントなりにもなると思うんですけど。
(7:10)
森辺:まず、コモディティー競争に陥るような事業は、僕は早期に撤退をすべきだと思うのね。ある程度、見切りをつけて。コモディティー競争に突入しなくて、ドリーム・プロダクトの競争に移行できるものに、僕は投資をすべきだと思うの。事業の大きい戦略としてはね。やっぱりひとつは、日本のペンメーカーが、ペン先のボールのなめらかさにこだわるんだけど、モンブランなんだったら、それやったらいい。ウォーターマンなんだったら、それやったらいい。だって1本10万円でペンが売れるから。けどやっぱ100円のペンに、消費者が求める書き心地って、限界があるわけですよね。そこに僕は、労力や経営資源を投下するんではなくて、もっと違う方向に投下をしていく、ということがポイントなんじゃないかなと思うんですよね。
(8:10)
東:わかりました。じゃ、今日はちょっとお時間が来たので、最後に米倉先生に真っ向から勝負を挑んだ森辺さんから、どうぞ。
(8:21)
森辺:米倉先生、森辺です。7月タンザニア、お供します。9月も南アフリカ一緒に行きますんで。あの、決して悪気はございません。今度、ワイン飲みましょう。
(8:35)
東:じゃ、森辺さん、ありがとうございました。
(8:38)
森辺:ありがとうございました。